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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1416816 
総通号数 35 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2024-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2024-02-08 
確定日 2024-10-31 
異議申立件数
事件の表示 登録第6759059号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6759059号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6759059号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和4年12月27日に登録出願、第25類「被服,履物」を指定商品として、同5年10月24日に登録査定、同年12月4日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件商標に係る登録異議申立て理由において引用する商標は、以下のとおりである。
(1)商願2023−137454号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1に示す構成からなり、第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類、第25類、第35類及び第41類に属する商標登録願に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和5年12月12日に登録出願されたものである。
(2)申立人の似顔絵とされる図形及び「MARCY’S」の欧文字からなる別掲2のとおりの商標(以下「引用商標2」という。)
(3)「MARCY’S」の欧文字からなる商標(以下「引用商標3」という。)
以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめていうときは「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第10号、同項第15号及び同項第7号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第8号について
申立人は、歌手及びタレントの田代まさし(本名:田代政)である。このことは、申立人の宣言書、住民票、印鑑証明書、公式ホームページ、商標公報等から明らかである(甲5、甲6−1〜甲6−14、甲7、甲8、甲12)。
申立人は、1980年にシャネルズの一員としてメジャーデビューして以来、今日に至るまで著名な歌手及びタレントとして活動している。また、申立人は、「MARCY」及び「マーシー」の愛称で親しまれており、これらは申立人の芸名の著名な略称である。
このことは、申立人の公式ホームページ、各種活動履歴、各種ニュース記事、ウィキペディア等から明らかである(甲6−1〜甲6−14、甲7〜甲11)。
本件商標の出願経過によれば、商標法第4条第1項第8号の拒絶理由に対し、商標権者は、田代まさし名義の承諾書(以下「承諾書」という。)を提出しているが、申立人は商標権者に対し何ら商標登録の承諾を与えていないから、提出された承諾書は偽造されたものであることは明白である(甲5)。
また、申立人と商標権者とは何ら法律上の関係がない(甲4)。
以上より、本件商標は、他人の肖像を含む商標に該当し、かつ、他人の芸名の著名な略称を含む商標であるから、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、申立人の似顔絵の下に申立人の芸名の著名な略称からなる商標「MARCY’S」を付した結合商標である。
申立人は、本人の似顔絵の下に、本人の芸名の著名な略称からなる文字「MARCY’S」を付した結合商標からなる引用商標1及び2、申立人の芸名の著名な略称からなる引用商標3「MARCY’S」を使用している。
本件商標と引用商標1とは、その外観、称呼、観念を共通にし、両商標が同一の商標である。
また、本件商標と引用商標2は、引用商標2が色付きであることを除きその他の要素を共通にし、両商標が類似の商標である。
さらに、本件商標の称呼「マーシーズ」と引用商標3の称呼「マーシーズ」は同一であり、両商標が類似の商標であることは明白である。
申立人は、引用商標を使用して1980年代から原宿竹下通り(東京都渋谷区)などに、自身のブランドの店舗いわゆるタレントショップ「MARCY’S」を出店し、Tシャツ、スニーカー等の各種商品を製造販売しており、需要者の間において広く認識されていた。
このことは、各種記事からも明らかである(甲6−2、甲9−1、甲9−4)。
その後、一時的なタレント活動の休止の間も中古品取引サイト等において商品の取引がなされ、一定の周知性を保持していた。このことは、メルカリ等の中古品取引サイトに1980年代の申立人グッズが掲載されていることからも明らかである(甲6−17)。
申立人は、2018年8月より、自身のブランド「MARCY’S」の展開を再開し、現在、自身の公式ホームページ「MARCY’Sホームページ」等において、引用商標を使用してTシャツ、スニーカーの製造・販売をしている。これらの商品は、発売後即完売するほどの人気商品であり、YAHOOショッピングや楽天市場でも商品を展開している(甲6)。
このことは、各種記事にも取り上げられ、「田代まさし「マーシーズ」ブランドのTシャツを復刻 元タレントの田代まさしさんがかつて展開していたブランド「MARCY’S」・・・」等からも明らかである(甲9−2、甲9−4)。
さらに、SNSでも「ドリフから、どんどん歩き回り、ふとシャネルズにはまりました。そしてなんとマーシー沼へ。・・・ずっとMARCY’Sを集める日々です」等が投稿されている(甲10)。
申立人は、引用商標を使用して、自身の公式YouTube「MARCY’Sちゃんねる」を開設し、同サイトでもTシャツ及びスニーカーを紹介している。2024年2月7日現在のチャンネル登録者数は、3.06万人(甲8−1)である。
また、申立人は、引用商標を使用して、SNS Xに「MARCY’S PRODUCED BY MASASHI TASHIRO」を開設し、同サイトでも上記商品を紹介している。2024年2月7日現在のフォロワー数は、4.4万人(甲8−1)である。
さらに、申立人は、引用商標を使用して、SNS「Instagram@marcy’s official」を開設し、同サイトでも上記商品を紹介している。2024年2月7日現在のフォロワー数は、6.1万人(甲8−3)である。
すなわち、これらの証拠に明らかなように、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標であるところ、本件商標は、引用商標と同一又は類似する商標であって、その商品、これに類似する商品、すなわち被服及び履物に使用するものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
上記(2)で述べたように、本件商標と引用商標は、同一又は類似の商標であり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標である(甲6〜甲10)。
すなわち、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標であるところ、本件商標は、申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生じるおそれがある商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第7号について
申立人は、商標権者に対し、自己の肖像の登録の承諾、本件商標の登録の承諾を与えていない。
それにもかかわらず、商標権者が偽造した承諾書を提出して、本件商標の登録を得たことは、商標権者が申立人の肖像及び商標を使用し、周知・著名な申立人の肖像及び引用商標にフリーライドする意思で商標権取得を試みた悪質な行為であり、当該行為により登録された本件商標は、公の秩序、善良の風俗を害するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知著名性について
ア 申立人の主張及び提出された証拠によれば、申立人は、1980年にシャネルズの一員としてメジャーデビューした歌手及びタレントであり、その芸名は「田代まさし」である(甲5〜甲8、甲12)。
申立人が、引用商標を使用して1980年代から原宿竹下通りなどに自身のブランドの店舗いわゆるタレントショップ「MARCY’S」を出店し、Tシャツ、スニーカー等の各種商品を製造販売していたとする記事は、「田代まさしのタレントショップ「MARCY’S(マーシーズ)」って覚えてる!?」の見出しの下に記載があり、2018年8月6日更新のものである。
また、J−CASTニュースには、「田代まさし「マーシーズ」ブランドのTシャツを復刻」(2018年8月2日)の記載、ライブドアニュースには、「80’s世代には堪らない!田代まさしプロデュース竹下通り「マーシーズ」のTシャツが復刻販売」(2018年8月3日)の記載がある。そして、これらはすべて2018年当時のものである。その他、TV Bros.WEBは、タレントショップに関してのものであり、「田代まさしさんお店 マーシーズの缶バッジとキーホルダー」の記載があるが、その掲載日は確認できない(甲9)。
さらに、2024年2月5日出力のYAHOO!ショッピング、同年2月7日出力の楽天市場及びメルカリには、Tシャツ、バッグ等に引用商標が付されている(甲6−15〜甲6−17)が、これらが本件商標の登録出願時及び登録査定時においても掲載されていたかは明らかでない。
そして、「田代まさしへのお仕事依頼はコチラから」とする申立人公式ホームページには、引用商標2が表示され、「OMECO公式オンラインショップ」の表示がある(甲6−1、甲6−3〜甲6−10)。
イ 上記アからすると、申立人の提出に係る証拠からは、2018年にタレントショップにて、引用商標を付したTシャツ等が販売され、また、2024年に、ネット販売されていたことがうかがえるとしても、引用商標を付したTシャツ等の各種商品に関する売上高、シェア等の販売実績及び営業規模、並びに引用商標に係る広告宣伝の費用、方法、回数及び期間等については、その事実を客観的、かつ、具体的に把握することができる証拠が何ら提出されていない。
そして、そのほか、引用商標が、申立人を表示する周知著名な標章として、取引者、需要者の間で広く認識されていたと認めるに足りる使用事実は見いだすことができない。
そうすると、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(申立人)の業務に係る商品を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできず、また、引用商標3ないしは「MARCY」の文字が、同人の著名な略称であると認めることもできない。
(2)商標法第4条第1項第8号該当性について
商標法第4条第1項第8号の趣旨は、肖像、氏名等に関する他人の人格的利益を保護することにあると解される(最高裁平成15年(行ヒ)第265号同16年6月8日第三小法廷判決等)。
ここで「肖像」とは「特定の人物の容貌・姿態などをうつしとった絵・写真・彫刻。」(広辞苑第7版)とされるところ、本件商標は、別掲1のとおり、人物の顔を表した図形、及び「MARCY’S」の文字からなるものではあるが、当該図形部分は黒いサングラス、髭、蝶ネクタイ等を特徴とするイラストにすぎず、特定の人物の容貌、姿態をうつしとった肖像とまではいい難いものであって、人格的利益として保護すべきといえるほどに特定人の同一性を一般に認識させるものということはできない。また、当該「MARCY’S」の文字部分も、上記(1)のとおり、申立人の著名な略称又はこれを含むものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、他人の肖像又は他人の著名な芸名の著名な略称を含むものと認めることはできず、商標法第4条第1項第8号に該当するとはいえない。
なお、仮に本件商標の図形部分が申立人の容貌を表した肖像であったとしても、提出された承諾書が偽造されたものであるとする証拠は申立人による宣言書(甲5)のみであって、本件商標の登録査定時において、承諾書が偽造されたものであったことを認めるに足りる客観的な証拠は見いだせないから、本件商標が登録査定時に商標法第4条第1項第8号に該当し、その登録が同条第1項に違反してされたものということはできない。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(申立人)の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたとは認めることができないものである。
したがって、本件商標は、「Tシャツ」等の商品に使用するものであったとしても、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ないから、同号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標は、引用商標1とその構成において同一であって、引用商標2とは、色彩において差異を有するものの、その構成が同一である。また、本件商標の文字部分と引用商標3とは、同一のつづりからなるものであり、本件商標と引用商標との類似性の程度は高いといい得る。
しかしながら、引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、取引者、需要者の間に広く認識されていたとは認めることができないものである。
そうすると、本件商標と引用商標の類似性の程度が高いとしても、本件商標は、本件商標権者がその指定商品について使用をした場合、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想、想起し、申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわざるを得ない。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、上記(2)のとおり、黒いサングラス、髭、蝶ネクタイを有する人の顔のイラスト、及び「MARCY’S」の欧文字からなるものであり、当該イラスト及び欧文字部分から直ちに特定人を認識するとはいい難いものである。
また、申立人の提出に係る「MARCY’Sホームページ」(甲6−1、甲6−3〜甲6−10)には、「OMECO公式オンラインショップ」の表示があり、申立人と本件商標権者とは何らかの関係があるともうかがえるところ、本件商標権者が承諾書を提出した時点における申立人と本件商標権者との関係も確認できないものである。
さらに、本件商標の商標権者が、承諾書を偽造して提出したとする申立人主張を裏付ける客観的な証拠も見いだせない。
そうすると、本件商標の登録出願及び登録の経緯に著しく社会的相当性を欠くということを認めることはできない。
その他、本件商標が、不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他不正の目的で剽窃的に登録されたものであることを具体的に示す証左は見いだせず、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標に該当するというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
なお、申立人は、令和6年5月13日付け上申書において、本件商標権者が申立人の承諾なく文書を偽造提出して商標登録を受けたものであるとして、これを説明するための面接を求めているが、異議申立事件は、無効審判のような対立構造によるものでなく、合議体と権利者との間で手続が進められるものであり、申立人との面接は行わないこととした。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号、同項第10号、同項第15号及び同項第7号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1(本件商標、引用商標1)


別掲2(引用商標2:色彩については、甲6−1を参照。)



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異議決定日 2024-10-22 
出願番号 2022150126 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W25)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 板谷 玲子
特許庁審判官 馬場 秀敏
鈴木 雅也
登録日 2023-12-04 
登録番号 6759059 
権利者 株式会社OMECO
商標の称呼 マーシーズ、マーシー 
代理人 弁理士法人タナベ・パートナーズ国際特許事務所 

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