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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W41 |
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管理番号 | 1416810 |
総通号数 | 35 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-11-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2024-01-17 |
確定日 | 2024-11-12 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6752556号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6752556号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6752556号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和5年3月16日に登録出願、第41類「運動施設の提供,ヘルスクラブの提供(健康及びフィットネスのためのトレーニング),技芸・スポーツ又は知識の教授,個人指導(フィットネストレーニング),フィットネスの教授,セミナーの企画・運営又は開催,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),スポーツの興行の企画・運営又は開催,運動用具の貸与,スポーツイベントの企画・運営」を指定役務として、同年10月24日に登録査定、同年11月9日に設定登録されたものである。 2 引用商標 (1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由において引用する登録商標は次のとおりであり、いずれも現に有効に存続している。 ア 登録第1758671号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の態様:別掲2のとおり 登録出願日:昭和53年4月4日 設定登録日:昭和60年4月23日 指定商品:第9類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品(平成17年6月22日書換登録) イ 登録第3286569号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の態様:別掲2のとおり 登録出願日:平成4年9月24日 設定登録日:平成9年4月25日 指定役務:第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 ウ 登録第5165647号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の態様:APPLE(標準文字) 登録出願日:平成18年7月31日 設定登録日:平成20年9月12日 指定役務:第41類及び第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 エ 登録第5766113号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の態様:別掲2のとおり 登録出願日:平成26年9月6日 優先権主張日:2014年(平成26年)8月7日(ジャマイカ) 設定登録日:平成27年5月22日 指定役務:第36類及び第41類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 オ 登録第3309847号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の態様:別掲2のとおり 登録出願日:平成4年9月24日 設定登録日:平成9年5月23日 指定役務:第41類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 カ 登録第5078584号商標(以下「引用商標6」という。) 商標の態様:別掲3のとおり 登録出願日:平成18年7月31日 設定登録日:平成19年9月21日 指定役務:第41類及び第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 キ 登録第5779077号商標(以下「引用商標7」という。) 商標の態様:別掲3のとおり 登録出願日:平成26年9月6日 優先権主張日:2014年(平成26年)8月7日(ジャマイカ) 設定登録日:平成27年7月17日 指定役務:第36類及び第41類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 ク 国際登録第946932号商標(以下「引用商標8」という。) 商標の態様:別掲3のとおり 国際商標登録出願日:2016年(平成28年)9月23日(事後指定) 設定登録日:平成29年3月10日 指定役務:第35類、第41類及び第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの役務 ケ 国際登録第1581257号商標(以下「引用商標9」という。) 商標の態様:別掲4のとおり 国際商標登録出願日:2020年(令和2年)9月18日 優先権主張日:2020年(令和2年)3月20日(Jamaica) 設定登録日:令和4年8月5日 指定役務:第38類、第41類、第42類及び第45類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの役務 (2)また、同じく申立人が、登録異議の申立ての理由において引用する商標は、「Apple」(以下「引用商標10」という。なお、引用商標1ないし引用商標10の商標をまとめていうときは「引用商標」という。)の欧文字からなる商標である。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきである旨申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)申立人及び引用商標1ないし引用商標5及び引用商標10(以下、これらをまとめていうときは「引用商標A」という。)の使用について ア 米国カリフォルニア州に本社を置く申立人は、世界的に有名なテクノロジー企業である。申立人は、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、タブレット、ウェアラブルデバイス及びそれらの部品・付属品を設計、製造、販売しており、さまざまな関連サービスも提供している。 申立人の製品及びサービスには、タブレット型コンピュータ「iPad」、携帯情報端末「iPhone」、ワイヤレスイヤホン「AirPods」、コンピュータ「Mac」、身体に装着可能な携帯情報端末「Apple Watch」、デジタルメディア配信サービス「Apple TV」、スピーカー「HomePod」、消費者向けのソフトウェアアプリケーション「iOS」「macOS」、「tvOS」、オペレーションシステム「watchOS」、クラウドサービス「iCloud」、音楽配信プラットフォーム「Apple Music」、電子決済サービス「Apple Pay」、及びさまざまな部品・付属品、サポートの提供が含まれる。 申立人は、App Store、Apple TV、Apple Books、Apple Music、及びApple Podcastsを通じてデジタルコンテンツとアプリケーションの配信も行っている。 申立人は、インターブランド社による「世異の最も価値あるブランドランキング」で、2012年から11年連続で首位を獲得するなど、高い知名度を誇っている(甲3、甲4)。申立人は、同ランキングで、2023年のブランド価値は5026億8000万ドルと評価されており、初めて5000億ドルを突破したブランドとして注目を集めた(甲5、甲6)。 申立人は、1976年に設立した米国企業であるところ、設立以来、その社名の略称として引用商標Aの文字を使用している(甲7)。 申立人は、申立人製品を、公式ウェブサイトを通じてオンラインにより全国規模で販売している(甲8)。加えて、申立人が運営する店舗(アップルストア)は日本全国で10店舗あり(甲9)、その他にもコンピュータやOA機器を販売する家電量販店、携帯電話販売店で申立人の製品は販売されている(甲10)。申立人製品を販売する他者店舗も、申立人製品を表すのに引用商標Aを使用している(甲10)。 このように、「Apple」の語は、申立人、申立人製品・サービス、及び申立人ブランドを表す語として、取引者・需要者に認知されている。 イ 広告宣伝 申立人は、広告宣伝費については公表していないが、申立人の商品はテレビ及びネットのコマーシャルで頻繁に放送されていることは周知の事実である。なお、テレビ放送されたコマーシャルはYouTubeでみることができ、申立人の日本法人であるApple Japan合同会社が日本向けのYouTubeでチャンネルを開設している。 チャンネル登録者数は60万人を超えており、公式ページにも「Apple」の語が、申立人の略称として使用されている(甲11)。 当該チャンネルにおいて、申立人の製品・サービスの広告宣伝が行われている。 ウ 申立人の売上 申立人の財務報告書によると、日本での純売上は、2023年 24,257,000,000米ドル(約3兆5千万)、2022年 25,977,000,000米ドル(約3兆8千万円)、2021年 28,482,000,000米ドル(約4兆2千万円)である(甲12)。この数字を見ても、申立人の製品が日本で広く取引されていることは明らかである。 エ 引用商標Aの周知著名性 引用商標1及び引用商標2は、特許庁の「日本国周知・著名商標検索」に掲載されている事実からも、その著名性は確認できる。 引用商標3は、「APPLE」の欧文字を標準文字で横書きして成り、引用商標4及び引用商標5は、普通のブロック体風の書体からなるところ、引用商標1及び引用商標2と同一の文字構成からなる。また、引用商標Aは、申立人の略称と同一の文字構成からなる。 上記のとおり、「APPLE」の文字が申立人の略称及び申立人製品・サービスを表すものとして認知され、かつ、日本でも周知・著名商標として認定されていることから、引用商標3ないし引用商標5も、申立人及び申立人製品・サービスを表すものとして周知・著名といえる。 オ 申立人のフィットネス事業について 申立人は、電子機器の製造販売、音楽・映画の配信事業等に加えて、フィットネス事業も展開している。 例えば、申立人は、歩数、消費カロリー、運動時間等を記録・共有するアプリケーション「フィットネス」を提供している(甲13)。当該アプリケーションは、申立人の製品「iPhone」及び「AppleWatch」に搭載されており、これらの機器の利用者には馴染みのあるアプリケーションである(甲14)。 また、申立人は、米国・英国・オーストラリア等で、ヨガ、筋カトレーニング等の画像・動画を配信するサブスクリプションサービス「Apple Fitness+」の提供を行っている。当該サービスについて申立人の日本版ウェブサイトで紹介されていることもあり(甲15)、日本でも話題となった(甲16)。また、申立人は、サービス「Apple Fitness+」について、日本でその名称に係る商標登録を保有している(甲2)。 このように、申立人がフィットネス関連の商品・サービスを提供していることは、広く知られた事実である。 (2)第4条第1項第11号 本件商標は、別掲1のとおり、りんごの図形の中に二人の人物を描いた図形の下に「AppleGYM」の欧文字を配した構成からなる。本件商標中、りんご図形部分と文字部分は、いずれも重なることなく間隔を空けて配置されているから、それぞれが、視覚上、分離して看取、把握され得るものである。 そして、本件商標中、「Apple GYM」の文字は、「Apple」と「GYM」の欧文字を結合させてなるところ、その構成中の「GYM」の欧文字は、「体育館、ジム、(学科としての)体育、体操」の意味を有し(甲17)、「室内トレーニング施設」等の意味で日本語でも親しまれている語である(広辞苑第七版)。 実際に、「GYM」の欧文字を使用して、運動施設の提供が行っている実情もある(甲18)。 「GYM」の語が有する意味に加え、このような取引実情を考慮すると、本件商標中、「GYM」の文字部分は、本件商標の指定役務との関係においては、単にその役務の内容を表したものにすぎず、出所識別標識としての機能を発揮し得ないものである。 他方、本願商標の構成中の「Apple」の欧文字は、「リンゴ」を表す英単語であるところ(甲19)、本件商標の指定役務との関係で、その役務の提供の場所・質等を表示するものではなく、役務の出所識別標識としての機能を発揮し得るものである。加えて、上記のとおり、「Apple」の欧文字は、申立人・申立人の製造・サービスを表示する周知著名な商標である。 そうすると、本件商標中、「GYM」の欧文字部分は、出所識別標識としての称呼、観念が生じないものであり、他方、「Apple」の欧文字部分は、役務の出所識別力として強く支配的な印象を与える部分であるから、引用商標Aとの類否を判断するにあたって、本願商標の構成中、「Apple」の欧文字を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することは、最高裁判例に照らして許される。 そこで、本件商標の要部「Apple」と引用商標3ないし引用商標5の類否を検討すると、両者は同一の文字からなるものであり、外観上、実質的に同一の印象を与え、称呼においても「アップル」で共通する。そして、「アップル」は、リンゴを表す英単語であることから(甲19)、両者は「リンゴ」の観念で共通する。 したがって、本件商標と引用商標3ないし引用商標5は、外観、称呼、観念を総合的に考慮すると、相紛れるおそれが十分にある類似の商標である。 本件商標と引用商標3の指定役務は、第41類「41A03 41E05 41F06 41J01」の範囲で抵触している。なお、指定役務「運動施設の提供」は、41JO1の範囲に属する役務である。 本件商標と引用商標4の指定役務は、第41類「41A01 41A03 41E05 41F01 41F06」の範囲で抵触している。 本件商標と引用商標5の指定役務は、第41類「41A03 41F06」の範囲で抵触している。 したがって、本件商標と引用商標3ないし引用商標5の指定役務が同一又は類似であることは明白である。 以上のとおり、本件商標は、引用商標3ないし引用商標5の指定役務と類似の役務を含むものであり、かつ、これらと類似するものであるから、本件商標がその指定役務に使用された場合、需要者間で誤認混同が起きるおそれがあることは明らかである。 本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。 (3)商標法第4条第1項第15号 上記で述べたように、「APPLE」、「Apple」の欧文字は、申立人の著名商標である。つまり、本件商標は、他人の著名な商標と他の文字を結合させたものであり、審査基準に照らせば、本件商標は、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」と認定されるべきものである。 申立人は、1976年の創業から現在に至るまで、上下にくぼみのあるりんごの図形を会社のロゴマークとして使用し、商標登録も保有しているところ(引用商標6ないし引用商標8(以下、これらをまとめていうときは「引用商標B」という。))、申立人による引用商標Bの長期的な継続的使用から引用商標Bは申立人のロゴマークとして需要者に認知されている。 そこで、本件商標についてみると、本件商標は、上下にくぼみのあるりんごの図形を含んでいる。 このような、本件商標が、著名な引用商標Aと同一の「Apple」の文字を有する点に加えて、申立人の著名なロゴマークと共通の特徴を持つりんごの図形を含んでいる点を考慮すると、本件商標に接する需要者は、申立人・申立人ブランドを想起するおそれがある。 また、本件商標が使用されると、出所の混同が生じるおそれや、異議申立人から公認を受けているとの誤認あるいは、異議申立人の引用商標Aの希釈化・汚染化が生じるおそれがあることは明らかである。 ア 本願商標とその他人の標章との類似性の程度 本件商標と引用商標Aの類似性が高いことは上記のとおりである。 イ その他人の標章の周知度 申立人の引用商標Aが非常に高い著名性を有することは、上記で述べたとおりである。 ウ その他人の標章が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるか 引用商標Aは、果物のりんごを表す英単語であるところ、それを何ら関連のないコンピュータ等の電子製品を主に製造・販売する社名に取り入れている点で独創性がある。 エ その他人の標章がハウスマークであるか 引用商標A、申立人の社名の略称である。 オ 企業における多角経営の可能性 申立人は、コンピュータ、スマートフォンの分野以外にもさまざまな事業分野で商品・役務展開している。例えば、音楽配信サービス「Apple Music」、映像のストリーミングサービス「Apple TV」、電子決済サービス「Apple Pay」の他、フィットネス事業、ヘルスケア事業も展開している。 したがって、多角経営の可能性は十分に認められる。 カ 商品間、役務間又は商品と役務間の関連性 本件商標と引用商標3の指定役務は、第41類「41A03 41E05 41F06 41J01」の範囲で抵触している。また、申立人は、フィットネス事業も展開している。 したがって、役務間の関連性は認められる。 キ 商品等の需要者の共通性その他取引の実情 上記のとおり、本件商標の指定役務は、引用商標3の指定役務と同一又は類似のものを含むため、共通の需要者が存在することは当然に認められる。 以上より、本件商標が、申立人の著名商標と同一の文字を含み、その周知著名性から需要者等は本件商標から、申立人・申立人ブランドを想起させるおそれがあることは明らかである。 また、本件商標がその指定役務に使用されると、申立人から公認を受けているとの誤認あるいは、申立人の引用商標Aの希釈化・汚染化が生じるおそれがある。 ク むすび 以上、述べたとおり本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、本件商標登録は同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知著名性 ア 申立人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。 (ア)申立人は、1976年に設立された、米国カリフォルニア州に本社を置くテクノロジー企業であり、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、タブレット、ウェアラブルデバイス及びそれらの部品・付属品(以下「申立人商品」という。)の設計、製造の販売、及び音楽配信プラットフォーム等を通じてデジタルコンテンツ等の配信を行っている。 (イ)申立人のウェブサイト等において、「Appleの連絡先」のように、「Apple」の文字が、申立人の略称として使用されている(甲7)。 (ウ)「Apple」の文字と共にりんごの図形が申立人商品に使用されている(甲10、甲11、甲13) (エ)「世界の最も価値あるブランドランキング」(2023年)において、「Apple」が11年連続で首位を獲得し(甲4)、同ランキングにおいて、ブランド価値が5000億ドルを突破した初めてのブランドであるとされた(甲6)。 (オ)申立人商品は、申立人が運営する公式ウェブサイト及び店舗(アップルストア)の他にもコンピュータやOA機器を販売する家電量販店、携帯電話販売店のウェブサイト等において販売され、申立人商品を表す際に「Apple」の欧文字が使用されている(甲8〜甲10)。 イ 上記アのとおり、「Apple」の文字は、我が国において、申立人の略称として使用され、ブランドのランキングにおいて、「Apple」が長年首位に位置していること、加えて、申立人の業務に係る申立人商品について、「Apple」の文字及びりんごの図形が使用されていることを踏まえれば、「Apple」とつづりを同じくする引用商標A及び当該文字をその構成中に含む引用商標9並びに引用商標Bは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係るスマートフォン、パーソナルコンピュータ、タブレット、ウェアラブルデバイス等の申立人商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたといい得るものである。 しかしながら、上記商品以外の商品及び役務については、引用商標の使用の態様、商標を使用した商品又は役務の我が国における市場占有率、広告宣伝の方法、範囲、回数等、周知著名性を判断するための客観的な事実を量的に把握することができる資料の提出はないから、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が上記商品以外の商品及び役務について、申立人の業務に係る商品及び役務を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く知られているとはいえない。 (2)商標法第4条第1項第11号該当性 ア 本件商標 本件商標は、別掲1のとおり、上段に黄色で表されたりんごをモチーフにした図形(以下「本件図形部分」という。)の中に二人の人物を描き、下段に「Apple GYM」の欧文字(以下「本件文字部分」という。)を配した構成からなるところ、両構成部分は、段を異にし、間隔を空けて配置されているから、視覚上分離して認識されるものであり、それぞれが独立した自他役務の出所識別標識として機能するものといえる。 そして、本件商標の構成中、本件文字部分は、上記のとおり「Apple GYM」と欧文字で書されてなるところ、その構成は、同書、同大でまとまりよく一体に表され、その構成文字に相応して生じる「アップルジム」の称呼もよどみなく一気に称呼し得る。 また、本願商標は、下段の「Apple」の文字部分は「りんご」の意味を、「GYM」の文字部分は「体育館」等の意味を有する英語(「ジーニアス英和辞典 第6版」大修館書店)であるとしても、両語を結合して具体的な意味を有する成語ではないから、直ちに特定の意味を生じない一種の造語といえる。 そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「アップルジム」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。 イ 引用商標3ないし引用商標5 (ア)引用商標3は、上記2(1)のとおり、「APPLE」の欧文字を標準文字で表してなり、当該文字に相応して、「アップル」の称呼及び「りんご」の観念を生じる。 (イ)引用商標4及び引用商標5 引用商標4及び引用商標5は、別掲2のとおり、「APPLE」の欧文字を書してなり、当該文字に相応して、「アップル」の称呼及び「りんご」の観念を生じる。 ウ 本件商標と引用商標3ないし引用商標5の類否 本件商標と引用商標3ないし引用商標5を比較すると、外観及び称呼においては、「GYM」の文字及び「ジム」の音の有無に差異を有するものであるから、両者は、その外観及び称呼において明確に区別し得るものであり、相紛れるおそれはない。 また、本件商標からは、特定の観念を生じないのに対し、引用商標3ないし引用商標5からは、「りんご」の観念が生じるから、観念においても相紛れるおそれはない。 そうすると、本件商標と引用商標3ないし引用商標5は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれはないから、非類似の商標というべきである。 エ 小括 したがって、本件商標と引用商標3ないし引用商標5は非類似の商標であるから、本件商標の指定役務が引用商標3ないし引用商標5の指定役務と同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性 ア 引用商標の周知著名性 上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係るスマートフォン、パーソナルコンピュータ、タブレット、ウェアラブルデバイス等の申立人商品について、取引者、需要者の間において広く知られているといえるものの、その他の商品及び役務については広く知られているものではない。 イ 本件商標と引用商標の類似性の程度 (ア)本件商標と引用商標Aの比較 本件商標は、上記(2)アのとおり、本件文字部分から「アップルジム」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。 他方、引用商標Aは、上記2(1)のとおり「APPLE」及び「Apple」の欧文字を書してなり、その構成文字に相応して「アップル」の称呼を生じ、申立人商品との関係においては、申立人のブランドとしての「APPLE」の観念を生じるが、その他の商品及び役務との関係においては、「りんご」の観念を生じるというのが相当である。 以上を踏まえて本件商標と引用商標Aを比較すると、外観及び称呼においては、「GYM」の文字及び「ジム」の音の有無に差異を有するものであるから、両者は、その外観及び称呼において明確に区別し得るものであり、観念においても相紛れるおそれはないから、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標といえる。 したがって、本件商標と引用商標Aは非類似の商標であるから、両者の類似性の程度は低い。 (イ)本件商標と引用商標Bの比較 本件商標は、上記(2)アのとおり、本件図形部分は、黄色で表されたりんごをモチーフにした図形の中に二人の人物が描かれてなるところ、これより特定の称呼及び観念は生じない。 他方、引用商標Bは、別掲3のとおり、右側が一部欠けたりんごをモチーフにした図形を黒塗りで描いてなるところ、これより特定の称呼及び観念は生じない。 そうすると、本件商標と引用商標Bを比較すると、外観は図形部分の構成態様が明らかに異なるから、相紛れるおそれはない。 次に、称呼及び観念においては、本件商標と引用商標Bはいずれも特定の称呼及び観念は生じないから、比較することはできない。 そうすると、本件商標と引用商標Bは、称呼及び観念において比較できないとしても、外観において互いの印象が明らかに異なり、相紛れるおそれのない非類似の商標といえる。 したがって、本件商標と引用商標Bは非類似の商標であるから、両者の類似性の程度は低い。 (ウ)本件商標と引用商標9の比較 本件商標は、上記(2)アのとおり、本件文字部分から「アップルジム」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。 他方、引用商標9は、「APPLE FITNESS+」と「APPLE FITNESS」の欧文字と「+」の記号からなるところ、「APPLE」の文字部分は「りんご」の意味を、「FITNESS」の文字部分は「健康(であること)」等の意味を有する英語(「ジーニアス英和辞典 第6版」大修館書店)であり、「+」は「加号または正の数の符号」(広辞苑第七版)の意味を有するとしても、各文字及び記号を結合して具体的な意味を有する成語等ではないから、直ちに特定の意味を生じない一種の造語といえる。 したがって、引用商標9は、その構成文字等に相応して「アップルフィットネスプラス」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。 以上を踏まえて本件商標と引用商標9を比較すると、外観においては、本件商標は「Apple GYM」と欧文字で書されてなり、引用商標9は「APPLE FITNESS+」の欧文字等を書してなるところ、両者は構成文字全体として異なる語を表してなるから、外観上相紛れるおそれはない。 また、称呼において、本件商標は「アップルジム」の称呼を生じ、引用商標9は「アップルフィットネスプラス」の称呼を生じるところ、両者より生ずる称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語調語感は異なり、称呼上相紛れるおそれはない。 さらに、観念においては、本件商標と引用商標9はいずれも特定の観念を生じないから、比較することができない。 そうすると、本件商標と引用商標9は、観念において比較できないとしても、外観においては構成する文字が明らかに相違し、称呼においても構成音及び構成音数により明らかに聴別できることから、相紛れるおそれのない非類似の商標といえる。 したがって、本件商標と引用商標9は非類似の商標であるから、両者の類似性の程度は低い。 ウ 本件商標の指定役務と申立人商品との関連性 本件商標の指定役務は、上記1のとおり、運動施設の提供,ヘルスクラブの提供(健康及びフィットネスのためのトレーニング),技芸・スポーツ又は知識の教授,個人指導(フィットネストレーニング),フィットネスの教授等であり、他方、申立人商品は、上記(1)のとおり、スマートフォンやパーソナルコンピュータ等のコンピュータ関連の商品であるところ、両者は事業者や用途、販売場所及び提供場所等において明らかに異なり、関連性があるとはいえない。 エ 出所の混同のおそれ 上記アないしウのとおり、引用商標は、申立人商品については周知性を有するが、その他の商品及び役務について周知性を有するものではない。加えて、本件商標は、引用商標とは類似性の程度が低く、本件商標の指定役務と申立人製品との関連性があるともいえない。 そうすると、本件商標をその指定役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起するとは考え難く、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であると誤認し、その役務の出所について混同を生じるおそれはないというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (3)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標。色彩は原本参照。) ![]() 別掲2(引用商標1、引用商標2、引用商標4及び引用商標5) ![]() 別掲3(引用商標6ないし引用商標8) ![]() 別掲4(引用商標9) ![]() (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2024-10-29 |
出願番号 | 2023028134 |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Y
(W41)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
旦 克昌 |
特許庁審判官 |
大島 勉 大島 康浩 |
登録日 | 2023-11-09 |
登録番号 | 6752556 |
権利者 | 株式会社REXIV |
商標の称呼 | アップルジム、アップル |
代理人 | 弁理士法人大島・西村・宮永商標特許事務所 |