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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 29 |
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管理番号 | 1416793 |
総通号数 | 35 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-11-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-05-06 |
確定日 | 2024-06-24 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 国際登録第1578190号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 国際登録第1578190号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件国際登録第1578190号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、2020年7月1日にBrazilにおいてした商標の登録出願に基づくパリ条約第4条による優先権を主張して、2020年(令和2年)12月17日に国際商標登録出願、第29類「Meat,namely,bologna.」を指定商品として、令和3年12月14日に登録査定がされ、同4年2月25日に設定登録されたものである。 第2 引用標章 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に該当するとして引用する標章は、「MORTADELLA BOLOGNA」の欧文字からなり、これは、申立人が製品の品質等を管理する豚肉から作られるソーセージの地理的表示である。 そして、イタリアのボローニャ地方の業者が同地特有の製法で生産したソーセージであるとして、これを使用する権利を有する申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたと主張するものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第27号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 「MORTADELLA BOLOGNA」について (1)本件商標に含まれている「BOLOGNA」の語は、イタリア北部に位置する、エミリア・ロマーニャ州の州都であり、最大の都市である「BOLOGNA(ボローニャ)」を表す語であるとともに、後述のとおり、わが国においては「ボローニャソーセージ」として知られる「MORTADELLA BOLOGNA」を表す語でもある。 ボローニャの郷土料理には「ボロネーゼ」や「ボローニャ風ラザニア」など、有名なものが多数あるが、なかでも豚肉から作られたソーセージ「MORTADELLA BOLOGNA」はボローニャを代表するものとして特に有名である。 「MORTADELLA BOLOGNA」は、ボローニャ地方を起源とするソーセージであり、その地にオークが豊富にあり、ドングリを与えられた豚が多く生息していたからこそ同地域で誕生し得たといわれる産品である。その歴史は極めて古く、ボローニャ歴史博物館に展示されている、片面に放牧されている7頭の豚が、もう片面に乳鉢と乳棒が描かれている古代ローマ時代の石碑が「MORTADELLA BOLOGNA」の生産者による最初の証言であるとされており、遅くとも同時代には「MORTADELLA BOLOGNA」が生産されていたことが窺える。 1661年には、「MORTADELLA BOLOGNA」の生産方法を成文化した「Bando」と呼ばれる当時の法律文書が採択され、これが今日における「MORTADELLA BOLOGNA」と同様の生産基準を示した最初の法律文書であるといわれている。 以上のとおり、「MORTADELLA BOLOGNA」は、ボローニャ地方の自然環境や地理的特徴によって誕生した地域特有の産物であるとともに、遅くとも1661年以降、徹底的に管理された同じ生産基準に従って今日まで生産され続けてきたイタリアの歴史的産物ともいい得るものである。 (2)「MORTADELLA BOLOGNA」に係る地理的表示保護 ア EUにおける保護 EUでは、農産品・食品の名称を保護するための制度として、地理的表示(GI)保護制度が1992年に施行されている。そのうち、地理的表示保護(Protected geographical indication:以下「PGI」という。)は、生産地とのつながりを持つ品質等の特性を有する農林水産物・食品の名称が保護の対象となる(甲6)。 「MORTADELLA BOLOGNA」は、1998年7月、欧州委員会により農産物及び食品の地理的表示及び原産地名称の保護に関する1992年7月14日付理事会規則(EEC)第2081/92号に基づきPGIとして指定された(甲7、甲8)。これにより、第三者機関によって明細書への適合が確認された生産者のみが、「MORTADELLA BOLOGNA」との表示を用いることができるようになった。 「MORTADELLA BOLOGNA」との表示は、原産地及び品質について極めて厳しい基準を満たし、公的に保護された商品についてのみ使用が許されるものであるうえ、かかる規則への遵守は、イタリア農業省の管理局である農産加工品品質保護・不正防止中央監査機関(以下「ICQRF」という。)によって厳格に審査されるとともに、ICQRFによる日本を含む世界中での徹底した監視及び地理的表示侵害品の取締りなどによって担保されている。 イ 経済連携協定による保護 日本とEUは、相手国の地理的表示を相互に高いレベルで保護することを目的として、経済連携協定(以下「EPA」という。)の交渉を開始し、2019年2月に発効した。日本国内で保護する必要があるEU側の地理的表示71品目には、イタリアの「モルタデッラ・ボローニャ(肉製品)」が明確に含まれている(甲11)。 ウ 日本の地理的表示保護制度による保護 わが国においても、平成26年、第186回通常国会で「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」(以下「地理的表示法」という。)が成立し、日本とEUとの間のEPAを踏まえて、EUで地理的表示として保護される産品については、協定発効日である2019年2月1日より日本においても地理的表示として保護されることになった。これに従い、同日付けで、「MORTADELLA BOLOGNA」は地理的表示法に基づく地理的表示として指定され、日本においても保護の対象となるに至った(甲12)。 エ 小括 以上のとおり、「MORTADELLA BOLOGNA」との表示は、欧州委員会においてPGIとして登録され、同国の組織であるICQRFによって地理的表示侵害品に対する徹底した監視が行われるだけでなく、日本との経済連携において日本市場でも保護の対象となり、日本の地理的表示法に基づく保護対象として指定されている。このように、各国における地理的表示保護制度等を通じて、「MORTADELLA BOLOGNA」表示の信頼性や評判及びその生産者等の利益は保護されているのである。 (3)申立人による活動(甲2) 申立人は、2001年に設立され、「MORTADELLA BOLOGNA」の品質基準が高いことを保証し、全ての生産者に経験や専門的な技術に応じて向上する機会を提供している。そして、2004年以降、申立人はイタリア農業省から、製品の販売促進と保護、消費者への情報提供という公的権限を行使する役割を与えられている。 申立人は「MORTADELLA BOLOGNA」の保護を強化するため、対象となる市場において「BOLOGNA」という名称を団体商標又は認証商標として登録することを求めており、日本においても、「MORTADELLA BOLOGNA」の文字を含む商標につき国際商標登録を行っている(甲13、甲2)。 現在、申立人には多くの生産企業が参加しており、これらの企業によって「MORTADELLA BOLOGNA」のおよそ95%が生産されている(甲14)。 また、申立人は国際的なプロモーションプロジェクトも行っており、その一環として、2018年9月以降、日本においても申立人を含む3つのコンソーシアムが合同で、「Arigat−EU(アリガテウ)」プロジェクトを行っている(甲15〜甲18)。 (4)日本における「MORTADELLA BOLOGNA」の通称である「ボローニャソーセージ」の周知著名性 上述のとおり、「MORTADELLA BOLOGNA」はイタリアのボローニャ地方で古くから生産され、イタリアのみならず世界各国でも食されてきた。わが国においても、「MORTADELLA BOLOGNA」は広く流通しており、特に近年におけるイタリアからの「MORTADELLA BOLOGNA」の輸入量は年間40〜50トン(2018年〜2020年)にも上る程である(甲2)。「MORTADELLA BOLOGNA」は各国において呼び名が異なり、日本においては、その発祥の地である「BOLOGNA」から、主に「ボローニャソーセージ」との名称でも広く親しまれている。 このように、わが国においては、「ボローニャソーセージ」との表示は、「イタリアのボローニャ地方において、従来の製法に従って生産された一定の品質を備えたソーセージ」こと「MORTADELLA BOLOGNA」を表すものであることは、過去の判決(「「BOLONIA(ボロニア)」は、イタリアの地方・都市名であり、ボロニア地方が起源とされているボロニアソーセージが知られている」との記載。甲19の1、甲19の2)、辞書(「ボロニア・ソーセージ、イタリア、ボロニア地方の特産品」、「モルタデッラ【Mortadella(Bologna PGI)】日本でボロニアソーセージというとこのソーセージを指すことが多い。」等の記載。甲19の3、甲19の4)、その他多数の書籍やインターネット上の記事(「日本でボローニャソーセージと言われるボローニャの特産「モルタデッラ」」、「ボローニャソーセージ「モルタデッラ」」等の記載。甲19の7、甲19の9)、SNSにおける投稿(「モルタデッラ(ボローニャソーセージ)」等の記載。甲19の11、甲19の12、甲19の15〜甲19の21、甲19の23〜甲19の27)等からも明らかである。 (5)小括 我が国においては「ボローニャソーセージ」との表示は、イタリアのボローニャ地方の業者が、同地特有の製法で生産し、販売しているソーセージとしての、自他商品識別力、出所表示機能や広告機能があり、これを消費者からみれば、イタリアのボローニャ地方の業者が同地特有の製法で生産したソーセージであるとの品質保証機能も備えるものであり、また、その周知著名性は現在に至るまで保たれ続けている。 2 商標法第4条第1項第7号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、球形デザインの周囲の3/4の境界線に囲まれた経線を有する円形の球形表現を介して、アーチ形の欧文字「BOLOGNA」を書してなり、球形デザインの上部に湾曲した台形、三角形、円形を有し、球形デザインの下部に湾曲した帯の下に「CCFN」という欧文字を有する商標であるところ、本件商標はその構成中に、周知著名なソーセージの名称として日本でも認識されている「BOLOGNA」の欧文字を含み、かかる部分から生ずる称呼も、わが国において「イタリアのボローニャ地方において、従来の製法に従って生産された一定の品質を備えたソーセージ」として周知著名なソーセージの名称である「ボローニャソーセージ」との表示のうち識別力を有する「ボローニャ」部分と同一のものである。 また、本件商標は中央に「BOLOGNA」、下部に「CCFN」と記載されているから、視覚上「BOLOGNA」と「CCFN」の部分に分離して認識される外観的要素があるだけでなく、上述のとおり、「BOLOGNA」は周知著名なソーセージの名称と理解し認識するものである。これに対し、「CCFN」は、アメリカ合衆国バージニア州に所在する国際的な非営利団体「The Consortium for Common Food Names」の略称であって、日本においては「CCFN」の略称ないし団体は一般には知られておらず、特定の観念を生じない名称であるから、本件商標において取引者・需要者の注意を引くのはあくまでも、「BOLOGNA」の欧文字部分である。 上述のとおり、わが国においては、ソーセージについて「BOLOGNA」との表示が使用されれば、格別の打消表示等がない限り、需要者において「イタリアのボローニャ地方において、従来の製法に従って生産された一定の品質を備えたソーセージ」こと「MORTADELLA BOLOGNA」を表すものと理解、認識するものである。そして、わが国において「BOLOGNA」から理解し、認識されるソーセージ「ボローニャソーセージ」こと「MORTADELLA BOLOGNA」は、スーパーマーケットで一般に販売されている商品であるところ、スーパーマーケットなどにおける主な需要者は、必ずしも商標について詳細な知識を持たない一般消費者である。こうした一般消費者は、商品の購入や役務の提供を受けるに際して、メーカー名等について常に注意深く確認するとは限らないことからすれば、商品購入時に払う注意力は高いものではなく(知的高等裁判所平成17年4月13日判決(平成17年(行ケ)第10230号)、甲23)、商標構成中の覚えやすく親しみやすい印象及び過去に購買した際の記憶に基づいてその商品又は役務を選択ないし購買する。 そうすると、本件商標に接した取引者・需要者が有する通常の注意力としては、「BOLOGNA」の部分に強く印象付けられることは明らかであり、ここから、「イタリアのボローニャ地方において、従来の製法に従って生産された一定の品質を備えたソーセージ」こと「MORTADELLA BOLOGNA」と何らかの関係がある商標という印象をもって取引に当たると考えられるから、「BOLOGNA」が目立つ態様で表示された本件商標を付した商品が市場に流通すれば、需要者は「イタリアのボローニャ地方において、従来の製法に従って生産された一定の品質を備えたソーセージ」こと「MORTADELLA BOLOGNA」と何らかの関連を有する商品と期待(誤信)して購入するなど、市場における混乱が生じることは避けられない。 (2)本件商標が国際信義に反すること 上記のとおり、「MORTADELLA BOLOGNA」との表示は、欧州委員会においてPGIとして登録され、同国の組織であるICQRFによって地理的表示侵害品に対する徹底した監視が行われるだけでなく、日本との経済連携において日本市場でも保護の対象となり、日本の地理的表示法に基づく保護対象として指定されるに至っており、このようなPGIの厳格な審査過程や国際外交等のプロセスを経たうえで獲得・維持された、各国における地理的表示保護制度等を通じて、「MORTADELLA BOLOGNA」表示の信頼性や評判及びその生産者等の利益は保護されている。 わが国において「ボローニャソーセージ」との表示は、「イタリアのボローニャ地方において、従来の製法に従って生産された一定の品質を備えたソーセージ」こと「MORTADELLA BOLOGNA」を表すものとして、自他商品識別力、出所表示機能や広告機能、品質保証機能も備えるとともに、その周知著名性は現在に至るまで保たれ続けている。 他方、CCFNは、欧州委員会が、地理的表示による保護を悪用して、食品の一般的な名称についてまで管理しようとしているとして(甲24)、世界中で地理的表示名称の商標出願を行っている(甲25)。このような権利者の性質からすれば、本件商標の出願及び登録も、「BOLOGNA」が特定の食品を指す一般名称であることを前提として、地理的表示保護制度に対抗する活動の一環としてなされたものであることは明らかである。 したがって、本件商標が日本国において登録を認められるような事態となれば、本来は、PGIによる保護を維持するための品質等に関する基準を満たさず、「MORTADELLA BOLOGNA」との表示を使用したソーセージを生産する資格を有さない者に対して、「イタリアのボローニャ地方において、従来の製法に従って生産された一定の品質を備えたソーセージ」こと「MORTADELLA BOLOGNA」を表すものとしてわが国の取引者、需要者の間で理解、認識される「ボローニャソーセージ」との表示のうち識別力を有する「ボローニャ」部分と実質的に同一である「BOLOGNA」との表示に化体する名声・信用へ便乗することを認めることになるばかりか、「BOLOGNA」の文字を手掛かりにソーセージを購入する需要者及び取引者において、本件商標が付された商品があたかも「イタリアのボローニャ地方において、従来の製法に従って生産された一定の品質を備えたソーセージ」こと「MORTADELLA BOLOGNA」と何らかの関連があると期待(誤信)して購入に至り、その結果、需要者の期待は裏切られ、「MORTADELLA BOLOGNA」の品質についての信用は失墜することにもなりかねない。 このような事態をも招きかねない本件商標のわが国における登録は、こうした表示に関してイタリア政府が国を挙げて取り組んでいる統制ないし歴史を全く理解していないか、又は極めて軽視ないしは無視したものであるのみならず、イタリアにおける「MORTADELLA BOLOGNA」の生産者の利益を害するとともに、上記1(1)のとおり、同国において歴史的・文化的所産とも捉えられる「MORTADELLA BOLOGNA」に対してイタリア国民が抱いている誇りや名誉といった国民感情を蔑にし、国際協定に反する行為といわざるを得ない。 さらに、「MORTADELLA BOLOGNA」がわが国においては「ボローニャソーセージ」として知られていることからすれば、本件商標はPGI及びEPAのみならず日本の地理的表示法で保護されている「MORTADELLA BOLOGNA」を事実上、冒用することにもなりかねず、まさにわが国が、これからの日本の産業の活性化のために、政策として採用した「地理的表示保護制度」と真っ向から対立するものである。すなわち、特許庁において、「MORTADELLA BOLOGNA」と何らかかわりのない商標権者により出願された本件商標について登録を与え、これを維持するとすれば、地域ブランドの活性化を図るため、基準を満たした産品についてのみ登録を与え、産品の適切な評価を維持し、財産的価値の維持向上及び需要者が抱く産品への信頼の保護の実現を目的とする「地理的表示保護制度」の趣旨を没却することにほかならない。 したがって、商標権者が出願した本件商標に登録を与え、これを維持することは、国際信義上不適切であり、社会公共の利益に反するうえ、地理的表示法の目的達成を妨げるものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)「ボローニャソーセージ」の周知著名性 上記1(4)のとおり、わが国においては、「ボローニャソーセージ」との表示は、「イタリアのボローニャ地方において、従来の製法に従って生産された一定の品質を備えたソーセージ」こと「MORTADELLA BOLOGNA」を表すものとして周知著名なものとなっていることは明らかである。 (2)本件商標と「ボローニャソーセージ」との類似性の程度 上記2(1)のとおり、本件商標において取引者・需要者の注意を引くのは「BOLOGNA」の部分であるところ、同部分は上記「ボローニャソーセージ」との表示のうち識別力を有する「ボローニャ」部分を欧文字で表記したものであって実質的に同一である。したがって、本件商標と「ボローニャソーセージ」の類似性は極めて高い。 (3)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性 本件商標の指定商品である「Meat,namely,bologna.」については、具体的にどのような商品を指すものとして商標権者において指定されたものであるかは定かではないが、上記2(2)で述べた商標権者の性質や本件商標の出願及び登録の意図に鑑みれば「MORTADELLA BOLOGNA」と関連性が高いものであり、需要者の範囲も一致することが強く推認される。 (4)需要者において普通に払われる注意力 上記2(1)のとおり、わが国において「BOLOGNA」から理解し、認識されるソーセージ「ボローニャソーセージ」こと「MORTADELLA BOLOGNA」は、スーパーマーケットで一般に販売されている商品であるところ、スーパーマーケットなどにおける主な需要者は、必ずしも商標について詳細な知識を持たない一般消費者である。こうした一般消費者は、商品の購入や役務の提供を受けるに際して、メーカー名等について常に注意深く確認するとは限らないことからすれば、商品購入時に払う注意力は高いものではなく(平成17年(行ケ)第10230号、甲23)、商標構成中の覚えやすく親しみやすい印象及び過去に購買した際の記憶に基づいてその商品又は役務を選択ないし購買する。 (5)小括 以上より、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者・需要者としては、「イタリアのボローニャ地方において、従来の製法に従って生産された一定の品質を備えたソーセージ」こと「MORTADELLA BOLOGNA」を想起・連想し、あたかも申立人が取り扱う業務に係る商品であるか、あるいは申立人又はその構成員が承認したものであるか、あるいは申立人と業務上あるいは組織上何らかの特殊な関係がある団体又は企業体が提供する商品であるかの如く認識して取引にあたると考えられるため、その出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。 よって、本件商標は、申立人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがあることは明らかであるので、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 第4 当審の判断 1 引用標章について (1)申立人の主張及び同人が提出する証拠並びに職権調査によれば、以下のとおりである。 ア 申立人について 申立人は、2001年に設立され、「MORTADELLA BOLOGNA」の品質基準を保証し、全ての生産者に経験や専門的な技術に応じて向上する機会を提供している。2004年以降は、イタリア農業省から、製品の販売促進と保護、消費者への情報提供という公的権限を行使する役割を与えられている(甲2)。そして、申立人には多くの生産企業が参加し、これらの企業によって「MORTADELLA BOLOGNA」の95%を生産(甲14)、「Arigat−EU(アリガテウ)」プロジェクト等の国際的なプロモーションプロジェクトも行っている(甲14〜甲18)。 イ 「BOLOGNA」及び「MORTADELLA BOLOGNA」について 「BOLOGNA」の語は、イタリア北部に位置する、エミリア・ロマーニャ州の州都であり、最大の都市である「BOLOGNA(ボローニャ)」を表す語である。「MORTADELLA BOLOGNA」は、ボローニャ地方を起源とするソーセージであり、その地にオークが豊富にあり、ドングリを与えられた豚が多く生息していたからこそ同地域で誕生した産物であり、1661年には、「MORTADELLA BOLOGNA」の生産方法を成文化した法律文書が採択され、これ以降、徹底的に管理された同じ生産基準に従って今日まで生産され続けてきたイタリアの歴史的産物である(甲2、申立人主張)。 ウ 地理的表示としての保護について (ア)EUによる保護 「MORTADELLA BOLOGNA」は、1998年7月、欧州委員会によりPGIとして指定された(甲7、甲8)。これにより、第三者機関によって明細書への適合が確認された生産者のみが、「MORTADELLA BOLOGNA」との表示を用いることができるようになった(申立人主張)。 (イ)日本における保護 日本とEUは、2019年2月にEPAを発効した。EPAによって日本国内で保護する必要があるEU側の地理的表示71品目には、イタリアの「モルタデッラ・ボローニャ(肉製品)」が含まれている(甲11)。 また、日本とEUとの間のEPAを踏まえて、EUで地理的表示として保護される産品の「MORTADELLA BOLOGNA」は、協定発効日である2019年2月1日より地理的表示法に基づく地理的表示として指定され、日本においても保護の対象となるに至った(甲12)。 エ 「MORTADELLA BOLOGNA」の流通について 日本において、「MORTADELLA BOLOGNA」は広く流通しており(申立人主張)、特に近年におけるイタリアからの「MORTADELLA BOLOGNA」の輸入量は年間40〜50トン(2018年〜2020年)ほどである(甲2)。 オ 過去の判決、辞書やインターネット情報等における掲載状況について (ア)過去の判決では、「BOLONIA(ボロニア)」の(文字)部分は、「イタリアの地方・都市名であり、ボロニア地方が起源とされている「ボロニアソーセージ」が知られている。」(甲19の1、甲19の2)と判示されている。 (イ)「コンサイスカタカナ語辞典 第4版」(2014年5月10日株式会社三省堂発行)やウェブサイトの辞典では、「ボロニア・ソーセージ[bologna sausage]」は、「イタリア、ボロニア地方の特産品」であること、「モルタデッラ【Mortadella (Bologna PGI)】」は、「日本でボロニアソーセージというとこのソーセージを指す」(甲19の3〜甲19の5)旨記載されている。 (ウ)各種ウェブサイトでは、「「モルタデッラ」は、ボローニャ原産のソーセージ」(甲19の6、甲19の8)、「日本でボローニャソーセージと言われるボローニャの特産「モルタデッラ」」(甲19の7)、「「モルタデッラ」とはエミリア・ロマーニャ州の州都であるボローニャ地方で作り継がれているソーセージ」(甲19の10)の記載がある。 (エ)SNSでは、「モルタデッラ」は「ボローニャソーセージ」のことであることが記載されている(甲19の11〜甲19の27)。 (オ)「bologna」の見出しの下「ボローニャ(ソーセージ)《牛・豚肉の大型ソーセージ》」の記載がある(職権調査 [新英和(第7版)・和英(第5版)中辞典 株式会社研究社])。 (カ)「ボロニアソーセージ(Bologna sausage)の見出しの下、「子牛肉、豚の脂などから作る大形のスモークソーセージ。」の記載がある(職権調査 デジタル大辞泉https://kotobank.jp/word/%E3%83%9C%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%A3%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%82%B8−631803#w−631803)。 (キ)「ボロニアソーセージ bologna sausage」の見出しの下、「イタリアのボロニア地方が起源とされているソーセージ。薫煙、湯煮する。食肉以外の可食部を加えて作る場合もある、大型のソーセージ。イタリアではこの名称は用いられていない。」の記載がある(職権調査 公益財団法人日本食肉消費総合センターウェブサイト http://www.jmi.or.jp/info/word/ha/ha_187.html)。 (ク)ソーセージの日本農林規格(食品の製品の品質、成分などを平準化するために規定されているもの)第2条に「用語「ボロニアソーセージ」、定義「ソーセージの項・・・牛腸を使用したもの又は製品の太さが36mm以上のもの・・・をいう。」との記載があり、第3条に「ボロニアソーセージ、フランクフルトソーセージ及びウインナーソーセージの規格は、次のとおりとする。」として、原材料や添加物等について規格を定めている(職権調査 農林水産省のウェブサイト https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/kikaku_04_soseji_160224.pdf )。 (ケ)食品表示法(消費者が安全で身体によい食品をわかりやすく選べるように、食品の安全性や機能性に関する表示について定めた法律)の別表第三(第2条関係)によれば、食品「ソーセージ」、用語「ボロニアソーセージ」の定義として、一「・・・牛腸を使用したもの又は製品の太さが三十六ミリメートル以上のもの(豚腸を使用したもの及び羊腸を使用したものを除く。)」、二 「Mortadella Bologna」(モルタデッラボローニャ(その他これの翻訳又はこれを意味するものを含む。))と表示されたもの」との記載がある。(職権調査 https://elaws.e−gov.go.jp/document?lawid=427M60000002010) (コ)「ソーセージの仲間」の見出しの下、「ボロニアソーセージ」として、「ひき肉などを調味し、牛の腸に詰めて加工したものです。人工のケーシングに詰めた場合は、製品の太さ(直径)が36mm以上のものです。」との記載がある(職権調査 日本ハム・ソーセージ工業協同組合のウェブサイト https://content.hamukumi.or.jp/jiten/)。 (サ)ハム・ソーセージを取り扱う業者のウェブサイトにおいて、商品名として「ボロニアソーセージ」が使用されている事例(職権調査) a 日本ハム株式会社のウェブサイト 「便利さが好評の「もう切ってますよ!」シリーズを拡充!「もう切ってますよ!ボロニアソーセージ」2月20日(木)新発売」の見出しの記事に「※ボロニアソーセージとは JAS法でボロニアソーセージは、豚などの畜肉類を塩せきした後ひき肉とし、香辛料や食品添加物を加えて混ぜ合わせ、牛腸または太さが36mm以上の人工ケーシングに詰めて、くん煙(またくん煙しないで)加熱した製品と、規定されています。」との記載がある。 https://www.nipponham.co.jp/news/2014/20140219_2/ b 伊藤ハム株式会社のウェブサイト 「朝のグルメファミリー ボロニアソーセージ」「野菜ブイヨン(たまねぎ、人参、セロリ)が入ったジューシーでおいしいソーセージです。」との記載がある。 https://www.itoham.co.jp/product/product/serieslist.html?catid=35 c 丸大食品株式会社のウェブサイト 「味の主演 ボロニアソーセージ」「3種のブイヨン(ポーク、チキン、野菜)で風味豊かに仕上げたボロニアソーセージです。」との記載がある。 https://www.marudai.jp/CGI/products/item/detail.cgi?itm_cd=00068 d 信州ハム株式会社のオンラインショップ 「焼いておいしいボロニアソーセージブロック 380g」「直径約7cmの食べ応えがあるソーセージです。ブロックタイプなのでお好みの厚さにカットしてお召し上がり頂けます。」の記載がある。https://www.shinshuham.jp/SHOP/2100.html e 宮地ハム株式会社のウェブサイト 「ボロニアソ−セ−ジ(280g)」商品説明として「佐賀県産豚肉を細かく挽いた肉に、オニオンやガーリック等のスパイスを独自の配合比くわえ、練り込み製造しました。」との記載がある。https://www.miyachiham.com/?pid=23343566 (2)以上からすると、「MORTADELLA BOLOGNA」の文字及びその読みを表した「モルタデッラボローニャ」の文字は、「イタリアのボローニャ地方おいて、従来の製法に従って生産された一定の品質を備えたソーセージ」(以下「申立人商品」という。)を表す地理的表示として、PGI及び日本の地理的表示制度で保護されているものであって、当該申立人商品は、遅くとも2018年以降継続して日本に輸入され、市場に流通しているものである。 そうすると、「MORTADELLA BOLOGNA」及び「モルタデッラボローニャ」の文字は、申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国のハムやソーセージ製品の取引者、需要者の間においては一定程度知られていたものといえる。 また「モルタデッラ」の文字のみで「ボローニャ原産のソーセージ」や「ボローニャソーセージ」を示す語として使用されている事実もうかがえる。 しかしながら、「BOLOGNA(ボローニャ(ボローニア、ボロニアの表示も含む、以下同じ。))」は、イタリアの地方・都市名やイタリアのボロニア地方を起源とされているソーセージ(ボローニャソーセージ)を示すものであるところ、我が国において「ボロニア(ボローニャ)ソーセージ」は、上記(ク)のとおり、農林水産省の日本農林規格で、ソーセージの一種類を表す用語として、原材料等の規格が規定されているほか、上記(ケ)のとおり、食品表示法においても、ボロニアソーセージとして商品表示する場合は、一として「牛腸を使用したもの又は製品の太さが三十六ミリメートル以上のもの」等、二として、申立人商品と定義されている。そして、上記(サ)のとおり、我が国におけるハムやソーセージを取り扱う業者においては、上記の定義の一に適合する商品名として「ボロニアソーセージ」の文字が広く使用されている実情が認められる。 そうすると、「BOLOGNA(ボローニャ)」の文字がソーセージに使用された場合又は当該文字に「ソーセージ」の文字を結合した「ボローニャソーセージ」の文字からは、ハムやソーセージに詳しい需要者においては、申立人商品を想起する場合があるとしても、我が国の一般的な取引者及び需要者においては、元来はイタリアのボローニャ地方を起源とするソーセージという意味合いを理解するものであり、現在では、単にソーセージの一種類(牛腸を使用したもの又は製品の太さが36mm以上のもの)の名称を理解させるにとどまるというのが相当である。 そして、申立人商品は「MORTADELLA BOLOGNA」を地理的表示とするものであり、単に「BOLOGNA(ボローニャ)」の文字のみで表されているものではない。また、「BOLOGNA(ボローニャ)」の文字及び「ボローニャソーセージ」の文字が申立人商品を示すものとして我が国の取引者、需要者の間で広く理解、認識されていることを示す証左の提出はなく、かつ、それを認めるに足る事情も見いだせないから、「BOLOGNA(ボローニャ)」の文字のみで申立人商品の「MORTADELLA BOLOGNA」及び「モルタデッラボローニャ」を認識するとはいい難いものである。 2 商標法第4条第1項第15号について (1)本件商標と引用商標の類否 ア 本件商標 本件商標は、中央に、四分の三に経線を有する球形の図が描かれ、その上部に湾曲した台形、三角形及び円形を配し、それらの図形の中心部分にアーチ形に欧文字「BOLOGNA」を書し、球形の図の下部の湾曲した帯図形の下に欧文字「CCFN」を書してなるものである。 本件商標構成中の球形及びその他の図形については、一見して何を表すものであるか看取することは困難であるから、特定の観念及び称呼が生じるとは認められない。 また、構成中の「BOLOGNA」の欧文字は、イタリア北部の都市であるボローニャを意味する文字であるところ、本件商標の指定商品は、「Meat,namely,bologna」(参考訳:食肉、すなわちボローニャソーセージ)であるから、その指定商品との関係よりすれば、ボローニャソーセージ(ソーセージの一種)を理解させるものといえ、識別力を有するものではない。 他方、「CCFN」の欧文字は、辞書等に掲載のないものであるから、特定の意味合いを認識させることのない造語と認められ、本件指定商品との関係においても識別力を有する文字部分と理解されるものである。 そうすると、本件商標の構成中「BOLOGNA」の文字部分は、指定商品との関係において、商品の品質を表すものであるから、識別力を有する文字部分ということはできず、「CCFN」の文字部分が、需要者に強い印象を与える要部と認識されるものであるというのが相当である。 したがって、本件商標は、「CCFN」の欧文字部分から「シーシーエフエヌ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 イ 引用標章 引用標章は「MORTADELLA BOLOGNA」の欧文字からなるところ、上記1(2)のとおり、当該文字は「イタリアのボローニャ地方において、従来の製法に従って生産された一定の品質を備えたソーセージ」を称する地理的表示として一定程度知られているものであり、「モルタデッラボローニャ」と読まれるものである。 そうすると、引用標章はその構成文字に相応して「モルタデッラボローニャ」の称呼を生じ、「イタリアボローニャ地方の従来の製法に従って生産された一定の品質を備えたソーセージ」の観念を生じるものである。 (2)本件商標と引用標章の類否 本件商標と引用標章を比較すると、外観においては、球形の図形その他図形の有無、「CCFN」の文字の有無という顕著な差異があるから、両者は外観上相紛れるおそれはない。 また、称呼においては、本件商標の要部である「CCFN」から生じる「シーシーエフエヌ」と引用標章「MORTADELLA BOLOGNA」から生じる「モルタデッラボローニャ」とは称呼上相紛れるおそれはない。 なお、本件商標構成中の「BOLOGNA」の欧文字部分は、上記(1)のとおり、識別力を有さない文字部分であるから、当該文字部分からは識別標識としての称呼、観念が生じるものとはいえない。 そして、観念においては、本件商標よりは、その要部も含め識別標識としての特定の観念を生じないのに対し、引用標章は「イタリアボローニャ地方の従来の製法に従って生産された一定の品質を備えたソーセージ」の観念を生じるものであるから、両者は観念上紛れるおそれはない。 そうすると、本件商標と引用標章とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても紛れるおそれのない非類似のものであって、別異のものというべきある。 (3)混同のおそれ 上記1(2)のとおり、引用標章は、申立人商品を表示するものとして我が国のハム及びソーセージ製品の取引者、需要者の間において一定程度知られていることは伺えるが、本件商標の構成中の「BOLOGNA」文字のみで、申立人商品を認識するとはいい難い。 そして、上記(2)のとおり本件商標は、引用標章と相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものであるから、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用標章を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 なお、申立人は、我が国の取引者、需要者の間で、「BOLOGNA」の文字は、「ボローニャソーセージ」を理解させるものであり、「ボローニャソーセージ」は「MORTADELLA BOLOGNA」のことであり、「イタリアボローニャ地方の従来の製法に従って生産された一定の品質を備えたソーセージ」であるから、申立人商品を意味するなど主張している。 しかしながら、「BOLOGNA」の文字が「ボローニャソーセージ」を意味する語であるとしても、当該「ボローニャソーセージ」は、上記1(2)のとおり、ソーセージの一種類を表すものと理解されるものであり、「BOLOGNA」の文字が必ずしも申立人商品を理解させるものということはできない。また、「BOLOGNA」の文字が「MORTADELLA BOLOGNA」の通称として普通に使用されていると認め得る事情も見いだせず、「BOLOGNA」の文字が申立人商品を表すものとして我が国の取引者、需要者の間で理解、認識されていることを示す証左の提出はなく、かつ、それを認めるに足る事情も見いだせない。 よって、申立人の主張は、採用できない。 3 商標法第4条第1項第7号該当性について 引用標章が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、その指定商品を取り扱う業界において、「イタリアボローニャ地方の従来の製法に従って生産された一定の品質を備えたソーセージ」を示すものとして、一定程度知られていたとしても、本件商標と引用標章とは、上記2(2)のとおり、全く別異のものであって、本件商標は引用標章を連想又は想起させるとはいえないものである。 そうすると、本件商標権者が本件商標をその指定商品に使用した場合、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するとはいえないし、本件商標は、その構成自体が、非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではなく、かつ、他の法律によって、その商標の使用等が禁止されているものとも、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は国際信義に反するものともいえない。 さらに、当審において、職権をもって調査するも、本件商標の登録出願の経緯に、社会的相当性を欠くというべき事情や本件商標権者が本件商標を商標登録することが公序良俗に反するものであると認めるに足りる事情を見いだすこともできない。 してみれば、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とはいえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 なお、申立人は、「MORTADELLA BOLOGNA」と何ら関わりのない商標権者に、本件商標について登録を与え維持するとすれば、産品の適切な評価を維持し、財産的価値の維持向上及び需要者が抱く産品への信頼の保護の実現を目的とする「地理的表示保護制度」の趣旨を没却する旨主張するが、本件商標と引用標章とは、上記のとおり、全く別異のものであって、本件商標は引用標章を連想又は想起させるとはいえないものである。 したがって、本件商標は、地理的表示の保護の観点等を考慮しても、公の取引秩序を乱し、国際信義に反する商標ということはできない。 4 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 本件商標 |
異議決定日 | 2024-06-18 |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(29)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
大森 友子 |
特許庁審判官 |
清川 恵子 白鳥 幹周 |
登録日 | 2020-12-17 |
権利者 | Consortium for Common Food Names Holdings Inc. |
商標の称呼 | ボローニャシイシイエフエヌ、シイシイエフエヌ |
代理人 | 佐藤 俊司 |
代理人 | 池田 万美 |
代理人 | 関川 淳子 |
代理人 | 北村 直之 |
代理人 | 田中 克郎 |