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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y44 |
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管理番号 | 1416679 |
総通号数 | 35 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2024-11-29 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2023-11-30 |
確定日 | 2024-09-24 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4771403号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4771403号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成15年10月1日に登録出願され、「保健衛生に関する指導,保健衛生に関する情報の提供,健康・医療相談,健康・医療相談に関する情報の提供」を含む第44類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として、同16年5月14日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 そして、本件審判の請求の登録日は、令和5年12月18日であり、その請求の登録前3年以内の同2年12月18日から同5年12月17日までの期間を以下「要証期間」という。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の指定役務中、第44類「保健衛生に関する指導,保健衛生に関する情報の提供,健康・医療相談,健康・医療相談に関する情報の提供」(以下「請求に係る指定役務」という。)についての商標登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出している。 1 請求の理由 本件商標は、その指定役務中、請求に係る指定役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 請求人は、答弁に対し弁駁していない。 第3 被請求人の主張 被請求人は、「本件審判の請求は、却下する。本件審判の請求は成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証(枝番を含む。)を提出している。 1 本件審判の請求人は、係属中の審判(取消2022−300291号)において取消請求がされている役務以外の全ての指定役務について、本件審判の請求を含む6件の審判請求を同日又は一日違いで提起しており、これらの審判請求は、業種の異なる6種類の役務について、別個に行われている。一人の自然人である請求人がこれらの役務に係る多岐にわたる業務を並行して起業することは極めて困難といえる。また、請求人は、審判請求書に電話番号を記載しておらず、電話を設置していないか、設置していても他人との会話や連絡を忌避しているものといえる。このような一の自然人が多業種にわたって事業を新たに起業することは全く不可能である。また、仮に本件商標が取り消されても、本件商標に類似する他人の商標登録出願が存在するから、請求人が本件商標と同一又は類似する商標を登録し使用することも、できる余地はなく、本件審判は、商標を使用することも登録することもできない状況で提起されたものである。したがって、請求人は、商標の使用の意思も商標登録の意思も有しない者といえ、このような者が、一の本件商標について、殊更に6件の審判請求を行うことは、非営利活動を行っている被請求人に過度な金銭的負担を課して、その運営を害することを目的しているといわざるを得ず、特許庁における行政の適切な運用に対する有害行為として排除されるべきものである。 このような状況からみて、本件審判請求は、権利の濫用であり、却下されるべきである。 2 本件商標権者の代表者は、従来の医療・医学の考え方を超えて、本当の医療・医学を患者と共に学ぶことを目指して、2003年に仲間の開業医師と共に本件商標権者を設立させた。本件商標権者の活動内容としては、患者自身による健康の維持、促進状況のチェック、スタッフ医師による医療についてのレクチャー及び患者が直接スタッフ医師と面接し、患者自身の病状に応じた治療方法等について指導を受けること等を内容とするものであり、その活動に当たり、患者に認知や親しみをもってもらうため、本件商標権者の法人名だけでなく、「eクリニック」及び本件商標を永年にわたって継続して使用している。 3 本件商標権者のポスター(乙1)の上段には、本件商標と社会通念上同一の商標が大きく表示されており、下部には本件商標権者の名称等が表示されている。また、中央には「私たちがeクリニックのスタッフです」の文字とともに、本件商標権者にスタッフとして所属する医師、はり師・きゅう師、歯科医師、管理栄養士等の顔写真と氏名が表示されている。当該ポスターは、当該スタッフのクリニックの待合室等に掲示されている。 本件商標権者は、P社に対し、ポスター(乙1)を、要証期間内である2023年2月28日に100部発注し(乙2の1)、このポスターが、同年3月7日に、同社から本件商標権者に納品されたことは明らかである(乙2の2〜乙2の4)。 4 本件商標権者にスタッフとして所属するはり師・きゅう師や医師が院長を務める治療院や医院の外観及び内装を撮影した写真(乙3の1〜乙3の4)によれば、これらの治療院や医院内にポスター(乙1)が掲示されていることがわかる。 また、これらのはり師・きゅう師や医師の署名付き宣誓書(乙4の1〜乙4の4)によれば、これらの者は、要証期間内にポスター(乙1)の提供を受けて、これらの治療院や医院内に掲示したことがわかる。 5 本件商標権者にスタッフとして所属する医師のT氏は、2023年12月3日に本件商標権者の会員限定で開催されたオンラインセミナーに講師として参加し、当該セミナーの修了後、患者K氏に医師として「保健衛生に関する指導,健康・医療相談」を行った(乙4の3)。 当該セミナーには、講師として、本件商標権者のスタッフである医師のT氏とH氏が参加しており、本件商標権者の所在地が撮影・配信会場となっており、各会員は、オンラインで当該セミナーを視聴することもできるが、本件商標権者の所在地に直接参加し、当該セミナーを受けることが可能であり、直接参加した会員で、特に希望する者は、当該セミナー後、当該セミナーに参加していた医師から、医療相談・健康相談を受けることが可能となっていた。K氏は、当該セミナーへの参加を希望し、かつ、当該セミナー終了後に医師による医療相談・健康相談を希望し(乙5の3)、医師のT氏の面談を受けた(乙5の4)。当該セミナーの様子及び当該セミナーの修了後の面談の様子を撮影した写真(乙5の5)から、T氏の後ろにポスター(乙1)が掲示されていることがわかる。 第4 当審の判断 1 本件審判の請求について (1)商標法第50条第1項は、「継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定しているところ、登録商標の不使用による取消審判の請求は、専ら被請求人を害することを目的としていると認められる場合などの特段の事情がない限り、当該請求が権利の濫用となることはないと解するのが相当である(知財3判平成20年6月26日、平成20年(行ケ)第10025号)。 (2)本件審判の請求が権利の濫用であるとすべき特段の事情は見当たらない。 この点、被請求人は、請求人が一人の自然人である、また、審判請求書に電話番号を記載していない等と主張しているが、「何人も」取消審判を請求することができることに照らせば、これらの点は、本件審判の請求が権利の濫用となるような具体的な事情に該当しない。 さらに、被請求人は、請求人が1の登録商標につき6種類の役務について6件の審判請求を行って、非営利活動を行っている被請求人に過度な金銭的負担を課しその運営を害することを目的しているとも主張しているが、登録商標の指定役務の一部についての取消審判請求や同じ登録商標についての複数の取消審判請求が禁止されていないことに照らせば、請求人が1の登録商標に含まれる役務の異なる一部について本件審判を含む6件の審判請求を提起したとしても、そのことは、本件審判の請求が権利の濫用となるような具体的な事情に該当しない。 2 被請求人が提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。 (1)本件商標権者は、大阪府大阪市に所在し、医院の院長である医師や治療院の院長であるはり師・きゅう師等をそのスタッフとして活動する特定非営利活動法人(NPO法人)である(乙1、乙2、乙4)。 (2)本件商標権者は、P社(以下「印刷会社」という。)に対し、「A2ポスターver2023」の品名でA2版片面印刷4色刷のポスター(以下「本件ポスター」という。)を100部発注し、印刷会社は、2023年2月28日付けで、本件商標権者に対し、この発注に対する請求書(インボイス)を発行した(乙2の2)。請求書では、支払条件がクレジットカード払いである旨、及び納品期日が7営業日である旨が示されている。 (3)印刷会社は、2023年3月7日付けで本件商標権者に本件ポスターを納品した(乙2の4)。 (4)本件ポスターは、その下部に「eクリニック」の文字とともに、本件商標権者の名称、所在地等を表示したものであり、その上部には、大きく別掲2の使用商標が表示されている。また、使用商標の下に、「私たちがeクリニックのスタッフです」との文字が表示されるとともに、21人の医師等の顔写真、氏名及び身分が表示されている。その中には、医師であるTの顔写真と氏名がある(乙1、乙3の3、乙4の3)。 さらにその下には、「病気で苦しんだり寿命を縮めたりすることなくみんな元気で長生きできる社会を目指します!」との標語が表示されている。 (5)本件商標権者は、2023年12月3日に、「生きる!輝く!」とのタイトルで、オンラインセミナー(以下「本件セミナー」という。)を開催した(乙5の1〜乙5の3)。本件セミナーは、3部構成のものであり、そのうちの第2部は本件商標権者のスタッフでる医師のTによる「幸せな人生を過ごすために必要な4つのこと」と題する講演であった(乙5の1)。 (6)本件商標権者は、2023年11月28日になされたKからの本件セミナーの受講及びその後の面談の申し込みに対し、本件セミナーの日時とともに会場が本件商標権者の所在地に変更になった旨及び面談が16時からである旨を伝える返信メールをKに対して送信した(乙5の3)。本件セミナーの会場参加者は3名であり、いずれも面談を希望し、そのうち、Kに対する面談は、Tが担当した(乙5の4、乙4の3)。 (7)本件セミナーは、上記会場でオンライン配信と同時に会場開催された(乙5の5)。また、上記会場の一室でTのKに対する面談が行われ、その面談会場には、本件ポスターが掲示されていた(乙5の5、乙4の3)。 3 上記2において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。 (1)使用商標について 本件商標は、図案化した水色の「e」の欧文字とその中央に重畳させた青色の「CLINIC」の欧文字との組合せからなる商標である。これに対し、使用商標は、図案化した水色のeの欧文字とその中央に重畳させた青色の「CLINIC」の欧文字との組合せからなる商標であり、両者は、「e」の欧文字の一部等に若干の違いはあるもののほぼ同様の構成のものであって、外観上同視できるものである。 よって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一のものである。 (2)使用者について 上記2(4)によれば、本件ポスターには、使用商標とともに本件商標権者の名称、所在地等が表示されるとともに、本件商標権者のスタッフであるTの顔写真と氏名が表示されており、さらに、上記2(7)によれば、本件ポスターは、本件商標権者の所在地である本件セミナーの会場の一室で行われた本件商標権者のスタッフであるTのKに対する面談の面談会場に掲示されたものである。 よって、使用商標の使用者は、本件商標権者である。 (3)使用役務について 本件商標権者のスタッフである医師TのKに対する面談は、上記2(5)の本件セミナーにおけるTの「幸せな人生を過ごすために必要な4つのこと」と題する講演に関連する内容であることが明らかであり、「健康・医療相談」の役務の提供であることが明らかである。 よって、使用商標に係る使用役務は、「健康・医療相談」であって、請求に係る指定役務の範ちゅうのものである。 (4)使用時期及び使用場所について 上記2(2)及び(3)によれば、使用商標を表示する本件ポスターは、2023年(令和5年)2月28日に印刷会社に発注されたものが同年3月7日に納品され、これが本件商標権者のスタッフである医師等に提供され、同年12月18日まで、これらの医師等は、それぞれが営業する医院等の院内に本件ポスターを掲示したものである。上記2(2)のとおり、本件ポスターの品名が「A2ポスターver2023」であることに照らせば、本件ポスターは納品後さほど時間をおかずに医師等に提供されて、それぞれの医院等において掲示されたものと推認される。さらに、本件ポスターは、上記2(5)ないし(7)に示された本件セミナーの会場の一室で行われた面談会場に掲示されていたことから、本件セミナーが開催された同年12月3日において掲示されたものである。 これらを踏まえれば、使用商標の使用時期が要証期間内であることは明らかである。 また、使用商標の使用場所である医院等や本件商標権者の所在地は、いずれも日本国内である。 (5)使用行為について 以上によれば、本件ポスターは、請求に係る指定役務の範ちゅうの役務である「健康・医療相談」の役務に関する広告に該当するものであり、本件商標権者は、要証期間内に、日本国内で、請求に係る指定役務に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商標である使用商標を付して展示する行為を行ったものである。この行為は、商標法第2条第3項第8号に掲げる使用行為に該当する。 4 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者が請求に係る指定役務について本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)を使用していたことを証明したということができる。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲(色彩は原本を参照。) 1 本件商標 ![]() 2 使用商標 ![]() (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
審理終結日 | 2024-07-04 |
結審通知日 | 2024-07-17 |
審決日 | 2024-08-08 |
出願番号 | 2003085692 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Y
(Y44)
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最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
旦 克昌 |
特許庁審判官 |
相崎 裕恒 小林 裕子 |
登録日 | 2004-05-14 |
登録番号 | 4771403 |
商標の称呼 | イイクリニック、クリニック、イイ |
代理人 | 藤田 隆 |