ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W09 |
---|---|
管理番号 | 1415582 |
総通号数 | 34 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-10-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-12-18 |
確定日 | 2024-10-05 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6742678号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6742678号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6742678号商標(以下「本件商標」という。)は、「E−FINDS」の文字を標準文字で表してなり、令和5年4月13日に登録出願、第9類、第11類及び第20類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同年9月11日に登録査定、同年10月5日に設定登録されたものである。 第2 登録異議申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する国際登録第1483491号商標(以下「引用商標」という。)は、「Find」の欧文字を横書きしてなり、2018年(平成30年)8月2日に中国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、2019年(平成31年)1月15日に国際商標登録出願、第9類及び第35類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和4年1月20日に登録査定、同年3月18日に設定登録され、その商標権は現に有効に存続しているものである。 第3 登録異議の申立ての理由 本件商標は、その指定商品中、第9類「全指定商品」(以下「申立てに係る商品」という。)について、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 本件商標について 本件商標は、「E−FINDS」の文字を標準文字で横書きしてなるものであり、その構成から「イーファインズ」の称呼が生じ、構成全体としては辞書に掲載されていない語であることから造語と解され、特定の観念が生じないものである。 また、本件商標は「E」と「FINDS」が「−」(ハイフン)でつながれているが、かかる構成においては、本件商標の「E」の部分については、判決(甲3:平成21年(行ケ)第10409号)のように識別標識としては機能せず、「FINDS」の部分が分離観察され、当該部分のみからも称呼・観念されるものである。 上記判決に倣い取引の実情を見てみても、「E−FINDS」の語が取引社会において一連一体の語句として特定の意味合いをもって一般に親しまれていると認めることはできず、かつ、「FINDS」の語は「見つける、発見する」という意味で一般に親しまれた「FIND」に三人称単数現在形であることを示す「S」が付いた語であることは一目瞭然であり、申立てに係る商品との関係で識別機能を有することより、本件商標を「FINDS」の文字部分のみによって簡略に称呼、観念されることもあると認められるものである。 「e−○○」という商標について、後半の文字部分のみを分離観察して類似判断をしているのは上記判決のみならず、不服2001−20587審決(甲4)及び不服2008−21474審決(甲5)、並びにその他審査においても、商願2018−76966「e−Begin」(甲6)、商願2019−15377「e−join」(甲7)、商願2019−155175「e−Story」(甲8)が拒絶されている。 これら判決等によれば、本件商標についても「E」と「FINDS」が分離観察され、識別力を有する「FINDS」の部分のみによって称呼・観念され得るものであり、本件商標からは「ファインズ」のみの称呼も生じ、「見つける、発見する」の観念も生じるものである。 なお、本件商標と上記の事案とでは「E」の文字が大文字か小文字かの点で違いがあるが、英和辞典(甲9)及び広辞苑(甲10)をみても、E−mail、E−commerceと掲載されており、大文字であっても「電子」あるいは「インターネットを介した」といった意味合いで理解されることに変わりはない。 2 引用商標について 引用商標は、「Find」の欧文字を横書きしてなるものであり、英単語の「Find」であることから、「ファインド」の称呼が生じ、「見つける、発見する」ほどの観念が生じるものである。 3 本件商標と引用商標の類否について (1)外観について 本件商標と引用商標の外観について、全体観察をもって視覚に訴えて対比観察した場合、引用商標には本件商標の「E」の文字及び「−」(ハイフン)に相当する部分がないので、外観は相違し得る。 しかしながら、本件商標においては、取引者、需要者の注意をひき識別標識として機能するのは「FINDS」の文字部分であるところ、当該文字部分と引用商標の「Find」は、元々同じ英単語の一人称及び三人称単数の違いにすぎず、外観上の相違は顕著なものとはいえないことから、両者は近似した印象を与えるものである。 (2)観念について 観念においては、本件商標全体からは特定の観念が生じないものの、「FINDS」の部分は「見つける、発見する」という意味を有する語であることから、本件商標からは「見つける、発見する」の観念を看取し得る。 一方、引用商標についても「Find」の英語の意味から「見つける、発見する」の観念が生じることから、本件商標と引用商標は、観念において同一である。 (3)称呼について 本件商標は、「E−FINDS」の文字からなるものであるが、「E」の文字部分が上記のとおり出所識別標識としての機能を果たしているとはいえないのに対し、「FINDS」の文字部分は英語で「見つける、発見する」の意味を有する語であって、独立して自他商品の識別標識の機能を果たし得るものと認められるから、本件商標に接する一般の取引者、需要者は上記部分を分離して把握、認識し、称呼することがあるというべきであり、本件商標全体からは「イーファインズ」の称呼が生じるとともに、「FINDS」の部分から「ファインズ」の称呼も生じるものである。 本件商標の称呼「ファインズ」と引用商標の称呼「ファインド」では、語尾の「ズ」と「ド」のおいてのみ異なるが、この相違点は比較的弱く発音される語尾の1音のみの差であり、その母音は近似していること、最も聞き取りやすく印象に残りやすい語頭の3音を共通にしていることからすれば、両称呼は近似しており、本件商標と引用商標は、称呼において類似するものといえる。 (4)過去の審査について 商願2000−56670「FINDS」が、登録第2681681号「FIND」と類似するとして、商標法第4条第1項第11号に該当し、拒絶査定が確定しており(甲11)、この事実は、これら商標は外観において相違点はあるものの、その相違は顕著ではなく、「FINDS」と「FIND」は観念・称呼において共通することから相互に類似すると判断されたものにほかならず、上記類否判断を裏付けるものである。 当該事案がかれこれ別件であることは重々承知しているが、事情を共通にしている本事案は本件商標と引用商標の類否判断において参酌されるべきものである。 (5)取引の実情 申立人は、中華人民共和国(以下「中国」という。)に所在する、「OPPO」の名称で知られているスマートフォン市場における大企業である。 申立人は、2004年(平成16年)に設立され、2008年(平成20年)に携帯電話事業、2011年(平成23年)にスマートフォンの事業に参入し、2022年には中国で第1位、世界第4位のシェアを獲得し、世界的なスマートフォンブランドとして認知されるに至っている。なお、我が国での販売は申立人の日本法人であるオウガ・ジャパン株式会社(以下「オウガ・ジャパン社」という。)が担っている(甲12)。 そして申立人のスマートフォンである「Find」は2011年に発売され、イメージキャラクターとして世界的俳優のレオナルド・ディカプリオ氏が起用され(甲13)、CM出演料のみで4億円を超えるなど(甲14)、我が国でも話題となった。この「Find」はXシリーズとNシリーズに分類されながら展開され、Findシリーズ全体としてはこれまでに17機種を市場に展開している(甲15)。我が国ではこのうち「Find X」シリーズの3機種が販売されているが(甲16)、我が国で販売されていない機種も多数のインターネット記事により、我が国で紹介されている(甲17〜甲23)。 また、2020年には「Find X」が我が国においてグッドデザイン賞を獲得している(甲24)。 このように、申立人のスマートフォン「Find」は一定程度の業務上の信用を獲得しており、当該「Find」は「X」や「N」に分かれてシリーズ化していることに鑑みれば、本件商標は、本件商標を見た需要者・取引者をして、Findシリーズに新しいカテゴリーが登場したかのような印象を与えるものであり、申立てに係る商品について本件商標を使用すれば、引用商標と出所の混同を生じるおそれがあることは明らかである。 4 小括 上記のとおり、本件商標の「FINDS」の部分及び引用商標の「Find」の外観・観念・称呼が取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して考察すると、「FINDS」と「Find」は同じ英単語であり、「S」の有無が外観上の顕著な差異とはいえないこと、いずれも「見つける、発見する」という同一の観念が生じること、称呼において語尾における相違点はあるものの、最も聞き取りやすい最初の3音が共通していることから、外観・観念・称呼において近似した印象を与えるものである。さらに申立人がスマートフォンについてFINDシリーズを展開し、一定の業務上の信用を獲得していることに鑑みれば、両商標が同一又は類似の商品に使用されれば、需要者・取引者をして混同を生ずるおそれがあることは明白である。 したがって、本件商標と引用商標は、類似する商標であるというのが相当である。 5 指定商品の類否について 申立てに係る商品は、引用商標の第9類の指定商品である「Wearable computers; optical data media; printers for use with computers; scanners [data processing equipment]; gesture recognition software; virtual reality game software; dictating machines; face recognition devices; biometric scanners; facsimile machines; aerials; intercommunication apparatus; navigational instruments; modems; optical transmitters; optical receivers; wearable activity trackers; video telephones; cell phones; smartphones; mobile telephones; smartphones in the shape of a watch; covers for smartphones; cases for smartphones; protective films adapted for smartphones; cell phone straps; stands adapted for mobile phones; telecommunication apparatus in the form of jewellery; selfie sticks for use with smartphones; keyboards for smartphones; cabinets for loudspeakers; wireless speakers; DVD players; portable media players; earphones; headphones; headsets for mobile telephones; wireless headset for smartphone; wireless earphone; audiovisual teaching apparatus; electronic book readers; camcorders; virtual reality headsets; headsets for virtual reality games; wearable video display monitors; selfie sticks [hand-held monopods]; selfie lenses; materials for electricity mains [wires, cables]; telephone wires; USB cables; semi-conductor; printed circuits; electronic chip cards; electromagnetic coils; semi-conductor devices; connections, electric; power adapters; low-voltage power supplies; electrical adapters; video screens; touch screens; remote control apparatus; electronic key fobs being remote control apparatus; optical fibres [light conducting filaments]; computers; notebook computers; computer programs [downloadable software]; smartphone software applications, downloadable; integrated circuit cards [smart cards]; personal digital assistants; personal digital assistants in the shape of a watch; smartglasses; smart rings; interactive touch screen terminals; touch screen pens; fingerprint scanner; lightning conductors; lightning arresters; radiological apparatus for industrial purposes; chargers for electric batteries; cell phone battery chargers for use in vehicles; wrist-mounted smartphones.」と同一又は類似する。 6 まとめ 以上から、本件商標を申立てに係る商品に使用した場合、出所の混同を生じるおそれがあることから、本件商標と引用商標は類似するものであり、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものである。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標 本件商標は、上記第1のとおり、「E−FINDS」の文字を標準文字で表してなるものであり、その構成文字は、同じ書体で、等間隔に、まとまりよく一体的に表され、全体として一連一体の語を表してなる印象を与えるものであって、これより生ずる「イーファインズ」の称呼も冗長とはいえず、一連に称呼し得るものである。 そして、本件商標の構成中、「E−」の文字部分が、「電子」又は「インターネットを介した」の意味合いを表す語として理解される場合があるとしても、本件商標の上記構成及び生じる称呼からすると、これに接する需要者は、殊更、「Find」の文字部分のみに着目することはなく、その構成全体をもって一体不可分の造語として認識、把握するとみるのが自然である。 そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「イーファインズ」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないというべきである。 (2)引用商標 引用商標は、上記第2のとおり、「Find」の欧文字からなるものであり、その構成文字に相応して、「ファインド」の称呼を生じ、当該文字は「見つける」の意味合いを有する英語として親しまれていることから、「見つける」の観念を生じるものである。 (3)本件商標と引用商標の類否 本件商標と引用商標とを比較するに、両者は、上記第1及び第2のとおりの構成からなるところ、外観においては、「E−」及び「S」の文字の有無により明確に区別できるものであるから、外観上、相紛れるおそれはない。 また、称呼については、本件商標から生じる「イーファインズ」の称呼と引用商標から生じる「ファインド」の称呼とを比較すると、語頭の「イー」の音の有無及び語尾の「ズ」と「ド」の音の差異を有するものであって、明瞭に聴別し得るものであるから、称呼上、相紛れるおそれはない。 さらに、観念については、本件商標は特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は「見つける」の観念を生じるものであるから、観念上、相紛れるおそれはない。 そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。 (4)取引の実情 申立人は、同人がスマートフォンに使用する「Find」の文字は、使用により一定程度の業務上の信用を獲得しており、本件商標をその指定商品に使用すれば、引用商標と出所の混同を生じる旨主張して、証拠を提出している。 ア 申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 (ア)申立人は、2004年に設立された中国の企業であり、2011年から現在までスマートフォンの製造・販売を行っており、申立人のスマートフォンは、2022年にはスマートフォン市場で、中国で第1位、世界第4位のシェアを有し、我が国においては、オウガ・ジャパン社を通じて「Find」シリーズのスマートフォンが販売されている(甲12)。 (イ)申立人は,2011年にスマートフォン「Find」の発売を開始し、Findシリーズと称して「Find」の文字を名称に冠したスマートフォンを複数発売した。また、「Find」はXシリーズとNシリーズに分類され、シリーズ全体としてこれまでに、17機種展開しており(甲15)、我が国では、2018年11月から「OPPO Find X」と称するスマートフォンを販売し、その後、2020年7月に「OPPO Find X2 Pro」、2021年6月に「OPPO Find X3 Pro」が販売されたことがうかがえる(甲16)。さらに、上記「OPPO Find X」は、2020年11月にはGOOD DESIGN AWARD2020において、グッドデザイン賞を受賞した(甲24)。 (ウ)申立人の製造、販売するスマートフォンは、Findシリーズ以外に、Renoシリーズ、Aシリーズなどの商品があり、全ての商品に「Find」の文字を冠しているものではない(甲12、甲16等)。 イ 判断 上記アによれば、申立人は、中国を拠点として2011年からスマートフォンを製造、販売し、「Find」シリーズと称して「Find」の文字を含む商標を使用していること、我が国においては2018年から日本法人を通じて同様のスマートフォンを販売していることは認められるものの、「Find」の文字を使用したスマートフォンの我が国における売上高、販売数量、市場シェアなどの販売実績及び広告宣伝の方法やその期間、費用等、「Find」の文字が需要者の間において広く知られていることを判断し得る証拠の提出はない。 そうすると、「Find」の文字は、申立人の業務に係る商品「スマートフォン」を表示するものとして、本件商標の登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されているということはできず、また、本件商標と引用商標が類似しないことは、上記(3)のとおりであるから、本件商標を申立てに係る商品に使用した場合に、引用商標と出所混同のおそれはないものというべきである。 (5)小括 上記のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 2 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、申立てに係る商品について、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
(この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2024-09-26 |
出願番号 | 2023040275 |
審決分類 |
T
1
652・
261-
Y
(W09)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
山田 啓之 |
特許庁審判官 |
渡邉 あおい 杉本 克治 |
登録日 | 2023-10-05 |
登録番号 | 6742678 |
権利者 | 株式会社安達通商 |
商標の称呼 | イイファインズ、ファインズ |
代理人 | 岩瀬 吉和 |
代理人 | 城山 康文 |
代理人 | 横川 聡子 |