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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W14 |
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管理番号 | 1415580 |
総通号数 | 34 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-10-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-11-21 |
確定日 | 2024-09-27 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6736864号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6736864号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6736864号商標(以下「本件商標」という。)は、「MEISTERART」の欧文字を横書してなり、令和5年3月28日に登録出願、第14類「キーホルダー,宝石箱,時計,貴金属,身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,貴金属製靴飾り,腕時計,宝飾品」を指定商品として、同年9月8日に登録査定、同月15日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録商標は、以下の(1)及び(2)のとおりであり、これらの商標権は、現に有効に存続しているものである。 (1)国際登録第806064号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:MEISTER 国際商標登録出願日:2003年(平成15年)7月7日 設定登録日:平成16年5月14日 指定商品:第14類「Jewellery.」 (2)国際登録第1009558号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:別掲のとおり 国際商標登録出願日:2009年(平成21年)4月1日 優先権主張:2008年10月3日(Switzerland) 設定登録日:平成22年12月24日 指定商品:第14類「Jewellery; precious metals and their alloys and ornaments made thereof or coated therewith, namely, rings made of precious metal; precious stones.」 なお、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、以下「引用商標」という。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、その指定商品中、第14類「身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,宝飾品」(以下「申立てに係る商品」という。)について、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第43号証を提出した。 以下、証拠の記載に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように記載する。 (1)商標法第4条第1項第11号該当性について 本件商標は、「MEISTERART」の欧文字を書してなるから、これより「マイスターアート」及び「マイスター」の称呼を生じ、特許庁のJ−platPatにおいても当該称呼が振られている(甲1)。 引用商標は、「MEISTER」の欧文字を書してなるから、「マイスター」の称呼が生じる。 「MEISTER」の語は、英語の「master」に当たるドイツ語であり、「親方、名人、巨匠」等を意味する語であって(甲4)、本件商標の「MEISTER」からは、「名人、親方」等の語が想起されるが、我が国においてはそれほどなじみのある語でない。 これに対し、「ART」は、広く知られている語であり(甲5)、一般に「芸術、美術、美術品、技」等の意味が想起される、我が国において親しまれた語である。すなわち、本件商標を構成する「MEISTER」と「ART」とは、ドイツ語と英語という違いがあるだけでなく、一般の日本人に対しなじみの度合いにおいて異なる語である。さらに、想起される観念も異なる分野の語であるため、我が国においては、「MEISTER」と「ART」は、一連の熟語的な意味合いをもって一般に親しまれているとはいい難い。 本件商標中「ART」は、「ART」の併存登録例(甲6〜甲10)や「GOOD ART」の審査例(甲11)からも、申立てに係る商品において識別力を有しない、あるいは識別力が極めて弱いものである。 上記のとおり、本件商標においては、「ART」は識別力を有さず、本件商標中「MEISTER」は、引用商標と同一の「MEISTER」であるので、称呼及び観念において類似する。 そして、申立てに係る商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似する。 したがって、本件商標は、申立てに係る商品について、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 引用商標の周知著名性について 申立人は、スイスにおいて1897年から宝飾品を製造しており、創業以来120年以上の伝統があり、ブライダル・リングとジュエリー製造において、ヨーロッパのリーダー的存在である(甲12)。 申立人のスイスにおける売上げと指輪(以下「申立人商品」という。)の販売個数は、2018年から2023年において、約14,000個ないし約18,000個、約13億4,000万円ないし約16億4,000万円で推移している。 また、申立人は、国際的なプロダクトデザイン賞である「レッド・ドット・デザインアウォード」(1996年〜1998年、2000年、2004年〜2006年、2009年、2010年)、世界で最も権威のあるデザイン賞の一つである「アイエフデザインアウォード」(2000年、2002年)、「ウェディングアウォード スイス」(2016年、2019年、2020年)等を受賞している(甲13〜甲15)。 申立人のスイスでの売上げ、売上個数、数々の受賞歴からも、申立人の名称でもある「MEISTER」が著名であることは明らかである。 我が国においては、少なくとも2008年以降販売を行っており(甲16、日本へのインボイスの写し)、日本全国各地において、大型商業施設等に店舗を出店し、また、個別の店舗を経営している(甲12、甲17、甲18〜甲33)。 店舗で販売される宝飾品は、「世界初の継ぎ目のない鍛造リング」として広く知られている(甲18、甲26、甲34)。 また、結婚式場や結婚式の衣装・宝飾品に関する情報である「ゼクシィ」や「マイナビウェディング」のインターネット記事においても、結婚指輪の情報として、申立人が鍛造結婚指輪ブランドとして世界的に有名なブランドであることが記載されている(甲35、甲36)。 インターネット動画サイトYouTubeにも、申立人商品に関して、その特殊な製造工程について説明する動画が多数アップロードされている(甲37、甲38)。 そして、結婚指輪の口コミサイト「Ringraph」における申立人商品の口コミ・評判として、2015年から投稿が挙がっている(甲39)。 我が国における申立人商品の販売実績は、2018年から2023年において、772個ないし1,454個、約6,000万円ないし約1億3,000万円で推移している。 以上から、本件商標の登録出願時及び登録査定時に引用商標が外国及び我が国において著名であったことは明らかである。 なお、申立人は、引用商標1をスイス、日本のほか、中国、リヒテンシュタイン、ノルウェー、ロシア及びトルコにおいて、引用商標2をスイス及び日本のほか、オーストリア、欧州、ドイツ、リヒテンシュタイン、ノルウェー、トルコ及び米国において登録している(甲40)。 イ 出所の混同を生ずるおそれについて 本件商標は、著名商標「MEISTER」を一部に含むものであり、その指定商品も引用商標の指定商品と同一又は類似するものである。商標審査基準及び判決(甲41〜甲43)からも、著名商標を一部に含む本件商標は、出所の混同を生ずるおそれがある。 したがって、本件商標は、申立てに係る商品について、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第19号該当性について 引用商標は、スイスにおいて120年以上にわたり、その指定商品に使用されている著名な商標であり、数々の受賞歴からも引用商標には多大なる申立人の営業努力による信用の蓄積がある(甲12、甲13)。 引用商標とその指定商品との関係で識別力のない「ART」の語が付加されたにすぎない本件商標が、申立人と何ら関係のない第三者によって使用された場合、申立人の商標の出所表示機能が希釈化され、また、それに化体した信用、名声が毀損されるおそれがある。 また、著名である引用商標を一部に含む標章を採択したことは、本件商標権者の名声及び信用にただ乗りしようという意図があったからと推認される。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性 ア 申立人の主張及び提出証拠によれば、以下のとおりである。 (ア)申立人は、スイスにおいて1897年から宝飾品を製造している企業である(甲12)。 (イ)申立人は、ドイツのデザイン団体が主催する国際的なプロダクトデザイン賞である「レッド・ドット・デザインアウォード」(1996年〜1998年、2000年、2004年〜2006年、2009年、2010年)のほか、「アイエフデザインアウォード」(2000年、2002年)、「ウェディングアウォード スイス」(2016年、2019年、2020年)などの賞を受賞している(申立人の主張、甲13〜甲15)。 (ウ)申立人のスイスにおける申立人商品の販売個数及び売上げは、2018年から2023年において、約14,000個ないし約18,000個、約13億4,000万円ないし約16億4,000万円で推移している(申立人の主張)。 なお、当該販売実績が、引用商標を使用した申立人商品に係るものであるかは確認できない。 (エ)「MEISTER POS Japan」と題する申立人の日本国内店舗に関する資料(2023年8月1日作成)によれば、我が国において、申立人の既存店舗及び新規店舗を合わせて計39店舗存在し(甲17)、それらの店舗において、引用商標を使用した申立人商品が取り扱われている(甲18〜甲33)。 (オ)我が国において、2008年に何らかの商品に係る取引が行われたことはうかがえるが(申立人の主張、甲16)、その詳細は不明である。 また、2018年から2023年において、我が国における申立人商品の販売個数及び売上げは、772個ないし1,454個、約6,000万円ないし約1億3,000万円で推移している(申立人の主張)。 なお、当該販売実績が、引用商標を使用した申立人商品に係るものであるかは確認できない。 (カ)引用商標を使用した申立人商品について、結婚式関連のインターネット記事において、例えば、「鍛造結婚指輪ブランドとして 世界をリードする MEISTER・・・」(甲35)、「スイスの伝統的ジュエリーメーカー、MEISTER(マイスター)製の結婚指輪。」(甲36)と記載されている。 また、YouTubeにおいて、申立人商品の鍛造方法が紹介され(甲37、甲38)、「Ringraph」の口コミサイトにおいて、申立人商品を購入した者の2015年から2023年にかけての口コミが14件取り上げられている(甲39)。 イ 上記アによれば、申立人は、スイスにおいて1897年から宝飾品を製造している企業であり、1996年から2020年にかけて、ドイツなどで開催された複数のデザイン賞を受賞していることがうかがえ、我が国において、申立人商品を取り扱う実店舗が計39店舗存在し、それらの店舗において、引用商標を使用した申立人商品が取り扱われていること、引用商標を使用した申立人商品は、ウェディング関連のインターネット記事、YouTube及び口コミサイト等で取り上げられたことは認められる。 しかしながら、提出された証拠によっては、我が国及びスイスにおける申立人商品の販売実績が、引用商標を使用した申立人商品に係るものであることを確認できず、当該主張を客観的に裏付ける証拠も確認できない。そして、当該販売実績が引用商標を使用した申立人商品に係るものであったとしても、申立人商品分野の市場シェアが確認できないため、申立人主張の申立人商品の販売実績について評価し得ない。 また、引用商標を使用した申立人商品が、結婚式関連のインターネット記事、YouTube及び口コミサイト等に掲載されたとしても、それらの記事や口コミサイトの掲載回数は多いとはいえない上、ほかにメディアを利用した積極的な広告宣伝実績などの存在は具体的に把握できず、我が国及び外国において、引用商標の具体的な使用方法、広告方法等は明らかではないから、引用商標に対する需要者の認識の程度を把握することができない。 そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたとは認めることができない。 (2)商標法第4条第1項第11号該当性について 本件商標は、上記1のとおり、「MEISTERART」の欧文字を書してなるところ、その構成各文字は、まとまりよく一体に表されており、本件商標全体から生じる「マイスターアート」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。 そして、本件商標の構成中「ART」の文字が「芸術、美術、美術品」(甲5)等の意味を有する親しまれた語であるとしても、本件商標の上記構成及び称呼からすれば、これに接する需要者は、本件商標の構成中「ART」の文字を捨象し、殊更「MEISTER」の文字のみに着目するというよりは、本件商標を一体不可分のものとして認識し、把握するとみるのが相当である。 そうすると、本件商標は、その構成文字に相応した一連の称呼のみを生じるものと判断するのが相当である。 また、本件商標は、一般の辞書等に載録が認められないものであるから、特定の観念は生じない。 したがって、本件商標は、「マイスターアート」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 そして、本件商標と引用商標とを比較するに、両者は、「ART」の文字の有無の差異を有し、その差異により、称呼においても、「アート」の音の有無に差異を有するものであるから、両者は外観及び称呼において明確に区別し得るものであり、その他、両商標が類似するというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 以上のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であるから、本件商標の指定商品中の申立てに係る商品が引用商標の指定商品と同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 引用商標の周知性について 引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたとは認めることができないものである。 イ 本件商標と引用商標の類似性の程度 本件商標と引用商標は、上記(2)のとおり、非類似の商標であるから、本件商標と引用商標との類似性の程度は低いといえる。 ウ 申立てに係る商品と申立人の業務に係る商品との関連性及び需要者の共通性について 申立てに係る商品は、上記3のとおり、「身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,宝飾品」であるところ、申立てに係る商品中「身飾品、宝飾品」と申立人の業務に係る商品「指輪」は、同一又は類似の商品であるから、商品の関連性を有し、需要者が共通するといえる。 エ 出所の混同のおそれについて 上記アないしウからすると、申立てに係る商品と申立人の業務に係る商品とは関連性を有し、需要者を共通にするとしても、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたとは認められず、本件商標と引用商標との類似性の程度が低いものである。 そうすると、本件商標は、その商標権者がこれを申立てに係る商品について使用しても、これに接する需要者が、引用商標を連想、想起することはなく、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 オ 小括 したがって、本件商標は、申立てに係る商品について、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第19号該当性について 引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標であり、さらに、上記(3)のとおり、本件商標は、本件商標権者が申立てに係る商品について使用しても、これに接する需要者に引用商標を連想、想起させるものでもない。 また、申立人が提出した証拠からは、本件商標が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的証拠も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 (5)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、申立てに係る商品について、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲(引用商標2) (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2024-09-19 |
出願番号 | 2023032972 |
審決分類 |
T
1
652・
261-
Y
(W14)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
板谷 玲子 |
特許庁審判官 |
小田 昌子 鈴木 雅也 |
登録日 | 2023-09-15 |
登録番号 | 6736864 |
権利者 | Kweather Japan株式会社 |
商標の称呼 | マイスターアート、マイスター |
代理人 | 桶川 美和 |
代理人 | 塚田 美佳子 |
代理人 | 山田 薫 |