• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W44
管理番号 1415479 
総通号数 34 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2024-10-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2023-12-28 
確定日 2024-09-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第6281594号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第6281594号商標の指定商品及び指定役務中、第44類「人材派遣又は請負による医療相談,人材派遣又は請負による医療施設の提供,人材派遣又は請負による臨床検査,人材派遣又は請負による訪問診療並びにこれに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による訪問診療の媒介・手配又は取次ぎ並びにこれに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による診療に関する情報の提供,人材派遣又は請負による在宅医療に関するコンサルティング,人材派遣又は請負による在宅療養者に対する看護及び医療相談並びにこれらに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による在宅医療に関する情報の提供,医療看護並びにこれに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による在宅看護における補助並びにこれに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による看護の指導,人材派遣又は請負による看護に関する情報の提供,美容,理容,人材派遣又は請負による医業,医療情報の提供,健康診断,人材派遣又は請負による歯科医業,人材派遣又は請負による調剤」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6281594号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成よりなり、令和元年6月28日に登録出願、第44類「人材派遣又は請負による医療相談,人材派遣又は請負による医療施設の提供,人材派遣又は請負による臨床検査,人材派遣又は請負による訪問診療並びにこれに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による訪問診療の媒介・手配又は取次ぎ並びにこれに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による診療に関する情報の提供,人材派遣又は請負による在宅医療に関するコンサルティング,人材派遣又は請負による在宅療養者に対する看護及び医療相談並びにこれらに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による在宅医療に関する情報の提供,医療看護並びにこれに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による在宅看護における補助並びにこれに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による看護の指導,人材派遣又は請負による看護に関する情報の提供,美容,理容,入浴施設の提供,入浴施設の提供に関する情報の提供,庭園樹の植樹,庭園又は花壇の手入れ,肥料の散布,雑草の防除,有害動物の防除(農業・園芸又は林業に関するものに限る。),あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり,人材派遣又は請負による医業,医療情報の提供,健康診断,人材派遣又は請負による歯科医業,人材派遣又は請負による調剤,栄養の指導,動物の飼育,動物の治療,動物の美容,介護,植木の貸与,農業用機械器具の貸与,医療用機械器具の貸与,漁業用機械器具の貸与,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与,芝刈機の貸与」のほか、第16類、第35類、第41類及び第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同2年8月19日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第17号証(枝番号あり。以下、証拠の表記にあたっては、「甲○」又は「乙○」と表記する。)を提出した。
2 請求の理由
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第44類「人材派遣又は請負による医療相談,人材派遣又は請負による医療施設の提供,人材派遣又は請負による臨床検査,人材派遣又は請負による訪問診療並びにこれに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による訪問診療の媒介・手配又は取次ぎ並びにこれに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による診療に関する情報の提供,人材派遣又は請負による在宅医療に関するコンサルティング,人材派遣又は請負による在宅療養者に対する看護及び医療相談並びにこれらに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による在宅医療に関する情報の提供,医療看護並びにこれに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による在宅看護における補助並びにこれに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による看護の指導,人材派遣又は請負による看護に関する情報の提供,美容,理容,人材派遣又は請負による医業,医療情報の提供,健康診断,人材派遣又は請負による歯科医業,人材派遣又は請負による調剤」(以下「本件請求役務」という。)について、継続して3年以上(2021年1月22日から2024年1月21日まで。以下「要証期間」という。)日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
3 答弁に対する弁駁
(1)乙1(使用標章1)について
ア 要証期間内に使用標章1を使用しているか不明である
被請求人は、ウェブサイトトップ画面に使用標章1(以下、第3の2(2)アを参照)が表示されていることは主張しているものの、要証期間内に使用標章1を使用していることを示す日付付きの証拠を何ら提示していない。
以上より、乙1は、要証期間内に使用標章1を使用していることを証明するものではない。
イ 使用標章1は自他商品識別機能、出所表示機能を果たす態様で用いられていない
(ア)「&メディカル!」が「理念」であることの自認
被請求人は、2020年3月発行のCaring Update Report(甲2)において、「2018年からは、SSMを通じて介護業界に長期的に定着する人を「フレンド」(※)と呼び、フレンドを増やし続けることで社会課題に貢献するという理念「&メディカル!」をかかげています。」と述べ、使用標章1の文字に対応する「&メディカル!」が「理念」であることを自認している。
(イ)使用標章1の目立たない位置での配置
乙1における使用標章1の使用態様をみると、ウェブサイトトップ画面(乙1)においては標章「&メディカル!」の表記が見られるものの、表示画面の右上部に配置されている医療従事者と思しき人物画像の腹部付近に配置され、表示画面上では商標として表示するには極めて不自然なほどに目立たない右隅の位置に配置されている。
(ウ)下層ページでの使用標章1の不使用
また、乙1に示されるウェブサイトトップ画面においてボタンをクリック又はタップすることで表示される下層ページを参照しても、標章「&メディカル!」の使用はない(甲3〜甲12)。
(エ)広く用いられる商標の表示態様
ウェブサービスにおいて広く用いられる商標の表示態様は、表示画面の左上部になる(甲13〜甲17)。
乙1(ウェブサイトトップ画面)、甲3から甲6、甲9から甲12において、共通して標章「スタッフサービス・メディカル」が表示画面の左上部に表示されており、ウェブサービスにおいて広く用いられる商標の表示態様と共通する。
(オ)小括
以上より、標章「&メディカル!」は、被請求人自らが「理念」であることを自認するものであり、当該標章の使用態様は、乙1(ウェブサイトトップ画面)におけるその表示位置及び下層ページでの不使用の態様から、ウェブサービスにおいて広く用いられる商標の表示態様ではなく、専ら「理念」を掲げるにすぎない態様であることから、自他商品識別機能、出所表示機能を果たす態様で用いられているものとはいえない。
ウ 使用標章1は使用役務1(以下、第3の2(2)アを参照)に係る役務の提供を受ける者が利用するウェブサイトで使用されていない
使用役務1の各指定役務は、いずれも「人材派遣又は請負」を前提とする役務であり、需要者(すなわち、役務の提供を受ける者)は「派遣先企業」である。
ここで、乙1が示すウェブサイトは、人材の派遣を求める「派遣先企業」を検索することが可能な検索サービスであり、「派遣先企業」に向けたサービスというよりはむしろ、求職者に向けた検索サービスであるといえ、「求人情報の提供」に該当するサービスである。また、上記で述べたとおり、当該ウェブサイトの下層ページにおいて標章「&メディカル!」の使用はない。
よって、乙1は、使用役務1の各指定役務と同一又は類似の役務に対して使用標章1を使用することを証明するものではない。
エ 結論
以上より、要証期間内における使用標章1の使用は証明されていない。仮に、要証期間内における使用標章1の使用が証明されたとしても、標章「&メディカル!」は、被請求人自らが「理念」であることを自認しており、当該標章の使用態様は、乙1(ウェブサイトトップ画面)におけるその表示位置及び下層ページでの不使用の態様から、ウェブサービスにおいて広く用いられる商標の表示態様でなく、専ら「理念」を掲げるにすぎない態様であることから、自他商品識別機能、出所表示機能を果たす態様で用いられているものとはいえない。また、仮に使用標章1が自他商品識別機能、出所表示機能を果たす態様で用いられているとしても、それは役務「求人情報の提供」に対して自他商品識別機能、出所表示機能を果たす態様で使用されているといえる。
よって、使用標章1の使用は、商標法第2条第3項第7号に規定する使用に該当しない。
(2)乙2(使用標章2及び3。以下、第3の2(2)イを参照。)について
ア 要証期間内に使用標章2及び3を使用しているか不明である
被請求人は、使用標章2及び3を表示するパンフレット(乙2)の作成配布を主張しているものの、パンフレットそのものに発行日などの日付は存在せず、また、業務委託契約書(乙3)及びパンフレットに関する見積書(乙4)が提示されているものの、これらには営業ツール及びHTMLメールの作成開発に関する記述しかなく、当該営業ツールが当該パンフレットであることを示す記述は一切ない。
以上より、乙2から乙4は、要証期間内に使用標章2及び3を使用していることを証明するものではない。
イ 使用標章2及び3の使用は、商標法第2条第3項第3号及び同項第4号に規定する使用に該当しない
商標法第2条第3項第3号は、役務の提供を受ける者が利用するために提供される物(利用に供する物)に標章を付する行為が標章の使用に該当することを規定するものであり、同項第4号は標章が付された物(利用に供する物)を用いて役務を提供する行為を使用と規定する。
つまり、使用標章2及び3の使用が商標法第2条第3項第3号及び同項第4号に当該するためには、パンフレット(乙2)がそれらに規定する「利用に供する物」に該当する必要がある。
ここで、当該パンフレット(乙2)は、1頁目は、パンフレットの表紙であり、2頁目は、具体的な人材派遣先が挙げられ、各派遣先担当者による職場紹介が記載され、3頁目は、本件通常使用権者のサービスを利用した仕事探しのステップの紹介と在籍者数(フレンド人数)の情報が記載され、4頁目は、本件通常使用権者から在籍者及び在籍希望者のメッセージが記載され、5頁目は、在籍者(フレンド)の感想が記載され、6頁目は、本件通常使用権者の企業情報が記載されているだけで、在籍者及び在籍希望者に向けられた求人情報的性質のパンフレットである。
以上を踏まえると、当該指定役務に係るサービスの提供に当たりその提供を受ける派遣先企業(役務の提供を受ける者)の利用に供する物に当該パンフレットが該当するとはいえない。
ウ 小括
以上より、当該指定役務に係るサービスの提供に当たりその提供を受ける派遣先企業(役務の提供を受ける者)の利用に供する物に当該パンフレットが該当する事実及び当該パンフレットを用いて当該サービスを提供している事実は乙2には見当たらないので、使用標章2及び3の使用は、商標法第2条第3項第3号及び同項第4号に規定する使用に該当しない。
エ 使用標章2及び3の使用は、商標法第2条第3項第8号に規定する使用に該当しない
被請求人は、商標法第2条第3項第8号に基づく使用を主張してはいないものの念のため検討すると、使用役務2の各指定役務は、いずれも「人材派遣又は請負」を前提とする役務であり、需要者は「派遣先企業」である。
上述のとおり、当該パンフレット(乙2)は、在籍者及び在籍希望者に向けられた求人情報的性質のパンフレットであり、需要者である「派遣先企業」に向けて使用役務2の各指定役務に係るサービスの情報を提供する広告などの書類ではない。
よって、使用標章2及び3の使用は、商標法第2条第3項第8号に規定する使用に該当しない。

第3 被請求人の主張
1 答弁の趣旨
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1から乙4を提出した。
2 答弁の理由
(1)本件商標権者(被請求人)及び本件通常使用権者について
本件商標権者(被請求人)は、本件商標権に基づく通常使用権者である株式会社スタッフサービスの経営管理を行うことを目的として設立された。同社は、顧客に対して、事務職・技術者・ITエンジニア・介護・看護・医療事務・製造分野の様々なスキルや経験を持つ人材を派遣することを目的として設立された我が国有数の人材総合企業である。
被請求人は、株式会社スタッフサービスに対して、本件商標権に基づいて通常使用権を許諾した。
(2)本件通常使用権者が、要証期間内に本件指定役務について本件商標を使用していること
ア 本件商標に関する使用状況1(ウェブサイトトップ画像)
本件通常使用権者は、要証期間に該当する2015年5月より、継続して看護・介護・医療事務等の医療従事者を対象とする人材派遣を目的として「スタッフサービス・メディカル」の名称で事業(以下「本件事業」とする。)を営んでおり、さらに、本件通常使用権者自身が本件事業に関するウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」とする。)を管理運営する。
本件ウェブサイトトップ画面(乙1)上の右上部に配置されている医療従事者と思しき人物画像の腹部付近に本件商標と同一の商標(以下「使用標章1」とする。)が表示されていることが一見して認識、把握できる。
また、本件通常使用権者は、本件商標と同一の使用標章1をもって、医療従事者の人材派遣業務の一環として広くこれに関する情報の提供(以下「使用役務1」とする。)を行っている。この使用役務は、本取消審判の請求対象である役務の区分第44類「人材派遣又は請負による在宅療養者に対する看護及び医療相談並びにこれらに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による在宅医療に関する情報の提供,医療看護並びにこれに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による在宅看護における補助並びにこれに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による看護の指導,人材派遣又は請負による看護に関する情報の提供」に該当する。
さらに、本件通常使用権者による使用標章1のウェブサイトトップ画面における表示行為は、「電磁的方法・・・により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」にあたり、商標法第2条第3項第7号における商標の使用行為に該当する。
したがって、本件通常使用権者は、要証期間内に、本件請求役務と同一の使用役務について、本件商標と同一の使用標章1を使用した。
イ 本件商標に関する使用状況2(パンフレット)
次に、本件通常使用権者は、本件事業の展開に際して、顧客に対して、本件事業の内容を周知させるべくパンフレット(乙2)を作成の上、これを配布している。
当該パンフレットの表紙最下部及び見開き右頁下部において、本件商標と同一の商標(以下、表紙最下部における商標を「使用標章2」、見開き右頁下部における商標を「使用標章3」とする。)を表示する。
さらに、当該パンフレットは、本件通常使用権者が、本件事業に関する営業ツールの開発を委託したT社によって作成されたものである。本件通常使用権者とT社との業務委託契約書(乙3)及びパンフレットに関する見積書(乙4)の日付がともに「2021年(令和3年)2月7日」であり、要証期間内であることが一見して認識、理解できる。
また、本件通常使用権者は、本件商標と同一の使用標章2及び3をもって、医療従事者の人材派遣業務(以下「使用役務2」とする。)を行っている。この使用役務は、本取消審判の請求対象である役務の区分第44類「人材派遣又は請負による在宅療養者に対する看護及び医療相談並びにこれらに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による在宅医療に関する情報の提供,医療看護並びにこれに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による在宅看護における補助並びにこれに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による看護の指導,人材派遣又は請負による看護に関する情報の提供」と同一である。
さらに、本件通常使用権者による使用標章2及び3のパンフレットにおける表示行為は、「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為」にあたり、商標法第2条第3項第3号における商標の使用行為に該当する。
また、本件通常使用権者は、パンフレットを用いて、顧客に対して、医療従事者の人材派遣業務(使用役務2)を行っているため、当該行為は「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」にあたり、商標法第2条第3項第4号における商標の使用行為に該当する。
したがって、本件通常使用権者は、要証期間内に、本件請求役務と同一の使用役務について、本件商標と同一の使用標章2及び3を使用(商標法第2条第3項第3号及び同項第4号)するものである。
ウ 小括
以上より、本件通常使用権者は、要証期間内に、本件請求役務と同一の使用役務について、本件商標と同一の使用標章1から3を使用(商標法第2条第3項第3号、同項第4号及び同項第7号)するものである。
(3)結語
以上に述べたように、被請求人の提出に係る乙各号証を勘案すれば、本件商標は、本件通常使用権者によって、要証期間内において、本件指定役務について使用されているといえる。

第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び提出証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)本件商標権者は、株式会社スタッフサービス(以下「本件使用者」という。)の経営管理を行うことを目的として設立された会社であり、同社は、顧客に対して、事務職、技術者、ITエンジニア、介護、看護、医療事務、製造分野の様々なスキルや経験を持つ人材を派遣することを目的として設立された人材総合企業である(被請求人の主張)。
本件商標権者は、本件使用者に対して、本件商標の通常使用権を許諾したとされる(両当事者に争いはない)。
(2)本件使用者による「介護・看護・医療事務のお仕事情報サイト オー人事スタッフサービス・メディカル」のウェブサイト(2024年3月25日印刷。以下「本件ウェブサイト」という。)には、「未経験」、「週2〜3日から」、「正社員を目指す」などの記載や、「カンタン1分Web登録」、「カンタンお仕事検索」などの項目のほか、別掲2のとおりの構成で図形及び「&メディカル!」の文字を表してなる商標(以下「本件使用商標1」という。)が表示されている(乙1)。
(3)ア 本件使用者のメディカル事業本部が作成した「〜転職・復職を全力サポート〜あなたの「はたらく」を笑顔に。」と題するパンフレット(被請求人は2021年2月作成と主張する。以下「本件パンフレット」という。)には、「あなたの希望をかなえる仕事探し、スタッフサービス・メディカルがお手伝いします。」などの表紙の記載のほか、別掲3のとおりの構成で図形及び「&メディカル!」の文字を表してなる商標(以下「本件使用商標2」という。)が掲載されており、その他、職場紹介、派遣スタッフのインタビュー記事、2020年3月現在の会社情報(有効登録数、取引先件数、就業者数など)、「「カンタンWeb登録」もしくは「お仕事相談会を予約」からお申し込み下さい。」などの記載が掲載されている(乙2)。
イ 本件使用者は、T社との間において、営業ツール開発を受託業務とする業務委託契約を2021年2月7日に締結(乙3)、同日付けでT社作成の「営業ツール」(営業ツールテキスト調整・1ページデザイン調整)などに関する見積書を受けている(乙4)。
2 上記の認定事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)本件使用者は、本件商標権者とは経営管理関係のあるグループ企業であり、本件商標権者が本件使用者に本件商標の通常使用権を許諾したとの事実関係について両当事者に争いはないから、本件商標の通常使用権者といえる。
(2)本件商標と本件ウェブサイト又は本件パンフレットに表示された本件使用商標1及び本件使用商標2はいずれも、別掲1から別掲3のとおり、様々な色彩及び大きさの円や三角形を組み合わせた図形と「&メディカル!」の文字を表してなるから、それらは外観において同視される図形部分及び同一の構成文字を組み合わせてなる、社会通念上同一の商標と認められる。
(3)ア(ア)本件使用者は、様々な分野における人材派遣事業に従事する企業であるところ、本件ウェブサイトの記載内容や体裁によれば、当該ウェブサイトを通じて、介護、看護及び医療事務の分野の仕事情報を提供しているから、そこでは求職者に対して、「求人情報の提供」などの役務が提供又は広告されていると考えられる。
(イ)本件使用者作成の本件パンフレットは、その記載内容や体裁、同社の事業内容(人材派遣事業)によれば、そこでは求職者に対して、転職や復職、仕事探しを本件使用者がサポートすることが周知されているから、「求人情報の提供」の役務が広告されていると考えられる。
イ 他方、本件請求役務は、医療施設などの事業者に対して、人材派遣をすることで医療相談、臨床検査、訪問診療、診療情報などを患者に向けて提供したり、それらサービスに関するコンサルティングを提供する役務などである。
そうすると、本件請求役務と本件ウェブサイト及び本件パンフレットで広告又は提供されている役務は、それぞれ内容や性質、提供対象者が異なる別異のものである。
したがって、本件ウェブサイト及び本件パンフレットは、それに付された商標(本件使用商標1及び本件使用商標2)が本件請求役務について使用されていることを裏付けるものではない。
(4)ア 本件ウェブサイトは、2024年3月25日時点の表示態様は把握できるが、それ以前の表示態様を具体的かつ客観的に示す証拠は提出されていないから、要証期間において同様の態様で電磁的方法により提供されていたかどうかは明らかではない。
イ 本件パンフレットは、被請求人の主張によれば、T社との業務委託契約による2021年2月7日付けの見積書に基づき、同年2月に作成されたと主張されているところ、当該見積書が表示する「営業ツール」(営業ツールテキスト調整・1ページデザイン調整)なる項目が何らかの文章やデザインを調整する作業に相当することが漠然と理解できても、本件パンフレットの作成や印刷に係る業務に相当するかは必ずしも明らかではない。
なお、当該パンフレット記載の会社情報(2020年3月現在)は2021年2月に作成された冊子としては情報が若干古い印象を与えるし、また、見積書作成から1月以内というパンフレット作成や印刷作業も、その内容や体裁を踏まえると、極端に短い作業時間であるとの印象もあるなど、各証拠及び主張の整合性には違和感もある。
(5)以上を踏まえると、本件商標の通常使用権者である本件使用者が作成した本件ウェブサイト及び本件パンフレットは、本件商標と社会通念上同一の本件使用商標1又は本件使用商標2を表示しているとしても、本件請求役務について使用されているものではないから、それらが要証期間において電磁的方法で提供又は頒布されていたかにかかわらず、被請求人の提出証拠によっては、本件使用者が、要証期間に本件請求役務について本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたとは認められない。
したがって、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が、要証期間に、本件商標又はそれと社会通念上同一の商標を、本件請求役務について使用したと認めることはできない。
3 被請求人の主張について
被請求人は、本件使用者は、医療従事者の人材派遣業務の一環として広くこれに関する情報の提供を行っており、その役務は第44類「人材派遣又は請負による在宅療養者に対する看護及び医療相談並びにこれらに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による在宅医療に関する情報の提供,医療看護並びにこれに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による在宅看護における補助並びにこれに関するコンサルティング,人材派遣又は請負による看護の指導,人材派遣又は請負による看護に関する情報の提供」に該当し、本件ウェブサイトを通じて商標法第2条第3項第7号における使用行為を行っている旨、そして、本件パンフレットを通じて、同項第3号又は同項第4号における使用行為を行っている旨を主張する。
しかしながら、本件ウェブサイト及び本件パンフレットでは、上記2(3)ア(ア)及び(イ)のとおり、求職者に対して、「求人情報の提供」などの役務が提供又は広告されている一方で、本件請求役務は、医療機関などの事業者に対して、人材派遣をすることで医療相談、臨床検査、訪問診療、診療情報などを患者に向けて提供したり、それらサービスに関するコンサルティングを提供する役務などであるから、それぞれ内容や性質、提供対象者が異なる別異の役務である。
したがって、本件ウェブサイト及び本件パンフレットは、そこに付された商標(本件使用商標1及び本件使用商標2)が本件請求役務について使用されていることを裏付けるものではない。
なお、上記役務に係る事業活動は、医療施設などの事業者や患者の立場からは、人材派遣されたスタッフなどを通じて医療相談、臨床検査、訪問診療、診療情報などが提供されている側面があるとしても、本件ウェブサイト及び本件パンフレットは、そのような側面における役務を、事業者や患者などに向けて提供又は広告するものではなく、また、被請求人は、要証期間において、本件請求役務について本件商標を使用(役務の提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する行為、役務の提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為、映像面に標章を表示して役務を提供する行為、広告に標章を付して展示又は頒布する行為などの商標法第2条第3項各号に規定されている使用)していることを、具体的かつ客観的に示す証拠は提出していない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標を本件請求役務について使用をしていることを証明したものと認めることができない。
また、被請求人は、本件請求役務について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の本件請求役務についての登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲1(本件商標。色彩は原本を参照。)




別掲2(本件使用商標1)




別掲3(本件使用商標2)





(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。
審理終結日 2024-07-19 
結審通知日 2024-07-23 
審決日 2024-08-05 
出願番号 2019090571 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (W44)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 大島 勉
特許庁審判官 小林 裕子
阿曾 裕樹
登録日 2020-08-19 
登録番号 6281594 
商標の称呼 アンドメディカル、メディカル 
代理人 佐藤 大輔 
代理人 SK弁理士法人 
代理人 奥野 彰彦 
代理人 橘 哲男 
代理人 伊藤 寛之 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ