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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W29
管理番号 1414421 
総通号数 33 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2024-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2024-03-11 
確定日 2024-09-06 
異議申立件数
事件の表示 登録第6765784号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6765784号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6765784号商標(以下「本件商標」という。)は、「伊達御養卵」の文字を標準文字で表してなり、令和5年9月27日に登録出願、第29類「卵,加工卵」を指定商品として、同年11月20日に登録査定、同年12月26日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議申立ての理由として引用する登録第5663404号商標(以下「引用商標」という。)は、「御養卵」の文字を標準文字で表してなり、平成25年11月8日に登録出願、第29類「卵,加工卵」を指定商品として、同26年4月11日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
(1)本件商標について
本件商標の構成中「伊達」の文字は、「姓氏の一つ」を表す語であるところ、もと伊達氏の城下町として知られる宮城県仙台市においては、当該地域及びその周辺の地域で生産又は販売されている商品に、そのような商品であることを表示するために、「伊達(の)」の文字が使用されている実情があり、そうすると、本件商標に接する取引者、需要者は、本件商標から「宮城県仙台市及びその周辺の地域で生産又は販売される「御養卵」という名の商品」程の意味合いを理解し、これをその指定商品に使用したときは、その商品が「宮城県仙台市及びその周辺の地域で生産又は販売される御養卵という名の卵、宮城県仙台市及びその周辺の地域で生産又は販売される「御養卵」という名の卵を使用した加工卵」であることといった、商品の産地、販売地を表示した「御養卵」として認識するにとどまるというのが相当である。
このような論は、決して申立人の独断的なものではなく、甲第3号証に示すとおり、特許庁においても認められている審査・判断の基準であると思料する。
また、本件商標における「伊達」と「御養卵」との分離観察の可否について、甲第4号証に係る知財高裁における裁判例(平成30年(行ケ)10121号)によれば、「複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについては,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められないときには,その構成部分の一部を抽出し,当該部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許される場合があり,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許される」旨が判示されているとともに(甲4)、その具体的判断事例として、「「コーン」が本件指定商品である「とうもろこし」の意味を有する英語である「corn」の読みを片仮名で表したものであることは,わが国においても広く知られていることからすると,本件指定商品との関係では,本件商標の構成中,「コーン」の文字部分は,本件指定商品そのものを意味するものと捉えられ,その識別力は低いものといえる。他方で,上記のような意味を有する「キリン」は,本件指定商品との関係で,「コーン」よりも識別力が高く,取引者,需要者に対して強く支配的な印象を与えるというべきである。そうすると,本件商標の「キリン」の文字部分と「コーン」の文字部分とが,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとは認められず,本件商標から「キリン」の文字部分を要部として観察することは許されるというべきである。」旨、判断されている(甲4)。
上記裁判例と照らし合わせると、本件商標は、「伊達」と「御養卵」との複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解され、また、本件商標「伊達御養卵」における「伊達」が「宮城県仙台市及びその周辺の地域で生産又は販売される商品」を表したものであることは、我が国においても広く知られていることからすると、本件指定商品との関係では、本件商標の構成中「伊達」の文字部分は、単に本件指定商品の生産・販売地域そのものを意味するものと捉えられ、その識別力は低く出所識別標識としての称呼・観念が生じないものと認められ、逆に「伊達」を除いた「御養卵」の文字部分は、取引者や需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。そうすると、本件商標の「伊達」の文字部分と「御養卵」の文字部分とが、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとは認められず、本件商標から「御養卵」の文字部分を要部として観察することは許されるというべきである。
よって、本件商標の要部は、「御養卵」の文字部分であるといえる。
(2)商標法第4条第1項第11号について
上記(1)に述べたとおり、本件商標「伊達御養卵」の要部は「御養卵」の文字部分であり、同部分からは「ゴヨーラン」の称呼が生じ、観念においては、特定の観念を想起させない造語である。
引用商標は、「御養卵」の文字で構成され、「ゴヨーラン」の称呼が生じ、本件商標と同様、特定の観念を想起させない造語である。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観及び称呼が同一であり、かつ、ともに特定の観念を想起し得ず、観念によって両者を区別することはできないことから、両商標が類似することは明白である。
そして、本件商標と引用商標とがその指定商品を同じくすることは、明らかであるため、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(3)過去の出願・拒絶例
今回の証拠方法には挙げていないが、商願2021−143879に係る出願例も存する。当該出願商標は、その構成中に「伊達のフルーツ大福」の文字を有してなり、第30類「茶,コーヒー,ココア,菓子」等を指定商品として出願されたものであるが、第30類「茶,コーヒー,ココア,菓子」を指定商品として先行して出願された商願2020−107115に係る商標「フルーツ大福」と同一若しくは類似するとして、商標法第4条第1項第11号に該当すると認定・判断され、拒絶されている。
(4)商標法第4条第1項第15号について
本件商標「伊達御養卵」における「御養卵」は、申立人が指定商品でもある「卵,加工卵」について使用し、自己の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の出願前から需要者の間に広く認識されている引用商標「御養卵」を想起させるものであり、かつ、本件の指定商品は、引用商標の指定商品と同一の第29類「卵,加工卵」である。
そうすると、本件商標「伊達御養卵」をその指定商品について使用するときは、これに接する需要者は、その商品が、上記「御養卵」の産地を「宮城県仙台市及びその周辺の地域」に限定したもの、すなわち、地域限定といった付加価値の付いた商品であると認識するとともに、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の商品であると誤認し、その商品の需要者が商品等の出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

第4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
申立人は、「御養卵」の文字は、申立人が「卵,加工卵」について使用し、自己の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願前から需要者の間に広く認識されている旨主張しているものの、その事実を裏付ける証拠、例えば、引用商標を使用した商品の販売数量、売上高、市場シェアなどの販売実績や引用商標に係る広告宣伝の費用、方法、回数及び期間などについて、その事実を客観的に把握することができる証拠の提出はなく、これらを確認できる証左は見いだせない。
そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものであると認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、「伊達御養卵」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、その構成文字はすべて同じ書体、同じ大きさで等間隔に表されており、外観上まとまりよく一体的な印象を与えるものであって、本件商標全体から生じる「ダテゴヨーラン」の称呼は、よどみなく一連に称呼し得るものである。
なお、申立人は、構成中の「伊達」の文字は、「宮城県仙台市及びその周辺の地域で生産又は販売される商品」を表したものであることは、我が国においても広く知られていることからすると、単に商品の生産・販売地域そのものを意味するものと捉えられその識別力は低いから、「御養卵」の文字部分を要部として分離することができる旨主張しているが、「伊達」の文字は、「人目をひくように、派手に振る舞うこと。」、「北海道南西部、内浦湾に臨む市。福島県北東部、福島盆地にある市。」及び「姓氏の一つ。」(いずれも、株式会社岩波書店「広辞苑 第七版」)など複数の意味を有する多義語であり、本件商標の指定商品との関係において、直ちに商品の産地、販売地と認識されるものとはいえず、その他、本件商標の構成中の「伊達」の文字を捨象し、「御養卵」の文字部分を分離して抽出すべき事情は見いだせない。
そうすると、上記のとおりまとまりよく一体的に表された本件商標においては、その構成文字全体が一体不可分のものとして認識されるものといえ、当該文字は、辞書等に載録されている成語ではなく、直ちに何らかの意味合いを理解させるものではないから、一種の造語として認識されるものといえる。
したがって、本件商標からは、「ダテゴヨーラン」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
引用商標は、「御養卵」の文字を標準文字で表してなるものであり、その構成文字に相応し、「ゴヨーラン」の称呼を生じ、当該文字は、辞書等に載録されている成語ではなく、直ちに何らかの意味合いを理解させるものではないから、一種の造語として認識されるものであり、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標を比較するに、外観においては、語頭における「伊達」の文字の有無の差異を有するものであるから、明確に区別できるものである。
また、称呼においては、本件商標から生じる「ダテゴヨーラン」の称呼と、引用商標から生じる「ゴヨーラン」の称呼とは、語頭における「ダテ」の音の有無において明らかな差異を有するから、明瞭に聴別できるものである。
さらに、観念においては、本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標は、観念において比較できないとしても、外観において明確に区別でき、称呼において明瞭に聴別できるものであるから、両者の外観、称呼、観念によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
エ 小括
したがって、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが同一又は類似するものであるとしても、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時において、我が国の需要者の間で、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、広く認識されている商標ではなく、また、上記(2)ウのとおり、本件商標とは非類似であるから、両商標の類似性の程度は低いというべきである。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、需要者が引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じるおそれがある商標とはいえない。
その他、本件商標が商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべき事情を見いだすこともできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(2)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものではなく、その他にその登録が、同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

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異議決定日 2024-08-29 
出願番号 2023113229 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W29)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大森 友子
特許庁審判官 小俣 克巳
田中 瑠美
登録日 2023-12-26 
登録番号 6765784 
権利者 菅野 昌史
商標の称呼 ダテゴヨーラン、ダテゴヨー、ゴヨーラン、ゴヨー、ダテタマゴ 
代理人 福田 信雄 

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