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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W0103 |
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管理番号 | 1414420 |
総通号数 | 33 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-09-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2024-03-07 |
確定日 | 2024-08-30 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6769768号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6769768号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6769768号商標(以下「本件商標」という。)は、「プレラクトン」の文字を標準文字で表してなり、令和5年7月28日に登録出願、第1類及び第3類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同年12月26日に登録査定、同6年1月12日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第3条第1項第1号ないし同項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。 (1)商標法第3条第1項1号ないし同項第3号について ア ラクトン前駆体という観念について ラクトンは化学物質として広く知られる物質群の総称であり、Wikipediaにも「ラクトン(lactone)は、環状エステルのことで、同分子内のヒドロキシ基(−OH)とカルボキシ基(−COOH)が脱水縮合することにより生成する。」と記載されている(甲1)。 また、大学などで学ぶ有機化学には、必修の物質として教科書に登場する。例えば「マクマリー有機化学(中)第8版(東京化学同人)」の800頁には環状エステルとしてラクトンが記載されている。(甲2)。 つまり、「ラクトン」という用語は有機化学に接した者であれば、すぐに認識できる化学物質である。 また、「プレ−(pre−)」は接頭辞として「以前の」「前の」という意味を有するから、「プレラクトン」については「ラクトン」になる前の物質、すなわちラクトン前駆体という化学物質の原材料の普通名称にほかならず、本件商標の指定商品はいずれも化学物質が配合されるものである。 そうすると、本件商標の指定商品がラクトン前駆体を配合する場合、その商品に用いられる化学物質たる原材料を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当する。 イ 化学物質としての使用現状 甲第3号証はJSTが運営する論文等の検索サービス「J−GLOBAL」による検索結果であり、「プレラクトン」と入力すると、後述する特定の化学物質を示す語として、文献が33件、科学技術用語として2件、化学物質として5件、検索結果として表示された(令和6年2月1日現在)。 検索結果を何点か述べると「プレラクトンB」「プレラクトンC」「プレラクトンE」といった物質が挙げられる。 なお、同様に海外の論文検索サイト「ScienceDirect」にて、「プレラクトン」に対応する英語「prelactone」と入力した場合も、63件の論文・書籍などが検索結果として表示された(甲4、令和6年2月1日現在)。 これらの事実から「プレラクトン」は、日本のみならず海外においても化学物質として普通に用いられている名称であるといえる。 したがって、商標「プレラクトン」を、商品としてのプレラクトン(化学物質)に使用した場合、その商品の普通名称を普通に用いる方法で表示する標章のみからなる商標である。 また、仮にプレラクトン(名称)がプレラクトン(化学物質)の普通名称であるとは認められなかったとしても、甲第3号証及び同第4号証に示すとおり、プレラクトンの名称は少なくとも化学の分野では特定の化合物群を表す名称として慣用されている。 したがって、商標「プレラクトン」を、商品としてのプレラクトン(化学物質)に使用した場合、その商品について慣用されている商標といえる。 また、これらのプレラクトン(化学物質)を、化学品であってもプレラクトン(化学物質)以外の成分を含む化学品に使用する場合、又は化学品以外の指定商品に使用した場合は、その商品に用いられる化学物質たる原材料(プレラクトン)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当する。 (2)商標法第4条第1項第16号について 「プレラクトン」と呼ばれる化学物質が本件商標の指定商品に配合されていない場合には、表示されている物質が商品の原材料として使用されていないことから、商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標に該当する。 3 当審の判断 (1)「プレラクトン」の文字について ア 申立人の提出する証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。 (ア)Wikipediaには「ラクトン」の表題の下、「ラクトン(lactone)は、環状エステルのことで、同分子内のヒドロキシ基(−OH)とカルボキシ基(−COOH)が脱水縮合することにより生成する。」と記載されている(甲1)。 (イ)「マクマリー有機化学(中)第8版(東京化学同人)」の800ページには「環状エステル」として「ラクトン」が記載されている(甲2)。 (ウ)「JST運営の無料で使える情報検索サービス」のウェブサイトにおいて「プレラクトン」の語をキーワードとして検索すると、「プレラクトンV」、「プレラクトンB」、「プレラクトンC」等「プレラクトン(prelactone)」の文字を含む検索結果が、「文献」、「物質」及び「用語」として複数件表示された(甲3)。 (エ)「ScienceDirect」のウェブサイトにおいて、「プレラクトン」の英語「prelactone」をキーワードとして検索すると、「Prelactone V」、「Prelactone B」等「Prelactone」の文字を含む検索結果が複数件表示された(甲4)。 イ 上記アによれば、「ラクトン(lactone)」が化学物質の名称であること、及び本件商標の登録査定後ではあるものの、「プレラクトン(prelactone)」の語で論文等の検索サービスで検索すると、複数件の検索結果が表示されたことが認められる。 しかしながら、「プレラクトン」の文字は、辞書等に掲載されている語ではない。また、甲第3号証及び甲第4号証の検索結果に表示された「プレラクトン(prelactone)」の文字について、定義や説明文等の記載が見当たらないことから、これが如何なるものであるかが明らかではなく、当該文字が「ラクトン前駆体」を意味する語として使用されていることは確認できないし、本件商標の指定商品の普通名称、商品の品質、原材料等を表示するものとして使用されていることも確認できない。 さらに、職権をもって調査しても、「プレラクトン」の文字が特定の化学物質等を表す名称として一般に広く使用されている事実はもとより、取引者、需要者をして、特定の商品又はその商品の品質を直接的に表示したものとして認識されると判断するに足る事実を見いだすこともできない。 (2)商標法第3条第1項第1号、同項第2号及び同項第3号該当性について 商標法第3条第1項第1号は、「その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」については、商標登録を受けることができない旨定めているところ、その「普通名称」とは、取引界において、その名称が特定の業務を営む者から流出した商品又は役務を指称するのではなく、その商品又は役務の一般的な名称であると意識されるに至っているものをいうと解される。 商標法第3条第1項第2号は、「その商品又は役務について慣用されている商標」については、商標登録を受けることができない旨定めているところ、その「慣用されている商標」とは、同種類の商品又は役務について、同業者間において普通に使用されるに至った結果、自己の商品又は役務と他人の商品又は役務とを識別することができなくなった商標をいうと解される。 商標法第3条第1項第3号は、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。・・・)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」については、商標登録を受けることができない旨定めているところ、その商標が、その指定商品又は指定役務に使用されたときに、取引者又は需要者が商品又は役務の特徴等を表示するものと一般に認識するものをいうと解される。 そこで、「プレラクトン」の文字についてみるに、当該文字は、上記(1)のとおり、本件商標の指定商品の分野において、商品の一般的な名称であると認識されるものではなく、同業者間において普通に使用されるに至った結果、自己の商品と他人の商品とを識別することができなくなっているということもない。 また、申立人の提出に係る甲各号証を見ても、本件商標の指定商品の分野において、「プレラクトン」なる物質を原材料等とする商品が一般に提供されている事実は見いだせないから、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、それが商品の具体的な品質等を表したものとして認識するとはいい難い。 なお、申立人は、「プレ−(pre−)」は接頭辞として「以前の」「前の」という意味を有するから、「プレラクトン」については「ラクトン」になる前の物質、すなわち「ラクトン前駆体」という化学物質の原材料の普通名称である旨述べているが、「ラクトン前駆体」なる化学物質が一般に広く使用されている事実を確認できる証拠の提出はないから、申立人の上記主張は認めることができない。 してみれば、本件商標は、商標法第3条第1項第1号、同項第2号及び同項第3号のいずれにも該当しない。 (3)商標法第4条第1項第16号該当性について 本件商標は、上記(2)のとおり、具体的な商品の品質を表示するものではないから、その指定商品について、商品の品質の誤認を生ずるおそれはない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。 (4)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第1号ないし同項第3号、及び同法第4条第1項第16号のいずれにも該当するとはいえず、他にその登録が、同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2024-08-22 |
出願番号 | 2023084014 |
審決分類 |
T
1
651・
11-
Y
(W0103)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
大森 友子 |
特許庁審判官 |
清川 恵子 豊瀬 京太郎 |
登録日 | 2024-01-12 |
登録番号 | 6769768 |
権利者 | ロート製薬株式会社 |
商標の称呼 | プレラクトン |