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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W060719223742
管理番号 1414414 
総通号数 33 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2024-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2024-02-08 
確定日 2024-08-30 
異議申立件数
事件の表示 登録第6759464号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6759464号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6759464号商標(以下「本件商標」という。)は、「上エンクロ」の文字を標準文字により表してなり、令和5年2月28日に登録出願、第6類「鉄及び鋼,非鉄金属及びその合金,建築用又は構築用の金属製専用材料,金属製荷役用パレット,荷役用ターンテーブル,荷役用トラバーサー,金属製輸送用コンテナ,金属製金具」、第7類「金属加工機械器具,鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,機械要素(陸上の乗物用のものを除く。)」、第19類「陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物,リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,建造物組立てセット(金属製のものを除く。),土砂崩壊防止用植生板,セメント製品製造用型枠(金属製のものを除く。),プラスチック製建築専用材料」、第22類「繊維製の落石防止網」、第37類「建設工事」及び第42類「建築物の設計,測量,地質の調査,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計」を指定商品及び指定役務として、同年10月23日に登録査定、同年12月5日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号の規定に該当し、商標法第43条の3の規定により、取り消されるべきである旨申立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標が取り消されるべき理由
(1)エンドクローズ加工について
エンドクローズ加工とはデッキプレート(波形に形作られた床用の鋼板)やフラットデッキ(鉄筋コンクリート床の型枠用の鋼板)の端部をプレス加工により閉塞することを意味する。デッキプレートの端部を支持梁に載せやすくなる、デッキプレート端部からのコンクリート漏れを防止する、梁とデッキプレートの高さ関係を調整するという目的で広く建築材料業界で行われており(甲1、甲2)、建築材料業界においては「エンクロ」という略称で表され、一般的に用いられている。
(2)「上エンクロ」について
当業界において、デッキプレート等の上側をプレス加工したものを「エンクロ」と表現している。上側をエンクロすることによりコンクリート漏れを防止することに加え、梁に載せやすくなるという効果を得ることができる。つまり本件商標の「上」の語は通常のエンクロが上側になされることを考えると、あくまで確認的に付記されたにすぎない。
なお、プレス加工は向きや加工箇所を変更することが可能である。支持梁にどのように載せるかにより、適する加工内容が当然異なる。甲第1号証及び甲第2号証にあるとおり、その他にも単に加工の特徴を表したにすぎないが、逆側(下)を加工したものを「逆エンクロ」、片側のみを加工したものを「片エンクロ」、デッキプレート端部を上下方向から中間位置で閉塞プレス加工したものを「中間エンクロ」と称している。
さらに、これらのものは全て通常のエンクロが「上エンクロ」であり、それに対してどの向きや箇所に加工しているのかを表現している。この点に関しては、後述する特許公報中に「デッキプレートの長さ方向端部を上から押し潰して端部閉塞の梁載置部を形成したものが通常のエンクロデッキプレートであり、長さ方向端部を前記とは逆に下から押しつぶして端部閉塞の梁載置部を形成したものが、いわゆる逆エンクロタイプのデッキプレートである」との旨の記載があり、疑いの余地はない(甲7〜甲11)。
(3)本件商標のような語頭に加工の向きや箇所を表す語+「エンクロ」の語が、建築材料業界において普通に用いられている例について
本件商標のような語頭に加工の向きや箇所を表す語を冠した「エンクロ」の語が「デッキプレートやフラットデッキの端部を特定の向き又は箇所をプレス加工により閉塞すること」ほどの意味合いで普通に用いられている例が多数存在する。
ア インターネット記事(甲1、甲2)
イ 特許公報(甲4〜甲13)
ウ 仕様書(甲14〜甲16)
エ 社内資料(甲17、甲18)
このように、建築材料業界の人間が目を通す資料に、本件商標のように語頭に加工の向きや箇所を表す語+「エンクロ」の語が普通に用いられている。特に上述の公開特許公報に関してはそのような例が多数存在する。特許出願に係る書類はその性質上、その分野で一般的ではない用語を使うのは拒絶の理由に該当する可能性が存在することから妥当ではない(特許法第49条第4号)。
加えて、仕様書においては説明なく「中間エンクロ」及び「斜めエンクロ」の語が用いられており(甲14〜甲16)、商品のスペックを定める仕様書においてその有無をチェックボックス形式で選択させるということは、その製品の需要者にその事柄に関する知識が備わっていることを想定してのものと考えざるを得ない。
よって、本件商標は建築材料業界で一般的に用いられている「エンクロ」に加工の向きを付記しただけであり、実際に用いられていることを鑑みても(甲1、甲2)、商品役務の特徴を表すにすぎず、識別力のない商標に該当すると思料する。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標「上エンクロ」の語は、建築材料業界では「デッキプレートの端部をプレス加工により閉塞すること及び閉塞した製品」を意味する「エンドクローズ加工」の略語「エンクロ」に加工の向きを表す「上」を付記したにすぎないから、本件商標は、その指定商品・役務の取引者・需要者をして、「上側エンドクローズ加工又は上側をエンドクローズ加工された製品」といった意味合いを直接的に想起させる。
このため、本件商標は、その指定商品・役務中、上記に該当する商品等との関係においては単に商品等の特徴を表示するにすぎず、また、これ以外の商品等については商品等の特徴について誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の規定に該当し、その登録は取り消されるべきものと思料する。

第3 当審の判断
1 本件商標の商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、前記第1のとおり、「上エンクロ」の文字を標準文字により表してなるものである。
そして、本件商標の構成中、「エンクロ」の文字(語)は、申立人の提出に係る証拠及び同人の主張並びに職権による調査によれば、「エンドクローズ」のことであり、「エンドクローズ」とは、デッキプレート(波形に形作られた床用の鋼板)やフラットデッキ(鉄筋コンクリート床の型枠用の鋼板)の端部をプレス加工により閉塞することを意味し、建築材料の業界においては「エンクロ」という略称で表されていることが認められる。
しかしながら、「エンクロ」の文字に「上」の文字を冠した「上エンクロ」の文字が、全体として、商品の品質等又は役務の質等を表したものと認識されるとはいい難い。
申立人は、証拠として、「上エンクロ」の記載が認められる「エンドクローズ(通称:エンクロ)−JFデッキ編−」と題する2件のウェブサイトを提出しているが(甲1、甲2)、当該2件のウェブサイトは同一の内容であり、本件商標が商品の品質等又は役務の質等を表示するためのものとして、一般に使用されているという事実を認めるには、不十分なものである。
また、申立人は、語頭に加工の向きや箇所を表す語+「エンクロ」の語が公開特許公報に多数存在しており、本件商標は建築材料業界で一般的に用いられている「エンクロ」に加工の向きを付記しただけである旨主張している(甲4〜甲13)。
しかしながら、本件商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合、取引者、需要者によって商品の品質又は役務の質を表したものと一般に認識されるかどうかは、当該商標の構成やその指定商品又は指定役務に関する取引の実情を考慮して判断すべきであるところ(知的財産高等裁判所令和3年(行ケ)第10113号同4年1月25日判決、同裁判所同4年(行ケ)第10002号同年6月16日判決)、公開特許公報は、技術情報というべきであって、取引の実情を表すものとはいえない。
さらに、申立人は、証拠として、仕様書、カタログ及び社内報を提出しているが(甲14〜甲18)、これらの証拠によっては、「上エンクロ」の文字の使用は認められず、「中間エンクロ」の文字の使用が僅か2件(甲14、甲15)、「斜めエンクロ(斜エンクロ)」の文字の使用が僅か3件(甲16〜甲18)認められるのみであり、これらの証拠から、「上エンクロ」の文字が商品の品質等又は役務の質等を表したものと認識されるとは認められない。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品又は指定役務について使用しても、商品の品質等又は役務の質等を表したものと認識されるものとはいえず、自他商品又は役務の識別標識としての機能を果たし得るものである。
また、本件商標が商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがあるものというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商品の品質等又は役務の質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ではなく、また、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標でもないから、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。
2 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとはいえず、その登録は同法第3条及び同法第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえない。
他に、本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
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異議決定日 2024-08-22 
出願番号 2023020392 
審決分類 T 1 651・ 13- Y (W060719223742)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大橋 良成
特許庁審判官 山田 啓之
渡邉 あおい
登録日 2023-12-05 
登録番号 6759464 
権利者 日鉄建材株式会社
商標の称呼 カミエンクロ、ジョーエンクロ、ウエエンクロ 
代理人 弁理士法人きさ特許商標事務所 

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