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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W3543 |
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管理番号 | 1414405 |
総通号数 | 33 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-09-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-12-01 |
確定日 | 2024-09-05 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6738905号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6738905号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6738905号商標(以下「本件商標」という。)は、「CITY EXPRESS BY MARRIOTT」の文字を横書きしてなり、2022年(令和4年)10月19日にジャマイカにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、令和5年4月19日に登録出願、第35類「広告,フランチャイズシステムに基づくホテル・飲食店・バー・娯楽施設・運動施設・小売店の開業及び経営に関する助言,ホテル・飲食店・バー・娯楽施設・運動施設・小売店の事業の管理及び運営,小売業の管理に関する指導・助言,事業の管理に関する指導及び助言,事業の運営,ビジネスセンターの事業の管理,複写機の貸与,書類の複製,事務用機器及び事務用備品の貸与」及び第43類「ホテルにおける宿泊施設の提供,宿泊施設の提供,飲食物の提供,レストラン及びバーにおける飲食物の提供,ミーティング・会議及び展示のための多目的施設の提供,特別な日のための社交行事用の施設の貸与,ホテルの宿泊施設の予約の取次ぎ」を指定役務として、同年9月15日に登録査定され、同月22日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標が商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する商標は次のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。 (1)登録第4038698号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の態様 HOLIDAY INN EXPRESS 指定役務 第42類に属する商標登録原簿に記載の役務 登録出願日 平成5年7月7日 設定登録日 平成9年8月8日 (2)登録第5842473号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の態様 別掲1のとおり 指定役務 第43類に属する商標登録原簿に記載の役務 登録出願日 平成27年6月10日 設定登録日 平成28年4月15日 (3)国際登録第952876号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の態様 別掲2のとおり 指定役務 第43類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の役務 国際商標登録出願日 2007年(平成19年)12月14日 設定登録日 平成21年6月5日 (4)国際登録第953050号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の態様 別掲3のとおり 指定役務 第43類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の役務 国際商標登録出願日 2007年(平成19年)12月13日 設定登録日 平成21年6月5日 2 申立人が、本件商標が商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する「Express」の欧文字からなる商標(以下「引用商標5」という。)は、申立人及び申立人の親会社であるインターコンチネンタル・ホテルズ・グループ(InterContinental Hotels Group PLC。以下「IHG」という。)、並びに、そのグループ企業の周知著名なホテルブランド「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)を指称するものとして、日本及び外国の需要者の間で広く認識されていると主張するものである。 3 以下、引用商標1ないし引用商標5を総称して「引用商標」という場合がある。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第52号証を提出した。 1 世界的ホテルグループIHGと引用商標の使用実績及び有名性 (1)IHG 申立人は、IHGの100%子会社であるところ(甲11)、IHGは、ニューヨーク証券取引所に上場する英国法人であり(甲12)、売上高5,435億円、営業利益876億円、グループ従業員数約350,000人を有する(甲13)。1952年(昭和27年)には、アメリカ合衆国テネシー州のメンフィスに「ホリデイ・イン(Holiday Inn)」をオープンし、1956年には「ホリデイ・イン」の客室が30万室を突破し、当時、世界最大のホテルブランドとなった。1984年にはホリデイ・インが中国の北京にオープンし、グローバルに事業展開する世界的なホテルグループヘと成長していった。 2003年4月、ホテル部門が、現在の名称である「インターコンチネンタルホテルズグループ(InterContinental Hotels Group,IHG)」として独立。現在、IHGは、世界100カ国以上で、19ホテルブランドを所有又は運営するに至っている(甲11〜甲15)。 IHGは、70年以上に及ぶホテル事業者としての歴史、世界的な営業規模により、「世界5大ホテルグループ」の一つとして、広く認識されるに至っており(甲11、甲14、甲16)、東洋経済新報社発行「会社四季報業界地図2010年版」(甲17)には、ホテル業界に関するページに、外資系ホテル(グローバルオペレーター)として、マリオット、ヒルトンホテルズとともに、IHG(インターコンチネンタルホテルズグループ)が挙げられ、2008年実績として、ホテル数4,000以上、主なブランド:インターコンチネンタル、クラウンプラザ、ホリデイ・イン、と紹介されている。 また、成美堂出版発行「今がわかる未来がわかる業界地図2016−17年版」(甲18)においても、我が国のホテル業界のページに、「旅行&リゾート系」として、「IHG・ANA・ホテルズグループジャパン」(ホテル数29)が紹介されており、コロナ禍を経て、昨年発行された東洋経済新報社「会社四季報業界地図2024年版」(甲19)のホテル業界のページには、「世界大手」として、IHGが掲載され、「「インターコンチネンタル」ブランドなど、世界100カ国以上で6000ホテル、18ブランドを展開する。売上高5,435億円、営業利益876億円」と紹介されている。 IHGの2022年度の事業報告書「Anneal Report」(甲11)において、同グループが世界中で運営するホテル総数:6,164施設(部屋数:911,627室)、建設中のホテル数:1,859施設(部屋数:281,468室)と報告されている。 我が国においても、2006年より、ANAとのパートナーシップ(業務提携)を築いており(甲13、甲14、甲17、甲18、甲20)、現在では、インターコンチネンタル、キンプトン、ANA クラウンプラザ、ホテルインディゴ、ホリデイ・イン、ホリデイ・イン エクスプレス、vocoの7ブランドを、各都道府県(北海道、秋田、岩手、宮城、新潟、富山、石川、長野、東京、千葉、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、鳥取、愛媛、山口、大分、熊本、宮崎、沖縄)で展開するに至っている(甲21、甲22)。 このように、申立人をはじめとするIHGは、世界100カ国以上で6,164ホテル、19ブランドを展開する、世界のホテル業界を代表する企業グループの一つとして、長年にわたり営業活動を行っており、日本国内においても、ANAとの業務提携等を通じて全国各地にホテルを運営していることから、IHGの名称及びそのホテルブランドは、日本国内及び外国におけるホテルの需要者及び取引者の間で周知著名といえる。 (2)申立人の引用商標(ホリデイ・イン エクスプレス) IHGが世界中で運営するホテル総数:6,164施設(部屋数:911,627室)のうち、もっとも多くを占めるのが、ホテル数3,091、部屋数326,902室の「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)、その次が、ホテル数1,226、部屋数224,381の「Holiday Inn」(ホリデイ・イン)である(甲11)。 このため、IHGのホテルのうち、日本国内及び外国の需要者が最も頻繁に目にするブランドは、「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)又は「Holiday Inn」(ホリデイ・イン)といえる。 例えば、多くの日本人観光客やビジネスマンが頻繁に訪れるロサンゼルス(米国)やバンクーバー(カナダ)の人気ホテルとして、「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)や「Holiday Inn」(ホリデイ・イン)が、HISやトリップアドバイザーといった人気旅行代理店のウェブサイトに紹介されており(甲24、甲25)、同ホテルにおいては、ホテル名称が付された店舗看板が需要者に目立つ態様で、施設の壁や入口に大きく表示されており、ホテル業界における取引の実情に即した態様で引用商標が使用されている。 「Holiday Inn」(ホリデイ・イン)は、1952年から今日に至るまで、70年以上もの長きにわたり、ホテルの名称として使用されており(甲14、甲21、甲22、甲24、甲25)、日本国内においても、2001年の「ホリデイ・イン仙台」開業以来、20年以上も使用されている(甲13)。 インターネット検索エンジンGoogleを用いて「Holiday Inn」をキーワード検索したところ、約55,800,000件も検出された(甲26)。ロサンゼルスの人気ホテル上位の「Moxy」約14,600,000件(甲27)よりも圧倒的に多く、「Sheraton(シェラトン)」約65,900,000件(甲28)とも引けを取っていないことから、「Holiday Inn」(ホリデイ・イン)が、長年の使用実績により、IHGのホテル事業を表示するものとして、日本国内及び外国の需要者の間で広く認識されていることは、明らかである。 「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)は、「Holiday Inn」(ホリデイ・イン)の使用開始から38年後の1990年に、新たなサービススタイルを提供するホテルブランドとして誕生したものであり(甲14)、日本では、2021年12月に、「ホリデイ・イン エクスプレス 大阪シティセンター御堂筋」(所在地:大阪府大阪市)をオープンした(甲29)。 IHGの中でも、世界最大級のホテルブランド「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)の日本初進出ということが各種メディアを通じて報道され(甲29〜甲32)、ネットメディア、SNSでも話題となり、開店から2年程度しか経っていないものの、Googleキーワード検索では約291,000件も同ホテルに関するウェブサイトが検出されるに至っており(甲33)、Yahoo!トラベルが発表した「大阪のビジネスホテルランキング」において、「ホリデイ・イン エクスプレス大阪シティセンター御堂筋」は、13位に選ばれている(甲34)。 「Holiday Inn」(ホリデイ・イン)が、IHGのホテル事業を表示するものとして、日本国内及び外国の需要者の間で広く認識されていることから、「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)を目にした当該需要者であれば、ホテルの有名商標「Holiday Inn」(ホリデイ・イン)に、「Express」(エクスプレス)の文字が付加されたものと認識するだけでなく、「Express」(エクスプレス)の語の有無によって、「Holiday Inn」(ホリデイ・イン)とは異なるIHGのホテルブランドと認識することが容易に推測される。 そうすると、「Express」の文字部分についても、それ自体、世界5大ホテルグループの一つであるIHGが有する世界最大級のホテルブランド「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)を指称するものとして、日本国内及び外国の需要者の間で広く認識されているものといえる。 現に、日本国内のみならず、世界各国の「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)ホテルに掲げられた看板において、「Holiday Inn」の文字と「Express」の文字は、異なる色や大きさで書され、また、上下二段に配され、視覚上、両文字が明瞭に区別できる態様で使用されている(甲35)。 申立人は、上記使用態様に即した標章(引用商標2ないし4)を、日本においても商標登録している(甲5〜甲10)。 したがって、「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)の文字のみならず、現に使用する欧文字「Express」についても、それ自体、IHGの周知著名なホテルブランド「Holiday Inn」(ホリデイ・イン)又は「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)を指称するものとして、日本国内及び外国の需要者の間で広く認識されている。 このように、申立人をはじめとするIHGは、世界100カ国以上で6,164ホテル、19ブランドを展開する、世界のホテル業界を代表する企業グループの一つとして、長年にわたり営業活動を行っており、日本国内においても、ANAとの業務提携等を通じて全国各地にホテルを20年以上運営している。日本人の国内の延べ宿泊旅行者数が、コロナ禍前は毎年3億人強(なお、2023年の速報値は2億8,105万人。甲36)、日本人の海外旅行者数がコロナ禍前の2019年に過去最高の2,000万人を突破(甲37)し、ホテル(宿泊施設)が日本国民の社会生活と密接な存在になっていることを勘案すると、IHG及びそのホテルブランドが業界関係者のみならず、日本国内及び外国の需要者の間で広く認識されていることは明らかといえる。 とりわけ、「Holiday Inn」(ホリデイ・イン)は、IHG又はその前身が、1952年から今日に至るまで、70年以上もの長きにわたり、ホテルの名称として世界中で使用し続けており、さらに、「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)は、今や、IHGの中で世界最大級のホテルブランドとして、高い認知度・評判を世界中で獲得している。そうすると、両商標の周知著名性も相まって、本件商標の出願時(優先日)及び登録時において、引用商標5及び「Express」の文字部分は、IHGの業務に係るホテル事業又はそれに関連するサービス(以下「申立人役務」という。)を表示する商標として、日本国内及び外国の需要者の間で広く認識されていたものといえる。 2 本件商標を商標法第4条第1項第10号により取り消すべき理由 (1)商標の同一又は類似 本件商標は、「都市。市。」を意味する基本的な英単語「CITY」、「表現する。急行。」を意味する英単語「EXPRESS」(甲39)に、英語の前置詞「BY」と、「マリオットという人名」を意味する欧文字「MARRIOTT」(甲40)を結合したものと認識される。 そして、「CITY EXPRESS」は、特定の意味合いを有する英語ではないことから(甲41)、本件商標全体として、「マリオット(という名の人物)による都市の急行又は表現。」といった意味合いが認識される。 また、本件役務は、ホテル又は当該施設において提供されるサービスに関連するものであるところ、都市部に位置する大型のホテルのことを、一般的に「シティ・ホテル」と称している取引の実情が存在する(甲42〜甲44)。 そうすると、本件商標の前半の文字部分のうち、「CITY」は、本件役務との関係において、役務の提供場所や内容を表したものと認識され、それに続く「EXPRESS」の文字によって、自他役務識別標識としての機能を発揮し得ることから、本件指定役務に使用された本件商標を目にした需要者であれば、「CITY」の語よりも、「EXPRESS」の文字部分を手掛かりに、当該役務の出所を識別する可能性が高い。 上述したとおり、「Express」の文字からなる引用商標5は、IHGの周知著名なホテルブランド「Holiday Inn」(ホリデイ・イン)又は「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)を指称するものとして、日本国内及び外国の需要者の間で広く認識されていることから、当該文字に他の文字、すなわち、「CITY」、「BY」、「MARRIOTT」を結合した本件商標は、同号の審査基準に照らし、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、引用商標と類似するものと判断される。 なお、本件商標構成中の「CITY EXPRESS」の語は、特定の意味合いを有する英語ではないことから(甲41)、既成語の一部には該当しない。 したがって、引用商標5「Express」が、IHGのホテル事業を表示するものとして外国において周知であることが、我が国の需要者の間で広く認識されていること、本件商標が、引用商標に他の文字を結合した態様からなり、既成語の一部の関係にもないことから、両商標は類似する。 (2)役務の同一又は類似 本件役務である、第35類「広告,フランチャイズシステムに基づくホテル・飲食店・バー・娯楽施設・運動施設・小売店の開業及び経営に関する助言,ホテル・飲食店・バー・娯楽施設・運動施設・小売店の事業の管理及び運営,小売業の管理に関する指導・助言,事業の管理に関する指導及び助言,事業の運営,ビジネスセンターの事業の管理,複写機の貸与,書類の複製,事務用機器及び事務用備品の貸与」、第43類「ホテルにおける宿泊施設の提供,宿泊施設の提供,飲食物の提供,レストラン及びバーにおける飲食物の提供,ミーティング・会議及び展示のための多目的施設の提供,特別な日のための社交行事用の施設の貸与,ホテルの宿泊施設の予約の取次ぎ」は、いずれも、ホテル(宿泊施設の提供)やその運営、又は、当該施設において提供されるサービスに関連するものであるところ、IHGが引用商標を使用して展開するホテル事業又はそれに関連するサービス(例えば、フィットネスセンター設備、ビジネスサービス、朝食ビュッフェ・バーカウンターの提供、他の申立人役務。甲45)と一致していることから、両役務は同一又は類似する。 (3)小括 本件商標は、IHG又は申立人の未登録で周知な引用商標5に他の文字を結合した商標といえることから、引用商標5と類似する。また、本件役務と引用商標5を使用するホテル事業とは同一又は類似する。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 3 本件商標を商標法第4条第1項第11号により取り消すべき理由 (1)商標の同一又は類似 本件商標は、「都市。市。」を意味する基本的な英単語「CITY」、「表現する。急行。」を意味する英単語「EXPRESS」に、英語の前置詞「BY」と、「マリオットという人名」を意味する欧文字「MARRIOTT」を結合したものと認識される。そして、「CITY EXPRESS」は、特定の意味合いを有する英語ではないことから(甲41)、本件商標全体として、「マリオット(という名の人物)による都市の急行又は表現。」といった意味合いが認識される。 申立人が我が国において登録、使用し、周知著名性を獲得している引用商標1ないし4は、とりわけ、引用商標2ないし4の構成において、「Express」の文字部分は、他の文字「Holiday Inn」とは異なるフォント、大きさ、位置に書されており、外観上も分離して観察され得る。 引用商標1ないし4は、IHG又はその前身が、1952年から今日に至るまで、70年以上もの長きにわたり、ホテルの名称として世界中で継続的に使用し、周知著名性を獲得している「Holiday Inn」(ホリデイ・イン)の文字をその構成中に有する。 また、「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)は、今や、IHGの中で世界最大級のホテルブランド(甲11)として、世界中で高い認知度を獲得している。 そうすると、両商標の周知著名性も相まって、本件商標の出願時(優先日)及び登録時において、引用商標1ないし4の構成中の「Express」又は「EXPRESS」の文字部分は、IHGの業務に係る両ホテルブランドを区別する標識としてだけでなく、申立人役務を表示する商標として、日本国内及び外国の需要者の間で広く認識されていたものといえる。 したがって、引用商標1ないし4からは、「Express」又は「EXPRESS」の文字部分に相応した称呼、観念が生じる。 商標法第4条第1項第11号の審査基準には、一方の商標が、需要者の間に広く認識された他人の商標である場合、「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上のつながりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする」と規定されているところ、本件商標は、引用商標の要部である「EXPRESS」又は「Express」の文字に、他の文字「CITY」、「BY」、「MARRIOTT」を結合したものであることから、同基準に照らし、本件商標は、申立人の登録商標と類似する。 また、本件役務は、ホテル(宿泊施設の提供)、及び、当該施設において提供されるサービスに関連するものであるところ、都市部に位置する大型のホテルのことを、一般的に「シティ・ホテル」と称している取引の実情が存在する(甲42〜甲44)。そうすると、本件商標の前半の文字部分のうち、「CITY」は、本件役務との関係において、役務の提供場所や内容を表したものと認識され、それに続く「EXPRESS」の文字によって、自他役務識別標識としての機能を発揮し得ることから、本件指定役務に使用された本件商標を目にした需要者であれば、「CITY」の語よりも、それに続く「EXPRESS」の文字部分を手掛かりに、当該役務の出所を識別する可能性が高い。 したがって、引用商標1ないし4の周知著名性、本件役務における取引の実情において、本件商標構成中の「CITY」は本件役務との関係において自他役務識別力が弱いこと、また、「CITY EXPRESS」の語は特定の意味合いを有する英語ではないこと(甲41)を踏まえ、需要者の注意力を総合的に勘案すると、本件商標と引用商標1ないし4は要部において一致することから、両商標は全体として類似する。 (2)役務の同一又は類似 本件役務のうち、第43類に係る指定役務「ホテルにおける宿泊施設の提供,宿泊施設の提供,飲食物の提供,レストラン及びバーにおける飲食物の提供,ミーティング・会議及び展示のための多目的施設の提供,特別な日のための社交行事用の施設の貸与,ホテルの宿泊施設の予約の取次ぎ」は、引用商標1ないし4(甲5〜甲10)に係る指定役務と同一又は類似している。 (3)小括 引用商標1ないし4の構成中の「Express」又は「EXPRESS」の欧文字部分は、それ自体、需要者の間で広く認識されているところ、本件商標は、当該文字に他の文字を結合した態様といえることから、両商標は類似しており、さらに、本件役務のうち、第43類の指定役務はいずれも、引用商標1ないし4に係る指定役務とは同一又は類似する。 したがって、本件商標は、第43類指定役務において、商標法第4条第1項第11号に該当する。 4 本件商標を商標法第4条第1項第15号により取り消すべき理由 (1)本件商標と引用商標1ないし5との類似性の程度 本件商標は、「都市。市。」を意味する基本的な英単語「CITY」、「表現する。急行。」を意味する英単語「EXPRESS」に、英語の前置詞「BY」と、「マリオットという人名」を意味する欧文字「MARRIOTT」を結合したものと認識される。そして、「CITY EXPRESS」は、特定の意味合いを有する英語ではないことから(甲41)、本件商標全体として「マリオット(という名の人物)による都市の急行又は表現。」といった意味合いが認識される。 申立人の引用商標1ないし5は、引用商標2ないし4の構成において、「Express」の文字部分は、他の文字「Holiday Inn」とは異なるフォント、大きさ、位置に書されており、外観上も分離して観察され得る。 上述したとおり、申立人をはじめとするIHGは、世界100カ国以上で6,164ホテル、19ブランドを展開する、世界のホテル業界を代表する企業グループの一つとして、長年にわたり営業活動を行っており、日本国内においても、ANAとの業務提携等を通じて全国各地にホテルを20年以上運営している。日本人の国内の延べ宿泊旅行者数が、コロナ禍前は毎年3億人強(なお、2023年の速報値は2億8,105万人。甲36)、日本人の海外旅行者数がコロナ禍前の2019年に過去最高の2,000万人を突破(甲37)し、ホテル(宿泊施設)が日本国民の社会生活と密接な存在になっていることを勘案すると、IHG及びそのホテルブランドが業界関係者のみならず、日本国内及び外国の需要者の間で広く認識されていることは明らかといえる。 とりわけ、「Holiday Inn」(ホリデイ・イン)は、IHG又はその前身が、1952年から今日に至るまで、70年以上もの長きにわたり、ホテルの名称として世界中で使用し続けており、さらに、「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)は、今やIHGの中で世最大級のホテルブランド(甲11)として、高い認知度を世界中で獲得している。 そうすると、両商標の周知著名性も相まって、本件商標の出願時(優先日)及び登録時において、引用商標5についても、申立人役務を表示する商標として、日本国内及び外国の需要者の間で広く認識されていたといえる。 引用商標1ないし4の要部であり、引用商標5を構成する欧文字「Express」(又は「EXPRESS」)と、本件商標の要部「EXPRESS」とは、称呼、観念において一致していることから、商標全体の類似性の程度は、総じて低くはない。 (2)引用商標1ないし5の周知著名性及び独創性の程度 引用商標1ないし5の構成中の「Express」又は「EXPRESS」の文字は、「表現する。急行。」を意味する英単語であることから、その独創性の程度は高くないものの、引用商標1ないし5は、本件商標の登録出願時(優先日)には既に、申立人及びIHGの業務に係るホテル等を表示する商標として、日本国内及び外国の取引者、需要者の間に広く認識されていた。 (3)本件役務と申立人役務との関連性 本件役務(第35類「広告,フランチャイズシステムに基づくホテル・飲食店・バー・娯楽施設・運動施設・小売店の開業及び経営に関する助言,ホテル・飲食店・バー・娯楽施設・運動施設・小売店の事業の管理及び運営,小売業の管理に関する指導・助言,事業の管理に関する指導及び助言,事業の運営,ビジネスセンターの事業の管理,複写機の貸与,書類の複製,事務用機器及び事務用備品の貸与」、第43類「ホテルにおける宿泊施設の提供,宿泊施設の提供,飲食物の提供,レストラン及びバーにおける飲食物の提供,ミーティング・会議及び展示のための多目的施設の提供,特別な日のための社交行事用の施設の貸与,ホテルの宿泊施設の予約の取次ぎ」)は、いずれもホテル(宿泊施設の提供)やその運営、又は、当該施設において提供されるサービスに関連するものであるところ、申立人役務(甲45)と共通するだけでなく、中規模以上のホテルにおいては、一般に提供されているサービスに該当することから、両役務は同一又は類似する。 (4)取引者及び需要者の共通性その他取引の実情 本件役務は、上述のとおり、ホテル(宿泊施設の提供)やその運営、又は、当該施設において提供されるサービスに関連するものであるところ、一般の旅行客やホテル運営会社、施設利用者をその需要者としており、申立人役務に係る需要者及び取引者と一致している。 (5)混同を生ずるおそれ 上記の事情を総合すると、引用商標1ないし5が、申立人及びIHGの業務に係る役務を表示するものとして、ホテル業界において、周知著名性を有していたことに照らせば、両商標の外観構成に差異が存在するとしても、両商標の要部が一致しており、本件役務に係る需要者の注意力などをも考慮すると、これに接する取引者、需要者は、本件商標構成中の欧文字「EXPRESS」に着目し、周知著名となっている引用商標を連想、想起して、当該役務が申立人又は申立人との間に緊密な営業上の関係又はグループに属する関係にある者の業務に係る役務であると誤信するおそれがある。 したがって、仮に、本件商標と引用商標が外観上非類似と認識されるとしても、「Holiday Inn」(ホリデイ・イン)が、IHGのホテル事業を表示するものとして日本国内及び外国の需要者の間で広く認識されていることも相まって、引用商標1ないし4の構成中の「Express」の文字部分はそれ自体、世界5大ホテルグループの一つであるIHGが有する世界最大級のホテルブランド「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)を指称する識別標識として認識されていることから、本件商標が本件役務に使用された場合、これに接する取引者、需要者は、広く認識されて周知・著名な引用商標を連想、想起し、当該役務が申立人、又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、誤認するおそれがある。 (6)小括 以上より、本件商標は、全ての指定役務について使用された場合、これに接する取引者、需要者は、本件商標の登録出願前(優先日)から、申立人の業務に係るホテル及びこれに関連する事業を表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間で広く認識されて引用商標を連想、想起し、当該役務が申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 5 本件商標を商標法第4条第1項第7号により取り消すべき理由 (1)本件商標に係る不正の目的 上述したとおり、「Express」又は「EXPRESS」の語は、ホテル事業との関係において、申立人及びIHGの事業を表示するものとして、日本国内及び外国の需要者の間で周知著名となっているところ、競合関係にある本件商標の出願人が、当該事情を知らないはずはない。 同社は、これまで「BY MARRIOTT」の文字を他の文字の後に配する構成の商標について、「BY MARRIOTT」の文字を他の文字の下に小さく表示していたが(甲48〜甲50)、本件商標においては他の文字と一体的に書しており、不自然な印象を受ける。 そうすると、本件商標の出願人は、申立人及びIHGの引用商標のことを知った上で、周知著名な引用商標を巧みに取り込み、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する、あるいは、引用商標の出所表示機能を希釈化するなどの目的で本件商標を採択・出願したものといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 6 本件商標を商標法第4条第1項第19号により取り消すべき理由 (1)引用商標の周知著名性及び本件商標との類似性 本件商標は、「都市。市。」を意味する基本的な英単語「CITY」、「表現する。急行。」を意味する英単語「EXPRESS」に、英語の前置詞「BY」と、「マリオットという人名」を意味する欧文字「MARRIOTT」を結合したものと認識される。そして、「CITY EXPRESS」は、特定の意味合いを有する英語ではないことから(甲41)、本件商標全体として、「マリオット(という名の人物)による都市の急行又は表現。」といった意味合いが認識される。 申立人の引用商標2ないし4の構成において、「Express」の文字部分は、他の文字「Holiday Inn」とは異なるフォント、大きさ、位置に書されており、外観上も分離して観察され得る。 上述したとおり、申立人をはじめとするIHGは、世界100カ国以上で6,164ホテル、19ブランドを展開する、世界のホテル業界を代表する企業グループの一つとして、長年にわたり営業活動を行っており、日本国内においても、ANAとの業務提携等を通じて全国各地にホテルを20年以上運営している。日本人の国内の延べ宿泊旅行者数が、コロナ禍前は毎年3億人強(なお、2023年の速報値は2億8,105万人)、日本人の海外旅行者数がコロナ禍前の2019年に過去最高の2,000万人を突破し、ホテル(宿泊施設)が日本国民の社会生活と密接な存在になっていることを勘案すると、IHG及びそのホテルブランドが業界関係者のみならず、日本国内及び外国の需要者の間で広く認識されていることは明らかといえる。 とりわけ、「Holiday Inn」(ホリデイ・イン)は、IHG又はその前身が、1952年から今日に至るまで、70年以上もの長きにわたり、ホテルの名称として世界中で使用し続けており、さらに、「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)は、今や、IHGの中で世界最大級のホテルブランド(甲11)として、高い認知度を世界中で獲得している。そうすると、両商標の周知著名性も相まって、本件商標の出願時(優先日)及び登録時において、引用商標5についても、申立人役務を表示する商標として、日本国内及び外国の需要者の間で広く認識されていたといえる。 引用商標1ないし4の要部であり、引用商標5を構成する欧文字「Express」(又は「EXPRESS」)と、本件商標の要部「EXPRESS」とは、称呼、観念において一致していることから、両商標は類似している。 (2)本件商標に係る不正の目的 「Express」又は「EXPRESS」の語は、ホテル事業との関係において、申立人及びIHGの事業を表示するものとして、日本国内及び外国の需要者の間で周知著名となっているところ、競合関係にある本件商標の出願人が、当該事情を知らないはずはない。 同社は、これまで、「BY MARRIOTT」の文字を他の文字の後に配する構成の商標について、「BY MARRIOTT」の文字を他の文字の下に小さく表示していたが(甲48〜甲50)、本件商標においては他の文字と一体的に書しており、不自然な印象を受ける。 そうすると、本件商標の出願人は、申立人及びIHGの引用商標のことを知った上で、周知著名な引用商標を巧みに取り込み、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する、あるいは、引用商標の出所表示機能を希釈化するなどの目的で本件商標を採択・出願したものといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知性について (1)申立人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。 なお、提出された証拠のうち甲第11号証は、外国語で作成されたものであり、翻訳文の提出もないから、具体的な内容を把握することができない。 ア 申立人は、「インターコンチネンタル・ホテルズ・グループ」(IHG)の100%子会社であると主張しているところ、IHGは、2004年に設立された英国のホテルチェーン企業であり(甲12)、2021年には16ホテルブランドを展開し、世界100か国以上に約6000ホテルを有している(甲13)。 イ 「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)は、1990年に、IHGの新たなホテルブランドとして誕生したものであり(甲14)、我が国においては、2021年12月に、大阪市に「ホリデイ・イン エクスプレス 大阪シティセンター御堂筋」が開業した(甲29)。 ウ 各種ウェブサイトにおいて、「ホリデイ・イン エクスプレス 大阪シティセンター御堂筋」が取り上げられるとともに、「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)についても、IHGの中で世界最大級のホテルブランドなどとして紹介された(甲29〜甲32)。 (2)上記(1)によれば、「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)が、IHGが手掛けるホテルブランドの一つであり、我が国においても同ブランドのホテルが少なくとも1か所で展開されていることがうかがえる。 しかしながら、「Holiday Inn Express」(ホリデイ・イン エクスプレス)を使用した、ホテル事業等の役務についての我が国における売上高、市場シェア等の販売実績、広告宣伝の方法、規模及び広告宣伝費等に係る主張はなく、その事業規模や広告宣伝実績を客観的に把握、評価することができる証拠の提出もない。 また、提出された証拠において、「Express」の文字のみの使用実績は確認できない。 そうすると、申立人提出の証拠からは、「Holiday Inn Express」又は「Express」の文字に通じる引用商標が、我が国の需要者の間にどの程度認識されているかは明らかでない。 その他、引用商標を使用した申立人又はIHG(以下「申立人ら」という。)の業務に係る役務についての我が国における売上高などの販売実績、広告宣伝の方法、規模、広告宣伝費など、その事実を客観的に把握することができる証拠の提出はない。 したがって、提出された証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、申立人らの業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 2 商標法第4条第1項第10号該当性について (1)引用商標5の周知性について 上記1のとおり、引用商標5は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人らの業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものではない。 (2)本件商標と引用商標5の類似性について ア 本件商標について 本件商標は、上記第1のとおり、「CITY EXPRESS BY MARRIOTT」の文字を横書きしてなるところ、各構成文字の字間に半角程度の間隔を有するとしても、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさでまとまりよく一体的に表されているものであって、いずれかの文字部分が看者に強い印象を与えるような態様ではない。 また、本件商標の構成全体から生じる「シティエクスプレスバイマリオット」の称呼は、やや冗長であるとしても、よどみなく一連に称呼し得る。 そして、本件商標は、構成中の「CITY」の文字が「都市」の、「EXPRESS」の文字が「表現する、急行」の、「BY」の文字が「・・・によって」の意味を有する語(いずれもベーシックジーニアス英和辞典第2版 株式会社大修館書店)であり、「MARRIOTT」の文字が「人名」に通じる場合がある(甲40)としても、これらを組み合わせた本件商標の構成文字全体が具体的な意味合いを理解させるものとはいい難く、構成全体をもって一体不可分の造語を表したものとして認識、把握されるものとみるのが相当である。 したがって、本件商標は、その構成全体に相応して「シティエクスプレスバイマリオット」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。 イ 引用商標5について 引用商標5は、上記第2の2のとおり、「Express」の欧文字からなるところ、その構成文字に相応して「エクスプレス」の称呼を生じ、該文字は「表現する、急行」の意味を有する語であるから、「表現する、急行」の観念を生じる。 ウ 本件商標と引用商標5の類否について 本件商標と引用商標5を比較すると、両者の構成は上記ア及びイのとおりであって、文字数及び文字構成において明らかに相違するから、互いに異なる語を表してなり、両者は外観上明確に区別できる。 また、称呼においては、両者は音数及び音構成において明らかに相違するから、明瞭に聴別できる。 さらに、本件商標は特定の観念を生じないのに対し、引用商標5は「表現する、急行」の観念を生じるから、両者は観念においても相紛れるおそれはない。 したがって、本件商標と引用商標5は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない、非類似の商標というべきである。 (3)小括 以上を踏まえると、引用商標5は申立人らの業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものではなく、かつ、本件商標と引用商標5は非類似の商標であるから、本件商標の指定役務と引用商標5の使用に係る役務の類否について検討するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、上記第1のとおり、「CITY EXPRESS BY MARRIOTT」の文字を横書きしてなるところ、上記2(2)アのとおり、「シティエクスプレスバイマリオット」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。 (2)引用商標1ないし4について 引用商標1は、上記第2の1(1)のとおり、「HOLIDAY INN EXPRESS」の文字を横書きしてなり、引用商標2ないし4は、別掲1ないし3のとおり、それぞれ構成中に二段書きした「Holiday Inn」及び「Express」の文字を有してなるところ、これらの構成文字のうち「HOLIDAY(Holiday)」が「祝日」の、「INN(Inn)」が「小さなホテル」の、「EXPRESS(Express)」が「表現する、急行」の意味を有する語(いずれもベーシックジーニアス英和辞典第2版 株式会社大修館書店)であるとしても、これらを組み合わせた引用商標1ないし4の上記の構成文字が、それぞれ全体として具体的な意味合いを理解させるものとはいい難く、構成全体をもって一体不可分の造語を表したものとして認識、把握されるものとみるのが相当である。 したがって、引用商標1ないし4は、その構成文字に相応して「ホリデイインエクスプレス」の称呼を生じ得るものであり、特定の観念を生じない。 (3)本件商標と引用商標1ないし4との類否について 本件商標と引用商標1ないし4を比較すると、両者は「EXPRESS(Express)」の文字を共通にするものの、その他の構成文字や図形の有無等において明らかに異なるから、外観上、明確に区別できる。 また、本件商標から生じる「シティエクスプレスバイマリオット」の称呼と、引用商標1ないし4から生じる「ホリデイインエクスプレス」の称呼は、「エクスプレス」の音が共通するとしても、それぞれの称呼全体の音構成及び音数は明らかに相違するから、明確に聴別できる。 そして、本件商標と引用商標はいずれも特定の観念を生じないものであるから、観念において比較できない。 そうすると、本件商標と引用商標1ないし4は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において明確に区別し得るから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標である。 なお、申立人は、本件商標は、引用商標1ないし4の要部である「EXPRESS(Express)」の文字に、他の文字「CITY」「BY」「MARRIOTT」を結合したものであり、引用商標1ないし4の周知著名性、本件役務における取引の実情において、「CITY」は本件役務との関係において自他役務識別力が弱いこと、また、「CITY EXPRESS」の語は特定の意味合いを有する語ではないことから、本件商標と引用商標1ないし4は要部において一致する旨主張する。 しかしながら、上述したとおり、本件商標の構成文字は、同じ書体でまとまりよく一体的に表され、その構成文字から生じる「シティエクスプレスバイマリオット」の称呼も無理なく一連に称呼し得ることからすれば、上記のとおり判断するのが相当であり、他に、本件商標の構成中、「EXPRESS」の文字部分のみが取引者、需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであると認めるに足りる事情は見いだせない。 よって、申立人の上記の主張は採用できない。 (4)小括 上記のとおり、本件商標と引用商標1ないし4は非類似の商標であるから、本件商標の指定役務と引用商標1ないし4の指定役務の類否について検討するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標の周知性について 上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人らの業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものではない。 (2)本件商標と引用商標の類似性の程度について 上記2及び3のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標であるから、類似性の程度は低い。 (3)出所の混同のおそれについて 上記(1)及び(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人らの業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものではなく、かつ、本件商標と引用商標は、類似性の程度が低いものである。 そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定役務について使用しても、これに接する需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その役務が申立人ら、あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第19号該当性について 上記2及び3のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標である。 また、申立人の提出に係る証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標権者が引用商標にフリーライドするなど不正の目的をもって本件商標を使用するものであると認めるに足りる証拠は見いだせない。 そうすると、本件商標は、引用商標と類似する商標ではなく、不正の目的をもって使用をするものともいえないから、その他の要件について検討するまでもなく、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 6 商標法第4条第1項第7号該当性について 上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人らの業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものではなく、上記2及び3のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標である。 また、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないことは明らかであり、さらに、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を著しく欠く、又は本件商標をその指定役務について使用することが、社会の一般的道徳観念に反するなど、公序良俗に反するものというべき証拠も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 7 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 引用商標2(登録第5842473号商標)(色彩は原本参照) 別掲2 引用商標3(国際登録第952876号商標)(色彩は原本参照) 別掲3 引用商標4(国際登録第953050号商標) 別掲4 引用商標5(未登録) (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2024-08-27 |
出願番号 | 2023042718 |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W3543)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
大島 勉 |
特許庁審判官 |
阿曾 裕樹 小林 裕子 |
登録日 | 2023-09-22 |
登録番号 | 6738905 |
権利者 | マリオット・ワールドワイド・コーポレーション |
商標の称呼 | シティエクスプレスバイマリオット、シティイクスプレスバイマリオット、シティエクスプレス、シティイクスプレス、シティエキスプレス、バイマリオット、マリオット |
代理人 | 宮嶋 学 |
代理人 | 三上 真毅 |
代理人 | 高田 泰彦 |
代理人 | 今岡 智紀 |
代理人 | 本宮 照久 |
代理人 | 柏 延之 |
代理人 | マークス国際弁理士法人 |