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審決分類 |
審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない W3541 |
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管理番号 | 1414270 |
総通号数 | 33 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2024-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-04-14 |
確定日 | 2024-08-15 |
事件の表示 | 商願2022−52431拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、令和4年5月10日の登録出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和4年11月11日付け:拒絶理由通知書 令和4年11月25日:意見書の提出 令和5年1月19日付け:拒絶査定 令和5年4月14日:審判請求書の提出 2 本願商標 本願商標は、「ダークパターン協会」の文字を標準文字で表してなり、第35類及び第41類に属する別掲1のとおりの役務を指定役務として登録出願されたものである。 3 原査定の拒絶の理由の要旨 原査定は、「本願商標は、「ダークパターン協会」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「ダークパターン」の文字は「ウェブサイトの表記やデザインによって消費者を不利な決定に誘導するもの」を意味する語として認識されている実情がある。そして、諸外国や我が国でもこの「ダークパターン」については、消費者等に不利益を与えることから消費者団体が批判し、これを規制する措置がとられている実情がある。そうすると、このようなものを商標として登録・使用することは、商取引の秩序を害するおそれがあり、社会的妥当性を欠くので穏当ではない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 4 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第7号該当性について 商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」には、商標の構成自体が、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合が含まれ、さらに、他の法律によって、その使用等が禁止されている商標も含むと解されているものである。 そして、本願商標は、前記2のとおり「ダークパターン協会」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「ダークパターン」の文字は、「企業のウェブサイトやECサイトなどで、利用者に意識されることなく、企業側に有利な選択や行動につながるようデザインされたユーザーインターフェースの総称。」(出典:株式会社小学館「デジタル大辞泉」)を意味する語であり、別掲2のとおり、消費者を不利な決定に誘導するものとして、我が国において大きな社会問題となっており、日本政府としても当該問題への規制や対策を行っている実情がある。 そうとすると、「企業のウェブサイトやECサイトなどで、利用者に意識されることなく、企業側に有利な選択や行動につながるようデザインされたユーザーインターフェースの総称。」を容易に看取する「ダークパターン」を認識させる本願商標を、その指定役務に商標として使用することは、これに接する取引者・需要者に不穏かつ不快な印象を与え、社会の一般的道徳観念に反するから、本願商標は、その構成自体公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標といわなければならない。 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当する。 (2)請求人の主張について 請求人は、本願商標は「ダークパターン推進協会」とか、「ダークパターンで消費者詐欺方法教えます」というようなダークパターンを世に広めたり、推進したり、擁護したりというような言葉があるわけではなく、むしろ請求人はダークパターンをなくすための協会を作って活動している旨主張している。 しかしながら、たとえ請求人がダークパターンをなくすための協会を作って活動するとしても、本願商標に接する取引者、需要者が、そのような実情を直ちに理解するとはいい難く、上記(1)のとおり、本願商標は、我が国において社会問題化している「ダークパターン」を容易に看取させるものであり、取引者・需要者に不穏かつ不快な印象を与え、社会の一般的道徳観念に反するものであるから、請求人のその主張は採用できない。 (3)まとめ 以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、これを登録することはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1 本願商標の指定役務 第35類「広告業,広告の企画,メディアへの広報活動の企画・代行,経営の診断又は経営に関する助言,事業の管理,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,会社のための管理業務の代行,事業に関する指導及び助言,事業の調査,事業の評価,事業に関する情報の提供,競合企業に関する情報収集,取引相手先の商業及び事業に関する情報の提供,コンピュータデータベースへの情報編集,広告用具の貸与,消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供,コンピュータソフトウェア制作のマーケティング」 第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,教育上の試験の実施,教育認証サービス、すなわち、訓練の提供及び教育上の試験の実施,教育の分野における情報の提供,個人に対する知識の教授,通信教育による知識の教授,知識の教授,ビジネスの知識及びノウハウの伝授(訓練),録音又は録画済み記録媒体の複製,イベントのためのビデオの編集,セミナーの企画・運営又は開催,研修会の手配及び管理,セミナーの手配及び運営,討論会の手配及び運営,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,オンラインによる電子出版物の提供(ダウンロードできないものに限る。),書籍の制作,オンラインで提供される電子書籍及び電子定期刊行物の制作,コンピュータを利用して行う書籍の制作,インターネットを利用して行う映像の提供,オンラインによる映像の提供(ダウンロードできないものに限る。),インターネットを利用して行う音楽の提供,放送番組の制作,ビデオオンデマンドによるダウンロード不可能なテレビジョン番組の配給,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),パーティの企画,録画済み磁気テープの貸与,録音済み記録媒体の貸与,写真の撮影,ビデオテープへの収録,マイクロフィルムへの記録,教育又は娯楽に関する競技会の企画・運営」 別掲2 「ダークパターン」が我が国において大きな社会問題となっており、日本政府としても当該問題への規制や対策を行っている事実(原審において示した事実を含む。下線は当審が付した。) (1)2022年6月17日付け「日本経済新聞」(朝刊 16ページ)において、「EUが巨大IT企業規制 自社サービスの優遇禁止 追跡型広告も対象に(Techワード)」の見出しの下、「広告分野では、宗教や出自、性的嗜好をもとにしたターゲティング(追跡型)広告も禁止する。ウェブサイトの表記やデザインによって、消費者を不利な決定に誘導する「ダークパターン」を禁じ、サービスの解約も加入と同様の簡単な操作でできるよう求める。違反した場合は世界の売上高の最大6%の罰金を科される可能性がある。早ければ年内にも施行する。」との記載がある。 (2)2022年4月25日付け「東京新聞朝刊」(3ページ)において、「EU、巨大IT規制合意 違法コンテンツ排除義務化」の見出しの下、「EUなどによると、DSAは偽情報やテロ扇動、ヘイトスピーチ、児童ポルノといった違法コンテンツの排除を企業側に義務付ける。子どもをターゲットにした広告や、宗教や人種などの情報を基にした広告を禁じる。利用者に個人情報を入力するよう誘導する「ダークパターン」も禁止の対象とした。」との記載がある。 (3)2022年4月21日付け「中国新聞セレクト」(2ページ)において、「任天堂 課金の方法変更 英当局発表 ソニーも」の見出しの下、「日本の公正取引委員会に相当する英国の競争・市場庁(CMA)は、任天堂、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの両社がゲームの有料会員サービスの課金方法を変更すると発表した。・・・CMAは他に、米マイクロソフトとも課金方法の改善で合意している。解約方法を複雑にするなど利用者を不利な行動へと誘導する手法は「ダークパターン」と呼ばれており、消費者団体が批判している。」との記載がある。 (4)2021年9月17日付け「日本経済新聞」(朝刊 20ページ)において、「ダークパターン――不利な選択に消費者誘導、進む規制、企業も対応急ぐ(Techワード)」の見出しの下、「消費者を不利な決定に誘導するウェブサイトの表記やデザインを意味する「ダークパターン」が問題視されている。その気がないのに、知らず知らずのうちに商品を定期購入してしまうなど不利益を被る場合があり、世界で規制が進む。企業はダークパターンを放置すれば消費者からの信頼を失いかねず、対応が求められている。」との記載がある。 (5)2021年9月16日付け「毎日新聞」(朝刊 8ページ)において、「総務省:消費者保護を強化 携帯やネット契約 総務省、来年7月から」の見出しの下、「総務省は15日の有識者会議で、インターネット回線など通信サービスに関する消費者保護を強化する見直し案をまとめ、来年7月1日から施行する方針を示した。・・・ウェブ上で契約の申し込みができるサービスはウェブ上で解約できることを原則とする。意図的に手続きを煩雑にして解約しづらくする「ダークパターン」と呼ばれる手法を解消し、利用者が望むときに解約できる環境整備を進める。」との記載がある。 (6)2022年12月21日付け「日本経済新聞」(朝刊 15ページ)において、「「ダークパターン」巨額制裁 意図しない課金誘導で 「フォートナイト」運営の米社に710億円 各国で規制強化」の見出しの下、「消費者を不利な決定に誘導する「ダークパターン」は各国で規制が進んでいる。米アマゾン・ドット・コムやヤフーなど表示手法を見直す動きも出てきた。「気づいたら購入していた。ダークパターンにはまってしまった」。データ管理のコンサルティングを手掛けるデータサイン(東京・港)の太田祐一社長は、フォートナイトで気になるアイテムの「詳細」を見ようと操作して誤って購入した経験がある。巧みな課金への誘導は、専門家の目もすり抜ける。ダークパターンとは企業が利益やデータ収集のため、顧客側が気づかないように行動を誘導するネットマーケティングの手法だ。電子商取引(EC)サイトやサブスクリプション(定額課金)サービスで主に使われている。」との記載がある。 (7)2022年10月8日付け「日本経済新聞」(地方経済面 東京 5ページ)において、「行動経済学で選択促進 首都圏自治体、「ナッジ」活用に動く 投票率向上・がん検診… 現場の声反映で課題も」の見出しの下、「民間企業ではインターネットのサービスなどでナッジを使って消費者を不利な決定に誘導することを「ダークパターン」と呼んで批判する声が高まっている。自治体でもナッジの手法が適切か、基本政策の見直しが必要ないかなどを検証するプロセスも求められそうだ。」との記載がある。 (8)2022年9月11日付け「日経MJ(流通新聞)」(2ページ)において、「カリフォルニア州、SNSなどで子供保護法案、企業にプライバシー確保要請(先読みウェブワールド瀧口範子)」の見出しの下、「加えて、「ダークパターン」利用の禁止も求めている。ダークパターンとは、ユーザーを勘違いさせるようなインターフェースデザインのことで、ついクリックしたら商品を買うことになってしまったとか、それを訂正しようとしても簡単にはできない仕組みになっているといったことも含まれる。」との記載がある。 (9)「消費者庁」のウェブサイトにおいて、「ICPEN詐欺防止月間(2023年)」の見出しの下、「毎年、消費者月間に合わせて行っている「詐欺防止月間(Fraud Prevention Month)」の今年のテーマは、「ダークパターン(dark patterns)」です。OECDの報告書では、ダークパターンは、通常オンライン・ユーザー・インターフェースに見られ、消費者を誘導し、欺き、強要し、又は操って、多くの場合消費者の最善の利益とはならない選択を行わせるもので、消費者に多大な被害を生じさせる可能性があるという懸念が高まりつつあるとされています。消費者庁は、国境を越えた不正な取引行為を防止するための取組を促進する国際ネットワークであるICPEN(※)に参画しています。その取組の一つである「詐欺防止月間(Fraud Prevention Month)」では、加盟国それぞれがテーマに沿った注意喚起などを実施しています。消費者の皆様におかれましては、このキャンペーンを、詐欺被害の未然防止に役立ててください。」との記載がある。 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/international_affairs/icpen_2023/ (10)「日本放送協会(NHK)」のウェブサイトにおいて、「「ダークパターン」大規模調査“不利益被った”半数近くが回答」の見出しの下、「気付かないうちに意図しない判断に誘導される「ダークパターン」と呼ばれるウェブデザインについて、専門家による大規模な調査結果がまとまりました。回答者の半数近くが「不利益を被ったことがある」と回答していて、専門家は、対策を強化する必要があるとしています。ショッピングサイトで商品を購入する際に、▽定期購入であることが小さく表示されて意図せずに申し込んでしまったり、▽選択肢が「はい」と「あとで回答する」しかなく何度も表示されたりするケースなど、消費者が意図しない判断に誘導されるウェブデザインは「ダークパターン」と呼ばれ、対策の必要性が指摘されています。」との記載がある。 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231127/k10014269841000.html (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
審理終結日 | 2024-06-11 |
結審通知日 | 2024-06-18 |
審決日 | 2024-07-03 |
出願番号 | 2022052431 |
審決分類 |
T
1
8・
22-
Z
(W3541)
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最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
大島 康浩 |
特許庁審判官 |
大塚 正俊 小林 裕子 |
商標の称呼 | ダークパターンキョーカイ、ダークパターン |
代理人 | 植村 貴昭 |