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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W30
管理番号 1413637 
総通号数 32 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2024-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-12-19 
確定日 2024-07-29 
異議申立件数
事件の表示 登録第6756941号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6756941号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6756941号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和5年7月6日に登録出願、第30類「プリン,チーズケーキ,生チョコレート,菓子(肉・魚・果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。),パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,アイスクリーム用凝固剤,ホイップクリーム用安定剤,料理用食肉軟化剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,氷,みそ,ウースターソース,グレービーソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖(調味料),砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ(調味料),料理用人工甘味料,ごま塩,食塩,すりごま,セロリーソルト,うま味調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,チョコレートスプレッド,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,パスタソース,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類」を指定商品として、同年11月15日に登録査定され、同月24日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当するとして引用する商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、申立人が「チーズタルト,その他の菓子」に使用し、カナダを中心として海外の需要者の間において申立人及び申立人と同じ経営下にある有限会社浪漫座(以下「浪漫座」という。)の商標として広く知られているというものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同項19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを示すときは枝番号を省略する。)を提出した。
1 本件商標について
本件商標は、コック帽を被り、ボタン付きの衣服を着た丸顔の人物が、片手を前方に差し出し、その上に皿が乗っている様子を横から見たシルエット様の図形(以下「本件図形部分」という。)と、その上方に「Tetsuojisan Sweets Shop」の文字をアーチ状に、下方に「Since 1989」の文字を逆アーチ状に配した構成からなるものである(甲1)。
2 商標法第4条第1項第19号について
(1)引用商標が、申立人及び浪漫座の業務に係る商品を表示するものとして外国における需要者の間に広く認識されている点について
引用商標は、文字「Uncle Tetsu」及び申立人の登録第5597358号に係る商標(甲3)からなる申立人のブランドにおいて、メインの商品であるチーズケーキに次ぐ二本目の柱として、チーズタルトを中心とした菓子について使用すべく作成したものである。
下記ア〜ウのとおり、引用商標は、申立人及び浪漫座の出所識別標識として外国において周知・著名な商標となっており、本件商標出願時には世界的な信用を獲得しており、それが現在も継続している。
ア カナダにおける引用商標の使用
引用商標は、商品・パッケージについては甲第8号証の1ないし3、店舗においては同号証の4ないし6のように使用されているところ、本件商標は文字の配置も含め甲第8号証の1のデザインと酷似しており、商標権者がこちらを模して本件商標を作成したことは明らかである。引用商標は、カナダにおける全店舗にて使用されており、使用開始は2017年3月である(甲8の7)。申立人はSNSを効果的に駆使した広告・マーケティング戦略を採用しており、引用商標についてもインスタグラムやFacebookにおいて広く広告宣伝している(甲8の8、9)。また、初店舗のオープンの様子はカナダ・トロントの地元ネットメディアでも取り上げられた(甲8の10)。
引用商標を付した商品の売上は、2022年7月ないし2023年6月において、カナダ全体では1,866万7,151.67カナダドル(20億5,338万6,683.7円)、うち、タルト商品の売上は337万5,806.68カナダドル(3億7,133万8,734.8円)である。
当該タルト商品の売上比率は、商品全体の約18.1%程度となっており、メイン商品であるチーズケーキ商品に次ぐ二本目の柱として位置するものとなっている。今後はさらに売上比率が増加していくものと考えられ、その状況が申立人や消費者のSNSなどを通して拡散されているから、カナダにおける周知度は高いといえる。
このように、引用商標は、少なくともカナダにおいては、本件商標の登録出願時から現在に至るまで、申立人及び浪漫座の出所識別標識として周知な商標である。
イ 台湾における引用商標の使用
引用商標は、タルト、クレープ、チーズケーキやラスクなどの商品及びパッケージ、店舗ディスプレイや店舗メニュー、SNS上の広告画像などについて網羅的に使用されている。引用商標が使用されているタルト商品の売上比率を簡易に計算したところ、商品全体のおおよそ20%程度となっており、カナダ同様、メインの商品であるチーズケーキ商品に次ぐ二本目の柱として位置するものとなっている(甲9)。
ウ オーストラリアにおける引用商標の使用
タルトやチーズケーキ等の商品・パッケージ、店内ディスプレイなどで使用されている(甲10)。
(2)引用商標と本件商標の類否について
引用商標と本件図形部分とを比較すると、色彩のみが異なるだけで形状は同一である。文字と図形からなる商標について、特段の事情が無い限りは文字・図形それぞれを分離観察するのが通常であるところ、図形部分の形状が同一であるから、本件商標と引用商標の外観は明確に類似する。
したがって、称呼、観念について検討するまでもなく、本件商標と引用商標は類似の商標である。
(3)商標権者の不正の目的について
本件商標の出願は、引用商標についての、このような外国周知の状況を知り、それを自社のものにしようとした不正の目的によるものであるものと考えられる。
時系列的には、申立人が2023年5月に電話にて本件商標の商標権者に日本(大分県、福岡県、滋賀県など)でのUncle Tetsu店舗の出店の話及び相互の商標の棲み分けについて相談を行った直後のことであった(甲11)。
また、商標権者は、本件商標と軌を一にした出願を行っている(甲12)。同出願に係る商標は、引用商標同様、浪漫座の制作依頼によってN氏が創作し、著作権を浪漫座に譲渡した顔図形と形状同一・色違いの商標であり、上記2(1)のとおり、カナダをはじめ諸外国のUncle Tetsu店舗でチーズケーキ等に使用されている外国周知の図形である。浪漫座の開発に係る引用商標及び顔図形を、このタイミングで、商標権者名義の下、出願したのは極めて不自然である。
事実関係を総合すると、商標権者の一連のアクションは、引用商標及び顔図形を使用した日本での出店の話が来ているということを知り、それについてのライセンス料などを得ようという不正の目的、又は、引用商標及び顔図形が外国において周知となっており、ブランド価値が高まっていることを奇貨として、外国において築き上げた引用商標及び顔図形についての信用ヘフリーライド・盗み取りしようとする不正の目的に基づくものであるものと思料する。
(4)以上のとおり、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
3 商標法第4条第1項第7号について
(1)本件商標の出願の経緯について
上記2(1)のとおり、引用商標は申立人及び浪漫座の外国周知商標であるところ、上記2(3)記載のような不正な目的で本件商標について出願・登録を行った商標権者の行為は、その出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものであり、この登録を認めることは、社会の一般道徳観念や公正な取引秩序を害し、公序良俗に反するものと考える。
(2)以上のとおり、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
申立人は、引用商標は少なくともカナダにおいては、本件商標の出願時から現在に至るまで、申立人及び浪漫座の出所識別標識として周知な商標である旨主張している。
そこで、申立人が提出した証拠をみると、引用商標は、お菓子の商品パッケージや店舗の看板等(甲8の1〜10)に使用されていることが認められ、カナダの店舗における使用開始は2017年(平成29年)3月頃であることがうかがえる(甲8の7)。
また、申立人の主張によれば、カナダにおける、引用商標を付したタルト商品について、2022年(令和4年)7月ないし2023年(令和5年)6月における売上金額は、カナダ全体で1,866万7,151.67カナダドル(20億5,338万6,683.7円)であり、うち、引用商標を付したタルト商品の売上は337万5,806.68カナダドル(3億7,133万8,734.8円)であり、売上比率としては、商品全体のおおよそ18.1%程度であるとする。
しかしながら、申立人の上記主張を裏付ける具体的、かつ、客観的な証拠の提出はない。
また、その他に、申立人及び浪漫座の業務に係る商品の売上高、販売数量、市場シェアなどの販売実績及び広告宣伝の方法やその手段、費用等、引用商標の周知著名性を判断し得る具体的、かつ、客観的な証拠の提出はない。
したがって、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、申立人及び浪漫座の業務に係る商標として、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 本件商標と引用商標の類否について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、コック帽を被り、ボタン付きの衣服を着た丸顔の人物が、片手を前方に差し出し、その上に皿が乗っている様子を横から見た黒色のシルエット様の図形とその上方に「Tetsuojisan Sweets Shop」の文字をアーチ状に、下方に「Since 1989」の文字部分を配した構成よりなるものである。
そして、本件図形部分と文字部分とは、接することなく配置されており、視覚上分離して看取され得るものであって、本件図形部分と文字部分との間に称呼及び観念上のつながりも認められないから、それぞれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではない。
してみれば、本件商標は、本件図形部分と文字部分のそれぞれが、商品の出所識別標識として機能するものであるところ、本件図形部分が、特に親しまれているというべき事情等はないため、当該図形部分からは、特定の称呼及び観念は生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、別掲2のとおり、コック帽を被り、ボタン付きの衣服を着た丸顔の人物が、片手を前方に差し出し、その上に皿が乗っている様子を横から見たオレンジ色の図形からなるものであるが、当該図形が特に親しまれているというべき事情等はないため、これよりは、特定の称呼及び観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件図形部分と引用商標の構成は、上記(1)及び(2)のとおりであり、両者は、色彩の相違があるものの、酷似した構成態様からなるものであるから、外観上、類似の商標であると判断するのが相当である。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標の登録出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き、その商標の登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には、その商標は商標法4条1項7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。 しかし、同号が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として、商標自体の性質に着目した規定となっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法4条1項各号に個別に不登録事由が定められていること、及び、商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法4条1項7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである。(平成14年(行ケ)第616号、東京高等裁判所平成15年5月8日判決)
(2)申立人は、「商標権者の一連のアクションは、引用商標及び顔図形を使用した日本での出店の話が来ているということを知り、それについてのライセンス料などを得ようという不正の目的、又は、引用商標及び顔図形が外国において周知となっており、ブランド価値が高まっていることを奇貨として、外国において築き上げた引用商標及び顔図形についての信用ヘフリーライド・盗み取りしようとする不正の目的に基づくものである。」旨主張している。
しかしながら、上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人及び浪漫座の業務に係る商標を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間で広く認識されていたものとは認められないものであり、また、申立人の提出した証拠からは、商標権者に不正の目的があることを裏付ける具体的、かつ、客観的な証拠は見いだすことができない。
そうとすれば、本件商標について、商標法の先願登録主義を上回るような、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあるということはできない。
また、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではなく、その構成自体がそのようなものではないし、それを指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものともいえない。
さらに、本件商標は、他の法律によって、その商標の使用等が禁止されているものではなく、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。
加えて、申立人の主張及び同人の提出に係る甲各号証を総合してみても、本件商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当すると認めるに足る具体的事実を見いだすことができない。
その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る証拠は見いだせない。
してみると、商標権者が、申立人が使用する商標と類似する本件商標の登録出願をし、登録を受ける行為が「公の秩序や善良の風俗を害する」という公益に反する事情に該当するものということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
商標法第4条第1項第19号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
そして、本件商標は、上記2(3)のとおり、引用商標とは類似の商標であるとしても、上記1のとおり、引用商標は、申立人及び浪漫座の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているとは認めることはできないから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
また、申立人が提出した証拠からは、商標権者が本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項7号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録は維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標。色彩は原本参照。)


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異議決定日 2024-07-18 
出願番号 2023075171 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W30)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大森 友子
特許庁審判官 清川 恵子
豊瀬 京太郎
登録日 2023-11-24 
登録番号 6756941 
権利者 有限会社バランス
商標の称呼 テツオジサンスイーツショップ、テツオジサン 
代理人 高橋 伸也 
代理人 有吉 修一朗 

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