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審決分類 |
審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効としない W43 |
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管理番号 | 1413562 |
総通号数 | 32 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2024-08-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2023-11-20 |
確定日 | 2024-07-22 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第6100110号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6100110号商標(以下「本件商標」という。)は、「東京551」の文字を標準文字で表してなり、平成28年10月5日に登録出願、同30年10月12日に登録審決され、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、同年11月22日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が、本件審判の請求の理由(商標法第4条第1項第10号、同項第15号)において引用する商標は、請求人の略称として全国的に認知されていると主張されている、「551」の文字からなる商標(以下「引用商標」という。)である。 第3 請求人の主張 1 請求の趣旨 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由(商標法第3条第1項第3号、同項第6号、同法第4条第1項第10号、同項第15号)を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証から甲第17号証(枝番号を含む。以下「甲○」と表記する。)を提出した。 2 請求の理由(要旨) (1)請求人が利害関係人であること 請求人は、本件商標と類似の引用商標「551」を使用する者である。 請求人が引用商標「551」の使用を開始したのは1974年頃であり、現在に至るまで継続して使用された結果、請求人の略称として全国的に認知されている。 引用商標「551」に「東京」の語を付加しただけの商標「東京551」が他者によって登録され使用されると極めて紛らわしく、あたかも請求人が東京で新たに事業を展開したかのように誤認混同を引き起こす。 よって、請求人は本件無効審判請求に及んだ次第である。 (2)引用商標の著名性について 引用商標「551」は単なる3桁の数字ではなく、請求人が約50年もの間自身の商品、役務に使用した結果、地元大阪はもちろん、関西一円はいうに及ばず、東京を中心とした関東そして全国的にも請求人の周知商標として万人が認めるところである。 請求人が自身の屋号を「551蓬莱」と称するようになったのは、当時の本店の電話番号が64−551番であったことから、「ここ(55)がいちばん(1)!」という語呂合わせに由来する。 ア 請求人について 請求人は、屋号を551蓬莱と称し、1945年創業の、食品の製造販売及びチャイニーズレストランを経営する会社である。 創業当時はカレーライスを提供、販売していたが、1946年より豚まんの販売を開始した。その後、豚まん・焼売の実演販売の開始、百貨店への出店、テイクアウト店の開店など、着実に業績を伸ばし、1979年には日本の「全企業ベスト10,000社」の「外食産業部門」において、29位にランクインするまでになった(甲2)。 イ 豚まんについて 請求人の商品のうち、売り上げの約半分を占める豚まんは、請求人を代表する商品といえる。請求人の会社案内によれば、2014年には豚まんの一日平均売上個数14.2万個、年間売上個数5200万個、2018年には豚まんの一日平均売上個数17万個、年間売上個数6200万個にのぼる(甲3)。 請求人の豚まんは大阪産(もん)名品に選ばれており(甲4)、大阪土産の定番といわれている(甲5)。 ウ 営業店舗について 請求人は現在、大阪、兵庫、奈良、京都、滋賀、和歌山に61の直営店を運営しており、そのうち、レストランやイートインスペースのある店が19店存在する(甲6)。 また、請求人の店舗は、関西の主要な百貨店のほか、阪急大阪梅田駅、JR大阪駅、新大阪駅、京都駅などの主要なターミナル駅、そして大阪空港、関西国際空港にあることから(甲7)、地元の顧客のみならず、他県からの来訪者が大阪土産、関西土産として購入することも多い。大阪発の飛行機及び新幹線にはほとんど必ず、引用商標「551」が付された袋をさげている乗客が存在するほどである。 エ 通販 請求人の店舗は関西にしかないが、請求人は、店頭での商品販売に加えて、1994年より通信販売を開始した。当初は電話にて注文を受け付けていたが、2009年にはオンラインショップを開設し、全国各地へ商品を発送している(甲8)。 オ 催事への出店 請求人は1997年より、関西以外の地域で開催される催事への出店を開始し、10年ほど前から全国各地に定期的に出店するようになった(甲9)。直近5年間の出店実績をみると、関西以外では東京都を含む20の都県の催事に、毎月平均4回出店しているが(甲10)、インターネット記事やブログ等によりその盛況ぶりがうかがえる(甲11)。 カ テレビCM 請求人は1970年よりテレビCMによる宣伝広告を実施している。甲12は、朝日放送テレビにおける2009年から2021年までのテレビスポット放送確認書の写しである。これをみると、ほぼ毎日1回は請求人のテレビCMが放送されていたことが分かる。 甲13は、請求人のテレビCMをいくつかまとめた動画である。これら歴代のテレビCMは現在、請求人のホームページで見ることができる(甲14)。 請求人のテレビCMは、著名なタレントが発する「551の豚まんがある時、ない時」の台詞とともに、そのリアクションの面白さにおいて著名である。また、請求人のテレビCMは「551のホーライ!」「551のアイスキャンデー!」といったフレーズで締めくくられ、「551」が請求人を示すものとして印象づけられる効果がある。 キ チラシ及びダイレクトメール 請求人は店舗などにおいて季節ごとのチラシを配布している(甲15)。また、ダイレクトメールによる宣伝広告活動を行っている(甲16)。 ク 地域貢献 請求人は大阪・天王寺動物園に2006年と2015年にシロクマを1頭ずつ寄贈している。また、地域の幼稚園や取引先にて豚まん教室を開催したり、大阪消防局、大阪府警察、大阪国税局、大阪税関、海上保安庁などの広報活動に協力したりするなど、地域貢献を積極的に行っている(甲17)。 ケ 以上のとおり、引用商標「551」は、請求人が長期にわたり継続的に使用してきた結果、請求人の業務にかかる商品役務の出所表示として著名となり、需要者の間に広く認知されるに至っている。 (3)商標法第4条第1項第10号該当性 本件商標「東京551」は、引用商標「551」に地名の「東京」を結合させたと認識されるものであるため、引用商標と類似の商標である。 また、本件商標の指定役務は、第43類「飲食物の提供」であり、対して、請求人が、自身の運営するレストランやイートインスペースのある店において「飲食物の提供」を行っていることから、両者は役務を同じくする。 引用商標「551」は、本件商標の登録出願時点で、請求人及びその商品・役務を示すものとして広く知られるに至っており、本件商標の登録審決日においても継続してその周知、著名性を維持していた。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第15号該当性 前述のとおり、引用商標「551」は、その質的豊さはもちろん、その量的多さにおいて、そして関西を中心にした販売地域及び全国に広がる購買者の地域の広さにおいて、請求人及びその商品を示すものとして、本件商標の登録出願、登録前より全国的に著名な商標となっていたといえる。 本件商標「東京551」は、引用商標「551」に地名の「東京」を結合させたと認識されるものであるため、引用商標と類似の商標である。 そして、本件商標の指定役務「飲食物の提供」は、食品を取り扱い提供するものであるから、請求人が引用商標「551」の名称で販売する豚まん、焼売、アイスキャンデー等と密接に関連する。 そうとすれば、本件商標が、その指定役務について使用された場合、これに接する取引者、需要者は、「551」の部分に着目し、引用商標「551」を直ちに想起して、当該役務があたかも請求人の業務に係る役務であるかのごとく誤認して取引にあたる蓋然性が極めて高く、役務の出所につき混同を生ずるおそれがある。 つまり、商標「東京551」の他人による使用は、50年以上かけて大阪名物として独特の味を築き上げた請求人の顧客誘引力にフリーライドする行為であり、請求人の味を期待した極めて多くの「551」ファンが違う味に困惑と落胆することになる。この混乱は絶対に避けなければならない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (5)商標法第3条第1項第3号該当性 本件商標「東京551」は、「東京」という日本の首都の地名と3桁の数字「551」を結合させたにすぎないので、商標としての識別力が生じていない。 本件商標「東京551」中、「東京」の語は、本件商標の指定役務「飲食物の提供」の役務の提供場所を認識させる。また「551」は何ら特徴的でない標準文字の数字であり、商標法第3条第1項第3号に規定した数量又は価格を認識させる。 してみると、本件商標「東京551」は、商標法第3条第1項第3号の登録除外項目である「役務の提供場所」と「数量または価格」を単に標準文字で結合させただけであり、何ら特徴的な識別力はなく、上記法律に規定されている登録除外条件を免れたことにはならない。 (6)商標法第3条第1項第6号該当性 本件商標「東京551」中、「東京」の語は上記のとおり役務の提供場所を表示するものとして一般的に使用されていることは万人の認めるところであり、また、「551」の部分は商標法第3条第1項第3号に規定されている役務の数量、価格等を意味するものである。そうすると、本件商標「東京551」は、全体として「東京で提供される551個」又は「東京で提供される551円のもの」程度の認識にとどまるものであるから、商標としての識別力を備えていない。 本件商標のような商標が登録されるのであれば、商標法第3条第1項第3号及び同項第6号の規定の趣旨が不明になってしまう。商標法第3条第1項第6号「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」は登録を除外する規定であり、まさに本件商標は本規定に該当する。 本件商標を無効にせず登録を認めたままだと、いかに「飲食物の提供」を指定役務としていたところで「東京123」「東京456」「東京789」「東京111」「東京222」「東京333」「東京444」「東京666」等の識別力のない商標が無限に登録になることになってしまい、商標法の規定の趣旨が意味をなさなくなる。 (7)本件商標の審査の正当性と審決の失当について 本件商標は、拒絶査定不服審判の末、登録となっているところ、この審決は誤りと考える。 すなわち、審決理由が正当であれば、地名と数字とを掛け合わせた、識別力のない意味不明の商標が、それこそ無限に登録になるおそれがある。商標法3条第1項第3号及び同項第6号はかかる商標の登録を阻止するための規定であるから、本件商標の審決は法の趣旨を無視して登録したといわれても仕方ない。 したがって、本件商標は、商標法3条第1項第3号及び同項第6号に該当する。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、請求人の主張に対し、答弁していない。 第5 当審の判断 1 利害関係について 請求人は、引用商標を使用する者であり、本件審判を請求することの利害関係がある旨を主張するところ、被請求人からは答弁はなく、当事者間に争いがないから、当審は請求人が本件審判の請求について利害関係を有すると認める。 2 商標法第3条第1項第3号及び同項第6号該当性 本件商標は、「東京551」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、「日本国の首都」を指称する語である「東京」の文字(参照:「広辞苑 第7版」岩波書店)と「551」の3桁の数字を、同じ大きさ及び書体で、語間なく、横一列にまとまりよく配置してなるもので、両語を結合して具体的な意味を有する成語となるものではなく、構成文字全体で一連一体の造語を表してなると看取できる。 そうすると、本件商標は、具体的な意味合いを認識させることのない造語であるから、その指定役務との関係において、役務の質や提供場所などを表示するものではなく、また、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標ではないから、商標法第3条第1項第3号及び同項第6号に該当しない。 3 引用商標の周知性について (1)請求人の提出証拠及び主張によれば、以下のとおりである。 ア 請求人は、1945年創業の、食品の製造販売及びチャイニーズレストラン経営を事業内容とする会社である(甲3の2)。 請求人は、1946年から「豚まん」(肉まん)を販売しており、1974年から「551蓬莱」との名称を使用している(甲2)。 なお、請求人の会社案内、包装袋、店舗看板などには、「551」及び「HORAI」の文字を上下二段に表してなるロゴが表示されている(甲3、甲8の1、甲9)。 イ 請求人は、関西地方を中心として直営店及びレストラン、オンラインショップなどを運営し、その他催事出店(関西地方以外の地域を含む。)を通じて、商品を販売している(甲6〜甲10)。 ウ 請求人による「豚まん」の年間売上個数は、5,200万個(2014年頃とされる)である(甲3の1)。 エ 請求人は、大阪産(もん)事業者として、「551蓬莱」などの表示とともに紹介されている(甲4の3、4)。 また、インターネット上の記事情報やブログ記事などにおいて、請求人やその商品を「551蓬莱の豚まん」、「551の豚まん」、「551豚まん」、「551蓬莱」などと称して紹介されている(甲5、甲11)。 オ 請求人は、2009年から2022年の間に、大阪に所在する朝日放送を通じてテレビCMを放映しているほか、チラシ配布、ダイレクトメールなどを通じた宣伝広告をしている(甲12〜甲16)。 (2)上記認定事実によれば、請求人は、1974年から本件商標の登録出願日(2016年10月5日)まで40年以上にわたり、関西地方を中心に、「豚まん」(肉まん)などの商品を継続して販売し、広告宣伝している実情があることはうかがい知ることはできる。 しかしながら、請求人は、自身を特定するために「551蓬莱」又は「551HORAI」の表示を主に使用しており、また、請求人やその商品は、「551蓬莱」、「551蓬莱の豚まん」などのように、「551」の文字と他の文字(特に「蓬莱」又は「HORAI」の文字)を結合した態様で特定されることが多い。 そうすると、提出証拠からは、引用商標「551」が単独で、請求人に係る商品又は役務を表示する商標として、どの程度使用され、認知されているのか明らかではないから、単なる数字3桁からなる引用商標について、請求人に係る出所識別標識として、本件商標の指定役務「飲食物の提供」に係る我が国の需要者の間において広く認識されているとは認められない。 4 商標法第4条第1項第10号該当性 (1)引用商標の周知性 引用商標は、上記3のとおり、我が国の需要者の間において広く認識されている商標ではない。 (2)本件商標と引用商標の比較 ア 本件商標「東京551」は、上記2のとおり、構成文字全体で一連一体の造語を表してなると看取できる。 そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「トウキョウゴヒャクゴジューイチ」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。 イ 引用商標は、「551」の文字を表してなるところ、その構成文字は3桁の数字よりなる。 そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「ゴヒャクゴジューイチ」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。 ウ 本件商標と引用商標を比較すると、外観においては、構成文字に「551」の数字を含む点で共通するとしても、語頭の「東京」の文字部分の有無により、構成文字全体としては異なる語を表してなるから、判別は容易である。また、称呼においては、語尾の「ゴヒャクゴジューイチ」の称呼を共通にするとしても、語頭の「トウキョウ」の構成音の有無により、全体の語調、語感は異なるものとなるから、聴別は容易である。さらに、観念においては、いずれも特定の観念は生じないから、比較できない。 そうすると、両商標は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において判別及び聴別は容易だから、それらが与える印象、記憶、連想等を総合的に考察すれば、互いの印象が相違する別異の商標というべきで、出所の誤認混同を生じるおそれのない非類似の商標というべきである。 (3)小括 引用商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標ではなく、本件商標とは類似する商標ではないから、その他の要件について検討するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第15号該当性 引用商標「551」は、記号、符号等として類型的に採択されている、単なる3桁の数字よりなるから、独創性の程度は低く、また、上記3のとおり、本件商標の指定役務に係る我が国の需要者の間において広く認識されている商標ではない。 さらに、本件商標「東京551」と引用商標「551」は、上記4(2)ウのとおり、出所の誤認混同を生じるおそれのない非類似の商標であり、互いの印象が相違する別異の商標である。 以上を踏まえると、本件商標は、その指定役務と引用商標の使用に係る商品又は役務の共通性や需要者の共通性の程度にかかわらず、その指定役務に使用したとしても、これに接する需要者は、引用商標又は請求人を連想、想起し、当該役務が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれはない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 6 まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号及び同項第6号並びに同法第4条第1項第10号及び同項第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
審理終結日 | 2024-05-23 |
結審通知日 | 2024-05-28 |
審決日 | 2024-06-10 |
出願番号 | 2016108397 |
審決分類 |
T
1
11・
13-
Y
(W43)
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最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
大島 勉 |
特許庁審判官 |
阿曾 裕樹 小林 裕子 |
登録日 | 2018-11-22 |
登録番号 | 6100110 |
商標の称呼 | トーキョーゴゴイチ、トーキョーゴヒャクゴジューイチ |
代理人 | 弁理士法人有我国際特許事務所 |
代理人 | 辻 忠行 |
代理人 | 杉本 勝徳 |