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審決分類 審判 査定不服 商4条1項15号出所の混同 登録しない W3543
管理番号 1413482 
総通号数 32 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2024-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-09-01 
確定日 2024-07-24 
事件の表示 商願2022−50728拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 手続の経緯
本願は、令和4年4月18日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年11月10日付け:拒絶理由通知書
令和5年1月18日:意見書、手続補正書の提出
令和5年6月7日付け:拒絶査定
令和5年9月1日:審判請求書の提出

2 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第35類及び第43類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として登録出願され、その後、本願の指定役務については、前記1の手続補正書により、第35類「飲食料品(「食肉」を除く)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,広告業,経営の診断又は経営に関する助言,事業の管理,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,職業のあっせん」及び第43類「飲食物の提供」の役務に補正されたものである。

3 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標はその構成中に、兵庫県所在の「兵庫県食肉事業協同組合連合会」又はそれらの構成員が、商品「兵庫県産の和牛の肉」について使用し、自己又はその構成員の業務に係る商品を表示するものとして、本願商標の出願前から需要者の間に広く認識されている「神戸牛」(地域団体商標:商標登録第5068216号)の文字を有するものであるから、本願商標をその指定役務について使用するときは、あたかも前記組合又は前記組合と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の役務であると誤認し、その役務の需要者が役務の出所について混同するおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品又は指定役務に使用したときに、当該商品又は役務が他人の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品又は役務が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標が含まれる。そして、上記の「混同を生じるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきものである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁)。
イ 「神戸牛」の文字の周知性について
別掲2で提示した事実によれば、「神戸牛」は、「兵庫県産の和牛の肉」を示すものとして、全国的に名前を知られた有名ブランドであり、一般の全国紙を含む新聞記事やインターネット記事において広く紹介されている事実があるといえる。
また、引用商標は、兵庫県食肉事業協同組合連合会が、その構成員に使用をさせる商標であって、その商標が使用された結果自己又はその構成員の業務に係る商品である第29類「兵庫県産の和牛の肉」を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることを理由に、当該商品を指定商品として、平成19年8月3日に地域団体商標の商標登録(登録第5068216号)を受け、現に有効に存続しているものである。
そうすると、引用商標は、「兵庫県産の和牛の肉」を示すものとして、本願商標の登録出願日の時点において、本願商標の指定役務の取引者、需要者の間に広く認識されて、一定の周知性を有していたものであって、その周知性は、現在においても継続しているものと認められる。
ウ 本願商標と引用商標について
(ア)本願商標
本願商標は、別掲1のとおり、中央に白抜きで牛の頭部とおぼしき図形を有する赤色の下部に飛び出し線を有する略円形状の図形を左側に配し、当該図形の下部に、「USHI‐EMON」の文字を赤色で横書きし、その右側に「神戸牛衛門」の文字を筆文字風の書体にて、黒色で大きく目立つように横書きしてなるものである。
そして、本願商標の構成中、大きく目立つように表された「神戸牛衛門」の文字部分の中でも、とりわけ看者の目をひきやすい語頭に位置する「神戸牛」の文字は、上記イのとおり、兵庫県食肉事業協同組合連合会及びその構成員の業務に係る周知な商標と認識されるものであるから、当該文字部分の自他役務識別標識としての機能は高いといえる。
そうすると、本願商標は、構成中の「神戸牛」の文字部分に相応して「コウベギュー」の称呼及び「兵庫県食肉事業協同組合連合会及びその構成員の業務に係る周知な「神戸牛」」の観念を生じ得る。
(イ)引用商標
引用商標は、「神戸牛」の文字を標準文字で表してなるところ、「コウベギュー」の称呼及び「兵庫県食肉事業協同組合連合会及びその構成員の業務に係る周知な「神戸牛」」の観念が生ずる。
(ウ)本願商標と引用商標の類似性の程度
本願商標と引用商標は、それぞれ上記(ア)及び(イ)のとおりの構成からなるところ、本願商標はその構成中、大きく目立つように表された「神戸牛衛門」の文字部分において、周知性があり、看者の注意を引きやすい語頭の「神戸牛」の文字が引用商標と同一であって、全体の5文字のうち3文字までを引用商標と共通にするから、両者は外観上相紛らわしいといえる。
そして、両者は「コウベギュー」の称呼及び「兵庫県食肉事業協同組合連合会及びその構成員の業務に係る「神戸牛」」の観念を共通にするから、称呼及び観念においても相紛らわしいものである。
そうすると、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛らわしいものであるから、両商標は相当程度高い類似性を有するものというべきである。
エ 引用商標の独創性について
引用商標の「神戸牛」は、地域の名称である「神戸」の文字と引用商標の指定商品の普通名称である「牛」の文字からなる地域団体商標であるから、その構成自体は独創的なものではない。
オ 本願の指定役務と引用商標の商標権者の業務に係る商品の関連性及び需要者の共通性について
本願商標の指定役務と引用商標の指定商品は、役務の提供と商品の製造・販売が同一事業者によって行われ得るものであり、役務と商品の用途、役務の提供場所と商品の販売場所及びこれらの需要者の範囲が一致する場合があるといえる。
カ 出所の混同を生ずるおそれについて
以上のとおり、本願商標と引用商標とは、相当程度高い類似性を有するものであること、引用商標は「兵庫県産の和牛の肉」を示すものとして、一般需要者の間に広く認識され、周知性を獲得しているものであること、引用商標の指定商品は本願の指定役務と類似する商品及び関連性が高い商品であって、取引者、需要者層を共通にすることから、本願商標の指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本願商標は、その構成中、語頭の「神戸牛」の文字に着目し、引用商標を連想又は想起させることが少なくないと判断するのが相当である。
そうすると、本願商標をその指定役務に使用するときは、取引者、需要者をして周知となっている引用商標を連想又は想起し、その役務が他人(引用商標の商標権者又はその構成員)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように誤認し、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標は殊更に「神戸牛」のみに着目されるべきものでなく、「神戸牛衛門」という造語からなる商標、又は、「神戸・牛衛門」なる地名を含む造語からなる商標と認識・把握されるものである旨を主張している。
しかしながら、上記(1)のとおり、本願商標の構成中、「神戸牛衛門」の文字部分においては、「神戸牛」の文字が兵庫県食肉事業協同組合連合会及びその構成員の業務に係る周知な商標であって、かつ、看者の注意を引きやすい語頭に位置することから、これに接する取引者、需要者は、「神戸牛」の文字に着目するとみるのが相当である。
イ 請求人は、過去の登録例を挙げて、本願商標も同様に判断されるべきである旨主張する。
しかしながら、登録出願に係る商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かは、本願商標の出願時及び審決時において、当該商標の構成態様や取引の実情を踏まえて、個別具体的に判断をなすべきものであって、過去の登録例の存在により、その判断が左右されるものではない。
ウ したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。



別掲

別掲1 本願商標(色彩は原本を参照。)


別掲2 「神戸牛」の語が、本願商標の指定役務に関連する取引者、需要者の間で広く認識されている事実)
(1)辞書類
ア 「コトバンク」のウェブサイトにおいて、「神戸牛」の見出しの下、「但馬、丹波、出雲などから神戸に集められ、食肉にする和牛の総称。また、その肉。こうべぎゅう。」(出典:精選版 日本国語大辞典)との記載がある。
https://kotobank.jp/word/%E7%A5%9E%E6%88%B8%E7%89%9B-63140#:~:text=%E3%81%93%E3%81%86%E3%81%B9%E2%80%90%E3%81%86%E3%81%97%20%E3%81%8B%E3%81%86%E3%81%B9%E2%80%A5,%E3%81%93%E3%81%86%E3%81%B9%E3%81%8E%E3%82%85%E3%81%86%E3%80%82
イ 「コトバンク」のウェブサイトにおいて、「神戸牛」の見出しの下、「但馬牛をもと牛として、兵庫県で肥育された黒毛和種の牛肉のうち、一定の基準を満たしたもの。「神戸ビーフ」に同じ。地域団体商標。厳しい認定基準による高品質で知られる。」(出典:デジタル大辞泉プラス)との記載がある。
https://kotobank.jp/word/%E7%A5%9E%E6%88%B8%E7%89%9B-63140#:~:text=%E3%81%93%E3%81%86%E3%81%B9%E2%80%90%E3%81%86%E3%81%97%20%E3%81%8B%E3%81%86%E3%81%B9%E2%80%A5,%E3%81%93%E3%81%86%E3%81%B9%E3%81%8E%E3%82%85%E3%81%86%E3%80%82
ウ 「コトバンク」のウェブサイトにおいて、「神戸牛」の見出しの下、「神戸地方で肥育された肉用牛。黒毛和種に属する但馬牛を農厚飼料で特別に飼育する。肉の筋繊維の間に脂肪が混りいわゆる霜降り肉となるため,高級和牛肉として出荷される。」(出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)との記載がある。
https://kotobank.jp/word/%E7%A5%9E%E6%88%B8%E7%89%9B-63140#:~:text=%E3%81%93%E3%81%86%E3%81%B9%E2%80%90%E3%81%86%E3%81%97%20%E3%81%8B%E3%81%86%E3%81%B9%E2%80%A5,%E3%81%93%E3%81%86%E3%81%B9%E3%81%8E%E3%82%85%E3%81%86%E3%80%82
(2)新聞情報(下線は当審が付した。)
ア 2024年3月2日付け「西部読売新聞」(夕刊 7ページ)において、「博多和牛 PR猛進 食事会やレシピ紹介 「肉質 有名ブランドに負けない」」の見出しの下、「食肉通信社(大阪市)によると、神戸牛や松阪牛、佐賀牛など和牛を含むブランド牛は全国に少なくとも350種類以上ある。」との記載がある。
イ 2017年10月19日付け「京都新聞」(朝刊 25ページ)において、「亀岡牛 おいしさ知って 亀岡市や畜産業者ら来月フェスタ バーベキューやもつ鍋 15団体、20種超用意」の見出しの下、「市内には7農家が亀岡牛を生産する。昨年12月の品評会「近畿東海北陸連合肉牛共進会」で最優秀の農林水産大臣賞に輝き、年々評価が高まっている。しかし、生産量が少ないうえ、近隣に近江牛や神戸牛をはじめとする全国的に有名なブランド牛が多く、知名度では押され気味だ。」との記載がある。
ウ 2001年3月22日付け「神戸新聞」(朝刊 26ページ)において、「◎地元の食材に舌鼓/神戸の春を食する会/伝承料理を紹介/舞子ビラ/」の見出しの下、「神戸牛やイカナゴなど、全国的に有名な食材が豊富にあるまちの魅力をさらにアピールするのが狙い。」との記載がある。
エ 2019年4月2日付け「中国新聞」(セレクト 2ページ)において、「目で見る経済 地域団体商標600件超す」の見出しの下、「都道府県別の登録件数は京都が63件と最も多く、37件の兵庫、32件の石川が続く。京都は宇治茶や京友禅、兵庫は神戸牛、石川は和倉温泉などが有名だ。」との記載がある。
オ 2003年7月9日付け「日本農業新聞」( 1ページ)において、「“こだわり和牛”の地産地消進む/兵庫・JAみのり」の見出しの下、「町は、全国的に有名な神戸牛の主産地。同会は十八人で、年間七百頭前後を出荷し、ブランドを築いてきた。」との記載がある。
(3)インターネット情報(下線は当審が付した。)
ア 「株式会社阪急交通社」のウェブサイトにおいて、「一番食べてみたいブランド牛ランキング!好きな食べ方も調査〜アンケート結果を阪急交通社が公開〜」の見出しの下、「各ブランド牛の名前を聞いたことがある割合は、1位が「松阪牛(81.4%)」、2位「神戸牛(神戸ビーフ)(80.5%)」とほぼ同率で、3位が「米沢牛(78%)」、4位「近江牛(70.3%)」、5位「飛騨牛(67.5%)」と続きました。1位から4位は、日本三大和牛としても知られています。(近江牛と米沢牛のどちらが入るかは地域などにより異なります)。」との記載がある。
https://blog.hankyu-travel.com/newsrelease/2023/10/premiumbeef.php
イ 「株式会社日本経済新聞社」のウェブサイトにおいて、「海外で高い知名度 神戸牛の評判、維新に開花(もっと関西)」の見出しの下、「お金をためては海外に行く旅行好きの記者。旅先で出会った日本びいきの外国人に「日本に行ったら何を食べてみたい?」と聞くと、すしや天ぷらではなく「神戸ビーフ」と即答され、面食らった。聞くと神戸ビーフ、いわゆる神戸牛は最高級品として世界的に有名らしい。他にも松阪牛など有名ブランドが日本にあるが「知らない」という。なぜ神戸牛は有名なのか。」との記載がある。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35777940W8A920C1AA2P00/
ウ 「株式会社 本神戸肉 森谷商店」のウェブサイトにおいて、「神戸牛とは」の見出しの下、「神戸牛とは、数あるブランド牛の中でも世界で最も知名度の高い牛肉ですが、有名なのに知ってるようで意外と知られていないお話があります。ここではそんな神戸牛の魅力やマメ知識をご紹介します。」との記載がある。
https://www.moriya-kobe.co.jp/view/category/kobebeef



(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)
この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

(この書面において著作物の複製をしている場合の御注意)
本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。

審理終結日 2024-05-14 
結審通知日 2024-05-20 
審決日 2024-06-11 
出願番号 2022050728 
審決分類 T 1 8・ 271- Z (W3543)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 大島 康浩
特許庁審判官 大塚 正俊
小林 裕子
商標の称呼 コーベウシエモン、コーベギューエモン、ウシエモン、ギューエモン、エモン、コーベギュー、コーベウシ 
代理人 服部 京子 
代理人 清水 三沙 
代理人 齊藤 整 
代理人 弁理士法人ととせ・ももとせ 
代理人 徳永 弥生 

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