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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W41 |
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管理番号 | 1412503 |
総通号数 | 31 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-07-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2024-02-02 |
確定日 | 2024-07-04 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6756606号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6756606号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6756606号商標(以下「本件商標」という。)は、「AI経営」の文字を標準文字で表してなり、令和5年2月16日に登録出願、第41類「書籍の制作,人口知能(AI)に関する教育用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),セミナー・教育研修・講座・人材開発のテキストの制作,図書及び記録の供覧,図書の貸与,美術品の展示,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,インターネットを利用して行う映像の提供,映画の上映・制作又は配給,インターネットを利用して行う音楽の提供,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」を指定役務として、令和5年10月16日に登録査定され、同年11月24日に設定登録されたものである。 第2 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第3条第1項第3号、同項第6号、同法第4条第1項第7号及び同項第16号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきものである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第34号証を提出した。 1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について 本件商標を構成する「AI」の文字は、「人工知能」の意味を有する広く親しまれた語であるから、全体として「人工知能(AI)を活用した経営」程の意味合いを容易に理解させるものである。 そして、以下に説明するように、本件商標に係る指定役務との関係において、人工知能(AI)を活用した経営を表すものとして「AI経営」の文字が、一般に使用されていることが認められる。 そうすると、本件商標をその役務に使用しても、これに接する需要者は、人工知能(AI)を活用した経営に係る役務であると理解するにすぎず、本件商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものというべきである。 (1)指定役務「書籍の制作」や「図書及び記録の供覧,図書の貸与」に対して 「AI経営」がタイトルになった書籍はたくさんあり(甲2〜甲4)、「経営」と同義の「ビジネス」の用語で検索すると、さらに多くの関連する検索結果が出てくる(甲5〜甲11)から、本件商標を指定役務「書籍の制作」や「図書及び記録の供覧,図書の貸与」等に使用しても、これに接する需要者は、人工知能(AI)を活用した経営に係る出版関連の役務であると理解するにすぎず、本件商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものというべきである。 (2)指定役務「セミナー・教育研修・講座・人材開発のテキストの制作」に対して 指定役務「セミナー・教育研修・講座・人材開発のテキストの制作」の分野において、「AI経営」が一般に使用されており(甲12)、「AI経営」セミナーにおいて、セミナーに使用されている資料を提供することは、役務「セミナー・教育研修・講座・人材開発のテキストの制作」に該当するものと思われる。 なお、「AI経営」という言葉がそのまま使われてはいないものの、「人工知能(AI)を活用した経営」に関するセミナーは多数存在する(甲13〜甲16)。 したがって、本件商標をその役務に使用しても、これに接する需要者は、人工知能(AI)を活用した経営に係るセミナー用の資料作成関連の役務であると理解するにすぎず、本件商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものというべきである。 (3)指定役務「インターネットを利用して行う映像の提供,映画の上映・制作又は配給」に対して 当該分野において、「AI経営」が一般に使用されている(甲17、甲18) なお、「AI経営」という言葉がそのまま使われてはいないものの、「人工知能(AI)を活用した経営」に関する動画は多数存在する(甲19〜甲21)。 したがって、本件商標をその役務に使用しても、これに接する需要者は、人工知能(AI)を活用した経営に係る動画配信関連の役務であると理解するにすぎず、本件商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものというべきである。 (4)指定役務「放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),人口知能(AI)に関する教育用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出」に対して これらの分野において、「AI経営」という言葉がそのまま使われてはいないものの、「人工知能(AI)を活用した経営」の意味で一般に使用されている(甲22〜甲26)。 したがって、本件商標をその役務に使用しても、これに接する需要者は、人工知能(AI)を活用した経営に係る放送番組の制作関連の役務であると理解するにすぎず、本件商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものというべきである。 (5)指定役務「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」に対して これらの分野において、「AI経営」が一般に使用されている(甲27〜甲31)。 「AI経営」興行において、サミットを運営又は開催することは、役務「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」に該当するものと思われる。 したがって、本件商標をその役務に使用しても、これに接する需要者は、人工知能(AI)を活用した経営に係る興行関連の役務であると理解するにすぎず、本件商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものというべきである。 (6)小括 「Al経営」を、指定役務中「書籍の制作,人口知能(AI)に関する教育用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),セミナー・教育研修・講座・人材開発のテキストの制作,図書及び記録の供覧,図書の貸与,インターネットを利用して行う映像の提供,映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」に使用しても役務の質を表示するにすぎず、自他役務の識別標識として機能を果たし得ない。 したがって、本件商標は上記指定役務に使用するときは商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ上記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。 2 商標法第3条第1項第6号について 本件商標は、「AI経営」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「AI」の文字は、「人工知能」、「学習・推論・判断といった人間の知能のもつ機能を備えたコンピューターシステム。」の意味を、「経営」の文字は、「事業目的を達成するために、継続的・計画的に意思決定を行って実行に移し、事業を管理・遂行すること」の意味を、それぞれ有するものである。 そして、インターネット記事情報にあるように、「AI(人工知能)を活用した経営(事業・商売など)」や「AI(人工知能)を経営(事業・商売など)に活用すること」が、「AI経営」と指称されている実情がある。 したがって、「AI経営」という言葉は極めて一般的に使用されている用語であって、本件商標をその指定商品・役務について使用しても、これに接する取引者・需要者は、当該商品・役務が「AI(人工知能)を活用した経営(事業・商売など)に関するもの」であることを認識するにすぎないといえるから、自他商品・役務の識別標識としての機能を果たし得ないというべきであり、本件商標は、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標と判断するのが相当であり、商標法第3条第1項第6号に該当する。 その他、本件商標の登録出願日以前2018年頃から「AI(人工知能)」ブームになり、その後、多数の「○○AI」又は「AI○○」のような商標が出願された。その中には、本件商標のような○○の部分に役務の内容を示すような、一般的な名詞を使用している商標登録出願があったが、そのほとんどは拒絶理由を受け、解消できずに拒絶査定に至っている(甲32、甲33)。 もし本件商標のような、極めて一般的な語である「AI経営」という言葉の登録が維持されてしまうと、世界的に著名なコンサルティング会社や、事業会社、研究機関、大学、放送局等が「AI経営」という既に広く使用された言葉を使用できなくなるおそれがあるという状況になり、きわめて不適切であると考える。 3 商標法第4条第1項第7号について 本件商標の権利者は、本件商標「AI経営」以外にも、「AI集客」・「即決営業」・「営業心理学」・「セールス心理学」・「経営心理学」・「AIマーケティング」・「AI会計」・「AI経理」・「AI財務」・「AI財務会計」・「AI労務」・「AI法務」・「AI人事」・「AI総務」・「AI管理」・「AI顧客管理」・「AIサポート」・「AIカスタマーサポート」・「AI情報システム」・「AIシステム」・「AI品質管理」・「AI流通管理」・「AI資料作成」・「AI資料管理」・「AI在庫管理」・「AI健康管理」・「AI体重管理」・「AI商品管理」・「ビジネス心理学」など、世の中に広く一般に使用されている用語を繰り返して多数商標出願している(甲34)。 このような一般に使用されているAI+名詞の用語を大量に出願し、一私人が独占しようとする行為は、これらの商標が登録された場合に、不当にライセンス料を請求しようとする意図が読み取れ、公の秩序及び善良の風俗を害する行為に該当すると思料する。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 第3 当審の判断 1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について 本件商標は、前記第1のとおり「AI経営」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「AI」の欧文字は、「人工知能(artificial intelligence)」の意味を理解させ、また、「経営」の文字は、「会社・商業など経済的活動を運営すること。」等を意味する語(いずれも「広辞苑第七版」株式会社岩波書店)であることから、その構成文字全体として「人工知能による会社などの経済的活動の運営」ほどの漠然とした意味合いを認識させるものである。 また、申立人の提出に係る証拠及び職権をもって調査するも、本件商標の指定役務を取り扱う業界において、「AI経営」の文字が役務の質等を直接的に表すものとして、取引上一般に使用されていると認めるに足りる事実及び取引者、需要者が、役務の質を表すものと認識し得るという特段の事情も見いだせない。 さらに、本件商標の登録査定時において、本件商標が役務の質を表示するものとして、我が国の取引者、需要者に前記意味合いをもって認識されていたとまで認めることはできない。 そうすると、本件商標をその指定役務について使用した場合、これに接する取引者、需要者がその指定役務の具体的な質等を表すものとして認識するとはいえず、本件商標は、その指定役務について、自他役務の識別標識として十分機能し得るとみるのが相当である。 してみると、本件商標は、本件申立に係る指定役務との関係において、役務の質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものとはいえず、かつ、役務の質について誤認を生ずるおそれもないものである。 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。 2 商標法第3条第1項第6号該当性について 本件商標は、前記第1のとおり、「AI経営」の文字を標準文字で表してなるところ、申立人は、当該文字は極めて一般的に使用されている用語であり、本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、自他役務の識別標識として機能を果たし得ないと主張する。 しかしながら、申立人の提出に係る証拠(甲2〜甲33)によれば、「AI経営」の文字が掲載されている証拠(甲2〜甲4、甲12、甲17、甲27)は6件程度であり、当該文字が、本件商標の申立役務との関係において、「AI(人工知能)を活用した経営(事業・商売など)に関するもの」として多数使用されているものであるとはいい難く、仮に、本件商標から前記意味合いを認識し得たとしても、補正後の指定役務との関係においては、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものである。 してみれば、本件商標は、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないといえるほどに、取引上一般に使用されている事実を発見することができず、さらに、本件商標の指定役務の取引者、需要者が該文字を自他役務の識別標識とは認識しないというべき事情も発見できなかった。 そうすると、本件商標をその指定役務に使用しても、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であるとはいえない。 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第7号該当性について 商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する商標について、商標登録を受けることができないと規定しているところ、これに該当する商標は、「(a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。」と判示されているところである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号 平成18年9月20日判決参照)。 しかしながら、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様ではないことは明らかである。 また、本件商標をその指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということもできず、他の法律によってその使用が禁止されているものでもない。 さらに、申立人が提出した証拠及び主張からは、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合に当たるということもできない。 その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る証拠は見いだせない。 なお、申立人は、「本件商標の権利者は、本件商標「AI経営」以外にも、一般に使用されているAI+名詞の用語を繰り返して多数商標出願している」旨主張しているが、そのことのみをもって直ちに商標権者が不正の意図をもって商標登録出願をしたということは困難であり、商標権者が、不正の目的をもって本件商標を出願したことを示す具体的な証拠の提出はないから、本件商標が上記にいう公序良俗を害するおそれがあるものとはいい難いものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 4 まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号、同項第6号、同法第4条第1項第7号及び同項第16号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきでものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2024-06-25 |
出願番号 | 2023016241 |
審決分類 |
T
1
651・
13-
Y
(W41)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
大島 勉 |
特許庁審判官 |
大島 康浩 小林 裕子 |
登録日 | 2023-11-24 |
登録番号 | 6756606 |
権利者 | 堀口 龍介 |
商標の称呼 | エイアイケーエー、アイケーエー |
代理人 | 弁理士法人Smarca |