• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W141825
管理番号 1412489 
総通号数 31 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2024-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-10-17 
確定日 2024-06-28 
異議申立件数
事件の表示 登録第6724672号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6724672号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6724672号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、令和3年6月30日に登録出願、第14類「身飾品」、第18類「かばん類,袋物」及び第25類「被服,仮装用衣服,運動用特殊衣服,履物,ベルト」を指定商品として、同5年7月25日に登録査定され、同年8月8日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立人が引用する商標
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由として引用する登録商標は、以下の(1)ないし(4)のとおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
(1)登録第1239525号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:昭和47年12月16日
設定登録日:昭和51年12月10日
書換登録日:平成21年4月1日
指定商品:第14類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
(2)登録第1589609号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
登録出願日:昭和48年10月4日
設定登録日:昭和58年5月26日
書換登録日:平成16年9月8日
指定商品:第22類、第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
(3)登録第1854768号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
登録出願日:昭和58年11月24日
設定登録日:昭和61年4月23日
書換登録日:平成18年11月8日
指定商品:第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
(4)登録第4741004号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
登録出願日:平成15年5月19日
設定登録日:平成16年1月16日
指定商品:第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
なお、以下「引用商標1」ないし「引用商標4」をまとめていう場合は「11号引用商標」という。
2 申立人のグループ会社(以下「セルジオグループ」という。)が、商品「スポーツウェア,ジャケット,テニス・バドミントンウェア,ポロシャツ,ティーシャツ,靴下,スニーカー,ロングパンツ,ショートパンツ」に使用し、需要者に広く認識されているとする商標は、別掲5のとおりの構成からなるものである(以下「使用商標」という。)。
なお、以下「11号引用商標」と「使用商標」をまとめていう場合は、「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきである旨申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第22号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
なお、証拠の記載に当たっては、以下、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する場合がある。
1 具体的理由
(1)本件商標について
本件商標は、切り欠きを有する一つの円の内部に「T」字状部を有する図形である。当該切り欠きは「T」字状部の横線の右下方に一か所あり、「T」字状部の三つの先端はいずれも当該円と接している。
(2)引用商標について
ア 引用商標1
引用商標1は、切り欠きを有する一つの円の内部に「T」字状部を有する図形である。当該切り欠きは「T」字状部の横線の左下方に一か所あり、「T」字状部の横線の先端はいずれも当該円と接しており、縦線の先端は当該円に近接している。
イ その他の引用商標
引用商標2ないし引用商標4及び使用商標は、切り欠きを有する一つの円の内部に「T」字状部を有する図形である。当該切り欠きは「T」字状部の横線の左下方及び右上方に計二か所あり、「T」字状部の横線の先端はいずれも当該円と接しており、縦線の先端は当該円に近接している。
(3)類否
ア 本件商標と引用商標1とは、以下の点において共通する。
(ア)切り欠きを有する一つの円の内部に「T」字状部を有する図形である点
(イ)切り欠きが「T」字状部の横線の下方に一か所ある点
(ウ)「T」字状部の横線の先端がいずれも円と接している点
イ 本件商標と引用商標1とは、以下の点において相違する。
(ア)円の厚みが統一されているか否か
(イ)切り欠きが右か左か及び切り欠きの大きさ
(ウ)「T」字状部の縦線の先端が円と接しているか否か
(エ)円の部分が白抜きか否か
ウ 以上に基づくと、両商標は、その構成の軌を一にするものであり、図形全体として看者に共通した印象を与える。
相違点はいずれも些細なもの又は目立たないものであり、需要者の記憶に強く残るとはいい難い。
そして、本件商標の指定商品には、日常的に利用される性質の商品が含まれ、主たる需要者は、スポーツの愛好家を始めとして、必ずしも商標やブランドについて正確又は詳細な知識を持たない一般の消費者を含むものであり、商品の購入に際し、常に注意深く確認するとは限らず、小売店の店頭等で短時間のうちに購入商品を決定するといえる。
特に衣類や履物、かばん類については、ワンポイントマークとして使用される場合があり、身飾品は小さい商品自体にブランドロゴが刻印される場合もあり、細かい点が視認し難いといえる。これらの取引の実情を考慮すれば、上記相違点を記憶することなく、両商標を類似して認識されるとみるのが相当である。
引用商標1とその他の引用商標とは白黒反転している点、及び切り欠きの数(一か所か二か所か)の違いを除いてほとんど同一である。色彩の違いは出所の識別においてほとんど影響を与えない上、上記取引の実情を考慮すれば、需要者が切り欠きの数を正確に認識及び記憶しているともいえない。
したがって、需要者としては、本件商標と引用商標2ないし引用商標4及び使用商標とのいずれについても「切り欠きのある円とT字の組合せ」程度に認識し、出所を混同する程度に類似するというべきである。
(4)商標法第4条第1項第11号
上記(3)のとおり、本件商標と11号引用商標とは類似する。
そして、本件指定商品と引用商標の指定商品とは類似である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するというべきである。
(5)使用商標の周知性
使用商標は、セルジオグループによって使用されてきた商標である。現在収集できる証拠上、以下の事実がある。
「Sergio Tacchini」はイタリアのテニスプレーヤー「Sergio Tacchini(セルジオ・タッキーニ)」が1966年に設立したブランドであり、使用商標はそのブランドのロゴマークとして使用されてきた。
1969年イタリアでの広告ポスターに表示されるほか(甲6)、各種ウェブサイトで販売又は広告されているように、使用商標は、セルジオグループが提供する商品の出所表示として使用されている(甲7〜甲15)。
使用商標に係るスポーツウェアは、1972年や1981年にプロテニスプレーヤーによって着用されていたほか、繰り返し有名プロスポーツ選手によって世界大会で着用されてきた(甲16)。
また、セルジオグループがスポンサーとなっていた時には、使用商標がスポーツウェアに付されていた。
さらに、使用商標は、第三者によって紹介されており(甲17〜甲20)、アパレル業界内で知られていることがうかがえる。
また、セルジオグループの売上額は、2021年に約1,515万USドル(≒21億9,850万円)、2022年に約1,888万USドル(≒27億4,010万円)である(甲21)。
セルジオグループが掛けたFacebook広告の費用は、2020年から2023年8月8日までで合計約94万(936,343.66)USドル(≒1億3,583万円)である(甲22)。これらの売上額及び広告費は相当規模であるといえる。
以上の各要素を総合考慮すると、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標は、セルジオグループの商品の商標として周知であったというべきである。
(6)商標法第4条第1項第15号
仮に、本件商標と引用商標とが類似と認められないとしても、上記(3)で述べた共通点(類似性)はある。また、使用商標は、上記(5)で述べた周知性を有しており、使用商品は本件指定商品と同一のものがある上、いずれもアパレル分野であるため関連性が強い。さらに、上記(3)で述べた取引の実情も考慮すると、本件商標が指定商品に使用された場合、引用商品と出所の混同を生ずるおそれがあるというべきである。
2 申立理由のまとめ
以上により、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同項第15号に該当するものである。

第4 当審の判断
1 使用商標の周知性について
(1)申立人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
ア 「Sergio Tacchini」は、イタリアのテニスプレーヤー「Sergio Tacchini(セルジオ・タッキーニ)」が1966年に設立したスポーツウェアブランドであり、使用商標はそのロゴマークとして使用されている(甲16)。
イ 使用商標を使用したスポーツウェアは、有名なテニスプレーヤーをはじめとするスポーツ選手などによって1972年ないし2011年に着用されたことがうかがわれる(甲16)。
ウ 使用商標を使用した「スポーツウェア、シューズ」等(以下「申立人商品」という。)が2018年3月1日付け及びに2019年11月6日付けウェブサイトで(甲11、甲14)、また、2019年秋冬モデルの申立人商品がウェブサイトで紹介され(甲18)、現在においても我が国で販売されている(甲7、甲8、甲12、甲13)。
エ 申立人は、2021年及び2022年のセルジオグループの売上高(連結及び結合財務諸表)及び2020年ないし2023年8月8日までのfacebook広告宣伝費明細とされるものを提出しているが、当該各書面にについて、翻訳文の添付はなく、その内容は不明である(甲21、甲22)。
(2)上記(1)によれば、セルジオ・タッキーニは、1966年にスポーツウェアのブランド「Sergio Tacchini」を設立したこと、使用商標をロゴマークとして使用したスポーツウェア等の申立人商品が販売されていることが認められ、我が国においても販売されていることがうかがえる。
しかしながら、我が国における販売開始時期は明らかでなく、申立人商品の販売数、売上高、市場シェア等の具体的な販売実績を示す主張、証左は見いだせない。
また、申立人はセルジオグループに係る売上高及び広告費に関する証拠を提出しているが、これらの証拠からは、これが使用商標を使用した申立人商品に関するものであることを把握することができない。そして、ほかにセルジオグループによる、使用商標を付した申立人商品の販売実績及び広告に関する証左は提出されていない。
したがって、提出された証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、使用商標がセルジオグループの業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、切り欠きを有する円の内部のやや上部に「T」字状図形を配した構成からなるものであり、当該切り欠きは「T」字状図形の横線の右下方に大きく一か所あり、「T」字状図形の三つの先端はいずれも円と接していて、全体が同じ太さで描かれてなるものである。
そして、上記構成からなる本件商標は、特定の事物等を表すものとして認識されるというべき事情は見いだせないから、これより特定の称呼及び観念は生じないものである。
(2)11号引用商標
ア 引用商標1は、別掲2のとおり、切り欠きを有する白抜きの円内部の中央部に「T」字状図形を配した構成からなるものであり、当該切り欠きは、「T」字状図形の横棒の左側下部及び右側上部に小さく二か所あり、右側の切り欠きは黒く塗りつぶされている。また、「T」字状図形の左右の横線は円に接し、下方の先端は円に接しておらず、円は上部及び下部の中央に向かって幅が細くなっている構成からなるものである。
イ 引用商標2及び引用商標3は、別掲3のとおり、二か所の切り欠きを有し、円内部に「T」字状図形を配した、引用商標1と同様の構成からなるものであり、円を黒色、「T」字状図形部分を白抜きで描いた構成からなるものである。
ウ 引用商標4は、別掲4のとおり、引用商標2及び引用商標3をやや横長に描いてなるものである。
エ 上記構成からなる11号引用商標は、いずれも特定の事物等を表すものとして認識されるというべき事情は見いだせないから、これより特定の称呼及び観念は生じないものである。
(3)本件商標と11号引用商標の類否
本件商標及び11号引用商標は、上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、いずれも切り欠きを有する円の内部に「T」字状図形を配したという共通点を有するとしても、本件商標は全体が同じ太さであるのに対し、11号引用商標は黒塗りと白抜き図形を組み合わせ、かつ、円が上下の中央部に向かって細くなっているという相違点、切り欠きの数が一か所か二か所かの相違点、本件商標の切り欠きが大きいのに対し、11号引用商標の切り欠きは小さいという相違点、本件商標の右側の切り欠きの位置が円の下部であるのに対し、11号引用商標の切り欠きの位置は円の上部であるという相違点に加え、本件商標は「T」字状図形の下部の先端が円に接しているのに対し、11号引用商標は「T」字状図形の下部の先端が円に接していないという相違点を有することから、その構成全体から受け取る印象が異なり、外観上、明らかに区別できるものである。
また、本件商標及び11号引用商標は、いずれも特定の称呼及び観念は生じないものであるから、称呼及び観念については比較することができないものである。
してみれば、本件商標と11号引用商標とは、称呼及び観念については、比較できないとしても、外観において明らかに区別できるものであるから、これらが取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合的に勘案すれば、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(4)小括
したがって、本件商標の指定商品と11号引用商標の指定商品が同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
使用商標は、上記1のとおり、セルジオグループの業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることができないものである。
また、別掲5のとおりの構成からなる使用商標は、引用商標2及び引用商標3と、ほぼ同じ構成からなる図形商標であり、上記2のとおり、本件商標と引用商標2及び引用商標3とが非類似の商標であることからすれば、本件商標と使用商標も同様に相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、商標の類似性の程度は極めて低いものである。
そうすると、本件商標の指定商品と申立人商品との関連性及び需要者の共通性等を考慮しても、本件商標の商標権者が、本件商標をその指定商品について使用をした場合、これに接する取引者、需要者は、使用商標を連想、想起し、他人(セルジオグループ)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標1)


別掲3(引用商標2,引用商標3)


別掲4(引用商標4)


別掲5(使用商標)


(この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。
異議決定日 2024-06-20 
出願番号 2021081615 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W141825)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 鈴木 雅也
特許庁審判官 小田 昌子
馬場 秀敏
登録日 2023-08-08 
登録番号 6724672 
権利者 テルファー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
商標の称呼 テイシイ、シイテイ 
代理人 山尾 憲人 
代理人 岡村 太一 
代理人 田中 陽介 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ