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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W30 |
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管理番号 | 1412485 |
総通号数 | 31 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-07-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-09-11 |
確定日 | 2024-06-21 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6713518号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6713518号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6713518号商標(以下「本件商標」という。)は、「MOUNJARO」の欧文字を標準文字で表してなり、令和4年10月6日に登録出願、第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,茶,コーヒー,ココア,氷,菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。),パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,チョコレートスプレッド,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,パスタソース,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用グルテン,食用粉類」のほか、第3類、第10類、第16類、第25類、第32類、第35類、第41類、第42類及び第44類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同5年6月7日に登録査定、同年7月3日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立の理由において引用する登録商標(以下まとめていうときは「引用商標」という。)は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。 (1)登録第2579776号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の態様:MANJARI 登録出願日:平成3年6月11日 設定登録日:平成5年9月30日 指定商品:第30類「菓子,パン」 (2)登録第2579775号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の態様:MANJARI 登録出願日:平成3年6月11日 設定登録日:平成5年9月30日 指定商品:第30類「茶,コーヒー,ココア,氷」、第32類「清涼飲料,果実飲料」 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標はその指定商品及び指定役務中、第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,茶,コーヒー,ココア,氷,菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。),パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,チョコレートスプレッド,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,パスタソース,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用グルテン,食用粉類」(以下「申立てに係る商品」という。)について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第33号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第11号について ア 本件商標の商標権者は、本件商標を「マンジャロ」として使用している事実があるので(甲33)、本件商標は、取引者、需要者において「マンジャロ」の称呼を以て認識・記憶される可能性が高い。よって、本件商標からは「マンジャロ」の称呼が生じる。現に、特許庁も本件商標の称呼として「マンジャロ」を認定している(甲1)。 引用商標は、欧文字で「MANJARI」と書してなるので、その自然的称呼は「マンジャリ」である。 イ 取引の実情 申立人は、本件商標及び片仮名「マンジャリ」を商品「チョコレート」に使用中である。 申立人は、フランスで1922年に創業したチョコレートメーカーである。製菓用の他、チョコレート菓子の製造、販売するのみでなく、我が国においてショコラの専門技術校「エコール・ヴァローナ東京」を運営するとともに日本各地で製菓技術講習会を開催する他、製菓の世界大会「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」の創設者一員を務める等、製菓業界に多大な貢献をしている。 市場においては、申立人のチョコレートは高級ブランドとして認識されており、特にショコラティエやパティシエからの支持が厚いとされている(甲5)。 申立人は、2022年に創業100周年を記念して大々的なイベントを行い、その周知性・著名性はかつてないほどに高まっている。このイベントは都内の高級ホテルで行われ、その様子はインターネットのほか、各種媒体で紹介された(甲6〜甲11)。イベント関連記事においては、申立人について「カカオ豆の栽培から輸送まで厳しい品質管理、技術指導など徹底したカカオヘのこだわりと確かな味で、世界中のトップシェフから支持される」「世界中のトップシェフから認められる」(甲6〜甲9)、「プロフェッショナル向けの製品としてシェフ視点に立った独創的なアイデアと技術で最高のショコラを届け続けている、お菓子作りのプロフェッショナルに認められるショコラブランド」(甲10)、「100年の歴史を持つフランスの老舗ショコラブランド『ヴァローナ』。世界中のプロフェッショナルに信頼されている」(甲11)と紹介されていることからも、申立人の周知性・著名性をうかがい知ることができる。 そして、申立人のチョコレートのメインブランドの一つに「MANJARI/マンジャリ」(以下、「マンジャリ」と称する。)がある(甲12)。 「マンジャリ」は、マダガスカル産カカオを使用したシングルオリジンチョコレート(ひとつの原産国・生産地の素材のみで作られたチョコレートのこと)で、華やかな酸味がチョコレートの概念を変えたといわれる一品として評価されるダークチョコレートであり(甲13〜甲15)、製菓用チョコレートとして各地のケーキ店で使われる等、人気を博している(甲16)。申立人の集計では、こうした人気に支えられ「マンジャリ」は2020年に販売30周年となり、それを記念して「マンジャリ30周年レシピ・コンテスト」が開催されたほどである(甲17〜甲19)。同コンテストは業界内で注目を集め、コンテスト結果も大きく報じられた(甲20〜甲24)。 この他にも、申立人は都内有名ホテルでイベントを行うこともあるが、その際は前記「マンジャリ30周年レシピ・コンテスト」の入賞作品が実際に提供され、その様子も大きく報じられている(甲25〜甲29)。 申立人の「マンジャリ」は、各地の専門店の他、インターネットショッピングモールでも入手可能で、何れのサイトでも高評価を得ている(甲30〜甲32)。 このように、引用商標は、我が国で周知・著名なものとなっており、こうした事情は、商標の類否判断において参酌されるべきものである。 ウ 類否判断 本件商標の称呼「マンジャロ」と引用商標の称呼「マンジャリ」とは、語尾音における「ロ」音と「リ」音の相違しかない。両音は子音を共通にする弾音で音感が近似するだけでなく、該差異音は、称呼の識別上最も注意を惹きがたいとされる語尾に位置するものである。また両商標と第2音目が「ン」音で一度口をつぐむため第3音の「ジャ」音が強く発音され、その反動でその後に続く「リ」音と「ロ」音の差異は目立たなくなるので、差異音の聴別は一層困難となり、その結果、全体の語調・語感が近似するものとなる。 さらに前記のとおり、チョコレートについて引用商標は取引者、需要者間に周知・著名となっており、このような取引の実情を参酌するならば、両商標に係る商品出所の混同のおそれは、一層増幅させられるものである。 エ 小括 そうとすれば、たとえ、本件商標と引用商標の外観において多少の相違があり、観念について対比することができないものであるとしても、本願商標と引用商標が同一又は類似の商品に使用された場合にはその商品の出所について混同が生じるおそれがあるというべきであって、本件商標は、引用商標と類似するとするのが相当である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第15号について ア 引用商標の周知・著名性 前記のとおり、申立人は、引用商標をチョコレートに使用しており、我が国の取引者、需要者において相当程度の周知・著名性を獲得しているものである。 イ 「MANJARI」の造語性、独創性 「MANJARI」は、サンスクリット語で「香り」を意味する語であるが、そもそもサンスクリット語が我が国で一般に通用しているという事情は無く、またそれが意味する「香り」もチョコレートとの関係においては商品の内容を直接的かつ具体的に想起させるものもない。そうとすれば、さほど一般的とはいえないサンスクリット語からチョコレートの商標として「MANJARI」を採択したこと自体に高い創作性と独創性が認められるべきである。 ウ 本件商標と引用商標の類似性 前記のとおり、本件商標と引用商標は、末尾における「ロ」音と「リ」音の相違しかないことを考慮すれば、両商標は称呼上類似するものといえる。 エ 商品の関連性 申立人が引用商標を使用する商品は、チョコレートであって、これは本件商標の申立に係る商品と同じ食料品に属する。よって、引用商標が周知・著名となっている商品と、本件商標の指定商品はその全てにおいて強い関連性があることに疑いはなく、その需要者が共通することも明らかである。 オ 混同のおそれ 引用商標の著名性及び申立人が引用商標を使用し周知・著名となっている商品と本件商標の指定商品は重複しており、その取引者、需要者も一致すること等、その商品の提供者や取引者、需要者層の個別・具体的な関連性や共通性の実情等を総合的に考察すれば、本件商標がその指定商品に使用された場合には、それがあたかも申立人の著名ブランドである「マンジャリ」ブランドに係る申立人の提供する商品であるかのように誤認され、そうでなくとも、何らかの密接な営業上の関連性を想起させ、あたかも申立人のグループ会社か、あるいは許諾を受けた者に係る商品であるかのように誤認させ、商品又は営業上の出所混同を生じるおそれが極めて高い。 カ 小括 以上のとおり、本件商標がその指定商品に使用された場合は、申立人の著名商標に係る商品と出所の混同を生ずるおそれが高いものであり、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (3)むすび 以上から明らかなように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項15号の規定に該当するにもかかわらず商標登録されたものであるから、その登録は、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について ア 申立人の主張及び同人の提出した証拠によれば、以下のとおりである。 (ア)申立人であるヴァローナ(VALRHONA)は、1922年にフランスのローヌ地方で創業したチョコレートメーカーであり、主に製菓用チョコレート(クーベルチュール)を製造している(甲5)。 申立人のチョコレートは、世界でもトップクラスの高級チョコレートのブランドとして認識されている(甲5)。 また、申立人のフランス本社の工場で製造されるチョコレート商品は、我が国の全国各地の製菓材料卸問屋、高級洋菓子店、パティスリーショップ、デパート、レストランなどで販売されている(甲5)。 (イ)申立人に係る「2020年「マンジャリ」発売30周年」と題するチョコレートのカタログにおいて、「マダガスカル産カカオを使用した製品ラインナップ」の見出しの下、製品名「MANJARI/マンジャリ」、内容「フランボワーズやスグリなど、赤いベリー系の華やかな酸味と明るい色合いが特徴のブラック・チョコレート」等の記載がある(甲12)。 (ウ)2022年9月に、我が国において開催された申立人の創業100周年記念イベントの様子が、複数のインターネット記事において紹介され、当該イベントで提供されたスペシャルデザート「カボス」について、「蓋を開けると、中にはヴァローナの「マンジャリ」を使用したガナッシュが詰まっています」などと記載されている(甲6〜甲11)。 (エ)雑誌「GATEAUX」(2020年10月1日発行)において、「製菓用チョコレート各社のおすすめ製品紹介」の見出しの下、「ヴァローナ」の商品の1つとして「マンジャリ 64% 今年発売30周年を迎えた、マダガスカル産カカオを使用したダークチョコレート。・・・華やかな酸味がチョコレートの概念を変えたと言われる一品。」等の記載がある(甲13)。 (オ)甲第17号証ないし甲第29号証については、申立人の商品「マンジャリ」の発売30周年を記念して、レシピコンテストを開催することを告知した雑誌記事及びコンテストにおいて優勝した商品についてのイベント紹介記事が掲載されている。 (カ)甲第30号証ないし甲第32号証については、「amazon」、「YAHOO!ショッピング」及び「Rakuten」のインターネットショッピングサイトにおいて、申立人の商品「マンジャリ」が販売されていることが確認できる。 イ 上記アによれば、「マンジャリ(MANJARI)」は、申立人であるヴァローナ(VALRHONA)に係る製菓用チョコレートのブランドである。そして、我が国で開催された申立人の創業100周年を記念したイベントにおいて「マンジャリ(MANJARI)」が紹介され、また、「マンジャリ(MANJARI)」の発売30周年を記念してレシピ・コンテストやイベントが開催されたことがうかがえるとしても、申立人が提出した証拠によっては、「マンジャリ(MANJARI)」の日本国内又は外国における売上高、販売数量などの販売実績はもとより、市場シェア、広告宣伝の規模等について、客観的に判断し得る証拠の提出が認められないことから、引用商標の周知性を立証する証拠としては不十分なものといわざるを得ない。 そうすると、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたとは認めることができない。 (2)商標法第4条第1項第11号該当性 ア 本件商標 本件商標は、上記1のとおり、「MOUNJARO」の欧文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は辞書に載録された語ではないことから、特定の意味を有しない造語と理解されるものであり、また、そのつづりからすれば英語読み風に発音されるのが自然であるから、「マウンジャロ」の称呼を生ずる。 そうすると、本件商標は、「マウンジャロ」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。 イ 引用商標について 引用商標は、上記2のとおり、「MANJARI」の欧文字を横書きしてなるところ、当該文字は辞書に載録された語ではなく、特定の意味を有しない造語であるから、その構成文字に相応して、「マンジャリ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 ウ 本件商標と引用商標の類否 本件商標と引用商標の類否を検討すると、両者はそれぞれ上記ア及びイのとおりの構成からなるところ、その構成文字及び構成文字数において相違し、外観全体から受ける視覚的印象に与える影響は大きいことから、両者を離隔的に観察しても、外観上、区別し得るものであって、外観において相紛れるおそれはない。 また、称呼においては、本件商標から生じる「マウンジャロ」の称呼と引用商標から生じる「マンジャリ」の称呼とは、2音目に「ウ」の音の有無があり、さらに、語尾における「ロ」と「リ」の音に差異を有することから、これらの音の違いが短い4音構成における称呼全体に与える影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても語調語感が異なり、明瞭に聴別できるものである。 そして、観念においては、本件商標と引用商標は、特定の観念は生じないから、両商標は、観念において比較することはできない。 そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することはできないものであり、外観及び称呼において相紛れるおそれがないから、両者の外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は互いに紛れるおそれのない非類似の商標である。 その他、両商標が類似するというべき事情は見いだせない。 エ 小括 以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、申立てに係る商品と引用商標の指定商品が同一又は類似する商品であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性 上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国における需要者の間に広く認識されているものと認められない。 また、本件商標と引用商標とは、上記(2)のとおり、類似しない別異の商標というべきであるから、その類似性の程度は低いものである。 そうすると、本件商標に接する取引者、需要者が申立人の業務に係る引用商標を連想、想起するものということはできない。 以上からすると、本件商標は、商標権者がこれを申立てに係る商品について使用しても、取引者、需要者が、その商品が申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。 その他、本件商標について、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (4)むすび 以上のとおり、本件商標は、申立てに係る商品について商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2024-06-13 |
出願番号 | 2022115144 |
審決分類 |
T
1
652・
261-
Y
(W30)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
旦 克昌 |
特許庁審判官 |
小林 裕子 大島 康浩 |
登録日 | 2023-07-03 |
登録番号 | 6713518 |
権利者 | イーライ リリー アンド カンパニー |
商標の称呼 | マンジャロ、マウンジャロ、モウンジャロ、ムーンジャロ |
代理人 | 竹中 陽輔 |
代理人 | 山頭 めぐみ |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 中山 真理子 |
代理人 | 齋藤 宗也 |
代理人 | 達野 大輔 |
代理人 | 外川 奈美 |