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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W14162425394143 |
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管理番号 | 1412479 |
総通号数 | 31 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-07-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-06-26 |
確定日 | 2024-07-01 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 登録第6691578号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6691578号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6691578号商標(以下「本件商標」という。)は、「GO KINGS!」の文字を標準文字で表してなり、令和4年6月15日に登録出願、第14類、第16類、第24類、第25類、第39類、第41類及び第43類に属する別掲1のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同5年4月12日に登録査定され、同月20日に設定登録されたものである。 第2 引用標章及び引用商標 1 登録異議申立人「沖縄バスケットボール株式会社」(以下「申立人1」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する標章は、以下の(1)及び(2)のとおりである。 (1)申立人1が、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に該当するとして引用する標章は、同人が運営するバスケットボールチーム「琉球ゴールデンキングス」の応援フレーズ及び申立人1又は同チームの業務に係る標章として、需要者の間に広く認識されていると主張する「GO KINGS!」の文字からなる標章(以下「引用標章1」という。)である。 (2)申立人1が、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当するとして引用する標章は、上記「琉球ゴールデンキングス」の著名な略称又はこれと同視される「KINGS」の欧文字からなる標章(以下「引用標章2」という。)及び「キングス」の片仮名からなる標章(以下「引用標章3」という。)である。 以下、引用標章1ないし引用標章3をまとめていうときは、「申立人1引用標章」という。 2 登録異議申立人「エヌ ビー エイ プロパティーズ インコーポレーテッド」(以下「申立人2」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する登録商標は、以下の(1)ないし(3)のとおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。 (1)登録第4055526号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成 別掲2のとおり 指定商品 第24類、第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品 登録出願日 平成元年7月3日 設定登録日 平成9年9月12日 書換登録日 平成21年4月15日 最新更新登録日 平成29年6月13日 (2)登録第4138541号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成 別掲3のとおり 指定商品 第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品 登録出願日 平成6年3月3日 設定登録日 平成10年4月24日 最新更新登録日 平成30年4月17日 (3)登録第5896782号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の構成 別掲4のとおり 指定商品及び指定役務 第9類、第16類、第18類、第25類、第28類及び第41類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 登録出願日 平成28年4月22日 設定登録日 平成28年11月18日 以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめていうときは、「申立人2引用商標」という。 第3 登録異議の申立ての理由 1 申立人1の登録異議の申立ての理由 申立人1は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであるとし、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第701号証(枝番号を含む。)を提出した。 なお、申立人1が提出した証拠を表示する場合は、以下「甲第○号証A」とし、これを省略して「甲○A」のように記載する。 また、枝番号を有する証拠において、枝番号の全てを表示する場合は、枝番号を省略する。 (1)商標法第4条第1項第15号について ア 申立人1の運営するバスケットボールチーム「琉球ゴールデンキングス」について 琉球ゴールデンキングスは、申立人1が2007年に創設した、沖縄県初の同県を本拠とするプロバスケットボールチームであり、同チームは、日本プロバスケットボールリーグ(通称「bjリーグ」)の発足後3シーズン目となる2007−08シーズンから同リーグに参戦し、その後、2016−17シーズンからはナショナル・バスケットボール・リーグ(通称「NBL」)とbjリーグが統合して発足した、日本のトップリーグであるジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(通称「Bリーグ」)に所属して、「沖縄をもっと元気に!」という理念の下に、バスケットボールを通じて沖縄の発展・活性化に貢献すべく現在に至るまで活動を続けてきた(甲2A、甲3A)。 琉球ゴールデンキングスは、前記のbjリーグ時代には、同リーグ最多となる4度の優勝成績を残し、1試合の平均観客動員数が1,500〜1,600人程度のbjリーグにおいて、平均3,000人を上回る観客を集め、年間にして10万人を動員したほか、協賛も含めて250社余のスポンサー企業を獲得するなど、bjリーグ参入当初から高い人気を誇っていた(甲2A、甲3A)。 その後、琉球ゴールデンキングスは、Bリーグに所属してからも観客動員数を伸ばし、直近の2022−23シーズンでは1試合平均7,000人ほどの観客を集め、全国のBリーグ36チームの中で主催試合の年間の総観客動員数が20万人を超えた唯一のチームとなったことからも、その圧倒的な人気と知名度の高さをうかがい知ることができるとともに、今年Bリーグ所属後初となる悲願の優勝を成し遂げ、より一層の期待と注目を集めている(甲2A〜甲7A)。 また、2021−22シーズンの入場料収入は、約7.8億円で2位とは倍額以上の差をつけてリーグ1位を記録し、2022−23シーズンもそれを上回る10億円以上の入場料収入で1位になることが予想されており(甲2A、甲8A、甲26A)、チーム運営の安定性にも定評がある。入場料やスポンサー料を含めた2021−22シーズンの営業収入(売上)は19億7,358万円にものぼり(甲2A、甲9A)、バスケットボールチームの経営的側面を評価するデロイトトーマツグループの「Bリーグ マネジメントカップ」においても、2年連続でマーケティング、経営効率、経営戦略、財務状況のすべての分野で1位の評価を獲得している(甲10A〜甲12A)。このような高評価はファンやスポンサーの多さに支えられており、琉球ゴールデンキングスの認知度の高さを裏付けている。 そして、上述のような琉球ゴールデンキングスの活躍は、本拠である沖縄県に多大な経済効果をもたらしてきたが、同チームは「KINGS公民館」や「キングスこどもかいぎ」と称したイベントを通じて、沖縄県市街の美化活動や沖縄の子供たちとの交流を行ったり、地域の商店街らと連携して「キングス商店街」や「キングスフードフェス」を開催したりと、沖縄県の地域社会や経済の活性化にも大きく貢献してきた(甲13A〜甲19A)。 さらに、2021年には琉球ゴールデンキングスの新たなホームコートである沖縄アリーナがオープンし、2022−23シーズンから同会場でシーズンを通しての本格的な試合運営が開始されたことにより、琉球ゴールデンキングスによる今後の更なる観客動員が見込まれるとともに、沖縄県におけるより一層の経済効果も期待されている(甲20A〜甲26A)。なお、沖縄アリーナは、2023年8月からフィリピン・インドネシアとの共催で開催される「2023年FIBAバスケットボール・ワールドカップ」の試合会場になることが決定しており、琉球ゴールデンキングスのBリーグ優勝ともあいまって、特に沖縄県ではバスケットボールに対する過去に例を見ないほどの盛り上がりを見せており、このようなブームを牽引している同チームの功績は非常に大きく、全国的にも広く認知されることとなっている(甲27A〜甲30A)。 イ 「GO KINGS!」の著名性について 琉球ゴールデンキングスの活躍や地域に根ざした様々な活動が、その本拠とする沖縄県を始め全国において認知されていることは上述のとおりであるが、「GO KINGS!」は、そのファンや観客、スポンサー企業、新聞や雑誌などのメディアが、同チームの応援に際して使用している文字であるとともに、申立人1又は同チームの業務に係る標章として需要者に広く認識されているものである。 以下の書証から、「GO KINGS!」、「GO KINGS」、「GO!KINGS」又は「GO!KINGS!」(以下、これらをまとめて「「GO KINGS!」等」という。)の文字が、琉球ゴールデンキングスに対する応援フレーズとして、あるいは、申立人1又は同チームの業務に係る標章として使用されてきた事実を確認できるとともに、その認知度の高さを裏付けている。 (ア)試合会場等の写真 琉球ゴールデンキングスの試合会場で撮影された写真又はテレビ放送・インターネット放送・動画配信サービス等で放映された試合映像のスクリーンショット(甲31A〜甲178A、甲647A〜甲649A)には、「GO KINGS!」等が記載された応援カードを持ったファンや観客、チアガール(キングスダンサーズ)、チームのマスコットキャラクターが写っており、琉球ゴールデンキングスの応援に際してこれらが使用されていることは明らかである。 なお、2007−08シーズンから2022−23シーズンに至るまでの琉球ゴールデンキングスの試合の開催日時・対戦相手・試合会場の一覧を提出する(甲650A)。 (イ)ポスター 琉球ゴールデンキングスの試合会場やインターネット上で、沖縄県市街の商店街などに掲示された選手のポスター(甲179A〜甲193A)には、いずれも「GO KINGS!」の文字が記載されており、これらが琉球ゴールデンキングスに係る標章として使用されていることは明らかである。 (ウ)スポンサー企業名入り応援ボード・のぼり 琉球ゴールデンキングスのオフィシャルパートナー(スポンサー)の企業の名前と「GO!KINGS」の文字が記載された応援ボード又はのぼり(甲194A〜甲231A)のうち、応援ボードについては、試合会場で観客が応援のために掲げて使用しているものであり(甲31A〜甲178A)、のぼりについては、試合会場やスポンサー企業の店頭などで掲示されるものであるところ(甲232A〜甲237A)、当該文字が琉球ゴールデンキングスに対する応援メッセージとして使用されていることは明らかである。 なお、2022−23シーズンの応援ボードに係る請求書(甲238A)により、試合毎に来場者に配布するべく相当の数量を印刷していることがわかる。 (エ)スポンサー企業によるコラボ商品・キャンペーン オフィシャルパートナーの企業によるコラボ商品やキャンペーンに関する写真、画像、ポスター、SNS又はウェブサイト(甲239A〜甲282A)にはいずれも「GO KINGS!」等の文字が記載されており、これらが琉球ゴールデンキングスに係る標章として使用されていることは明らかである。 (オ)オフィシャルグッズ 琉球ゴールデンキングスに関するオフィシャルグッズの写真又はイメージ画像(甲283A〜甲306A)のいずれにも「GO KINGS!」等が表されており、これらのグッズは、琉球ゴールデンキングスのHPのオンラインショップをはじめ、沖縄アリーナ内にあるアリーナショップや同チームのオフィシャルグッズショップ「キングスクローゼット」などの実店舗で販売されているもの(又は販売されていたもの)である。また、これらの各書証によれば「GO KINGS!」等が、申立人1又は琉球ゴールデンキングスの業務に係る標章として使用されていることは明らかである。 なお、上記のオフィシャルグッズの製作に要した費用の請求書の一部を提出する(甲307A)。 (カ)新聞・雑誌 琉球ゴールデンキングスを特集した雑誌「オキナワグラフ」を紹介するウェブサイトの抜粋(甲308A)には、「GO!KINGS!/天皇杯観戦記」との見出しがある雑誌の表紙とともに、琉球ゴールデンキングスの試合に関する説明が記載されており、「GO!KINGS!」が琉球ゴールデンキングスを指し示す語として使用されていることは明らかである。 また、新聞記事の抜粋(甲315A〜甲409A)には、琉球ゴールデンキングスを「キングス」と指称している記事とともに、「GO KINGS!」等も記載されており、これらの語が琉球ゴールデンキングスに係る標章として使用されていることは明らかである。 (キ)SNS InstagramやTwitterといったSNSの投稿(甲501A〜甲619A、甲637A〜甲642A、甲653A〜甲678A)には、「GO KINGS!」等や「#gokings」のハッシュタグが記載されており、これらが琉球ゴールデンキングスの応援フレーズとして、あるいは、琉球ゴールデンキングスに係る標章として使用されていることは明らかである。 (ク)「GO KINGS!」の著名性のまとめ 上記によれば、「GO KINGS!」等が、申立人1が運営する琉球ゴールデンキングスヘの応援フレーズとして、あるいは、申立人1又は琉球ゴールデンキングスの業務に係る標章として使用されている事実を確認できる。 特に、Bリーグは、2023−24シーズンにおいて、B1所属24チーム(東地区、中地区、西地区)、B2所属14チーム(東地区、西地区)から構成されており、下部リーグであるB3リーグ(16チーム所属)も含めれば、バスケットボールチームの空白県は山梨県、和歌山県、鳥取県、高知県、大分県及び宮崎県の5県にすぎないところ、バスケットボールに関心のある者は全国に存在している(甲309A、甲310A)。 そして、沖縄県のみならず、アウェイ試合の場やテレビ放送・インターネット放送・動画配信サービス(「バスケットLIVE」の視聴実績は甲651Aのとおりである。)などを通じて、「GO KINGS!」等を使った応援などは全国で視聴されているところ(甲500A、甲651A)、これらが申立人1又はその運営する琉球ゴールデンキングスの業務に係る標章として需要者に広く認識されていることは明らかである。 ウ 出所混同のおそれについて 商標法第4条第1項第15号は、その出願商標(の使用)により混同が生じる対象を「他人の業務に係る商品又は役務」としていることからすると、当該他人がその業務に係る商品等に使用する商標のみに限定されず、名称や略称、ブランド名等の標章も広く含めたうえで、本号に規定する「混同の生じるおそれ」の有無を判断すべきである。 上述のとおり、申立人1又は琉球ゴールデンキングスの使用に係る「GO KINGS!」等が、2007年のチーム創設後現在に至るまで同チームに対する応援フレーズあるいは同チームの業務に係る標章として使用されており、バスケットボールの興行の企画・運営において極めて高い周知性を有する。また、申立人1は、自ら又はパートナーシップ(スポンサーシップ)契約を締結したスポンサーを通じて、「GO KINGS!」等を使用した商品の販売等を行っている。 以上からすれば、本件商標が付された指定商品又は指定役務が実際の商取引に資された場合、これに接した需要者・取引者は、申立人1、琉球ゴールデンキングス又は琉球ゴールデンキングスと何らかの関係性を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのごとく、商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれがある。 エ 小結 したがって、申立人1又は琉球ゴールデンキングスに係る「GO KINGS!」は、申立人1又はその運営するバスケットボールチームに係る標章として、需要者の間に広く認識されているから、これと同じ文字からなる本件商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合、申立人1又は琉球ゴールデンキングスの業務に係る商品又は役務であると混同を生じさせるおそれがある。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第8号について ア 琉球ゴールデンキングスの略称「KINGS」及び「キングス」の著名性について 琉球ゴールデンキングスのチーム名は、インターネット投票による一般公募で選ばれた「琉球キングス」に、後にチームのファストカラー「ゴールド(ゴールデン)」を付記して正式名称として採用されたものであり、「王(キング)」という響きに力強さと風格が感じられ、bjリーグの中でもキングのような存在になってほしい」という願いの込められた名称である(甲2A、甲311A)。 同チームは、2007年の創設当初から「キングス(KINGS)」の愛称(略称)で慣れ親しまれてきた。この点については、前述したとおり、同チームヘの応援フレーズとして「GO KINGS!」等が使用されていること(「GO KINGS!」のうち「GO」の部分は「〜頑張れ」という意味であり(甲312A))、全体では「「キングス(KINGS)」頑張れ」という意味である。)、また、スポンサー企業とのコラボによる広告やグッズにおいて「GO KINGS!」等が使用されていること(甲31A〜甲282A)、さらには、同チーム専属のチアガールを「キングスダンサー」、オフィシャルグッズショップを「キングスクローゼット」と称して、これらの名称の一部に「キングス」の語を使用していることからも、「KINGS」あるいは「キングス」が琉球ゴールデンキングスを指し示す略称として使用され(甲313A、甲314A)、需要者にも広く認識されていることが裏付けられる(甲315A〜甲652A、甲701A)。 (ア)新聞・雑誌 琉球ゴールデンキングスの試合に関する特集記事(甲315A〜甲409A)には、いずれも見出しや本文において同チームを指し示す略称として「キングス」が使用されている。 また、旅行情報誌「るるぶ」が特別編集し、沖縄県内のショッピングセンター等で配布された琉球ゴールデンキングスに関する情報誌(フリーペーパー)の表紙及びその案内の写真(甲652A)にも、同チームを指し示す略称として「キングス」が使用されている(「キングス商店街」「キングス女子」「GO!GO!キングス」)」。 (イ)放送 琉球ゴールデンキングスに関する番組の番組タイトルに「KINGS」あるいは「キングス」が使用されている(甲2A、甲410A〜甲416A)。 また、テレビのニュース番組のスクリーンショット(甲643A〜甲646A)のいずれにも琉球ゴールデンキングスを指し示す略称として「キングス」が使用されている。 (ウ)インターネット・SNS等 インターネットニュース、プレスリリース、ブログ及びSNS等の抜粋(甲417A〜甲642A)のいずれにも琉球ゴールデンキングスの略称として「KINGS」あるいは「キングス」が使用されている。 (エ)琉球ゴールデンキングスの略称「KINGS」及び「キングス」の著名性のまとめ 上記によれば、「KINGS」及び「キングス」が、申立人1が運営する琉球ゴールデンキングスを指し示す略称として需要者に広く認識されていることは明らかであり、少なくともその本拠である沖縄県あるいはバスケットボール業界においては、広く認識されているにとどまらず、著名であるといえる。 イ 商標法第4条第1項第8号の該当性について 「KINGS」及び「キングス」が、琉球ゴールデンキングスの略称として、少なくとも沖縄県あるいはバスケットボール業界において著名であることは上述のとおりである。 そして、本号において略称等には著名性を要することとしたのは、人格的利益保護の趣旨から恣意的な略称等についてはその保護の範囲から除外するためであると解され、保護すべき人格的利益が存すると考えられる場合には、略称等が著名性の要件を満たすかについては、地理的範囲のみならず、その他の事情も踏まえて、柔軟に判断されてしかるべきである。 2007年の創設から現在に至るまでbjリーグ及びBリーグ屈指の集客力と人気を誇り、本拠である沖縄県に根ざして地域経済や地域社会の活性化に貢献してきた琉球ゴールデンキングスにあっては、その長く慣れ親しまれてきた略称「KINGS」及び「キングス」についても、その人格的利益は当然に保護されるに値するものであり、少なくともその本拠である沖縄県あるいはバスケットボール業界においては著名であることからすれば、本号に定める著名な略称に該当するといえる。 ウ 小括 以上のとおり、「KINGS」及び「キングス」は、本号に定める著名な略称等に当たるところ、当該著名な略称又はこれと同視される「KINGS/キングス」の文字を含み、かつ、その商標登録することに申立人1又は琉球ゴールデンキングスの承諾を得ていない本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第7号について 適正な商道徳に反し、著しく社会的妥当性を欠く出願行為に基づいて商標登録を認めることは、公正な取引秩序の維持の観点からみても不相当であって、商標法の目的(同法第1条)にも反するところであるから、本号に該当する(知財高判令和元年(行ケ)第10073号事件ほか)。 ア 「GO KINGS!」の周知性及び使用状況について 上記(1)イのとおり、「GO KINGS!」は、琉球ゴールデンキングスに対する応援フレーズ及び申立人1又は同チームの業務に係る標章として、需要者の間で、広く知られていることが明らかである。 そして、申立人1は、「GO KINGS!」の文字の利用をオフィシャルパートナー契約のメリットとはせず(甲679A、甲680A)、琉球ゴールデンキングスのファンが同チームに対する応援フレーズとして用いることができるよう運用をしていた。 イ 出願人が琉球ゴールデンキングスに対する応援フレーズとして用いられ、周知されている事情も熟知していたこと 出願人及びK社(以下、両者をあわせて「出願人等」という。)が経営に関与している「GO KINGS! CAFE」(以下「本件店舗」という。)は、元々、「BlueTurtleResort」との名称で運営されていたが、2022年9月1日に「GO KINGS! CAFE」との名称に変更をしてリニューアル・オープンをしたものである(甲681A)。リニューアル・オープンのプレスリリース(甲682A)に琉球ゴールデンキングスのロゴが掲出されているとおり、出願人は「GO KINGS!」が琉球ゴールデンキングスに対する応援フレーズとして用いられ、周知されている事情についても熟知したうえで、その名称を変更したものである。 また、本件店舗の店舗内において同チームの試合を観戦するライブビューイング(甲683A〜甲688A)や、アウェイ試合を親戦するツアー(甲689A〜甲697A)を企画・実行していることからも、「GO KINGS!」が琉球ゴールデンキングスに対する応援フレーズとして用いられ、周知されている事情についても熟知していたことが一層裏付けられるところである。 なお、申立人1は、2022年7月4日に出願人から本件店舗の名称変更を行う旨の報告を受けているが、これは、出願人等が「GO KINGS! CAFE」への名称変更を行うことを決めた後に一方的に報告を受けたものにすぎず、当該名称変更は申立人1にとって全くの不意打ちであった。確かに、申立人1は本件店舗の名称変更や出願人等が本件店舗において「GO KINGS!」のフレーズを常識的な範囲で使用する限りにおいては、出願人に異議を申し立てることはなかったが、それは、当時、申立人1がK社との間で、2022−23シーズンに係る琉球ゴールデンキングスのオフィシャルパートナー契約を締結することを予定しており、K社と関係を維持するためにやむを得ないことであった。 なお、2022年7月4日時点で、「GO KINGS!」「GO KINGS! CAFE」の商標出願は既に行われていたが、出願人等から、7月4日またそれ以後も、商標登録が完了するまでの間、申立人1には何ら説明がなく、申立人1としては、琉球ゴールデンキングスに対する応援フレーズとして広く知られ、その事実を熟知しているばかりか、オフィシャルパートナー契約の締結もしていた出願人が、「GO KINGS!」の文字をそのまま包含する標章の独占排他権の取得をもくろんでいるとは露にも思わなかった。 ウ 出願人の出願経緯について 前記イのとおり、出願人は、申立人1に対し説明する機会があったにもかかわらず、何らの連絡・説明をすることもなく、密かに「GO KINGS!」「GO KINGS! CAFE」の出願を行った。 出願人は、拒絶理由通知を受けるや、「GO KINGS!」は「第三者が琉球ゴールデンキングスを応援する趣旨の掛け声、発言、観客の声援、キャンペーンのうたい文句にすぎず、琉球ゴールデンキングスが自らの特定の商品・役務のために宣伝広告に実際に使用したものではない」などとの主張をすることに加えて、申立人1は、2022−23シーズンにおいてはオフィシャルパートナー契約を締結していないにもかかわらず、あたかもオフィシャルパートナー契約が締結されていることを前提とする主張を展開した意見書を提出して、特許庁を誤信させて登録査定を受けたのである(疑義を避けるために付言をすると、出願人とは別法人であるK社が2022−23シーズンに申立人1と同契約を締結していた事実は認められる。なお、2023−24シーズンにおいては、申立人1及びK社のいずれとも同契約を締結していない。甲699A)。 商標登録後の2023年6月11日、申立人1が出願人を訪問した際、報告があるとして、出願人が「GO KINGS!」「GO KINGS! CAFE」で商標登録をした旨及び申立人1が使用することについてクレームを言うことはないが、他社が「GO KINGS!」を使用する場合には出願人に事前に相談をしてもらう必要がある旨が伝えられ(甲700A)、申立人1はこの時初めて出願人が「GO KINGS!」「GO KINGS!CAFE」で商標出願を行い、商標登録を受けたことを知ったのである。 エ 出願人の商標出願は、適正な商道徳に反し、著しく社会的妥当性を欠くこと 前記のとおり、申立人1は、「GO KINGS!」の文字を、琉球ゴールデンキングスのファンが応援フレーズとして用いることができるよう、あえて同チームのオフィシャルパートナー契約上のメリットとはしていなかった(甲679A、甲680A)。 しかし、出願人は、琉球ゴールデンキングスの人気及び同チームを想起させる応援フレーズを熟知し、申立人1及び同チームによって「GO KINGS!」の商標登録がされていなかったことを奇貨として、琉球ゴールデンキングスの人気にただ乗りし、また、自らの使用権(他者への使用の許諾権も含む。)を確保する目的で、申立人1らに無断で出願をした。 仮に、出願人が出願時に琉球ゴールデンキングスのオフィシャルパートナー企業の地位にあったとしても、申立人1及び琉球ゴールデンキングスが「沖縄をもっと元気に!」という言葉を掲げ、地域社会に大きな影響を与えることをチームの活動理念としており、沖縄所在の企業をはじめ年間600社以上とオフィシャルパートナー契約又はこれに準ずるサポートカンパニー契約を締結していることを踏まえると、チーム名称、チームロゴはもちろんのこと、「GO KINGS!」のようなチームを代表する応援フレーズや、同チームに関連する標章の使用を特定のオフィシャルパートナー企業が独占することは、オフィシャルパートナー契約の趣旨に著しく反する。 さらに、他社が「GO KINGS!」を使用する場合には出願人に事前に相談をしてもらいたいとの申し入れの内容からすると、今後、出願人が「GO KINGS!」に係る専用使用権の設定や通常使用権の許諾と引き換えに、申立人1にパートナーシップ契約の締結や利益供与を求める可能性も否定できず、出願人の意図次第で、申立人1若しくは琉球ゴールデンキングス又は同チームのパートナー企業による「GO KINGS!」の表現の使用が妨げられることになるばかりか(前記ウのとおり、既にそれを示唆する発言もなされている。甲700A)、琉球ゴールデンキングスのファンによる応援フレーズとしての使用も徒に委縮させるおそれがある。 したがって、申立人1や他のオフィシャルパートナー企業を出し抜いて、琉球ゴールデンキングス同チームを想起させる応援フレーズ及び同チームの業務に係る標章である「GO KINGS!」による利益を独占する本件登録出願は、適正な商道徳に反し、著しく社会的妥当性を欠くものといえる。 オ 小括 以上のとおり、本件商標は、申立人1又はその運営する琉球ゴールデンキングスに係る標章として需要者の間に広く認識されているものであり、本件商標の出願・登録・使用に至るまでの経緯に照らしても、このような標章を申立人1の許諾を受けていない出願人が自己の商標として独占して使用することは社会的相当性を欠き、商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ず、公の秩序又は善良の風俗を害するものである。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。 2 申立人2の登録異議申立ての理由 申立人2は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。)を提出した。 なお、申立人2が提出した証拠を表示する場合は、以下「甲第○号証B」とし、これを省略して「甲○B」のように記載する。 また、枝番号を有する証拠において、枝番号の全てを表示する場合は、枝番号を省略する。 (1)商標法第4条第1項第11号について 本件商標は、「GO KINGS」の欧文字と「!」の記号を結合し、標準文字で表してなるところ、「GO」部分は、商品・役務の等級や符号の類と判断でき、「!」は「エクスクラメーション(exclamation mark)」と理解できるため、これらは「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章」と認識され、その結果、本件商標の要部は「KINGS」部分のみであると判断できる。 一方、申立人2引用商標の構成要素において、いずれも「KINGS」の欧文字部分が、「SACRAMENTO」の欧文字部分と比してかなり大きく、また中央に配されており、ひときわ目立った構成態様になっているから、外観上、文字種に相違があっても、同じ「KINGS」の欧文字を構成要素とする本件商標も引用商標も、観念(王様たち)や称呼(キングス)で同一であって、指定商品・役務も同一又は類似する。 さらに、申立人2引用商標の指定商品・役務の取引者・需要者においては、申立人2引用商標が、申立人2のナショナルプロバスケットボールリーグ(NBA)の所属チーム「SACRAMENTO KINGS」のエンブレムロゴとして認識され、ブースター、ファンやサポーターからは一般に「KINGS」として略称されているため、本件商標が付された指定商品が流通し、役務が提供されれば、申立人2引用商標と誤って購入し、役務の提供を受け、利用してしまう可能性が高い(甲2B、甲3B)。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第7号について 2023年8月25日〜9月10日まで、日本やフィリピンなどで「FIBAバスケットボール・ワールドカップ」が開催され、日本は決勝ラウンドには進めないながらも、1976年のモントリオール大会以来48年ぶりに自力で来年のパリオリンピック出場を決めた。日本戦5試合、全国で5,689万人の視聴者がこの結果にくぎ付けとなって喜びを感じ、日本でのバスケットボールヘの人気にはより一層拍車がかかったことは間違いない(甲4B)。 申立人2は、1946年に設立された「アメリカ合衆国の男子プロバスケットボールリーグ「ナショナル・バスケットボール・アソシェーション(National Basketball Association:NBA)」の全30チームの関連団体のマーチャンダイズとライセンス管理等を行う同協会の事業法人である。 本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)は、申立人2に断りもなく無断でNBAの所属チーム「SACRAMENTO KINGS」の名称と類似する標章を商標登録したことから、本異議申立てに至った。 上記NBAは1950年より本格的に全米のプロバスケットボールのリーグを創設し、古くより所属チーム(30チーム)間で行われる全試合の模様や関連情報を米国のみならず、全世界に向けてその情報等を発信しており、日本でも、NHKなどの国営放送やフジテレビ、テレビ朝日、TBS、WOWOWなどの大手民間放送会社のほか、現在ではRAKUTENなどのインターネット事業者を通じて、その活躍や情報がお茶の間等に届けられ、高い人気を保っている。 特に、NBAが製造販売する関連グッズなどは、申立人2が許諾していない模倣品が市場に多くで散見されており、そのため、税関や警察等と協力し、それらの排除を行っている(甲5B)。 申立人2引用商標は、NBAに所属するチーム「サクラメント キングス(SACRAMENTO KINGS)」のチームロゴ、チームエンブレムと同一の標章であり、1971年よりチーム本拠地をミズーリ州カンザスシティに移してから「カンザスシティ・キングス」を名乗り、1983年に正式に「サクラメント キングス(SACRAMENTO KINGS)」とチーム名を改め、現在に至っている。 同チームは、近年での優勝は逃しているものの、ファンへの感謝の表れとして、仮想通貨トークンを開発し配布した初の全米プロバスケットボールチームとして知られ話題性には事欠かない。 そして、米国はおろか日本でも単に「キングス」として多くのマスコミ媒体で紹介され、取り上げられており、今でも同チームの活躍は、RAKUTENの配信を通じて日本全国のバスケットボール観戦ができるスポーツバーや契約者に届けられている(甲6B)。 さらに、「GO KINGS!」は、同チームの熱心なブースター、ファンやサポーターの応援コールとして沢山発せられており、同チームに全く関連性もない一事業者が、このコールを商標として採用し、本件商標を通じてブースター、ファンやサポーターに対し同チームとの関連性があるような信用へのただ乗りが明らかに予見できる(甲7B)。 そのことは、本件商標の審査の過程で、本件商標権者が提出した令和5年1月13日付の意見書の中で「NBAのサクラメント キングスのファンイベントを紹介した米国の放送局アメリカン・ブロードキャスティング・カンパニー(ABC放送)の動画(YouTube)(チャンネル登録者数は21万人である)において、観客が「GO KINGS」と声援を送っていることが表示されている」という記述からも明らかである(甲8B)。 念のため、ここで主張したいのは、NBA所属チーム「サクラメント キングス」や、昨年リーグ優勝した日本のプロバスケットボールチーム「琉球ゴールデンキングス」が、ファン等が発する応援・声援のコールを、その運営者でもオーナーでもない一事業主が、独占排他権が生じる商標として登録し市場をコントロールしようという意図が公序良俗に反するのではないかということである。 申立人2の独自の調査では、本件商標の商標権者は主に飲食物の提供事業者であることが容易に認識でき、その店名も「BLUE TURTLE RESORT」であったにもかかわらず、ここ最近になって店名を「GO KINGS CAFE」と名乗り、お店のPR告知には「アメリカンビレッジにある・・・キングスを応援するスポーツバー&レストラン・・・琉球ゴールデンキングスオフィシャルパートナーです。6台の大型モニターで試合観戦をしながら・・・料理などを楽しんで・・・」と表示し、ひいては「琉球ゴールデンキングスを応援しに行こう」、「3戦がなかった場合は観戦チケット代金をお戻しします。」などと、いかにも「琉球ゴールデンキングス」の関連企業のごとき振る舞いが目につく。 実際の利用客の評価では、提供すべき飲食物がそのお店のいわゆる“推し”お勧め“ではなく、プロバスケットチームが運営する店のごとき誤解を利用者に生じさせている。 注目すべきは「モニターではNBAや琉球ゴールデンキングスの試合の映像が放送されておりました。」との書き込みもあった。同店舗での「NBAの試合の映像」を営利目的で利用されるのは申立人2のあずかり知らぬところであって、著作権法上でも問題があり、申立人2には到底理解ができない。 上記意見書では「オフィシャルパートナーであること及び出願人の社名を明示していること」を商標登録に対する正当性の根拠としているが、申立人2の調べでは、そのような事実は「琉球ゴールデンキングス」の公式サイトや記録には確認できなかった。ゆえに、単に、本件商標の商標権者だけがそのように名乗っているようにしか思えない。 さらに、「琉球ゴールデンキングス」の所属選手の肖像や商標を自社の営業ツールや商品に付して販売し、利用している事実も確認できた。すなわち、同所属選手の肖像をも営利目的で使用し、個人の肖像権まで本件商標権者に帰属しているのかという疑問も生じる。 また、従業員募集の告知には「琉球ゴールデンキングスをテーマにした美浜のカフェ」「キングス選手とも仲良くなれて密な関係にも」「キングスの選手やブースターも多数来店する」と表示して、あたかも「琉球ゴールデンキングス」とはそのような契約に基づき運営しているかのごとき誤解まで与えてしまっている。 そもそも、商標権というものは存続期間の更新手続きによって、半永久的に保全できるものであるが、パートナーシップ契約は通常は1・2年ごとに契約が見直され、それゆえパートナーシップやスポンサー契約の解除、出資関係の解消などは頻繁に起こりうるものである。 例えば、「琉球ゴールデンキングス」の現在の公式ホームページには「トップオフィシャルパートナー」と称して紹介されている企業は「沖縄ファミリーマート」など18社、「オフィシャルパートナー」と称して紹介されている企業は優に100社を超え、そのほか、事業提携パートナー、メディカルパートナーなど多くの企業が「琉球ゴールデンキングス」とパートナーシップ契約を締結しているが、ここに「コーヨーホールディングス株式会社」(以下「KH社」という。)の記載はない。さらに付言すれば、サポートカンパニーに関しては2010年から現在に至るまで同チームの公式ホームページに多数掲載されているが、ここにもKH社の記載は見当たらないことが確認できた。 常識的に鑑みても、永続性のないオフィシャルパートナーが、単に応援しているからといって、他人を表示し得る商標など知的財産権を勝手に取得することができるのだろうか?自社がある程度出資しているからいいだろう・・・と言って、好き勝手に、そのチームと関連するグッズを適当に販売したり、その名声を利用して飲食物を提供したり、ひいては商標登録などができてしまうのであれば、市場の混乱を招き、ひいてはファン、サポーターやブースターの信用も損なわれてしまうだろう。 すなわち、パートナーシップ契約が解除され、または契約満了してしまえば当該スポーツチームにとっては全くの他人であるにもかかわらず、これを是として本件商標の登録をしたこと自体大きな誤りがある。 多くのファン、ブースター、サポーターなどが(共有財産として認識していた)応援コールを、該スポーツチームと関係なき事業者が、商標登録をして、そのまま商品や役務に独占排他的に使用できるとすれば、健全な取引秩序が崩壊する。 「琉球ゴールデンキングス」に限って言えば、今後は「沖縄森永乳業」社等は「GO!KINGSキャンペーン」を行うに際し「琉球ゴールデンキングス」ではなくKH社に商標使用の許可を願い出ねばならず、「琉球ゴールデンキングス」の経営戦略を含め、他のオフィシャルパートナー等が同チームを応援するという意図とは全く的外れになってしまう。 加えて、このような懸念材料は申立人2にとっても大きな障害になる(甲9B)。 さらに、上記意見書で、「GO KINGS!」という表示は登録性を肯定しているが、スポーツ業界を熟知している事業者であれば、このような発想はもたないであろう。 記憶に新しいのが、2023年9月プロ野球セリーグ優勝を決めた阪神タイガースの岡田監督のスローガン、また、「優勝」への隠語として使っていた「ARE(あれ)」が、同チームのファンらには共通の理解(「優勝」を指し示す言葉)として広く知られており、優勝決定後、早速「ARE」を表示した様々な商品が阪神タイガース公認のもとで発売されている。 サッカーでも同様に、J1リーグ対柏レイソル戦で大けがを負ったヴィッセル神戸所属の選手への応援エールとして、サポーターが掲げた言葉は同選手が過去所属していたチームも志を共通にして3チーム合同の応援タオルが販売されている例もある。 さらには、J1リーグチーム「柏レイソル」のサポーターが掲出した横断幕「柏から世界へ」は、その後のリーグや天皇杯優勝などの記念グッズとして、また、アジアチャンピオンズリーグの応援シャツに表示され、日立柏レイソル社から販売されている事実も有名な話である。 本件商標権者は「GO KINGS!」が単なる応援メッセージだから普通は商品化など考えられないと主張するが、上記実情をも想定できないという事業者が、プロバスケットボールチームのオフィシャルスポンサーを名乗っていることはにわかに信じがたく、本件商標は公序良俗違反によって登録されたものであるといえる(甲10B)。 これまで、拒絶理由通知に記載された他人の業務に係る商品・役務が「琉球ゴールデンキングス」のものに限定されていたことから、申立人2は上記のとおり、主張したが、「GO KINGS CAFE」店舗内で「NBA」の試合映像を無断で営利目的で利用していたことから、本件商標権者がプロスポーツチームの高い名声や業務上の信用へのただ乗りの意図が、申立人の「サクラメント キングス」でもうかがえる。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第15号について 本件商標「GO KINGS!」中、「GO」部分や「!」部分に自他商品・役務識別力が備わっており、仮に商標全体が要部として認識できた場合、また、上記意見書で述べてきたように「GO」部分が、スポーツチームを応援する際の「行け」「がんばれ」「勝て」等の趣旨で一般的に用いられるのであれば、本件商標は申立人2引用商標で表示するチーム「SACRAMENTO KINGS(サクラメント キングス)」に向けた言葉を表示した商標として認識できるため、本件商標を付した商品等を手にした取引者及び需要者は、「SACRAMENTO KINGS(サクラメント キングス)」の関連グッズ、「SACRAMENTO KINGS(サクラメント キングス)」の試合観戦ができるサービスなどとして誤って認識してしまうので、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違背して登録されたものである。 この点、本件商標権者は、該意見書で申立人2引用商標に対して実際の使用を求めているが、多角的経営や事業拡大はその可能性であれば足りる旨が審査基準に記載されている。また、引用商標の周知性も全国的である必要性もなく、申立人2引用商標については、米国で周知である結果、我が国の需要者においての周知著名性を考慮することで判断できるため、これまでで提示した証拠で本規定違反も十分判断できると思料する。 例えば、コロナが第5類に移行したことで、NBAの所属チームには複数の日本人プレーヤーが在籍し、彼らを応援する旅行ツアーなども今後は申立人2が申立人2引用商標を使用して当該事業を行う可能性もあり、また、アパレルグッズを始め様々な商品を世界中のマーケットに向けて販売していることから、本件商標の使用は申立人2引用商標との関係で出所混同を引き起こす可能性が高い。 さらに、申立人2は日本の企業と提携して所属チームの選手を日本に派遣してファンサービスを通じたバスケットボールのプレイを教授し、日本の学校法人と提携した教育ビジネスにも着手している事実もある(甲11B)。 このような状況下に鑑み、本件商標の使用がされれば、申立人2引用商標または「SACRAMENTO KINGS(サクラメント キングス)」の事業と関係する商品・役務と取引者・需要者において混同してしまう可能性が高い。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第19号について 申立人2引用商標は、本件商標の登録出願前から申立人2の商標として、我が国又は外国における需要者の間に広く一般に知られていることについては、上記で述べたとおりであり、また、本件商標権者が経営する飲食事業において、わざわざ「GO KINGS CAFE」と店名まで変えて、さらに、同店舗内で「NBAの試合の映像」を申立人2の知るところなく営利目的で使用していることからする(甲9B)と、明らかに申立人2引用商標に化体した業務上の信用に対するただ乗りしていることが理解できる。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 第4 当審の判断 1 申立人1引用標章の周知性について (1)申立人1の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 ア 申立人1は、2006年に設立された法人であり、プロバスケットボールチーム「琉球ゴールデンキングス」(以下「申立人1チーム」という。)を2007年に創設して以降、同チームを運営している(甲2A、甲3A、甲311A)。 イ 申立人1チームは、日本プロバスケットボールリーグ(bjリーグ)に2007年から参戦、その後、2016年からはbjリーグなどが統合して発足したジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(Bリーグ)に所属し、現在に至るまで活動を続けている(甲2A、甲3A、甲311A)。 ウ 申立人1チームは、bjリーグで4度優勝し、Bリーグでは2023年に初優勝した(甲2A、甲3A、甲6A、甲7A、甲311A)。 エ 申立人1チームの観客動員数は、bjリーグでは1試合平均約3,000人、年間10万人であり、Bリーグでは直近の2022−23シーズンにおいて、1試合平均約7,000人で、Bリーグ36チーム中で主催試合の年間の総観客動員数が20万人を超えた唯一のチームであり(甲2A、甲8A)、また、同チームの入場料やスポンサー料を含めた2021−22シーズンの営業収入(売上げ)は約19.7億円であった(甲2A、甲9A)。 オ 申立人1チームは、2021年から2022年にかけて、本拠地である沖縄県において、「KINGS公民館」「キングス商店街」などのイベントを開催するなど地域社会や経済の活性化のための活動を行った(甲13A、甲14A、甲16A、甲18A)。 カ 申立人1及び申立人1チーム(以下、まとめて「申立人1等」という。)やスポンサー企業は、2009年頃から試合のポスターや応援ボードなどに「GO KINGS!」の文字(「GO!KINGS!」「GO!KINGS」など「!」の位置や数が異なるもの、「GO KINGS」等を含む。)を表示し(甲179A〜甲231Aほか)、また、具体的な日付は不明であるが、試合の観客などは「GO KINGS!」(同上)の文字が表示された応援ボードを掲げ、申立人1チームを応援している(甲31A〜甲54A,甲56A〜甲69A、甲72A〜甲178Aほか)。 キ 申立人1チーム、同チームの試合、地域活動などについては、2007年から2023年まで継続して、新聞、ウェブサイト、SNSなどで多数紹介され、それらの記事などでは申立人1チームを「キングス」と称しているものが見受けられる(甲315A〜甲334A、甲336A〜甲409A、甲414A〜甲418A、甲701Aほか)。 (2)上記(1)によれば、申立人1チームは、2007年から現在まで継続して活動し、観客動員数はBリーグトップであって、また、同チームの試合などが沖縄県内の地元紙を中心とした新聞、ウェブサイトなどで多数紹介されていることなどから、同チームは、バスケットボールに関心を有する需要者や沖縄在住の需要者の間においては、広く認識されていたと考えられる。 しかしながら、申立人1引用標章に係る商品及び役務の売上高などの販売実績、市場シェア、宣伝広告の回数や宣伝広告費などの広告実績等、申立人1引用標章の周知性を具体的に裏付ける証拠の提出はない。 してみれば、「GO KINGS!」の文字は、申立人1チームを応援するフレーズとして用いられ、沖縄を中心に行われるバスケットボールの試合観戦や応援の際に目にするものであることからすれば、バスケットボールに関心のある者や沖縄在住の者の間においては、ある程度認知された申立人1チームの応援フレーズといえるとしても、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人1等の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、本件指定商品及び本件指定役務の分野における我が国の全国的な範囲の一般需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできない。 また、新聞やウェブサイトなどの記事中に、「キングス」の文字が、申立人1チームを表すものとして使用されている(なお、「KINGS」は「GO!KINGS」等の態様により使用されている。)ものの、それらはバスケットボールの試合に係る記事等に限られていること、新聞記事は沖縄県内の地元紙を中心としたものであること、及び「KINGS」及び「キングス」は「王、国王」(「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店発行)の意味を有する「KING」の語の複数形及びその片仮名表記として理解される一般に親しまれた語であることを併せ考慮すれば、「KINGS」及び「キングス」の文字は、いずれも、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、申立人1チームを直ちに想起させるような著名な略称として、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 (3)したがって、「GO KINGS!」の文字からなる引用標章1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人1等の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、全国的な範囲における需要者の間に広く認識されていたと認めることはできず、また、「KINGS」及び「キングス」の文字からなる引用標章2及び引用標章3は、いずれも、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、申立人1チームの著名な略称として、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。 2 申立人2引用商標の周知性について (1)申立人2の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 ア 申立人2は、1946年に設立された、アメリカ合衆国の男子プロバスケットボールリーグ「ナショナル・バスケットボール・アソシエーション(National Basketball Association:NBA)」(以下「NBA」という。)の全30チームの関連団体のマーチャンダイズとライセンス管理等を行う同協会の事業法人である(申立人2の主張)。 イ NBAは、1950年代より本格的に全米のプロバスケットボールのリーグを創設し、所属チーム(30チーム)間で行われる全試合の模様や関連情報は米国のみならず、我が国を含む全世界に向けてテレビ放送やインターネットによる配信等で発信されている(甲5B、甲6B)が、その視聴率、配信回数及びアクセス数等は確認できない。 ウ 2022年及び2023年にかけて、我が国において、複数の旅行会社によるNBA観戦ツアー(「サクラメント キングス(SACRAMENTO KINGS」(以下「申立人2チーム」という。)を含む。)が企画されたことがうかがえる(甲11B)。 エ 申立人2は、NBAが製造販売する関連グッズなどは、申立人2が許諾していない模倣品が市場に多くで散見されており、そのため、税関や警察等と協力し、それらの排除を行っている(甲5B)旨主張するが、申立人2引用商標に係る関連グッズの模倣品に関する数量等は不明である。 オ 申立人2引用商標は、NBAに所属する申立人2チームのチームロゴ、チームエンブレムと同一の標章であり、1971年よりチーム本拠地をミズーリ州カンザスシティに移してから「カンザスシティ・キングス」を名乗り、1983年に正式に「サクラメント キングス(SACRAMENTO KINGS)」とチーム名を改め、現在に至っている(甲6B)。 カ 申立人2は、「GO KINGS!」は、SNSにおいて、申立人2チームのブースター、ファンやサポーターの応援コールとして発せられている旨主張するが、提出された証拠(甲7B)において、「GO KINGS!」などの文字が見受けられるものの、ほとんどの証拠が外国語で作成されたものであり、その翻訳文の提出もないことから、詳細な内容は不明である。 また、2014年ないし2023年の日付の日本語で作成された記事中、「GO KINGS!」の文字の使用は見受けられず、「キングス」及び「KINGS」の文字の使用についても、「キングス」及び「KINGS」の文字が単独で使用されている例はさほど多いとはいえず、多くは「サクラメント・キングス」等、「サクラメント」の語とともに使用されている(甲6B、甲11B)。 キ 我が国の複数の通販サイトにおいて、申立人2チームに係る「KINGS(キングス)」の文字及び引用商標3が使用された「サンダル、バッグ、ボール、タオル、帽子、ソックス、Tシャツ、ブランケット、ユニフォーム」などの商品が見受けられるが、当該商品の販売実績は確認できない(甲11B)。 ク 我が国において、NBAの所属選手が来日してイベント等を行っていることがうかがえる(甲11B)。 (2)上記(1)によれば、申立人2チームは、1983年に「サクラメント キングス(SACRAMENTO KINGS)」とチーム名を改め、現在に至っており、同チームの試合の模様や関連情報が我が国を含む全世界に向けてテレビ放送やインターネットによる配信等で発信され、我が国において、複数の旅行会社によるNBA観戦ツアー(申立人2チームを含む)が企画されたことよりすれば、申立人2チームは、米国及び我が国のバスケットボールに関心のある者の間においては、ある程度知られていることがうかがえる。 しかしながら、申立人2引用商標に係る商品又は役務の売上高などの販売実績、市場シェア、宣伝広告の回数や宣伝広告費などの広告実績等、申立人2引用商標の周知性を具体的に裏付ける証拠の提出はない。 また、「KINGS」及び「キングス」の文字が単独で使用されている例はさほど多いとはいえず、多くは、「サクラメント・キングス」等、「サクラメント」の語とともに使用されていることから、「KINGS(キングス)」の文字のみが需要者に対し、強く印象付けられるとはいえないものである。 なお、申立人2は、米国及び日本でも単に「キングス」として多くのマスコミ媒体で紹介され、取り上げられている旨主張しているが、新聞や雑誌などの記事における社名等の表示は、記事中のいずれかの箇所において、略称以外の表記がなされたうえで、紙面の制約上、簡略・簡潔な表示をもって表されることがしばしば行われていることから、新聞や雑誌の記事において、「KINGS(キングス)」の文字が使用されているとしても、当該記事をもって直ちに、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「KINGS(キングス)」の文字が「サクラメント キングス(SACRAMENTO KINGS)」の略称又は申立人2の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、取引者・需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。 さらに、「GO〜!」は、スポーツで選手やチームを応援する際の一般的な応援コールの一つである「頑張れ!」の英語表現であり(甲11B)、「GO KINGS!」の文字は、上記1のとおり、申立人1チームの応援フレーズとしても使用されていることが認められるから、「GO KINGS!」の文字は、申立人2チームの応援フレーズとしてのみ使用されているものではない。 その他、申立人2引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、申立人2の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、周知性を獲得していると認めるに足りる証左は見いだせない。 (3)したがって、申立人2引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人2の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。 3 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、前記第1のとおり、「GO KINGS!」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成は、「GO」と「KINGS!」の文字の間に1文字程度のスペースを有しているとしても、同じ書体、同じ大きさで外観上まとまりよく一体的に表されているものである。 そして、本件商標の構成中の「GO」の文字は、「(人・乗物などが)行く、進む」等の意味を、「KINGS」の文字は、「王、国王」の意味を有する「king」の複数形(いずれも「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店発行)を理解させるものであるが、両者を結合した「GO KINGS」の文字全体としては、辞書等に載録のないものであり、具体的な意味合いまでを直ちに理解させるものでなく、また、「!」の記号は、エクスクラーメーションマーク(感嘆符)であって、当該記号部分からは特段の称呼及び観念は生じない。 そうすると、本件商標は、特定の意味合いを有しない一種の造語と判断するのが相当である。 また、本件商標は、その構成文字全体から生じる「ゴーキングス」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。 そうすると、本件商標は、構成全体をもって一体のものとして、認識、把握されるものと判断するのが相当である。 したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して、「ゴーキングス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (2)申立人2引用商標について 申立人2引用商標は、別掲2ないし別掲4のとおり、いずれも盾様図形中に「SACRAMENTO」及び「KINGS」の文字を配した構成からなるところ、「SACRAMENTO」及び「KINGS」の文字がいずれも図形内にあるとしても、これらの文字は重なることなく配置されているものであって、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものとはいえないものである。 また、申立人2引用商標の構成中、中央部に大きく顕著に表されている「KINGS」の文字は、その構成において、特に看者の注意を引く部分であるといえる。 そして、申立人2引用商標の構成中、「SACRAMENTO」の文字は、「アメリカ合衆国カリフォルニア州の州都」(「広辞苑 第七版」岩波書店発行)である「サクラメント」の地名を表したと認識されるものであり、自他商品及び役務の識別機能を有しないか弱いものといえる。 また、申立人2引用商標の構成中、盾様図形部分は、直ちに特定の事物又は意味合いを表したものと認識されるものとはいえないことから、特定の称呼及び観念を生じないものである。 そうすると、申立人2引用商標に接した取引者、需要者は、その構成中の中央部に大きく顕著に表された「KINGS」の文字部分に着目し、これより生ずる称呼及び観念をもって取引に資する場合も決して少なくないものというべきであるから、「KINGS」の文字が独立して自他商品及び役務の出所識別標識としての機能を果たす部分といえる。 してみると、申立人2引用商標は、構成文字全体から生じる「サクラメントキングス」の称呼のほか、「KINGS」の文字部分より、「キングス」の称呼をも生ずるものといえる。 そして、「KINGS」の文字は、上記(1)のとおり、「王たち」ほどの意味を理解させる平易な語である。 したがって、申立人2引用商標からは、「サクラメントキングス」及び「キングス」の称呼を生じ、「王たち」ほどの観念を生ずる。 (3)本件商標と申立人2引用商標との類否 申立人2引用商標は、上記(2)で認定したとおり、その構成中の「KINGS」の文字部分が独立して商品及び役務の出所識別標識としての機能を果たす部分といえるのに対し、本件商標は、上記(1)で認定したとおり、その構成中の「GO KINGS」の文字部分が一体のものとして認識、把握されるものであるから、たとえ両商標はその構成中に「KINGS」の欧文字を含むとしても、「GO KINGS」の文字と「KINGS」の文字部分との比較において、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれはないものである。 したがって、本件商標と申立人2引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用標章1との関係における出所の混同のおそれ ア 本件商標と引用標章1の類否について 本件商標は、上記3(1)のとおり、「GO KINGS!」の文字を標準文字で表してなり、引用標章1は、上記第2の1(1)のとおり、「GO KINGS!」の文字からなるところ、両者は、同一の構成よりなり、その構成文字に相応して「ゴーキングス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものであるから、両者は、外観、称呼及び観念において相紛れるおそれのある類似のものであり、類似性の程度は高い。 イ 引用標章1の周知性について 上記1のとおり、引用標章1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人1等の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、全国的な範囲における一般需要者の間に広く認識されていたと認められないものである。 ウ 本件商標の指定商品及び指定役務と申立人1等の業務に係る役務の関連性及び需要者の共通性について 本件商標の指定商品及び指定役務は、別掲1のとおり、「バスケットボールの興行の企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供,バスケットボール競技会の試合結果に関する情報の提供」を含むものである。 他方、申立人1等の業務に係る役務は、「バスケットボールの興行の企画・運営」を含むものであるから、本件商標の指定役務中の上記役務と申立人1等の業務に係る役務は、いずれも、主にプロバスケットボールチームなどが提供する娯楽サービスである。 そうすると、本件商標の指定役務中の上記役務と申立人1等の業務に係る役務は、役務の関連性を有し、需要者を共通にするものである。 エ 引用標章1の独創性について 上記3のとおり、引用標章1を構成する「GO」は、「(人・乗物などが)行く、進む」の意味を、「KINGS」は、「王、国王」の意味を有する「king」の複数形を理解させるいずれも平易な英語であるから、独創性が高いとはいえないものである。 オ 引用標章1が申立人のハウスマークであるかについて 引用標章1は、申立人1のハウスマークではない。 カ 出所の混同のおそれについて 上記アないしオを総合的に判断すれば、本件商標は引用標章1とは、類似性の程度が高く、本件商標の指定役務中の「バスケットボールの興行の企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供,バスケットボール競技会の試合結果に関する情報の提供」と申立人1の業務に係る役務とが関連性を有し、需要者を共通にするとしても、引用標章1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人1等の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、全国的な範囲における一般需要者の間に広く認識されていたと認められないものであること、引用標章1を構成する「GO」及び「KINGS」は、いずれも平易な英語であり、独創性が高いとはいえないこと、引用標章1は、申立人1のハウスマークではないことからすれば、本件商標は、本件商標権者が、その指定商品及び指定役務について使用しても、取引者・需要者が申立人1等若しくは引用標章1を連想又は想起することはなく、その商品及び役務が申立人1等又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。 その他、本件商標が引用標章1との関係において、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 (2)申立人2引用商標との関係における出所の混同のおそれ ア 本件商標と申立人2引用商標の類否について 本件商標と申立人2引用商標は、上記3(3)のとおり、非類似の商標であるから、その類似性の程度は高いとはいえない。 イ 申立人2引用商標の周知性について 上記2(3)のとおり、申立人2引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人2の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたと認められないものである。 ウ 本件商標の指定商品及び指定役務と申立人2の業務に係る役務の関連性及び需要者の共通性について 本件商標の指定役務は、別掲1のとおり、「バスケットボールの興行の企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供,バスケットボール競技会の試合結果に関する情報の提供」を含むものである。 他方、申立人2の業務に係る役務は、「バスケットボールの興行の企画・運営」を含むものであり、いずれも主にプロバスケットボールチームなどが提供する娯楽サービスであるから、本件商標の指定役務中の上記役務と申立人2の業務に係る役務は、役務の関連性を有し、需要者を共通にするものである。 エ 引用商標の独創性について 上記3(2)のとおり、申立人2引用商標の構成中「SACRAMENTO」の文字は地名を表すものであり、「KINGS」の文字は「王たち」の意味を有する平易な英語であるから、いずれも独創性が高いとはいえない。 オ 引用商標が申立人のハウスマークであるかについて 引用商標は、申立人2のハウスマークではない。 カ 出所の混同のおそれについて 上記アないしオを総合的に判断すれば、本件商標の指定役務中の「バスケットボールの興行の企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供,バスケットボール競技会の試合結果に関する情報の提供」と申立人2の業務に係る役務とが関連性を有し、需要者を共通にするとしても、申立人2引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人2の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたと認められないものであること、「KINGS」は「王たち」の意味を有する平易な語であり、独創性の程度は高いといえず、申立人2のハウスマークでもないことからすれば、本件商標は、本件商標権者が、その指定商品及び指定役務について使用しても、取引者・需要者が申立人2若しくは申立人2引用商標を連想又は想起することはなく、その商品及び役務が申立人2又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。 その他、本件商標が引用商標との関係において、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品及び指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用標章1又は申立人2引用商標を連想、想起するとはいえず、その商品及び役務が他人(申立人1等又は申立人2)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品及び役務であるかのように、商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第8号該当性について 上記1のとおり、引用標章2「KINGS」及び引用標章3「キングス」は、いずれも、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、申立人1チームの著名な略称として、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。 そうすると、本件商標「GO KINGS!」は、その構成中に「KINGS」の文字を有するとしても、他人(申立人1チーム)の著名な略称を含む商標とはいえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。 6 商標法第4条第1項第19号該当性について 上記2(3)のとおり、申立人2引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人2の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであり、上記3(3)のとおり、本件商標と申立人2引用商標は、非類似の商標であるから、本件商標権者が、本件商標をその指定商品及び指定役務に使用しても、需要者が、申立人2引用商標又は申立人2を連想又は想起するということはできない。 そして、提出された証拠からは、本件商標は、申立人2引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗りするなど不正の目的をもって採択・出願されたものであると認めるに足りる具体的証拠を見いだせないことから、不正の目的をもって使用するものであると認めることはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 7 商標法第4条第1項第7号該当性について (1)申立人1主張の商標法第4条第1項第7号該当性について 上記4(1)アのとおり、本件商標と引用標章1は同一又は類似するとしても、上記1(3)のとおり、申立人1引用標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人1の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであるから、本件商標権者が、本件商標をその指定商品及び指定役務に使用しても、需要者が、申立人1引用標章又は申立人1等を連想又は想起するということはできない。 そして、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるものではないことは明らかである。 また、本件商標が、国際信義に反する又はその出願の経緯に社会的相当性を欠くなど、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべき事実は見当たらず、本件商標をその指定商品及び指定役務について使用することが、社会の一般道徳観念に反し、商取引の秩序を乱すものともいえない。 なお、申立人1は、本件商標権者は、引用標章1が申立人1チームの応援フレーズとして周知されている事情を熟知しながら、申立人1に連絡や説明なく本件商標を登録出願したこと、本件商標権者はその審査過程において、申立人1とオフィシャルパートナー契約が締結されていることを前提とする意見書により特許庁を誤信させて登録査定を受けたこと、本件商標権者は本件商標の商標登録後に他社が「GO KINGS!」を使用する場合には、本件商標権者に相談をしてもらう必要がある旨を申立人1に伝えたことなどを指摘して、本件商標の登録出願は、適正な商道徳に反し著しく社会的相当性を欠く旨主張する。 しかしながら、本件商標権者が申立人1の業務に係る引用標章1を知りながら本件商標を登録出願したとしても、そのことのみをもってその出願経緯に不正があるものとはいえない。 また、証拠(甲699A)によれば、2022年9月15日付け「オフィシャルパートナーに関する契約書」により、2023年6月30日までは、申立人1とK社(本件商標権者が親会社)は契約関係にあったとされることから、本件商標権者による原審における意見書も全く虚偽のものとまではいえない。 さらに、本件商標権者から「GO KINGS!」を使用する場合、本件商標権者に相談をしてもらう必要があるなどの旨伝えられたとの主張については、それを示す証左(甲700A)及びその他の主張を考慮しても、他に本件商標が不正の利益を得る目的や他人に損害を与える目的で登録出願されたことを裏付ける証左は見いだせない。 よって、申立人1の上記主張は採用することができない。 (2)申立人2主張の商標法第4条第1項第7号該当性について 上記2(3)のとおり、申立人2引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人2の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであり、上記3(3)のとおり、本件商標と申立人2引用商標は、非類似の商標であるから、本件商標権者が、本件商標をその指定商品及び指定役務に使用しても、需要者が、申立人2引用商標又は申立人2を連想又は想起するということはできない。 そして、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるものではないことは明らかである。 また、本件商標が、国際信義に反する又はその出願の経緯に社会的相当性を欠くなど、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべき事実は見当たらず、本件商標をその指定商品及び指定役務について使用することが、社会の一般道徳観念に反し、商取引の秩序を乱すものともいえない。 なお、申立人2は、本件商標権者がプロスポーツチームの高い名声や業務上の信用へのただ乗りの意図が、申立人の「サクラメント キングス」でもうかがえるため、本件商標は商標法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたものである旨主張しているが、申立人2引用商標は、上記2(3)のとおり、申立人2の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間で広く認識されていたものと認められないものであり、かつ、上記3(3)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であって、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当するとはいえないから、当該申立人2の主張は採用することができない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 8 まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に、同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標の指定商品及び指定役務) 第14類「キーホルダー」 第16類「印刷物,印刷された紙製看板,ポスター,チケット,チケット用印刷物,紙製のぼり,紙製旗,紙類,ポストカード,文房具類,シール及びステッカー,マグネットステッカー,ホログラムシール,接着剤を塗布してなるプラスチックフィルム製シール,書画,写真,写真立て」 第24類「ハンカチ,タオル,布製身の回り品,のぼり及び旗(紙製のものを除く。)」 第25類「ウィンドブレーカー,ティーシャツ,帽子,サンバイザー,その他の被服,履物,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」 第39類「旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,旅行に関する相談,旅行業法に規定する旅程管理業務・当該旅程管理業務に付随して行う旅行者の便宜となるサービスの提供,空港に設けられた建築物内において行う旅行者に対する送迎サービスの提供,旅行に関する情報(宿泊に関するものを除く。)の提供,航空券の予約の代行,乗車券の予約代行,乗船券の予約代行,観光地・観光施設に関する旅行情報の提供,企画旅行の実施及びこれに関する情報の提供又は助言,主催旅行の企画・実施及びこれに関する情報の提供,旅行の企画・運営及び予約,旅行添乗及び旅行案内,旅行に関する助言,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,旅行情報の提供,旅行者のための座席の予約,乗物の座席の手配,旅行のためのチケットの予約,旅行者の添乗又は案内,旅行案内,海外旅行者のための査証・旅券・渡航用書類の手配,旅券及び査証の申請手続きの代行並びにこれに関する情報の提供,旅行のための輸送の手配,鉄道運行ダイヤ・運賃・座席の予約状況・その他鉄道輸送に関する情報の提供,船舶の運航ダイヤ・運賃・座席の予約状況・その他船舶輸送に関する情報の提供,航空機の運航ダイヤ・運賃・座席の予約状況・その他航空機輸送に関する情報の提供,スーツケースその他の旅行用品の貸与」 第41類「バスケットボールの興行の企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供,バスケットボール競技会の試合結果に関する情報の提供,その他のスポーツの興行の企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供,技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),バスケットボール場の提供,その他の運動施設の提供,娯楽施設の提供,興行場の座席の手配,当せん金付証票の発売,書籍の制作,インターネットを利用して行う映像の提供,インターネットを利用して行う音楽の提供,運動用具の貸与,娯楽分野における情報の提供,ポッドキャストの制作,スポーツイベントの運営及び開催,オンラインによるゲームの提供」 第43類「飲食物の提供,宿泊施設の提供,宿泊施設の情報の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,宿泊施設の予約の手配,旅行者のための客室の予約,旅行代理店による宿泊施設の予約の取次ぎ・媒介又は代理,テイクアウト可能なレストランにおける飲食物の提供,飲食店の予約の取次ぎ及びこれに関する情報の提供,旅行に伴う飲食店の予約の媒介又は取次ぎ,レストラン等の飲食店に関する情報の提供,旅行代理店によるレストランの予約の取次ぎ・媒介又は代理,旅行者に対するホテル及びレストランに関する助言」 別掲2(引用商標1) 別掲3(引用商標2) 別掲4(引用商標3) (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2024-06-21 |
出願番号 | 2022068713 |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W14162425394143)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
鈴木 雅也 |
特許庁審判官 |
馬場 秀敏 小田 昌子 |
登録日 | 2023-04-20 |
登録番号 | 6691578 |
権利者 | コーヨーホールディングス株式会社 |
商標の称呼 | ゴーキングズ、ゴー、キングズ |
代理人 | ▲吉▼田 和彦 |
代理人 | 小島 義博 |
代理人 | 外村 玲子 |
代理人 | 田中 尚文 |
代理人 | 井滝 裕敬 |
代理人 | 弁理士法人MM&A |
代理人 | 瀧山 侑莉花 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 藤倉 大作 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 渡部 彩 |
代理人 | 相良 由里子 |
代理人 | 佐々木 奏 |