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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W141825
管理番号 1411574 
総通号数 30 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2024-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-03-13 
確定日 2024-05-24 
異議申立件数
事件の表示 登録第6658657号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6658657号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6658657号商標(以下「本件商標」という。)は、「MARNO」の欧文字を標準文字で表してなり、令和4年7月29日に登録出願、第14類「貴金属,宝玉及びその模造品,キーホルダー,宝石箱,身飾品,貴金属製靴飾り,時計」、第18類「かばん類,携帯用化粧道具入れ,傘,つえ,ペット用被服類」及び第25類「被服,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」を指定商品として、同年12月9日に登録査定、同5年1月4日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、次の(1)ないし(11)のとおりであり、これらの商標権はいずれも現に有効に存続している。
(1)登録第4842090号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成 MARNI(標準文字)
指定商品 第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日 平成12年7月17日
設定登録日 平成17年3月4日
更新登録日 平成27年3月3日
(2)登録第4791886号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成 MARNI
指定商品 第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日 平成15年8月27日
設定登録日 平成16年8月6日
更新登録日 平成26年6月17日
(3)登録第4786424号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成 MARNI(標準文字)
指定商品 第9類、第14類及び第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日 平成12年7月17日
設定登録日 平成16年7月16日
更新登録日 平成26年6月24日
(4)登録第3200522号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成 別掲1のとおり
指定商品 第18類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成5年11月5日
設定登録日 平成8年9月30日
最新更新登録日 平成28年7月5日
(5)登録第2339221号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成 別掲2のとおり
指定商品 第20類、第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品(平成15年3月5日書換登録)
登録出願日 昭和63年6月1日(優先権主張、1988年3月2日 イタリア共和国)
設定登録日 平成3年9月30日
最新更新登録日 令和3年4月16日
(6)登録第6676890号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成 MARNI
指定商品 第8類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日 令和4年9月21日
設定登録日 令和5年3月2日
(7)国際登録第1007074号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の構成 MARNI
指定商品 第14類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品
国際商標登録出願日 2018年(平成30年)3月27日(事後指定)
設定登録日 令和元年11月8日
(8)国際登録第1007074号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の構成 MARNI
指定商品 第20類、第21類及び第24類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品
国際商標登録出願日 2020年(令和2年)9月21日(事後指定)
設定登録日 令和4年5月20日
(9)国際登録第1530528号商標(以下「引用商標9」という。)
商標の構成 MARNI
指定役務 第35類及び第43類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの役務
国際商標登録出願日 2020年(令和2年)1月23日(優先権主張、2019年12月23日 Italy)
設定登録日 令和5年3月3日
(10)国際登録第1689338号商標(以下「引用商標10」という。)
商標の構成 MARNI
指定商品及び指定役務 第9類、第35類、第41類及び第42類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品及び役務
国際商標登録出願日 2022年(令和4年)7月7日
設定登録日 令和6年3月22日
(11)国際登録第698847号商標(以下「引用商標11」という。)
商標の構成 MARNI
指定商品 第3類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品
国際商標登録出願日 2018年(平成30年)9月18日(事後指定)
設定登録日 令和3年6月4日

以下、「引用商標1」ないし「引用商標11」をまとめて「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第928号証を提出した。
なお、以下、証拠の記載に当たっては、「甲第○号証」を、「甲○」のように省略して記載する。
(1)申立人について
申立人は、1994年にイタリアのミラノで設立されたファッションメーカーであり、申立人の男性用、女性用及び子供用の洋服からバッグ、ジュエリー、アクセサリー、香水、家具に至るまでのファッション関連商品は、革新的なプリントと独特な色使いを特徴とした、高級感とカジュアル性を併せ持つ個性的なデザインで世界的に有名となっている。2000年以降、日本を含む世界の主要都市で次々と新店舗をオープンさせ、その当時はまだ目新しかったオンラインストアを早々に開設したことでも、一躍話題のファッションメーカーとなった。今日でも、各売り場では、数多くのアーティストとのコラボレーションや特別プロジェクトの専用セクションを設け、積極的にブランド「マルニ」の世界を表現している(甲13)。
日本へは、1999年頃から進出し、2000年には東京、南青山に最も大きいフラッグショップをオープンさせている。現時点では、申立人の国内直営店が銀座と表参道の2店舗、全国の百貨店内にあるショップが23店舗、アウトレットが3店舗あり、それらの店頭写真を提出する(甲14)。その他、セレクトショップなども含めると、申立人のブランドを取り扱っている店は全国で約139件ある(甲15)。
(2)引用商標の周知・著名性
ア 申立人は、引用商標を自社の代表的出所標識としてファッション関連商品に継続的に使用している。具体的には、申立人が製造・販売する洋服、バッグ、雑貨等に引用商標を付すほか、直営店やセレクトショップにおいても引用商標を看板として目立つ態様で表示している。また、各種の雑誌等においても、毎シーズンのコレクションを掲載し、商品の訴求を行ってきた(甲23〜甲928)。その結果、引用商標を付した商品は、発売前に話題になることが多く、各店舗が開店する時間前に行列ができるほどの現象が続出している。商品が完売して入荷待ちになるものも多く、希少価値となる雑貨なども出てきている。また、今注目されているブランドでないと許されず、人気の証でもあるファッション雑誌とのコラボ企画では、引用商標を付した付録が提供され(甲16)、日本はもちろんのこと、世界でも広く浸透しているであろう大衆向けの人気ファッションブランドであるユニクロでは、引用商標を付したコラボ製品が発売されている(甲17)。つまり、引用商標に価値があり、信用があるからこそ、様々な有名企業やブランドが引用商標とコラボを企画したがるのであり、このことこそが、真に、引用商標が周知であり、顧客吸引力が備わっていることの何よりの証左である。
このように、申立人は、その取扱いに係る商品や包装、広告物等に引用商標を一貫して使用することで、自己の商品の訴求を図るとともに、引用商標の下に信用を蓄積してきたといえる。
イ 申立人は、日本を含む世界各国での事業展開を積極的に行っており、その売上高も順調に推移している。日本で継続的に引用商標を使用している証拠として、過去5年間のインボイスを提出する(甲18)。
また、日本における引用商標に係る商品の2017年ないし2022年の売上高は、各年約48億円ないし約82億円で推移しており、2020年において新型コロナウイルス感染症の広まりの影響による落ち込みは免れないにしても、その後の回復には目覚ましいものがあり、ブランドの勢いを感じる。
なお、全世界における引用商標に係る商品の2017年ないし2022年の売上高は、各年約210億円ないし約330億円で推移している。
ウ インターネットで「MARNI」のキーワードを入力して検索すると、約3,370万件が検出される。その上位100件のうち、99件が全て申立人又は引用商標に係る商品に関する記事である(甲19)。
また、大手ファッション通販のBUYMAが運営する「レディース人気ブランドランキング」では、名だたるブランドの中で、ルイヴィトン、ディオール、クロエ、グッチなどを押さえて引用商標である「MARNI」は第8位である(甲20)。これらのことからも、我が国で引用商標が広く周知になっていることがうかがえる。
エ 小括
以上の事実から、我が国における継続的かつ大々的な使用により、引用商標が申立人の製造、販売に係るファッション関連商品を表すものとして周知・著名性を獲得していたことは優に推認できるものである。
(3)本件商標と引用商標の比較
ア 称呼について.
本件商標は、「MARNO」の標準文字からなるが、当該文字は辞書に記載のない造語であるところ、我が国でのローマ字の読み方に倣えば、「マルノ」の称呼が生じ得る。
一方、引用商標は、「MARNI」の欧文字からなるが、当該文字は辞書に記載のない造語であるところ、我が国で申立人の商品を表すものとして広く浸透している実情を鑑みると、需要者の間で親しまれた「マルニ」の称呼が生じ得る。
すると、本件商標と引用商標とでは、語尾における「ノ」と「ニ」の音の有無に差異があるとしても、いずれもナ行に位置する同種の音であるから、両者を一連に称呼する場合には、全体として語感、語調が近似し、彼此聞き誤るおそれがある。
イ 外観について
本件商標は、「MARNO」の標準文字からなるところ、引用商標「MARNI」とは、語尾において「O」と「I」の差異があるのみであり、全5文字中の1文字の違いは見落とされることも多く、何より、上記(2)で述べた引用商標の周知性を考慮すれば、需要者は、日頃から見聞きしている引用商標の最も目をひく語頭4文字において「MARN」部分が共通する本件商標を、申立人のものと見誤ることは容易に想像がつく。
よって、両者の間に出所の混同が生ずるおそれは免れないものである。
ウ 観念について
本件商標は、辞書に記載のない造語であって、何らの観念も生じないから、観念上は比較できない。
エ 小括
本件商標と引用商標は、称呼上も外観上も、互いに相紛れるおそれのある類似する商標である。また、観念については、外観・称呼上類似する本件商標から、引用商標の周知・著名性にひっぱられ、「申立人又はその商品」と観念を誤認する需要者がいることを危惧する。
(4)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当する理由
本件商標と引用商標は類似し、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品又は役務と抵触するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(5)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由
引用商標は、申立人により日本において約24年もの間、継続的に使用された結果、被服やバッグ等を中心とするファッション関連商品の分野において申立人の業務を表すものとして需要者に広く知られたものといえる。また申立人は現在も我が国において営業活動を継続中であるため、本件商標の登録出願日及び登録査定日においてもその周知性は維持されている。
さらに、本件商標と引用商標は、互いに類似する商標であって、引用商標が、指定商品の分野において既に広く周知性を獲得している点を考慮すれば、需要者は、本件商標から、申立人の周知な出所表示標識を認識し、申立人と関連付けて認識するおそれを強く危惧する。
このような商標の登録を認めることは、申立人が永年多大な努力を払って築きあげてきた引用商標に化体した業務上の信用へのただ乗り行為(フリーライド)を許すことになり、商標法の精神に反するといわざるを得ない。
したがって、本件商標はその指定商品に使用された場合、出所について混同を生じるおそれがある。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(6)本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当する理由
引用商標は、外国では1994年から今日に至るまで約30年近くにわたる歴史のあるファッションブランドで、引用商標を被服、バッグ等のファッション関連商品に継続して使用してきた結果、いつのシーズンもファッション界をにぎわし、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表すものとして、一定の周知性を獲得している。
本件出願人は、同じファッション業界に身を置くものとして、世界的に著名な申立人のブランドを知らないわけがなく、第14類、第18類及び第25類のファッション関連商品に、あえて、申立人の商標「MARNI」と一文字違いの「MARNO」を出願したことが推認される。本件商標は、申立人の「MARNI」の最後の文字を1文字変えただけであるという点で、申立人の商標を想起させるよう意図した構成からなっている。つまり、本件商標の最も目をひきやすい語頭4文字は、引用商標のそれらと共通しているということで、本件商標の採択は、紛れもなく申立人の商標を意識した悪質な行為といえる。
すなわち、一般需要者が本件商標に接したときには、引用商標が周知・著名であることから、日常頻繁に広告を見聞きし、その周知性により記憶に強く定着している申立人のブランドを引用商標と誤認することになる。
また、被服などのアイテムでは、その商標を大きく表示するというよりは、ワンポイントとして傍らに小さく表示するのが一般的であるという取引の実情がある。そうすると、本件商標と引用商標は、その外観が酷似しているため、その使用態様によっては相紛らわしく、本件商標と引用商標を見分けるのは非常に困難である。
その証左に、本件出願人のものと思われるインスタグラムと申立人のインスタグラムの画像を提出する(甲21、甲22)。これらを比較すると、前者が申立人を意識したような構成になっているのがわかる。つまり、左上の円図形の中のロゴは「MARN」までが同じで、語尾を「O」に変え、一見しただけでは、申立人のブランドと見誤るように巧みに演出されており、申立人のブランド人気にあやかろうとしている意図が見て取れる。また、タイトル部分の、「marno_official」と「marni」、その下に小さく書かれた「MARNO」と「Marni」を比較しても、申立人のものと見誤る需要者がいることは想像に難くなく、これが偶然に作成されたものとは考えにくい。
上記に述べた事実を鑑みれば、申立人の商標「MARNI」に類似する文字を用いて、外観上も紛らわしい商標を採択、出願した本件商標の出願人には、引用商標の有する周知、著名性へのフリーライドの意図、出所表示機能の稀釈化の意図という不正の意図があったと考えざるを得ない。そして、本件出願人も、同様の商品を扱う業界人として引用商標の周知性は十分認識し得る立場にあったことは明らかである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
(7)本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する理由
本件商標は、引用商標と酷似しており、本件商標が引用商標の構成と偶然に一致する標章を任意に採択したものとはいい難く、むしろ、本件出願人の業務と同一分野において使用される引用商標に依拠し、ひょう窃的に採択使用するものとみることができ、かつ、本件商標に係る出願をするに際し、請求人より承諾を受けていたと認める事実もない。
してみれば、本件商標に係る出願人の出願に及ぶ行為は、引用商標の顧客吸引力に便乗し、不当な利益を得る等の目的の下に出願し、権利を取得したものと推認させるものであり、不正の目的をもって使用する商標といわざるを得ない。
そうすると、本件商標は、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その登録を認めることは商品・役務の取引現場において無用の混乱を生じさせ、商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、1994年にイタリアのミラノで設立された男性用、女性用及び子供用の洋服やアクセサリーなどを扱うファッションメーカーである(甲13)。
(イ)我が国においては、申立人は、2022年11月時点で、直営店(表参道及び銀座)のほか、百貨店内の店舗及びアウトレットなど28店舗を展開し、それらの店舗の看板に「MARNI」の文字が使用され、当該店舗において、申立人の「MARNI」ブランドの洋服、バッグ、靴などの商品(以下「申立人商品」という。)が販売されたこと(甲14)、2023年5月時点で、申立人商品は、オンラインストアのほか、直営店、セレクトショップなど全国で139の店舗において取り扱われていたこと(甲15)、2017年4月ないし2022年11月頃まで、継続して申立人商品が国内で取引されていたこと(甲18)、申立人商品は、ファッション雑誌「ELLE JAPON」の2020年5月号の付録となったこと(甲16)及び同年12月に「MARNI」ブランドとユニクロのコラボ商品が販売されたこと(甲17)が認められる。
なお、申立人商品の我が国又は外国における売上高などの販売実績を裏付ける証左は見いだせない。
(ウ)申立人商品は、2018年9月ないし2022年12月に発行されたファッション雑誌を中心とする各種雑誌に多数掲載された(甲25〜甲928)。
(エ)ファッション通販サイト「BUYMA」の「レディース人気ブランドランキング」において「MARNI マルニ」が第8位であったこと(甲20)がうかがえるが、当該ランキングの対象となる時期や評価方法などは確認できない。
イ 上記アからすると、2022年11月時点で存在していた申立人の直営店や百貨店内の店舗の看板に「MARNI」の文字が使用されたこと、当該店舗において、申立人商品が販売されたこと、2023年5月時点で、オンラインストアや全国の139の店舗で申立人商品が取り扱われていたこと、申立人商品は、我が国において、少なくとも2017年4月ないし2022年11月頃まで継続して販売され、2018年9月頃から2022年12月頃に発行されたファッション雑誌を中心とする各種雑誌に多数掲載されたこと、「レディース人気ブランドランキング」で「MARNI」ブランドが第8位であったことが認められるから、申立人商品に使用されている商標「MARNI」は、我が国におけるファッション分野に興味を有する需要者の間で一定程度知られていたといえる。
しかしながら、オンラインストアや全国の139の店舗で申立人商品が取り扱われていたとされる証左の日付は、本件商標の登録査定後のものであり、また、雑誌の掲載については、その多くが他のブランドの複数の商品とともに紹介等されているものであり、さらに、ブランドランキングについては、その対象となる時期や評価方法が確認できず、我が国における申立人商品の販売実績及び広告宣伝の規模等に関する証左は見いだせないことから、申立人商品に使用されている商標「MARNI」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
そうすると「MARNI」の文字からなる引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
なお、申立人は、引用商標に係る商品の2017年ないし2022年の売上高は、日本において各年約48億円ないし約82億円、全世界において各年約210億円ないし約330億円である旨主張しているが、当該主張を裏付ける証左は見いだせない。
したがって、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)本件商標と引用商標の類否について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり「MARNO」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応し「マーノ」及び「マルノ」の称呼を生じ、当該文字は、辞書等に掲載が認められないから、特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標
引用商標1ないし引用商標3及び引用商標6ないし引用商標11は、上記2(1)ないし(3)及び(6)ないし(11)のとおり「MARNI」の欧文字からなるところ、いずれもその構成文字に相応して「マーニ」及び「マルニ」の称呼を生じ、当該文字は、辞書等に掲載が認められないから、特定の観念を生じないものである。
引用商標4は、別掲1のとおり、「MARNI」の欧文字を白抜きした黒色の横長四角形からなり、引用商標5は、別掲2のとおり、「MARNI」の欧文字をやや図案化してなるところ、他の引用商標と同様に、いずれもその構成文字に相応して「マーニ」及び「マルニ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標の比較
(ア)外観
本件商標と引用商標の外観について検討すると、まず、本件商標と「MARNI」の欧文字からなる引用商標1ないし引用商標3及び引用商標6ないし引用商標11との比較において、両者の構成文字「MARNO」と「MARNI」とは、語尾において「O」と「I」の文字の差異を有し、この差異が共に5文字という少ない文字構成からなる両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえず、両者は、明確に区別し得るものである。
また、本件商標は、「MARNI」の文字をその構成中に含む引用商標4及び引用商標5とも、明確に区別し得るものである。
(イ)称呼
本件商標から生じる「マーノ」及び「マルノ」の称呼と引用商標から生じる「マーニ」及び「マルニ」の称呼を比較すると、まず「マーノ」と「マーニ」及び「マルノ」と「マルニ」とは、いずれも語尾における「ノ」と「ニ」の音の差異を有し、この差異が共に3音という短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者は、明瞭に聴別し得るものである。
また、「マーノ」と「マルニ」及び「マルノ」と「マーニ」とは、いずれも語調語感が明らかに異なり、明瞭に聴別し得るものである。
(ウ)観念
本件商標と引用商標は、共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
エ 小括
上記のとおり、本件商標と引用商標は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標である。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
(3)商標法第4条第1項第11号及び同法第8条第1項について
ア 引用商標9及び引用商標10は本件商標の登録査定後に設定登録されたものであるから、引用商標9及び引用商標10との関係における商標法第4条第1項第11号に係る申立人の主張は、同法第8条第1項に係る主張と認め、以下検討する。
イ 上記(2)のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同法第8条第1項に該当しない。
なお、引用商標6は本件商標の登録出願後に登録出願されたものであるから、その点においても、本件商標は、引用商標6との関係において商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(2)のとおり、本件商標は引用商標と非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と申立人商品との関連性の程度、需要者の共通性などを考慮しても、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、需要者に引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第19号及び同項第7号について
上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標であり、さらに上記(4)のとおり、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、需要者に引用商標を連想又は想起させるものでもない。
なお、申立人は、本件商標権者のものと思われるインスタグラムについて、申立人のブランドと見誤るように巧みに演出され、申立人のブランドの人気にあやかろうとしており、申立人のものと見誤る需要者がいることも想像に難くないから、これが偶然に作成されたものとは考えにくい(甲21、甲22)旨主張しているが、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。
さらに、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないことは明らかであり、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を著しく欠く、又は本件商標をその申立てに係る商品について使用することが、社会の一般的道徳観念に反するなど、公序良俗に反するものというべき証左も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号及び同項第7号のいずれにも該当しない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号、同項第19号及び同法第8条第1項の規定に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲

別掲1(引用商標4)



別掲2(引用商標5)




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異議決定日 2024-05-16 
出願番号 2022088022 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W141825)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 鈴木 雅也
特許庁審判官 小田 昌子
馬場 秀敏
登録日 2023-01-04 
登録番号 6658657 
権利者 合同会社MARNO
商標の称呼 マーノ、マルノ 
代理人 山尾 憲人 
代理人 佐々木 美紀 
代理人 田中 陽介 
代理人 橘 和之 

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