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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W3537 |
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管理番号 | 1411562 |
総通号数 | 30 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2024-06-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2023-07-03 |
確定日 | 2024-05-27 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第6385886号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第6385886号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6385886号商標(以下「本件商標」という。)は、「エコスマイル」及び「ECOSMILE」の文字を上下二段に書してなり、令和2年3月14日に登録出願、同3年4月26日に登録査定され、第35類「太陽光発電装置の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,政府関連の助成金申請事務の代行,電力供給契約に関する事務処理の代行,廃棄物の輸出入に関する事務の代理又は代行,廃棄物の処理・除去・取り扱い・リサイクル費用の原価分析,建物又は土地に関する事業の企画,リサイクル品又は中古品の販売に関する情報の提供」及び第37類「発電用機械の設置工事,発電用太陽光装置の設置工事・保守及び修理,電力生産用及び発電用の機器・器具及び設備の設置工事・建設工事・保守・整備及び修理,廃棄物処理施設の清掃,廃棄物圧縮装置の修理又は保守,廃棄物破砕装置の修理又は保守」を指定役務として、同年5月7日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 本件の無効審判請求人(以下「請求人」という。)が、本件商標の登録の無効の理由に引用する商標は、太陽光発電に係る商品又は役務に関連した「エコスマイル」及び「ecosmile」の文字からなる商標(以下「引用商標」という。)である。 第3 請求人の主張 1 請求の趣旨 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由(商標法第3条1項柱書、4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号)を、審判請求書において要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第25号証(枝番号を含む。)を提出した。 なお、以下、証拠の表示については、「甲第○号証」を「甲○」、「乙第○号証」を「乙○」のように、簡略して表記する。 2 無効原因 (1)当事者 ア 請求人 請求人は、土地付き太陽光発電、産業用太陽光発電、住宅用太陽光発電、蓄電池、オール電化、各種リフォーム等の設計、販売、施工、メンテナンス、一般及び産業廃棄物の収集及び運搬並びに中間処理、最終処理及びリサイクル業務等を主な業務目的とする会社である(甲1、甲2)。 また、請求人は、日本の太陽光発電産業の業界団体である一般社団法人太陽光発電協会(略称:JPEA)の正会員である(甲2、甲3)。なお、同協会の2022年4月28日現在の正会員は119社であり、太陽光発電に関連する全国の主要な機関・団体、セル・モジュールメーカー、周辺金・部品・素材メーカー、電力・エネルギー企業、販売・施工企業が名を連ねているが、請求人は、約40社が加盟する販売・施工企業のうちの一社であり(甲3)、日本国内における主要な太陽光販売・施工企業の一社である。 また、気候変動対策に積極的に取り組む企業や自治体、NGOなどの情報発信や意見交換を強化するネットワークである気候変動イニシアティブの参加団体にも名を連ねている(甲4)。 イ 被請求人 被請求人は、本件商標の商標権者である(甲5、甲6)。被請求人は、愛知県丹羽郡扶桑町在住で、愛知県行政書士会所属の行政書士であり(登録番号××××××)、愛知県名古屋市内において行政書士I法務事務所を経営している(甲7、甲8)。 (2)請求人の広告宣伝活動と引用商標の周知性 ア 請求人は、平成21年7月の設立以来、愛知県名古屋市を本店所在として、「エコスマイル」「ecosmile」の商標(以下「請求人商標」という。)を使用して、前記(1)ア記載の事業を展開してきた(甲2)。 そして、本件商標出願がなされた令和2年3月までに、本店以外にも名古屋市、三重県、東京都、千葉県、大阪府に支店を有するほか、提携先企業の協力の下、東海施工管理センター、関東施工管理センター、関西施工管理センターにおいて、販売・施工をカバーしており、顧客は全国に及んでいる(甲2)。 イ 請求人は、かかる全国的な受注を獲得すべく、設立以来、積極的な広告宣伝活動を展開してきた。 (ア)すなわち、自社ウェブサイト(甲9)、LINE公式アカウント(甲9)を開設して、随時積極的な情報発信に努め、また、イメージキャラクターには女性人気タレントを起用するなどしている(甲9、甲10)。 (イ)そして、顧客が太陽光発電施工業者からの比較見積を取得できる主要な太陽光発電業者の比較ポータルサイト(甲11〜甲13)にも全て登録され、これらのサイトからの契約の獲得ないし自社ウェブサイトヘの誘導に努めており、とりわけ、タイナビにおいては、掲載企業359社の中でも、請求人は主要な企業の一つとなっている(甲11)。 (ウ)以上のような、インターネットを通じた広告宣伝にあたっては、いわゆるバナー広告やリスティング広告や、SEO対策にも注力しており、請求人については、ヤフー!やGoogleといった検索サイトにおいても、多くの場合で上位の検索結果が得られ、また、バナー広告やリスティング広告が表示されるようにもなっている(甲14、甲15)。 (エ)また、請求人は、自社の認知度アップのために、多数のイベント等の協賛も行っており、太陽光発電によるクリーンでピースなロックフェスティバルとのコンセプトの元、多数の著名なアーティストが出演して毎年開催されるロックフェスティバル「THE SOLAR BUDOKAN」のオフィシャルスポンサー(甲16の1〜甲16の3)になっているほか、総合格闘家のスポンサー(甲17)にも名を連ねるなどしている。 さらに、中日ドラゴンズのオフィシャルスポンサーであって、毎年「エコスマイルPresents」として試合を開催しているほか(甲9の3)、毎年名古屋市で開催される「みなと祭り」への協賛もしている(甲18)。 (オ)その他、イオン銀行とも提携を行っているほか、ラジオCMなども行っている(甲9の1)。 (カ)こういった営業努力の甲斐あって、新聞やテレビ番組等のメディアでも、請求人の太陽光発電事業については取り上げられるようになり(甲9の3)、顧客は、地元東海地区、関東、関西にとどまらず、全国に及んでいる。 ウ 以上のとおり、請求人商標(エコスマイル、eco smile)は、遅くとも本件商標権の登録出願がなされる令和2年3月頃までには、太陽光発電に関心のある需要者の間では全国的に周知なものとなっていた。とりわけ、地元東海地区、関東地区、関西地区においては、太陽光発電事施工業者として突出した知名度を有している。 (3)被請求人による本件商標出願及び買い取り要求 ア 被請求人は、請求人ないし請求人商標が高い知名度を有している一方で、請求人において本件商標の登録がなされていないことを奇貨として、令和2年3月14日付けで本件商標の登録出願を行い、令和3年5月7日付けで本件商標権の登録を受けた(甲5、甲6)。 イ その上で、被請求人は、自らが行政書士であって相応の法律知識を有していることを奇貨として、これを秘してSなる人物を代理人として、請求人に対して、令和4年3月18日付けで、突如として本件商標を300万円で買い取るよう要求してきた(甲19、甲20)。 しかも、売買にあたっては、消費税や税務申告はしない等と再三にわたって脱税の意思を明らかにした上で、請求人ではなく、請求人代表者の金銭による買い取りを要求している。 ウ 前記のとおり、被請求人は、愛知県名古屋市内において法務事務所を経営している行政書士であって、本件商標を指定役務について使用するような業態ではなく、また、少なくとも本日時点においても、使用した形跡はない。 本件商標の指定役務が、請求人の自社ウェブサイトの事業内容の記載内容をほぼ踏襲した内容となっていることからしても(甲2)、本件商標の出願は、請求人において本件商標の登録がなされていないことを奇貨として、請求人に高額での買い取りを迫る目的でなされた、いわゆる悪意の商標出願であることは明白である。 (4)本件商標と請求人商標の類否について ア 商標の類否 本件商標は、上段に片仮名で「エコスマイル」、下段に英大文字で「ECOSMILE」と二段で記述された商標であって、いずれの部分も「エコスマイル」との称呼が生じる。また、いずれの部分についても、接頭辞として環境、自然等を意味する「エコ」(ECO)と笑顔を意味する「スマイル」(SMILE)を組み合わせた造語であって、環境を笑顔にするといった観念が生ずる。 これに対し、請求人商標は、外観は「エコスマイル」又は「ecosmile」、称呼はいずれも「エコスマイル」、観念としても、環境、自然等を意味する「エコ」(ECO)と笑顔を意味する「スマイル」(SMILE)を組み合わせた造語であって、環境を笑顔にするといった観念を生ずる。 したがって、本件商標と請求人商標は、外観、称呼、観念のいずれも同一又は類似する商標である。 イ 指定役務の類否 請求人は、前記のとおり、土地付き太陽光発電、産業用太陽光発電、住宅用太陽光発電、蓄電池、オール電化、各種リフォーム等の設計、販売、施工、メンテナンス、一般及び産業廃棄物の収集及び運搬並びに中間処理、最終処理及びリサイクル業務等の業務を行っていて、これらの業務において請求人商標を使用しているところ、本件指定役務は、これらの請求人の業務に関連ないし付随して行われる業務である。 したがって、両商標の指定役務も類似する。むしろ、前記でも述べたとおり、本件商標の指定役務は、請求人の自社ウェブサイトの事業内容の記載内容(甲2)を踏襲して選定されたものであることを強くうかがわれるものである。 (5)商標法3条1項柱書違反について 被請求人は、行政書士事務所を営む行政書士であり、本件商標を指定役務について使用するような業態ではなく、また、少なくとも本日時点において、使用した形跡はない。 したがって、本件商標は、自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標ではなく、商標法3条1項柱書に違反して商標登録がなされたものである。 (6)商標法4条1項7号違反について 請求人商標(エコスマイル、ecosmile)は、太陽光発電に関心のある需要者の間では全国的に周知なものとなっていたものである。とりわけ、地元東海地区、関東地区、関西地区においては、太陽光発電事施工業者として突出した知名度を有しているものであって、請求人の本社(愛知県名古屋市)と同じ愛知県に居住し、同じ名古屋市内に行政書士事務所を構える被請求人は、請求人及び請求人商標を知悉していたものである。 被請求人は、前記で述べたとおり、本件商標登録後も自らは使用することなく、いきなり請求人に対する高額での買取請求に及んでいることからしても、本件商標の出願は、被請求人が偶然に本件商標を採択したのではなく、請求人ないし請求人商標が高い知名度を有している一方で、請求人において本件商標の登録がなされていないことを奇貨として、もっぱら請求人に高額での買い取りを迫る目的でなされた、典型的な悪意の商標出願であることは明らかである。 しかも、被請求人は、本来行政書士として高い品位が求められる立場にあるにもかかわらず、代理人を通じて今般の行為に及んでいる。かかる行為は、そもそも非弁行為(弁護士法72条、罰則につき同法77条3号)の共犯の疑いすらあるものであって、さらには、売買にあたっては、消費税や税務申告はしない等と脱税の意思まで明らかにした上で、請求人ではなく、請求人代表者個人の金による買い取りまで要求するなど、行政書士法第10条所定の行政書士の信用又は品位にもとる行為であって、同法第14条所定の「行政書士たるにふさわしくない重大な非行」にも該当しうるものである。 先願主義を採用する我が国においても、かような被請求人に本件商標登録を認めることは、著しく社会的妥当性を欠き、公正な商取引の秩序を乱し、ひいては公の秩序を害するおそれがあるものとして、到底容認し得ないものであり、当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当することは明白であり、商標法4条1項7号に違反して登録がなされたものである。 (7)商標法4条1項10号違反について 請求人商標は、太陽光発電に関心のある需要者の間では全国的に周知なものとなっていた。 前記のとおり、本件商標は請求人商標と類似し、請求人商標の役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするものである。 よって、本件商標は、商標法4条1項10号に違反して登録がなされたものである。 (8)商標法4条1項15号違反について 請求人商標は、太陽光発電に関心のある需要者の間では全国的に周知なものとなっていた。 そして、本件商標は、請求人商標と類似し、指定商品又は役務も類似するから、これらの商品又は役務につき使用することは、請求人が行う業務であるかのように混同を来すおそれがある。 したがって、本件商標を他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標に該当するものであって、商標法4条1項15号に違反して登録がなされたものである。 (9)商標法4条1項19号違反について 請求人商標は、太陽光発電に関心のある需要者の間では全国的に周知なものとなっていた。 そして、本件商標出願は、請求人ないし請求人商標が高い知名度を有している一方で、請求人において本件商標の登録がなされていないことを奇貨として、もっぱら請求人に高額での買い取りを迫る目的でなされた、典型的な悪意の商標出願である。 したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものに該当するものであって、商標法4条1項19号に違反して登録がなされたものである。 第4 被請求人の答弁 1 答弁の趣旨 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証(枝番号を含む。)を提出した。 2 答弁の理由 (1)ア 当事者について (ア)請求人は、平成21年7月1日に設立された会社である。 (イ)被請求人は、令和3年1月10日、株式会社エコスマイル(本店東京都新宿区新宿七丁目)の代表取締役に就任し、同年5月13日辞任した。 同社は、令和2年2月26日に旧社名から商号を変更し、目的を「情報処理カードシステム機器の販売とメンテナンス、景品カードの販売、広告通信機器の販売と取付工事、宣伝広告事業、不動産売買の事業、発電用太陽光装置・燃料電池・蓄電池・設置工事と販売、発電用太陽光装置システムの保守点検、産業廃棄物の清掃と運搬、インターネット企画・制作に関する販売」等の事業とした(乙1)。 (ウ)請求人の発電用太陽光装置に関する業界での地位業績について、被請求人は知らない。 イ 請求人の広告宣伝活動について 平成21年7月からの請求人の宣伝活動については不知。 ウ 被請求人は、請求人の商標使用について、異議を申し立てたところ、請求人からこの商標権を買い取る旨申し出があったが、対価に合意なく終わった。 エ 請求人は、請求人が使用する商標は全国的に周知されていると主張し、被請求人の側からの商標取得費用を補うために金90万円を支払っていただきたい旨の提案(乙4の1〜4)については拒否している。被請求人の対応については何ら問題ない。 (2)被請求人の主張 請求人は、請求人が使用する商標については周知されていると主張しながら、一方では請求人自身が令和5年2月15日付で同じ「エコスマイル」の商標権の申請をしており(乙3)、請求人の主張は矛盾している。 第5 当審の判断 1 利害関係について 請求人が本件審判を請求することの利害関係の有無については、当事者間に争いがなく、当審は請求人が本件審判の請求について利害関係を有すると認める。 2 請求人及び被請求人の提出証拠及び両者の主張によれば、以下の事実が認められる。 (1)請求人について ア 請求人は、平成21年7月の設立以来、引用商標「エコスマイル」を商号に含む名称で、愛知県名古屋市を本店所在として、太陽光発電に関する事業を行っている(甲1及び甲2)。 イ 請求人は、日本の太陽光発電産業の業界団体である一般社団法人太陽光発電協会(略称:JPEA)の正会員であり(甲2、甲3)、約40社が加盟する販売・施工企業のうちの一社である(甲3)。 ウ 請求人は、本店以外にも名古屋市、三重県、東京都、千葉県、大阪府に支店を有するほか、提携先企業の協力の下、東海施工管理センター、関東施工管理センター、関西施工管理センターにおいて、太陽光発電等の販売・施工をカバーしており、顧客は全国に及んでいるとされる(請求人主張、甲2)。 エ 請求人は、その事業が新聞記事(中日スポーツ、中部経済新聞など)で紹介されたことがあるほか、中日ドラゴンズのオフィシャルスポンサーとして試合を開催している(甲9の3)。 (2)被請求人について ア 被請求人は、愛知県名古屋市の法務事務所に勤務する行政書士である(甲8)。 イ 被請求人は、令和3年1月10日に、発電用太陽光装置・燃料電池・蓄電池・設置工事と販売、発電用太陽光装置システムの保守点検を目的に含む株式会社エコスマイル(本店東京都新宿区新宿七丁目)の代表取締役に就任した(乙1)。 その後、被請求人は、令和3年5月13日に代表取締役を辞任したとされる(被請求人主張)。 (3)本件商標に係る経緯について ア 被請求人(本件商標権者)は、上記第1のとおり、「エコスマイル」及び「ECOSMILE」の文字を上下二段に書してなる本件商標を、太陽光発電と関連する役務を指定役務として、令和2年3月14日に登録出願し、同3年5月7日に設定登録した。 なお、本件商標の登録には、令和4年5月23日受付で、請求人を債権者、名古屋地方裁判所民事第2部裁判所書記官を嘱託人として、仮差押が記録されている。 イ 令和4年3月18日付けの、被請求人から委任を受けたとするS氏から請求人に宛てた書面には、本件商標の社名買取りの要請と、価格は300万円であること等が記載され、本件商標の商標登録証が添付されていた(甲19)。 ウ 令和4年4月12日付けの上記S氏から請求人に宛てた書面には、本件商標の名義変更手続を請求人が行うこと、その後、300万円をS氏に振り込む旨の要請が記載され、S氏を本件商標の売買に関する代理人とする旨が記載された本件商標権者が押印した同月3日付けの委任状及び印鑑登録証明書が添付されていた(甲20)。 エ 被請求人は代理人弁護士を通じて、令和4年12月16日付け書面により、請求人代理人弁護士宛てに、同月12日付けの請求人側からの連絡への回答として、本件商標権について当面売却する意思はないことを伝え、仮差押解除の要請をした(乙4の1)。 オ 被請求人は代理人弁護士を通じて、請求人代理人弁護士宛てに、令和5年5月2日付け書面及び同月17日付け書面により、商標登録証の返還の要請を、同年7月25日付け書面により、本件商標権を90万円にて買い取りを要請した(乙4の2〜4)。 3 商標法4条第1項第7号について (1)請求人の事業活動について 上記2の認定事実によれば、請求人は、平成21年7月の設立以来、引用商標「エコスマイル」を商号に含む名称で、愛知県名古屋市を本店所在として、太陽光発電事業を行っており、日本の太陽光発電産業の業界団体である一般社団法人太陽光発電協会(略称:JPEA)の正会員でもあり、その事業内容は愛知県近辺におけるメディアで取り上げられ、地元プロ野球球団のスポンサー等の広告宣伝活動も行っている。 (2)本件商標の登録出願の目的及び経緯 被請求人は、愛知県名古屋市を勤務地とし、太陽光発電と関連する事業を目的とする会社の代表取締役にも就任しているから、その営業地域及び事業分野が重複する請求人に係る太陽光発電に関する事業を、本件商標の登録出願時において認識していたものと考えられる。 そのような中、被請求人は、請求人の名称を含み、その事業分野を共通にする役務を指定役務とする本件商標を登録出願(令和2年3月14日)及び設定登録(同3年5月7日)をしたところ、その約10ヶ月後(同4年3月18日)には、請求人に対して300万円での本件商標の買取り要請をしている。 そうすると、被請求人は、本件商標を、請求人が引用商標を商標登録していないことを奇貨として、もっぱら請求人に高額での買い取りを迫るという不正の目的で登録出願したものと推認できる。 なお、被請求人は、太陽光発電に関連する会社の代表取締役の代表に就任したものの、就任からわずか6ヶ月後であって、本件商標の設定登録の6日後には辞任しているから、本件商標をその指定役務について自己で使用するために登録出願したものとは考えにくく、これら事実関係は、その登録出願の目的を正当化するものではない。 (3)小括 以上よりすると、本件商標は、被請求人により、もっぱら請求人に高額での買い取りを迫るという不正の目的で登録出願されたものであるから、その出願の目的及び経緯において社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認できない場合に当たるものとして「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する。 したがって、本件商標は、商標法4条第1項第7号に該当する。 4 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号の規定に違反してされたものであるから、その余の無効理由について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
審理終結日 | 2024-03-19 |
結審通知日 | 2024-03-27 |
審決日 | 2024-04-18 |
出願番号 | 2020028136 |
審決分類 |
T
1
11・
22-
Z
(W3537)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
大島 康浩 |
特許庁審判官 |
大橋 良成 阿曾 裕樹 |
登録日 | 2021-05-07 |
登録番号 | 6385886 |
商標の称呼 | エコスマイル |
代理人 | 川岸 弘樹 |