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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W11 |
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管理番号 | 1410543 |
総通号数 | 29 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-05-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-11-10 |
確定日 | 2024-05-07 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6732702号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6732702号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6732702号商標(以下「本件商標」という。)は、「UKKISO」の文字を標準文字により表してなり、令和5年3月2日に登録出願、第11類「除湿機,冷却用の器具及び設備,製氷用装置,アイスクリーム製造機,製氷機,加熱調理用の器具及び装置,果実用ロースター,加湿器,空気殺菌装置,多目的加熱調理器具,温冷飲料用のディスペンサー,電気式揚物器,滅菌装置,家庭用電気式電解水生成器,家庭用超音波滅菌装置,移動式電気式暖房装置(業務用及び家庭用のもの),蓄熱器,電気式ヨーグルト製造器,パン焼き機,製パン機,電気式ケトル,食品廃棄物の乾燥処理用装置,空気清浄装置,業務用温水暖房装置,浄水用機器,冷蔵庫,化粧品用冷蔵庫,自動車用の飲料用冷蔵庫,油を使用しない電気式揚物器」を指定商品として、同年8月10日に登録査定され、同年9月4日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 1 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立てにおいて、商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、以下の(1)ないし(7)であり、いずれの商標権も、現に有効に存続しているものである。 (1)登録第1578002号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、昭和53年8月7日に登録出願、第10類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同58年3月28日に設定登録され、その後、平成17年7月27日に指定商品を第1類「写真材料」、第5類「医療用腕環」、第9類「理化学機械器具,光学機械器具,写真機械器具,映画機械器具(録音機械器具を除く。),測定機械器具」、第10類「医療用機械器具(蹄鉄機械器具,電気医療機器,電気補聴器を除く。)」及び第12類「車いす」とする指定商品の書換登録がされ、その指定商品については、同25年4月16日に商標権の存続期間の更新登録において、第9類及び第10類に減縮されたものである。 (2)登録第4797091号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成15年9月1日に登録出願、第1類ないし第3類、第5類ないし第12類、第17類、第19類、第20類、第35類ないし第37類及び第39類ないし第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同16年8月27日に設定登録され、その後、指定商品及び指定役務については、同26年9月2日に商標権の存続期間の更新登録において、第5類ないし第7類、第9類ないし第12類、第17類、第19類、第37類、第42類及び第44類に減縮されたものである。 (3)登録第6336489号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、令和2年7月8日に登録出願、第7類「業務用電気洗濯機,家庭用電気洗濯機,業務用食器洗浄機,家庭用食器洗浄機,業務用電気式ワックス磨き機,家庭用電気式ワックス磨き機,業務用電気掃除機,家庭用電気掃除機,電気ミキサー」及び第11類「業務用空気清浄機,家庭用電気式空気清浄器,空気清浄装置,空気脱臭装置,空気殺菌装置,滅菌装置,消毒装置,乗物用換気装置及び空調設備,空気調和装置」を指定商品として、同3年1月4日に設定登録されたものである。 (4)登録第1251860号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲4のとおりの構成からなり、昭和45年1月22日に登録出願、第10類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同52年2月17日に設定登録され、その後、平成20年3月26日に指定商品を第1類「写真材料」、第5類「医療用腕環」、第9類「理化学機械器具,光学機械器具,写真機械器具,映画機械器具,測定機械器具」、第10類「医療用機械器具」及び第12類「車いす」とする指定商品の書換登録がされ、その指定商品については、同29年1月24日に商標権の存続期間の更新登録において、第9類及び第10類に減縮されたものである。 (5)登録第1980401号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲5のとおりの構成からなり、昭和56年3月10日に登録出願、第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同62年8月19日に設定登録され、その後、平成21年2月18日に指定商品を第6類ないし第9類、第11類、第12類、第15類ないし第17類、第19類ないし第21類、第26類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がされ、その指定商品については、同29年8月1日に商標権の存続期間の更新登録において、第7類及び第11類に減縮されたものである。 (6)登録第6336488号商標(以下「引用商標6」という。)は、「日機装」の文字を標準文字により表してなり、令和2年7月8日に登録出願、第7類「業務用電気洗濯機,家庭用電気洗濯機,業務用食器洗浄機,家庭用食器洗浄機,業務用電気式ワックス磨き機,家庭用電気式ワックス磨き機,業務用電気掃除機,家庭用電気掃除機,電気ミキサー」及び第11類「業務用空気清浄機,家庭用電気式空気清浄器,空気清浄装置,空気脱臭装置,空気殺菌装置,滅菌装置,消毒装置,乗物用換気装置及び空調設備,空気調和装置」を指定商品として、同3年1月4日に設定登録されたものである。 (7)登録第1640854号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲6のとおりの構成からなり、昭和56年3月10日に登録出願、第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同58年12月26日に設定登録され、その後、平成16年12月22日に指定商品を第7類ないし第12類、第17類及び第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がされ、その指定商品については、同25年12月3日に商標権の存続期間の更新登録において、第9類に減縮されたものである。 なお、上記の引用商標1ないし引用商標7について、まとめていうときは、以下「引用商標」といいい、そのほかに引用商標1ないし引用商標3を「引用商標A」、引用商標4ないし引用商標6を「引用商標B」、引用商標7を「引用商標C」という場合がある。 2 申立人商標 申立人が、本件商標に係る登録異議の申立てにおいて、商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する登録商標は、以下の(1)及び(2)であり、いずれの商標権も、現に有効に存続しているものである。 (1)登録第574884号商標(以下「申立人商標1」という。)は、別掲7のとおりの構成からなり、昭和35年1月13日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同36年6月20日に設定登録され、その後、平成16年2月4日に指定商品を第7類「ポンプ,その他の風水力機械器具,バルブ(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。),コック(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。)」とする指定商品の書換登録がされたものである。 (2)登録第574881号商標(以下「申立人商標2」という。)は、別掲8のとおりの構成からなり、昭和35年1月13日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同36年6月20日に設定登録され、その後、平成16年2月4日に指定商品を第7類「ポンプ,その他の風水力機械器具,バルブ(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。),コック(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。)」とする指定商品の書換登録がされたものである。 上記の申立人商標1及び申立人商標2をまとめて、以下「申立人商標」という。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により、取り消されるべきである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第45号証を提出した。 以下、証拠の表記に当たっては、「甲第1号証」を「甲1」のように省略して記載する。 1 商標法第4条第1項第11号について (1)称呼における対比 本件商標は、「ウッキソー」の称呼が無理なく自然に生じ、また、引用商標は、その構成文字に相応して、「ニッキソー」の称呼が自然に生じる。 本件商標から生じる「ウッキソー」の称呼と、引用商標から生じる「ニッキソー」の称呼を対比すると、いずれも長音を含め4音からなり、語頭音における「ウッ」と「ニッ」の相違しかなく、他の音は全て共通する。 ここで、相違音の「ウッ」と「ニッ」について詳しく見ると、共に促音(ッ)を伴っている。「ウ」と「ニ」の音の後に促音があることで「キ」の音の前で呼気の流れが一旦停止されるため、「ウッ」と「ニッ」は、詰まったような語調で発音され、聴取しづらい音となる。 一方、これに続く「キ」の音は、促音の後に位置することから、この部分にアクセントが置かれ、明瞭に発音・聴取されるものである。また、これに続く「ソ」の音も、長音(一)を伴うことによって強調されるように発音されるものである。 これらを鑑みると、本件商標と引用商標をそれぞれ一連に称呼した場合には、「ウッ」又は「ニッ」の部分より、それに続く「キソー」の部分が強く印象付けられる。そのため、本件商標の「ウッキソー」の称呼と引用商標の「ニッキソー」の称呼は、全体の語調・語感が極めて近似し、互いに聞き誤るおそれが高い。 よって、本件商標と引用商標は、称呼上類似する商標である。 (2)外観における対比 本件商標「UKKISO」の欧文字と、引用商標A「NIKKISO」の欧文字とは、共に大文字の欧文字からなり、語頭の「U」と「NI」の文字が異なるのみで、それに続く「KKISO」の5文字を共通とする。 このように、本件商標と引用商標Aとは、その構成文字の大部分が共通することから、両商標を目にした需要者が、両商標を間違って認識するおそれがある。 特に、実際の取引においては、標章を標準文字そのままの書体で商品に付すことはほとんどなく、書体やデザインに多少の変更を加えて使用されることが通常である。 実際に、本件商標については、ゴシック体様で若干のデザイン化がなされた「U」の文字と、同様にゴシック体様で表された「KKISO」の文字とを並べた態様で使用されている(甲7〜甲9)。 他方、引用商標2及び引用商標3については、ゴシック体様で表された「NIKKISO」の文字と、その上部と下部に配された平行四辺形様の図形とを組み合わせた態様で使用されている(甲10〜甲13)。引用商標Aの使用態様においては図形部分が含まれているが、需要者の注意を引く要部となるのは「NIKKISO」の文字部分であると思料する。 両商標の実際の使用態様について対比すると、いずれもゴシック体様の文字で表されており、文字の大きさや太さもほぼ同じである。そのため、両商標については、目にした需要者に与える印象が近似している。このことを鑑みると、需要者が、商標「UKKISO」を周知著名商標の「NIKKISO」と見間違えて認識することも十分に考えられる。そのため、本件の場合は、外観上の類似度がより一層高まると思料する。 以上より、本件商標と引用商標Aは、外観上複数の共通点を有し、実際の使用態様も似通っていることから、需要者に近似した印象を与える相紛らわしいものである。 よって、本件商標と引用商標Aは外観上類似する商標である。 (3)観念における対比 引用商標については、後述するように「NIKKISO」及び「日機装」が申立人の著名なハウスマークであることからして、申立人の「日機装株式会社」又は申立人の業務に係る商品や役務を想起させると考えるのが妥当である。 他方、本件商標を構成する「UKKISO」の欧文字は、一般の辞書等には掲載されていない造語であり、また本件商標の指定商品を取り扱う分野において特定の意味合いを表す語として使用されている実情もないため、本件商標からは特定の観念が生じない。 このように、本件商標は特定の観念が生じない造語であるため、少なくとも、本件商標と引用商標は、その観念に基づいて区別をすることはできない。 (4)指定商品における対比 本件商標に係る指定商品の全ての類似群コードについて、引用商標A(甲2)、引用商標B(甲3)及び引用商標C(甲4)と抵触している。 したがって、本件商標に係る指定商品と引用商標に係る指定商品は、同一又は類似のものである。 (5)申立人の有するその他の登録商標 甲第14号証に挙げる商標は、その構成中に「NIKKISO」又は「日機装」の文字を含んでいる。いずれも、一部の類似群コードが、本件商標に係る指定商品のものと抵触している。 「NIKKISO」及び「日機装」は、後述するように著名なハウスマークである。そのため、甲第14号証に挙げる商標に接する需要者は、その構成中の「NIKKISO」及び「日機装」の文字部分に注意を引きつけられ、この部分を他の部分と分離してそれ単独で認識する場合があると考えられる。 そうすると、上述のように本件商標と「NIKKISO」及び「日機装」とは、称呼において多くの共通点を有し、それぞれを一連に称呼するときは、全体の語調・語感が極めて近似する相紛らわしいものであるため、甲第14号証に挙げる各商標は、本件商標と類似と判断され得るものと思料する。 (6)まとめ 以上より、本件商標と引用商標は称呼において類似しており、本件商標と引用商標Aについては外観においても相紛らわしいものである。加えて、本件商標と引用商標を区別し得るような観念上の明確な相違も存在しない。 よって、これらを総合的に勘案した場合、本件商標は、引用商標と混同を生ずるおそれのある類似の商標であり、また、その指定商品も同一又は類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する商標である。 2 商標法第4条第1項第15号について (1)申立人商標の周知・著名性について 申立人の「NIKKISO」及び「日機装」のブランド名は、申立人の前身である「日本機械計装株式会社」の略称に由来する。申立人は、1953年(昭和28年)に「特殊ポンプ工業株式会社」として創立され、その後「日本機械計装株式会社」を経て、1968年(昭和43年)に「日機装株式会社」へと社名が変更された(甲15)。 申立人が申立人商標「NIKKISO」(甲5)及び「日機装」(甲6)について商標登録出願を行ったのは1960年(昭和35年)のことであるが、「NIKKISO」及び「日機装」の名称については、社名を「日機装株式会社」に変更する前から使用されていた(甲16)。その後現在まで、「NIKKISO」及び「日機装」の文字については、書体やデザインの大きな変更は行われていない。本件で挙げている申立人商標1「NIKKISO」も、現在のコーポレートロゴ(甲17)と比べると、図形部分の有無の相違はあるものの、文字部分については「NIKKISO」で同一の構成であり、その書体も大きく変更されたものではない。なお、現在のコーポレートロゴについては、2件の商標登録がなされている(甲2。登録第4797091号及び登録6336489号)。 このように、申立人商標1「NIKKISO」は、1960年の商標登録出願より前から60年以上にわたって使用し続けられてきたものであり、特に1968年の社名変更後は、50年以上ハウスマークとして使用され、申立人及びそのグループ会社の業務に係る商品及び役務を示す営業標識として、重要な役割を担ってきたものである。 (2)本件商標と申立人商標の類似性の程度について 申立人商標「NIKKISO」及び「日機装」は、引用商標と同じ文字構成からなる。よって、本件商標と申立人商標は、全体として相紛らわしい類似の商標である。 なお、本件商標は、特定の観念を生じない造語であるため、観念における申立人商標との共通点はないが、同時に、観念に基づいて両商標を明確に区別することもできない。 ア 称呼における共通点 本件商標から生じる「ウッキソー」の称呼と、申立人商標から生じる「ニッキソー」の称呼は、多くの共通点を有し、その結果、それぞれを一連に称呼するときは、全体の語調・語感が極めて近似する相紛らわしいものとなる。よって、本件商標と申立人商標は、称呼上類似の商標である。 イ 外観における共通点 本件商標「UKKISO」と申立人商標1「NIKKISO」は、外観上多くの共通点を有し、その結果、これらを目にした需要者に近似した印象を与える相紛らわしいものとなる。よって、本件商標と申立人商標1「NIKKISO」は、外観上類似の商標である。 ウ 近年の取引の実情について ここで、近年の商取引において、商標の外観上の要素の重要性が高まっていることを説明する。 近年において、オンラインショッピングによる取引が増えていることはいうまでもない。オンラインショッピングでは、需要者は、コンピュータ、タブレット、スマートフォン等の画面上で、商品名、商品の説明、及び商品の写真等を見て商品を購入する。すなわち、視覚的な情報は極めて重要となる。 また、オンラインショッピングにおいては、画面上の商品情報を目で確認する際にある程度の制限がある。例えば、画質によっては商品写真が必ずしも鮮明でなかったり、スマートフォン等の小さな画面で閲覧する際には商品名等の文字が見づらかったりする。 よって、ウェブサイト上に商標が掲載されたり、商標が付された商品の写真が掲載される場合、外観が相紛らわしい商標は、混同が生じる大きな原因となり得る。 加えて、本件商標については、外国の法人である本件商標の権利者が、我が国で商品を販売するためにオンラインショッピングを販路として利用している事実がある(甲7〜甲9)。そのため、上記イのような、本件商標と申立人商標の外観上の類似性は、より一層重視されるべきものである。 特に、実際の商取引にあっては、出願商標と全く同一の書体で使用されることは少なく、多くの場合、文字の表記が変更又はロゴ化されて使用される実情にある。実際に、本件商標は標準文字そのままの書体ではなくロゴ化されて使用されているが、その態様が申立人商標の使用態様と近似していることについては上述したとおりである(甲7〜甲13)。 この場合、本件商標を見た需要者が、著名な「NIKKISO」であると認識する事態がより一層多くなる。大多数の需要者は著名商標「NIKKISO」に対して、既に一定の印象を蓄積している。そのため、両商標が「KKISO」の部分を共通にしていることによって、商品選択の際、需要者の多くは「UKKISO」が付された製品を「日機装」の製品であると見間違って認識することが容易に考えられる。 このような状況の中で、周知商標の機能の一つは、需要者に対する長年の印象付けによって蓄積された信用及び名声の認識が、外観の類否判断において大きな影響を及ぼし、対比すべき商標に対して称呼、観念及び外観上に影響を与えるところにある。そうすると、商品の出所を混同する事象がより一層発生しやすくなる。すなわち、周知著名商標の類似、すなわち、一般的な混同の範囲は、周知性の程度に伴って拡大するため、このことを考慮して商標の類否判断がなされるべきである。 以上より、称呼上及び外観上の類似性並びに近年の取引の実情に照らし、本件商標は、申立人商標と混同を生ずるおそれのある類似の商標である。 (3)申立人の多角的な事業展開について ア 申立人の事業内容 申立人は、「特殊ポンプ工業株式会社」として1953年(昭和28年)に創業して以来約70年にわたり、海外シェア50%を超えるポンプを始めとする産業機器、メディカル機器、モビリティ部品その他様々な製品の製造・販売を行ってきた。そして、その品質の良さから、日本のみならず海外においても非常に知名度のあるブランドとしての地位を築き、現在、5の主要拠点、37の国内営業所、国内外に18のグループ会社を有している(甲18〜甲20)。 申立人及びそのグループ会社は、ポンプ以外にも、ポンプの製造・販売で蓄積された技術とノウハウを生かし、熱交換器、電子部品製造装置、除湿機、航空機部品、透析装置、人工膵臓、研究用試薬、深紫外線LEDチップ、空間除菌消臭装置等に事業領域を広げ、発展を遂げてきた(甲21〜甲30)。特に、航空機部品(カスケード)は世界シェア90%、電子部品製造装置(積層機及び圧着機)は国内シェア90%、透析装置は国内シェア50%を超えるまでに至っている(甲31〜甲33)。 このように、創業以来約70年にわたり、ポンプ以外にも様々な商品を提供し実績を積み重ねてきた結果、申立人は単なるポンプ製造会社としてではなく、多角的に事業を展開する企業として認識されるに至っている。 イ 一般消費者に向けた事業の展開 申立人は、一般消費者を主たる需要者とした事業も展開している。その一例として、「空間除菌消臭装置(商品名:Aeropure)」を挙げることができる。「Aeropure」には3つの機種があり、使用推奨畳数は、「シリーズS」が8畳、「シリーズP」が1畳程度、「シリーズM」が20畳となっている(甲10〜甲13)。「Aeropure」は、新型コロナウイルスの感染拡大によって空気環境への関心が高まる中で発売され、その後生産台数を大きく増やしている(甲36〜甲38)。また、一般消費者による「Aeropure」の紹介記事やコメントも数多く存在する(甲39〜甲42)。 さらに、申立人は、空間除菌消臭装置にとどまらず、他の家電製品についても、製造・販売に向けた開発を行っている。例えば、「電気掃除機」については、申立人はロボット掃除機に関する特許出願を行っており(甲43)、「家庭用電気掃除機」を指定商品として商標登録も行っている(甲44、甲45)。 以上より、申立人は、家電製品の需要者である一般消費者にとっても、身近な企業として認識されるに至っている。 (4)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品との関連性の程度 以下、本件商標に係る指定商品を大きく2つのグループに分け、申立人の業務に係る商品との関連性の程度について説明する。 ア 「アイスクリーム製造機」等と「空間除菌消臭装置」等について 本件商標に係る指定商品のうち「アイスクリーム製造機」等と、申立人の業務に係る商品のうち「空間除菌消臭装置」等とは、その性質、用途又は目的において、以下の共通点を持つ。 (ア)主に日常生活において、家電製品として使用されるものである点。 (イ)広く一般消贅者により使用されるものである点。 (ウ)使用に際し必ずしも専門的な知識を必要としないものである点。 このように、「アイスクリーム製造機」等と「空間除菌消臭装置」等とは、複数の共通点を有していることから、両者は互いに密接な関連性を有する商品である。 とりわけ、「空気殺菌装置,空気清浄装置」と「空間除菌消臭装置」については、上記3点に加えて、空気中の原因物質を除去するという用途においても共通しており、両者の関連性は非常に高いというべきである。 イ 「除湿機」等と「除湿機(ドライヤー)」等について 本件商標に係る指定商品のうち「除湿機」等と、申立人の業務に係る商品のうち「除湿機(ドライヤー)」等とは、その性質、用途又は目的において、以下の共通点を持つ。 (ア)主に工場や店舗において、業務用製品として使用されるものである点。 (イ)一般消賀者を主たる販売先としていない点。 (ウ)使用に際して専門的な知識が必要となることがある点。 このように、「除湿機」等と「除湿機(ドライヤー)」等とは、複数の共通点を有していることから、両者は互いに密接な関連性を有する商品である。 とりわけ、本件商標に係る指定商品の「除湿機」については、その表記から申立人の業務に係る商品の「除湿機(ドライヤー)」を含んでいることが明白であり、両者の関連性は非常に高いというべきである。 以上より、本件商標が、本件商標に係る指定商品に使用された場合、需要者が、申立人又は申立人と何らかの関係を有する者の提供する商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかである。 (5)まとめ 以上より、申立人商標は、申立人及びそのグループ会社のハウスマークとして、また申立人の業務に係る商品を表示する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に極めて広く認識されていた商標である。また、本件商標と申立人商標は、称呼及び外観において相紛らわしい類似の商標である。 そして、本件商標に係る指定商品と申立人の業務に係る商品とは密接な関連性があることに加えて、申立人は、幅広い分野の商品に申立人商標を使用している。このことを考慮すると、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する需要者は、申立人商標又は申立人を想起、連想し、これらの商品が申立人又は申立人と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれが極めて高い。 したがって、本件商標は、申立人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する商標である。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、「UKKISO」の文字を標準文字により表してなるものである。 そして、「UKKISO」の欧文字は、辞書等に載録されている成語ではなく、直ちに何らかの意味合いを理解させるものではないから、一種の造語として認識されるものであり、欧文字からなる造語は、通常、我が国において親しまれたローマ字又は英語の読みに倣って発音するものであるから、当該文字は、「ウッキソー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 したがって、本件商標は、「ウッキソー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標について 引用商標Aは、「NIKKISO」の欧文字からなる又は当該文字を構成中に含むものであり、引用商標Bは、「日機装」の文字からなるものであり、引用商標Cは、「NIKKISO」の欧文字と「日機装」の文字を2段に横書きした構成からなるものであるから、これらの構成文字に相応して、いずれも「ニッキソー」の称呼を生じ、当該各文字は、一般の辞書等に載録がない語であることから、特定の観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標の類否について ア 外観について 本件商標は、上記(1)のとおりの構成からなり、引用商標は、上記(2)のとおりの構成からなるところ、「UKKISO」の文字と「NIKKISO」の文字とは、外観の識別上重要な要素である語頭において「U」と「NI」の文字の差異を有するものであるから、たとえ「KKISO」の文字が共通するとしても、この差異が、さほど冗長ともいえない6文字又は7文字という文字構成からなる両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は小さいとはいえず、また、「UKKISO」の文字と「日機装」の文字は構成態様が明らかに相違するものである。 したがって、本件商標と引用商標は、外観上、判然と区別し得るものである。 イ 称呼について 本件商標から生じる「ウッキソー」の称呼と引用商標から生じる「ニッキソー」の称呼とは、称呼の識別上重要な要素を占める語頭音において、「ウ」と「ニ」の音の差異を有するものであるから、この差異が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、かれこれ聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。 ウ 観念について 本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念が生じないものであるから、両商標は、観念において比較することができない。 エ 小括 以上のとおり、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから、両商標は、非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 その他、本件商標と引用商標とが類似するというべき特段の事情は見いだせない。 上記のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)申立人商標の周知性について 申立人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。 ア 申立人は、「特殊ポンプ工業株式会社」として1953年(昭和28年)に創業して以来約70年にわたり、海外シェア50%を超えるポンプを始めとする産業機器、メディカル機器、モビリティ部品その他様々な製品の製造・販売を行ってきた。現在、5の主要拠点、37の国内営業所、国内外に18のグループ会社を有している(甲18〜甲20)。 イ 申立人及びそのグループ会社は、ポンプ以外にも、熱交換器、電子部品製造装置、除湿機、航空機部品、透析装置、人工膵臓、研究用試薬、深紫外線LEDチップ、空間除菌消臭装置等に事業領域を広げ(甲21〜甲30)、特に、航空機部品(カスケード)は世界シェア90%、電子部品製造装置(積層機及び圧着機)は国内シェア90%、透析装置は国内シェア50%を超えるまでに至っている(甲31〜甲33)。 ウ 申立人が申立人商標について商標登録出願を行ったのは1960年(昭和35年)のことであるが、「NIKKISO」及び「日機装」の名称については、社名を「日機装株式会社」に変更する前から使用されており、その後現在まで、「NIKKISO」及び「日機装」の文字については、書体やデザインの大きな変更は行われていない(甲16及び申立人の主張)。 エ 上記のことを踏まえれば、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、ポンプを始めとする産業機器、メディカル機器分野における取引者、需要者の間で一定程度の周知性を有するものと推認することができる。 (2)本件商標と申立人商標の類似性の程度 申立人商標1は、引用商標1ないし引用商標3及び引用商標7の「NIKKISO」の文字部分と、申立人商標2は、引用商標4ないし引用商標6及び引用商標7の「日機装」の文字部分と、そのつづりを同じくするものであるところ、上記1(3)のとおり、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標と申立人商標についても、非類似の商標であって別異の商標というべきものである。 (3)小括 そうすると、申立人商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国のポンプ関連商品の需要者の間に一定程度知られており、本件商標の指定商品は、申立人商標が使用されている商品と関連性を有し、需要者を共通にするとしても、本件商標と申立人商標とは、類似性の程度が低いものであるから、本件商標は、その商標権者がこれをその指定商品について使用しても、これに接する需要者が、申立人商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 3 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとはいえず、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 引用商標1(登録第1578002号商標) ![]() 別掲2 引用商標2(登録第4797091号商標)(色彩は原本参照) ![]() 別掲3 引用商標3(登録第6336489号商標)(色彩は原本参照) ![]() 別掲4 引用商標4(登録1251860号商標) ![]() 別掲5 引用商標5(登録第1980401号商標) ![]() 別掲6 引用商標7(登録第1640854号商標) ![]() 別掲7 申立人商標1(登録第574884号商標) ![]() 別掲8 申立人商標2(登録第574881号商標) ![]() (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2024-04-23 |
出願番号 | 2023021946 |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Y
(W11)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
山田 啓之 |
特許庁審判官 |
渡邉 あおい 杉本 克治 |
登録日 | 2023-09-04 |
登録番号 | 6732702 |
権利者 | 佛山市家怡特貿易有限公司 |
商標の称呼 | ウッキソ |
代理人 | 李 じゅん |
代理人 | 弁理士法人MSウィード |