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審決分類 審判 全部無効 外観類似 無効としない W44
管理番号 1406033 
総通号数 25 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2024-01-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2023-01-24 
確定日 2023-12-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第6658178号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6658178号商標は、別掲のとおり、恐竜と思しき大小2体の図形の右に「こどもとママの歯科医院」の文字を表してなり、令和4年8月9日に登録出願、第44類「歯科医業,矯正歯科医業,医療情報の提供,健康管理に関する指導及び助言,医療用機械器具の貸与」を指定役務として、同年12月15日に登録査定、同月28日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録第6229488号商標(以下「引用商標」という。)は「子どもとママの歯医者さん」の文字を標準文字で表してなり、平成30年12月18日に登録出願、第44類「歯科医業(審美・美容歯科医業を含む。),一般歯科・小児歯科・歯科口腔外科・矯正歯科等の歯科医業,医業・医療・健康診断・歯科医業・調剤に関する情報の提供,歯科検診,歯科医療相談,調剤,栄養の指導,健康管理・ダイエットに関する助言,子育て及び人間関係に関する心理カウンセリング,心理相談」を含む、第3類、第5類、第21類、第35類、第41類、第44類の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和2年2月26日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当し、同法第46条第1項の規定により本件商標の登録は無効とされるべきである。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)商標の類似について
本件商標の称呼は、引用商標の「コドモトママノハイシャサン」と、本件商標の「コドモトママノシカイイン」とは、「コドモトママノ」で一致している。なお、「ハイシャサン」と「シカイイン」とは、同一業種を示す言葉であり、要部は、「コドモトママノ」で同一である。
また、観念においても、引用商標の「子供」と「母親」と「歯医者」に対して、本件商標の「子供」と「母親」と「歯科医院」であるため、同一又は類似するものである。なお、「歯医者」と「歯科医院」とは、同一業種を示す言葉であり、観念も同一である。
最後に外観においても、引用商標の「子どもとママの歯医者さん」と本件商標の恐竜のキャラクタと「こどもとママの歯科医院」は、同一又は類似するものである。特に、外観における要部は、「子どもとママの」であり、同一である。
総合的に両者の商標を勘案したとしても、恐竜と文字とが分離観察され、指定役務を単に表している歯科医院には識別力がなく要部が「こどもとママの」であることから、称呼、観念、外観とが同一又は類似し、これら両商標は、相類似するものである。
このような形態のものは、本件指定役務を扱っている業界では珍しいもので、本件指定役務の関係では、引用商標と本件商標とは外観上類似するものである。
(2)商品(役務)の類似について
本件の指定役務については、引用商標の指定役務とは販売並びに需要者が同一で、同一又は類似する役務ということができる。
このように、本件商標は、請求人の商標が先出願に係るものであって、両商標は相類似しており、その指定役務も同一又は類似する商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の周知著名性について
請求人所有に係る引用商標は、本件指定役務を扱っている業界では既に周知のレベルを超えており、全国において約150店舗で展開をしており、北海道で3店舗、東北地方で5店舗、関東地方で34店舗、中部地方で19店舗、関西地方で40店舗、中国地方で13店舗、四国地方で10店舗、被請求人が使用している九州地方で20店舗、沖縄で2店舗の展開を実施している。特に、被請求人は、九州地方で歯科医師業を業として実施しており、引用商標の周知著名性のレベルを知っていたことは明らかである。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
本件商標と引用商標とは、同一又は類似し、指定役務においても、一般大衆を需要者とするものであるから、本件商標の指定役務は、請求人の業務に係る役務と取引者や需要者においても共通する。また需要者は、本件商標から著名な引用商標をただちに連想し、本件商標と、引用商標とを密接に結びつけ、本件商標が使用される役務の出所が請求人であると誤認する可能性は極めて高い。
このように、本件商標は、他人である請求人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれのある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 商標法第4条第1項第19号について
被請求人は、引用商標が需要者の間に広く認識されていることは知っており、その証拠として、令和4年7月14日に請求人の担当者から被請求人の商標使用に対して、第1回目の警告をメール(甲1)送付しており、その後数か月にわたり、5度以上連絡をしても返答がなく、令和4年10月10日に請求人の代理弁護士から被請求人の商標使用に対して、警告をしたものの書面で回答するとして引き延ばした。その後、同年12月になって代理弁護士が再度連絡をしたところ弁理士に相談するのを失念していたとの不誠実な回答をしたうえで本件の商標登録を実施している。
なお、被請求人は、甲第2号証に明示されているように、2018年11月から「スマイルライン歯科」という標章を用いて歯科医業を実施していたにも関わらず、2020年4月に周知又は著名(甲7〜甲11)である請求人所有の登録商標に類似させた「香椎照葉こどもとママの歯科医院」を開院している。なお、甲第3号証に記載のように、キャラクタ画像(反転)「香椎照葉」キャラクタ画像を一列に表示し、下列において「こどもとママの歯科医院」を表示していることから、本件商標をそのまま使用せず、引用商標に類似させる形で看板を掲げて業として実施を行っている。
被請求人の行為は、請求人の所有している引用商標が需要者の間に広く知れ渡っていることから、その周知商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を利用し、被請求人の行為は、請求人の引用商標を毀損させることが明らかなものである。
このように、本件商標は、他人の周知商標と同一又は類似で不正の目的をもって使用をする商標であるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
5 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第11号に該当する
ア 称呼
被請求人は、称呼について、語頭の7音「コドモトママノ」は、共通すると認識している。当然ながら、語頭の6音「コドモトママ」も共通する。漢字を未学習の子供に対する歯科医院又は歯医者さんであることを考慮すれば、聞き誤る点が無いと主張する被請求人の主張は筋が通らず、語頭の「コドモトママ」又は「コドモトママノ」が要部であることは明白である。また、2匹の恐竜については、答弁書において、恐竜の母子の観念も生ずると主張していることから、子供の恐竜と母親の恐竜とを意図しており、「コドモトママ」又は「コドモトママノ」が要部であることを意図していることは、明白である。結果として、称呼は同一類似である。
イ 外観
被請求人は、外観について乙第1号証ないし乙第12号証を列挙し、子供と母親を対象とした歯の治療や診断に関するサービスが提供されていると主張しているが、いずれの証拠を確認しても、商標的使用ではなく、いたずらに歯科医院、歯医者さんのみならず、県の口腔保健支援センター等のホームページを証拠として提出している。
被請求人は、「コドモトママ」又は「コドモトママノ」が、役務の質・内容を示すものであると主張しており、仮に被請求人が主張するように、「子どもと母親を対象とした歯科医院」が、自他識別力が低いと判断されるのであれば、被請求人の商標登録は、無効となるべきであることを自白しているものと思料する。
最後に、被請求人の答弁書においては、恐竜図案と主張しているのに対して、恐竜の母子の観念も生ずる、と主張している。外観としても、「コドモトママ」の恐竜を図案化しただけのものであり、要部は、「コドモトママ」又は「コドモトママノ」であり、外観は、同一類似である。
ウ 観念
歯科医業の分野において、需要者は「歯医者さん」を“歯科医院”として使用している実体がある。
被請求人は、「歯科医院」と「歯医者さん」とは、異なると主張しているが、第三者的な観点が全く検討されていないと思料する。例えば、日本歯科医師会HPでは「全国の歯医者さん検索」で検索すると、具体的な“歯科医院”が表示されている。両者を同時に検索できる程、業界内では、「歯科医院」と「歯医者さん」とを同じ観念で捉えている。
業界内において同じ観念であるため、さらに一般の需要者からすると、観念が異なるという被請求人の主張は、根拠が無い。すなわち、歯科医を訪れる患者(需要者)は、「歯医者さん」と「歯科医院」とを同義で使用しており、取引上自然に想起する意味合いに差異はない。また、この観念は恐竜図案の有無によって変わるものではない。
さらに、歯科医院と、歯医者さんとをGOOGLE検索した結果、ウィキペディアでは、いずれも歯科医師「歯科医師(しかいし、英語:Dentist、Doctor of Dental Surgery、Doctor of Dental Medicine)は、歯科医学に基づいて傷病の予防、診断および治療、そして公衆衛生の普及を責務とする医療従事者である。」と表示される。
これらのことから、被請求人の主張する観念が異なるとの主張は、根拠が無い。
最後に、被請求人は、恐竜の母子の観念も生ずると主張しており、「コドモトママ」又は「コドモトママノ」であり、観念は、同一類似である。
エ 小括
被請求人は、称呼、外観、観念及び過去の審査例に基づいて主張しているが、称呼、外観、観念を総合的に判断することで、商標法第4条第1項第11号に該当することは明白である。
(2)商標法第4条第1項第15号に該当する。
被請求人は、語頭の「こどもとママの」と「子どもとママの」が類似していると主張している。また、「ママとこども」と「子どもとママ」とは、観念は同一であり類似する。なお、本件商標の称呼「コドモトママノシカイイン」と、引用商標の称呼「コドモトママノハイシャサン」とを比較すると、両者は「シカイイン」と「ハイシャサン」のみが相違するが、上述のように「歯科医院」と「歯医者さん」とは需要者が同義として使用していることから、本件商標を歯科医業(指定役務)に使用した場合に、引用商標と出所混同のおそれがあることは、明らかである。
よって、一般大衆を需要者とするものであるから、本件商標は、他人である請求人(2023年現在において、請求人の全国166のグループ院)の業務に係る役務と混同を生ずるおそれのある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号に該当する。
被請求人は、本件商標と引用商標は類似性が低いため、不正の目的がないと主張しているが、審判請求書において「請求人の登録商標「子どもとママの歯医者さん」が需要者の間に広く認識されている証拠として、令和4年7月14日に請求人の担当者から被請求人の商標使用に対して、第1回目の警告をメール(甲1)送付しており、その後数か月にわたり、5度以上連絡をしても返答がなかった」点について、何ら回答をしていない。
また、被請求人は、2018年11月から「スマイルライン歯科」という標章を用いて業として、7か所の歯科医業を実施していたにも関わらず、2020(令和2年)年4月に1か所だけの「香椎照葉こどもとママの歯科医院」を開院した意図について、何ら回答をしていない。
これらの、被請求人の行為は、請求人の所有している登録商標が需要者の間に広く知れ渡っている(2023年現在において、請求人の全国166のグループ院)ことから、その周知商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を利用し、被請求人の行為は、請求人の登録商標を毀損させることが明らかなものである。
また、GOOGLE検索において、「福岡」「ママとこども」「歯医者さん」の3語で検索すると、1番目に、請求人に関与する福岡県の歯医者が表示され、2番目に、被請求人の歯科医院が表示される。
さらに、「香椎」「ママとこども」「歯医者さん」の3語で検索すると、「香椎照葉こどもとママの歯科医院」が一番に表示され、請求人の登録商標を毀損する意図が明白である。
よって、本件商標は、他人の周知商標と同一又は類似で不正の目的をもつて使用をする商標であるから,商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号に該当しない理由
(1)称呼について
本件商標は、2匹の恐竜が寄り添うように並んだ姿を描いた図案(以下、恐竜図案)が表され、その右部に横書きで「こどもとママの歯科医院」なる文字を配してなるものである。本件商標からは、自然な称呼として「コドモトママノシカイイン」のみが生じるといえる。
一方、引用商標は、横書きで「子どもとママの歯医者さん」の文字を普通に用いられる方法で表してなるものであるため、引用商標からは「コドモトママノハイシャサン」の称呼が生じるといえる。
本件商標と引用商標から生じる称呼を比較すると、語頭の7音「コドモトママノ」は共通するものの、その後に続く音には共通点がない。また、「コドモトママノ」の後に続く「シカイイン」「ハイシャサン」の称呼は母音及び子音が異なり、音数も異なるものである。このため、本件商標と引用商標は全く語感が異なるものであるといえる。
したがって、本件商標と引用商標を聞き誤るおそれはなく、両商標の称呼は類似しないものであるといえる。
(2)外観について
両商標の構成を比較すると、恐竜図案の有無が異なる。本件商標では、恐竜図案のほうが、その右部に表示された「こどもとママの歯科医院」の文字よりも、何倍も大きな大きさで表示されており、また、横書きで表された文字は、日本語の文法上、左から右へと読む法則があることを鑑みると、本願商標に接した需要者は、恐竜図案が文字よりも先頭に表示されていると認識し、文字よりも先に恐竜図案に着目すると合理的に考えられる。さらに、本件商標の登録に係る指定役務に係る事業分野において、子どもと母親を対象とした歯の治療や診断に関するサービスが、請求人以外の相当数の事業者により提供されている実情が見受けられる(乙1〜乙12)。すると、本件商標の指定役務との関係において、「こどもとママの歯科医院」の文字は、これに接する需要者に「子どもと母親を対象とした歯科医院」といった役務の内容・質・対象者等に関する意味合いを想起させ、当該文字部分の有する自他商品(役務)識別力は低いものと考えられる。よって、本件商標の要部は恐竜図案であると考えるのが相当であり、需要者は恐竜図案の有無により本件商標と引用商標を外観において容易に見分けることができる。
また、本件商標の文字部分と引用商標の文字部分とを比較すると、「歯科医院」と「歯医者さん」の文字が異なっている。両文字は、漢字4字から成る「歯科医院」と漢字3字と平仮名2字をあわせてなる「歯医者さん」と、その構成は大きく異なり、両文字中、共通する字は「歯」「医」の2字のみである。加えて、「歯科医院」から想起される観念が「歯科医が歯科医業を提供する場所(診療所)」であると考えられるのに対し、「歯医者さん」は、「歯科医」の同義語「歯医者」に人称接尾辞「さん」をつけ、歯科医個人を親しみやすく表したものであると考えられるため、それぞれの文字から生じる観念は異なる。また、「歯科医院」と「歯医者さん」の称呼が大きく異なることは上述の通りである。すると、百歩譲って、本件商標の文字部分と引用商標とを比較したとしても、需要者は本件商標と引用商標を外観において容易に見分けることができる。
したがって、本件商標と引用商標の外観は類似しないものであるといえる。
(3)観念について
本件商標及び引用商標は、「子どもとママの」部分の文字だけは類似するものの、その後に続く文字が「歯科医院」か「歯医者さん」かの差異がある。「歯科医院」から想起される観念が「歯科医が歯科医業を提供する場所(診療所)」であると考えられるのに対し、「歯医者さん」は、「歯科医」の同義語「歯医者」に人称接尾辞「さん」をつけ、歯科医個人を親しみやすく表したものであると考えられるため、それぞれの文字から生じる観念は異なる。また、本願商標は恐竜図案も有し、大きさの異なる恐竜が2匹並んで寄り添い、お互いを見つめあっていること、恐竜図案の右部に「子どもとママの歯科医院」とあることから、本件商標からは恐竜の母子の観念も生ずる。
したがって、本件商標と引用商標の観念は類似しないものであるといえる。
(4)過去の審査例に基づく主張について
特許庁での過去の審査において、「子どもとママの」を含む、第44類「歯科医業」や「歯科医業に関する情報の提供」を指定する商標出願が、識別力欠如を理由として登録が否定されている。また、下記商標出願の登録拒絶は、引用商標や請求人が有する商標登録第6229487号「ママと子どもの歯医者さん」との類似を理由とするものではない。
また、第44類「医業,歯科医業」等を指定する登録6396431号「§こどもとママの\歯の相談室」は、引用商標との併存登録が認められている。
上記の審査例を加味して考慮するに、第44類「歯科医業」等に係る役務において、「こどもとママ」「ママとこども」の文字部分が有する識別力は低く、引用商標に対して登録査定がおりた理由を推測するならば、「歯医者さん」などと「歯科医」の同義語「歯医者」に人称接尾辞「さん」をつけ、歯科医個人を親しみやすく表した点等を含め、引用商標の全体的な構成に特許庁が識別力を認めたものと思料される。また、上記の商標出願と引用商標、および請求人が有する商標登録第6229487号「ママと子どもの歯医者さん」とも、「こどもとママの」「ママとこどもの」が共通しながら、引用商標との併存登録が認められていることも併せ考えると、「ママとこどもの」の文字部分のみが類似している本件商標と引用商標は、過去の審査例に鑑みても、明らかに類似しないものであると考えるのが相当である。
(5)小括
以上種々申し述べたように、本件商標と引用商標の外観・称呼・観念及び過去の審査例にかんがみ、両商標は断じて類似しないものであるといえる。
2 商標法第4条第1項第15号に該当しない理由
(1)本件商標と引用商標の類似性の高低について
本件商標と引用商標とが類似しないことは論じた通りであるが、標章が類似しない場合であっても、類似性が高い場合には、商標法第4条1項第15号の規定に該当することもあるのは審査基準の通りであるから、本件商標と引用商標との類似性の高低について意見を述べる。
本件商標に含まれる文字「こどもとママの歯科医院」と、引用商標「子どもとママの歯医者さん」とは語頭の7文字「こどもとママの」「子どもとママの」が類似している。
しかしながら、本件商標の指定役務との関係においては、「こどもとママの」は、「子どもと母親を対象とした歯科医院」といった役務の内容・質・対象者等に関する説明的表示に過ぎない言葉である。このため、「こどもとママの」は、自他商品(役務)識別機能の低い部分であり、当該共通部分が商標の類似性に及ぼす影響はごく小さい。また、本件商標及び引用商標の、「こどもとママの」「子どもとママの」に続く「歯科医院」「歯医者さん」の観念の違いは、上述の通りである。また、両商標の称呼・外観も明らかに異なるものである。すなわち、需要者の注意を惹く部分が非類似であるから、本件商標と引用商標との類似性は低いといえる。
(2)引用商標の周知度について
請求人は審判請求書において、引用商標及び請求人の社名の周知度が高い理由について数々述べている。
しかしながら、請求人自身が審判請求書において甲第6号証ないし甲第11号証で引用しているとおり、請求書が使用している商標は、「ママとこどものはいしゃさん」であって、引用商標「子どもとママの歯医者さん」ではない。「ママとこどものはいしゃさん」と引用商標「子どもとママの歯医者さん」が異なる別個の商標であることは多言を要せず、「子どもとママの」と「ママとこどもの」の語順の差異、及びそれによって生じる外観・称呼の差異などに鑑みると、「ママとこどものはいしゃさん」と引用商標とは互いに類似しない。このような別個の商標についての使用実績をいくら申し立てたところで、引用商標が出所表示として認識されるものでも、周知となるものでもないことは明らかである。したがって、引用商標の周知度が高い点に関する請求人の主張は根拠のないものである。
なお、被請求人の知る限り引用商標の使用実績が見られないことから、被請求人は別途、引用商標に対しておって不使用取消審判を請求する予定である。
(3)小括
このように、本件商標と引用商標との類似性の程度もごく低く、また引用商標には目立った信用も周知性も何ら蓄積されていないため、本件商標と引用商標の出所を需要者が誤認混同するであるとか、経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であると誤認するおそれがあることは断じてないと言える。
3 商標法第4条第1項第19号に該当しない理由
当該規定が適用されるためには、商標が同一又は類似であることが前提の要件となるところ、本件商標と引用商標とが非類似であることは明らかである。また、「こどもとママの」部分には、自他商品(役務)識別力が低いこと、請求人の使用する商標「ママとこどものはいしゃさん」と引用商標とは異なる別個の商標であり、引用商標には何らの信用も周知性も蓄積されていないこと、請求人の使用する商標「ママとこどものはいしゃさん」と本件商標とは、商標の外観・称呼・観念からして、本件商標と引用商標との間以上に類似性が低いことから、被請求人の本件商標の出願に何らの不正目的がないこともまた明らかであることを付言する。
4 総括
以上により、本件商標には、請求人が申し立てた無効理由、商標法第4条第1項第11号、同法第4条第1項第15号及び同法第4条第1項第19号のいずれの規定にも該当する商標ではなく、同法第46条第1項第1号の規定により無効にされるものではない。

第5 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次の事実を認めることができる。
ア 請求人のウェブサイトによると、請求人は、主な事業として「ママとこどものはいしゃさん」加盟事業を行っており、地域別グループ院リストの見出しによれば、北海道、東北地方、関東地方、中部地方、関西地方、中国地方、四国地方、九州・沖縄地方にグループ院があることがうかがわれ(甲6)、請求人は、当該グループ院を全国において約150店舗展開していると主張している。
イ 2018年から2022年にかけて、継続的に各地に「ママとこどものはいしゃさん」のグループ院がオープンしている(甲7〜甲11)。
ウ 請求人が本件において引用する商標は「子どもとママの歯医者さん」であり、請求人が有するグループ院は「ママとこどものはいしゃさん」(以下「使用商標」という。)であるから、「子ども」と「ママ」の語順、「子ども」と「こども」、「歯医者さん」と「はいしゃさん」は、漢字と平仮名の相違があり、引用商標と使用商標は同一ではない。
(2)以上によれば、請求人は、日本全国に「ママとこどものはいしゃさん」のグループ院を有していることは認められるものの、各地の「ママとこどものはいしゃさん」に係る役務(歯科医業等、以下「使用役務」という。)の提供期間、提供実績、提供規模等は主張も立証もされておらず、その他使用役務の宣伝広告の実績等も確認できない。
そうすると、請求人が提出した証拠をもってしては、使用商標が、使用役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないし、これと同一とはいえない引用商標が、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることもできない。
その他、引用商標が、使用役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認められる事情は見いだせない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、上記第1のとおり、恐竜とおぼしき大小2体の図形(以下「図形部分」という。)の右に「こどもとママの歯科医院」の文字を表してなるものである。
そして、図形部分は、本件商標の指定役務との関係において、役務の質などを表すものとは認められないから、役務の出所識別標識としての機能を果たす部分といえるが、当該図形は、2体の恐竜とおぼしき図形とは認識し得るものの、その様子が象徴的な態様又は具体的行動を表現したものとは看取できず、また、特定のキャラクター等の主体を表したものとは見受けられないから、図形部分から特定の称呼や観念が生じるとはいえない。
他方、「こどもとママの歯科医院」の文字部分のうち、「歯科医院」の文字は、本件商標の指定役務との関係においては、役務の普通名称又は役務の提供場所を表すものであり、「こどもとママ」の文字は、「こども」や「ママ」の語を用いて、母子を対象として歯科医業を提供する歯科医院が普通にあること(乙1〜乙12)からすると、役務の対象者(質、用途等)を想起させるものといえる。
そうすると、「こどもとママの歯科医院」の文字部分からは、「コドモトママノシカイイン」の称呼及び「こどもとママを対象とした歯科医院」の観念が生じるが、当該文字部分は、役務の対象者(質、用途等)と役務の普通名称又は役務の提供場所を想起させるものであるから、本件商標の構成中、特徴的に表され目をひく図形部分との対比においては、役務の出所識別標識としての機能が比較的弱いものというのが相当である。
したがって、本件商標の構成中、役務の出所識別標識として、取引者、需要者に強く支配的な印象を与える要部は、図形部分であるというべきである。
(2)引用商標
引用商標は、上記第2のとおり、「子どもとママの歯医者さん」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応して、「コドモトママノハイシャサン」の称呼が生じ、「子どもとママを対象とした歯科医院(歯医者さん)」ほどの観念が生じるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、上記(1)のとおり、その構成中、図形部分が取引者、需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
ア 外観について
本件商標の全体の外観と引用商標の外観を比較した場合には、図形の有無、漢字と平仮名の相違、「歯科医院」と「はいしゃさん」の文字の相違があり、明確に区別できるものである。
また、本件商標の構成中、取引者、需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部である図形部分と引用商標を比較した場合には、外観は全く異なるものである。
なお、仮に、本件商標の構成中、役務の出所識別標識としての機能が比較的弱い「こどもとママの歯科医院」の文字部分を抽出して引用商標と比較した場合においても、漢字と平仮名の相違、「歯科医院」と「はいしゃさん」の文字の相違があるから、外観上、区別することは可能である。
よって、本件商標と引用商標の外観は、いずれにしても相違するものである。
イ 称呼について
本件商標の構成中、取引者、需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部である図形部分からは、特定の称呼は生じず、引用商標からは「コドモトママノハイシャサン」の称呼が生じるから、称呼において比較することはできない。
なお、仮に、本件商標の文字部分の称呼と引用商標の称呼とを比較した場合においても、「コドモトママノシカイイン」と「コドモトママノハイシャサン」の称呼は、「シカイイン」と「ハイシャサン」の相違があるから、称呼上、聴別することは可能である。
よって、本件商標と引用商標の称呼は、比較できないか、相違するものである。
ウ 観念について
本件商標の構成中、取引者、需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部である図形部分からは、特定の観念は生じず、引用商標からは「子どもとママを対象とした歯科医院(歯医者さん)」の観念が生じるから、観念において比較することはできない。
仮に、本件商標の文字部分から生じる観念と引用商標の観念と比較した場合においては、本件商標の文字部分から生じる「こどもとママを対象とした歯科医院」の観念と、引用商標から生じる「子どもとママを対象とした歯科医院(歯医者さん)」の観念は、ほぼ同一といえる。
エ 検討
以上アないしウからすると、本件商標の全体又は図形部分と引用商標は、外観において相違し、称呼において比較することができないか、相違し、観念において比較することができないものであるから、これらを踏まえると、両商標は非類似の商標といわざるを得ない。
なお、本件商標の文字部分と引用商標から生じる観念がほぼ同一であることを考慮しても、本件商標の構成において、文字部分は図形部分と比較して役務の出所識別標識としての機能が弱いものであるから、本件商標と引用商標が類似の商標であると判断することは困難である。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務が同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知度
上記1(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないものであり、周知度が高いとはいえない。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度
上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標であるから、類似性の程度が高いとはいえない。
(3)引用商標の独創性の程度
引用商標は「子どもとママを対象とした歯科医院」であることを「子どもとママの歯医者さん」と表示したにすぎないものであるから、独創性の程度が高いとはいえない。
(4)本件商標の指定役務と請求人の業務に係る役務との関連性並びに取引者及び需要者の共通性について
本件商標の指定役務中「歯科医業,矯正歯科医業,医療情報の提供,健康管理に関する指導及び助言」と、引用商標の指定役務中「歯科医業(審美・美容歯科医業を含む。),一般歯科・小児歯科・歯科口腔外科・矯正歯科等の歯科医業,医業・医療・健康診断・歯科医業・調剤に関する情報の提供,歯科検診,歯科医療相談,調剤,栄養の指導,健康管理・ダイエットに関する助言,子育て及び人間関係に関する心理カウンセリング,心理相談」は、役務の提供の手段、目的、場所、提供に関連する物品、業種等を同じくする同一又は類似の役務であり、その関連性は高いといえるとともに、取引者及び需要者の範囲も一致する。
(5)出所の混同のおそれについて
上記(1)ないし(4)を総合的にみれば、本件商標に係る指定役務中、上記の役務と請求人の業務に係る役務の関連性が高く、その需要者の範囲を共通にするものであるとしても、引用商標は、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものとは認めることができず、本件商標と引用商標とは、類似性の程度が高いとはいえないものであって、かつ、引用商標の独創性も高いとはいえないものである。
そうすると、本件商標権者が本件商標をその指定役務について使用しても、取引者、需要者は、その役務が他人(請求人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれはない。
(6)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記1(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る役務を表すものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていたと認められないものであるから、商標法第4条第1項第19号の要件を充足しないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲 本件商標(色彩については原本参照。)


(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。

審理終結日 2023-10-13 
結審通知日 2023-10-18 
審決日 2023-11-02 
出願番号 2022092305 
審決分類 T 1 11・ 261- Y (W44)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 旦 克昌
特許庁審判官 綾 郁奈子
小林 裕子
登録日 2022-12-28 
登録番号 6658178 
商標の称呼 コドモトママノシカイイン、コドモトママノ、コドモトママ 
代理人 中川 慶太 
代理人 下田 一徳 
代理人 弁理士法人クレイア特許事務所 
代理人 三村 拓真 
代理人 辻田 朋子 
代理人 樋口 頼子 

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