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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W2028
管理番号 1405949 
総通号数 25 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2024-01-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2022-10-18 
確定日 2023-12-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第6275593号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第6275593号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6275593号商標(以下「本件商標」という。)は、「HAIRMES」の文字を標準文字で表してなり、令和元年10月16日に登録出願され、第20類「ペット用ベッド,愛玩動物用枕,ペット用クッション」及び第28類「ペット用のおもちゃ」を指定商品として、同2年7月27日に登録査定、同月31日に設定登録されたものである。

第2 請求人が引用する商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する登録第6179160号商標(以下「引用商標」という。)は、「HERMES」の文字を標準文字で表してなり、平成28年5月25日に登録出願、「動物用首輪,動物用引きひも」を含む第18類、「愛玩動物用クッション,愛玩動物用巣箱」を含む第20類、「愛玩動物用のおもちゃ」を含む第28類及び第3類、第4類、第6類、第8類、第9類、第11類、第16類、第21類、第22類、第24類、第26類、第27類、第34類、第35類、第37類、第38類並びに第41類ないし第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和元年9月13日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を審判請求書において、要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第45号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号に該当すること
(1)本件商標及び引用商標の同一性又は類似性
本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念において同一又は類似する商標である。
ア 称呼について
(ア)本件商標から生じる称呼
近年、ペット用品にファッション性やブランド力を求める需要者が増加しており、請求人を始めとする多数の高級ブランドから数多くのペット用品が販売され、流通している(甲1〜甲3)。とりわけ、請求人を含むフランスのブランドは、そのファッション性やブランドの周知性、著名性の高さから特に注目されており、本件商標の指定商品の属する分野において、フランス語は馴染み深いものとなっている。このため、本件商標に接した需要者、取引者は、本件商標をフランス語と認識し、フランス語風の読みを行うのが通常である。
本件商標をフランス語として称呼する場合、フランス語では単語の先頭に「h」の文字が配列される場合に「h」の音自身は無音となり発音されず、また、「h」に続く母音「ai」は「エ」と発音されるから(甲4)、「エルメス」の称呼が生じる。
加えて、フランス語に親しみのない日本人が本件商標に接する場合には、その構成文字に対応し英語風の読みを行い、文字列全体を第1音節及び第2音節、第3音節及び第4音節の2つに分けて発音することが想定される。
このうち、第1音節及び第2音節は、英語風に読む場合「heer」(3文字目の「e」の文字は上下を逆にしてなる。)と発音されるところ、「e」(「e」の文字の上下を逆にしてなる。)の発音はいわゆる曖昧母音と称されるschwa母音であり、早く小さく、アクセントを置かず、口をあまり開けずに弱く曖昧に発音することを特徴とする母音である(甲5)。
そのため、本件商標は「ヘアメス」との称呼が生じ、2音節目の「ア」は、弱音として弱く発音される。
以上から、本件商標は、「エルメス」及び「ヘアメス」の称呼が生じる。
(イ)引用商標から生じる称呼
引用商標は、請求人のブランド「HERMES」のブランドネームとして世界的に周知著名であり、その日本語表記としては、請求人自身がホームページにおいて「エルメス」と片仮名で記載していることに加え(甲6)、多くの広告媒体においても当該日本語表記が使用されているから、引用商標は「エルメス」の称呼が生じる。
また、請求人のブランド「HERMES」及び仏語に親しみのない日本人が引用商標に接する場合には、引用商標は、その文字構成に対応して英語風の読みにより、「ヘルメス」、「ハーメス」の称呼も生じる(甲7)。
以上から、引用商標は、「エルメス」、「ヘルメス」及び「ハーメス」の称呼が生じる。
(ウ)本件商標と引用商標の称呼の比較
本件商標と引用商標の称呼とを比較すると、本件商標から「エルメス」の称呼が生じる場合には、引用商標から生じる「エルメス」の称呼と同一である。
次に、本件商標から「ヘアメス」の称呼が生じる場合には、引用商標から生じる「ヘルメス」又は「ハーメス」の称呼と類似する。すなわち、「ヘアメス」と「ヘルメス」の称呼とを比較すると、それぞれ4音からなる同音数の称呼であり、そのうち3音を共通とする。相違点は、両商標の2音目に位置する「ア」と「ル」のみであるが、両商標においてアクセントが置かれ最も強く発音される音は語頭部の「へ」であり、加えて、「ア」は弱音として曖昧に弱く発音されることからすれば、2音目の「ア」と「ル」の差異が全体の称呼に与える影響は大きくない。
また、「ヘアメス」と「ハーメス」の称呼を比較すると、それぞれ4音からなる同音数の称呼であることは上記と同様であって、語頭部に位置する「へ」と「ハ」はいずれも50音図の同行に属する音であり、また、2音目の「ア」と「ー」はいずれも母音「ア」の発音となる点で共通である上、いずれも弱音であり、かつ、アクセントの弱い中間部に位置するため、これらの差異は全体の中で埋没しており目立つものではなく、全体の称呼に与える影響は大きくない。
したがって、「ヘアメス」と「ヘルメス」、「ヘアメス」と「ハーメス」の両称呼をそれぞれ一連に称呼した場合には、全体の語感語調が近似し、これらを互いに聞き誤るおそれがある。
したがって、本件商標から生じる称呼「ヘアメス」は引用商標から生じる称呼「ヘルメス」及び「ハーメス」と類似する。
(エ)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、称呼において同一又は類似する。
イ 外観について
(ア)本件商標と引用商標の外観
本件商標は「HAIRMES」の欧文字を書してなる商標であり、引用商標は「HERMES」の欧文字を書してなる商標である。
(イ)本件商標と引用商標の外観の比較
本件商標と引用商標の外観を比較すると、両者はいずれも通常用いられる書体、文字間隔をもって欧文字により表示され、両商標とも語頭部が「H」であり、語尾側の4文字が「RMES」である点を共通にする。
両者が相違するのは、本件商標が7文字配列であるのに対し、引用商標は6文字配列である点、及び語頭部「H」に続き中間やや左側に位置する文字が本件商標では「AI」であるのに対し、引用商標では「E」であるという点のみである。このうち、文字数の違いについては、本件商標と比較して引用商標はわずか1文字少ないのみである上、本件商標が7文字という比較的長い文字列で構成されている点に鑑みれば、わずか1文字の文字数の違いは、本件商標及び引用商標の全体の文字列において目立つものではない。
また、本件商標と引用商標はいずれも等間隔の欧文字によりひとかたまりでまとまりよく構成されており、いずれの書体もデザイン化されていない読みやすい標準の書体であるところ、「AI」と「E」の文字は、それぞれ文字列の中間部に位置しており、両商標が7文字と6文字という比較的長い文字列で構成されている点に鑑みれば、当該相違は、本件商標及び引用商標の文字列の中で埋没している。
さらに、「AI」及び「E」はいずれも母音の発音となる母音字であるところ、典型的に、母音字は一の音節に一つ含まれるものであるため文字列に多く含まれており、文字列全体の中に溶け込みやすく、視覚的な特徴がなくインパクトも小さいため、母音字には取引者・需要者の視覚的注意力が届きにくい。
以上からすれば、本件商標と引用商標の文字列の比較において、「AI」と「E」の相違は目立たない。
(ウ)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、その外観において、時と所を異にして隔離的に観察した場合には、互いに見誤るほどに類似している。
ウ 観念について
(ア)本件商標から生じる観念
本件商標は、欧文字で一連に表記され、これらの文字列に対応した語は一般に存在しない。
しかしながら、本件商標は、称呼及び外観において、引用商標と同一又は類似しており、また、引用商標が、請求人のブランド「HERMES」のブランドネームとして世界的に周知著名であることからすれば、本件商標に接した取引者、需要者には、請求人のブランド「HERMES」の観念が生じる。
したがって、本件商標は、請求人のブランド「HERMES」の観念が生じる。
(イ)引用商標から生じる観念
引用商標は、請求人のブランド「HERMES」のブランドネームとして世界的に周知著名であるから、引用商標に接した取引者・需要者が想起する観念は、請求人のブランド「HERMES」である。
したがって、引用商標は、請求人のブランド「HERMES」の観念が生じる。
(ウ)本件商標と引用商標の観念の比較
以上からすれば、本件商標及び引用商標から連想される観念は、いずれも請求人のブランド「HERMES」であり、本件商標と引用商標はその観念が同一である。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、称呼において同一又は類似し、外観において類似し、観念において同一の商標である。
(2)指定商品の同一性又は類似性
本件商標の指定商品は、いずれも、動物用首輪、動物用革製引きひも、愛玩動物用クッション、愛玩動物用巣箱、愛玩動物用のおもちゃ等の引用商標が使用されている商品と同一又は類似の関係にある。
2 商標法第4条第1項第10号に該当すること
(1)請求人は、引用商標を動物用首輪、動物用革製引きひも、愛玩動物用クッション及び愛玩動物用のおもちゃ等に使用している。
引用商標は、請求人の商品を表示するものとして著名であるところ、本件商標は引用商標に類似し、かつ、請求人の業務に係る商品に類似する商品に使用されるものである。
(2)引用商標の周知性
ア 引用商標は、請求人のブランド「HERMES」のブランドネーム(ハウスマーク)である。
「HERMES」は、1837年、フランスのパリにおいて、ティエリー・エルメスにより馬具工房として創業された、バッグ、高級紳士・婦人服、アクセサリー及び馬具等で知られる高級ブランドである(甲8)。
「HERMES」の商品は、高級ブランド品として世界中で著名で、かつ人気を博しており、フランス、イギリス、イタリア、スペイン、ドイツ等の欧州の主要国、アメリカ、メキシコ、キューバ等の北中米の主要国、日本、中国、香港、台湾、韓国、タイ、シンガポール等のアジアの主要国、オーストラリア、インドネシア等のオセアニアの主要国等、世界中に店舗を有する(甲9)。
我が国においては、請求人の商品は戦前から知られていたが、1964年に株式会社西武百貨店と提携し、渋谷、池袋を始め、名古屋、大阪、札幌等全国に合計15店舗の専門店を出店してから、その高い品質及びファッション性がより広い顧客層に知られるようになった。特に、1983年に請求人と株式会社西武百貨店の合同会社であるエルメスジャポン株式会社が設立されると、日本におけるさらに積極的な販売活動が行われるようになり、「HERMES」の店舗は年々増え、現在では、札幌、仙台、千葉、埼玉、東京、横浜、名古屋、大阪、京都、神戸、岡山、広島、福岡等、全国に29の直営店舗を有する(甲10)。
また、「HERMES」の商品は、現在、被服、バッグ、財布等の革小物、ジュエリー、時計、香水、化粧品、生活雑貨・インテリア雑貨、その他馬具及びペット用品に至るまで幅広いジャンルに及び、これらに係る無数の商品が日本中に流通している(甲11)。
加えて、「HERMES」の商品は、我が国で極めて高い人気を誇っていることから、多数の雑誌に取り上げられている上(一例として、甲12〜甲15)、「Precious」、「Vogue」、「OCEANS」等の有名なファッション雑誌のオンライン情報においても、「HERMES」の商品等に関する記事が頻繁に掲載されており(一例として、甲16〜甲28)、多くの需要者、取引者による認識の対象となっている。
イ また、引用商標は世界中で販売される「HERMES」の商品に付されるだけでなく、これらの商品のパッケージ(箱・紙袋等)や店舗の外装・内装にも表示され、高い品質及びファッション性を有する「HERMES」のブランドネームとして40年以上にもわたり使用されている。
我が国においても、引用商標が付された「HERMES」の商品(パッケージを含む)が多数販売されて流通している上(甲11)、これらの商品は多数の雑誌に取り上げられており、その掲載雑誌等は枚挙にいとまがない(一例として、甲12〜甲28)。
ウ 加えて、請求人は、そのブランドネーム「HERMES」に関して、日本国内だけでも引用商標を含む合計150以上の登録商標を取得しており(甲29)、「HERMES」に係る権利保護のための必要な措置を、長期にわたり継続して講じている。
その結果、引用商標と同様に、「HERMES」の欧文字に「エルメス」の片仮名が併記された商標(登録第810370号商標)は、日本国周知・著名商標リストに掲載されており(甲30)、引用商標が、我が国において著名であることは顕著な事実である。
エ 以上の点からすれば、引用商標は、本件商標の登録出願前から現在に至るまで、請求人のブランド「HERMES」の商品を表示するものとして、需要者、取引者の間に広く認識されている。
(3)商標の類似性
本件商標と引用商標は、その称呼、外観及び観念において、同一又は類似する商標である。
(4)指定商品の同一性又は類似性
本件商標の指定商品は、そのすべてにおいて引用商標が使用されている商品と同一又は類似の関係にある。
(5)小括
以上のとおり、本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者及び取引者の間に広く認識されている引用商標に類似する商標であって、かつ、請求人の業務に係る商品又は役務と類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号に該当すること
(1)引用商標は、請求人のブランド「HERMES」の商品を表示する標章として、日本国内のみならず、世界的に周知著名なものである。
したがって、これと同一又は類似する本件商標を使用することは、需要者、取引者をして、本件商標が付された商品が、「HERMES」の業務に係る商品であると誤認させ、出所の混同を生じさせるおそれがある。
(2)引用商標の著名性
引用商標は、請求人のブランド「HERMES」のブランドネームであり、本件商標の登録出願前から現在に至るまで、請求人のブランド「HERMES」の商品を表示するものとして、需要者、取引者の間に広く認識されている商標であり、その著名性の高さから出所表示力が極めて強い。
(3)本件商標と引用商標の類似性及び混同のおそれ
本件商標と引用商標は、その称呼、外観及び観念において、同一又は類似する商標である。
そして、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品は同一又は類似であって、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品は、その需要者、取引者を共通にする。
加えて、請求人は、商品の包装に、いわゆる「オレンジボックス」と称されるオレンジ色の包装箱と、引用商標を含む「HERMES−PARIS」の文字や馬車と従者のロゴマーク(登録第6179161号商標等)が白色で記され、リボンと平行に沿うように両端に白色の点線が描かれた茶色の「ボルデュック」と呼ばれるリボンを、長年にわたって使用しているところ、これらの包装箱やリボン等は、エルメスを「象徴する」アイテムとして世界中で広く周知されており(甲31、甲32)、請求人の商品であることを強く印象付ける役割を担っている。
さらに、オレンジボックスは、商品の包装としてだけでなく、請求人により、イベントや店舗のインテリア、請求人の商品の宣伝広告にも継続的に使用されている上(一例として、甲33、甲34)、オレンジボックスのイラストを示された対象者の約45.1%が、その色彩のみから請求人のブランド「エルメス」であると識別した調査結果も出ており(甲35)、請求人のブランドを象徴するカラーとしてオレンジ色が特徴的であることは、需要者において周知になっているといえる。
この点、本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)は、本件商標を付したほぼすべての商品をオレンジ色の生地を用いて製作しており、さらに、その商品の多くには、「HAIRMES FRANCE」や犬の足跡を表すマークが白色で記され、両端に白色の点線が描かれた茶色のリボンでラッピングしているように見せるデザインが採用されている(甲36〜甲45)。
これは、請求人の「オレンジボックス」において使用されるオレンジ色や、請求人の「ボルデュック」のデザインを模倣したものであることが一見して明らかであるところ、そのような本件商標の使用態様は、本件商標と引用商標との類似性と相まって、本件商標が付された商品の出所について、請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると混同を生じさせるものである。
したがって、本件商標が、その指定商品において使用された場合、需要者及び取引者において、請求人の商品又は請求人と経済的あるいは組織的に関連を有する者の業務に係る商品と誤認し、その出所について混同を生じるおそれがある。
(4)小括
以上のとおり、本件商標は、国内外において周知著名な標章である引用商標と、称呼、外観及び観念の点で同一又は類似する商標であって、本件商標がその指定商品において使用された場合、需要者、取引者において、当該使用対象となった商品が、請求人の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同が生じる。
したがって、本件商標は、請求人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 商標法第4条第1項第19号に該当すること
(1)引用商標は、請求人のブランド「HERMES」の商品を表示する標章として、日本国内のみならず、世界的に周知著名なものである。本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であり、かつ、不正の目的をもって使用するものである。
(2)引用商標の日本国内又は外国における周知性
引用商標は、本件商標の登録出願前から現在に至るまで、請求人のブランド「HERMES」の商品を表示するものとして、需要者、取引者の間に広く認識されている商標である。
(3)本件商標と引用商標の類似性
本件商標と引用商標は、称呼、外観及び観念において、同一又は類似する商標である。
このため、本件商標に接した需要者、取引者が、請求人のブランド「HERMES」を想起する可能性は極めて高い。
(4)不正の目的
ア 本件商標権者は、自身のインターネット上のホームページにおいて、本件商標を使用した商品を自ら「Parody Beds」、「Parody Toys」と紹介しており(甲36)、本件商標権者の商品を取り扱うインターネット上の店舗においても、本件商標権者の商品は「超有名高級ブランドをパロディしたユニークなUSAおもちゃブランド」(甲38)、「有名ブランドのパロディスタイルや定番アロハスタイルなど、秀逸なデザインが大人気◎」(甲40)、「お部屋に飾るだけでも可愛いゴージャスなパロディのおもちゃ」(甲43)、「大人気のパロディTOYです」(甲41)、「このドッグディギンデザインズのブランドパロディおもちゃはインスタ映えも最高です」(甲45)と説明されている。
また、本件商標権者は、請求人以外にも、「CHANEL」、「GUCCI」といった著名なブランドを想起させるデザインの商品を多数販売している(甲36〜甲38、甲42、甲44)一方で、請求人が確認する限り、これら著名ブランドを想起させない完全に独自デザインの商品は一切販売していない。
したがって、本件商標権者は、「パロディ」をうたい、請求人を始めとする著名ブランドを想起させ、その著名性にフリーライドする商品のみを販売しており、引用商標の著名性を顧客誘引のための手段として利用していることが明らかである。
イ 加えて、本件商標が付されている本件商標権者の商品の大半は、請求人商品の包装箱(オレンジボックス)で使用されるオレンジ色と、同じく包装に用いられるリボン(ボルデュック)のデザインを模倣したものである。
本件商標権者は、請求人の引用商標、特徴的な色彩やデザインに酷似させることにより、引用商標に化体した信用、名声、顧客吸収力等にただ乗りすることを企図していることは明白である。
したがって、本件商標権者は、請求人の周知著名な引用商標と類似する本件商標を不正な目的をもって使用している。
(5)小結
以上のとおり、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であり、かつ、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 被請求人の主張
上記第3の請求人の主張に対して、被請求人は何ら答弁していない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求することについて利害関係を有することについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理する。
1 引用商標の周知著名性について
請求人の主張及び提出証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)請求人は、1837年にフランスにおいて馬具工房として創業され、引用商標に係る「HERMES」(エルメス)(「HERMES」の後半の「E」にアクサン記号が付されているものを含む。以下同じ。)のブランド名を用いて、バッグ、腕時計、装身具などの高級アクセサリー、香水及び衣料品のデザイン、製造、販売をしている(甲6、甲8)。
(2)請求人は、全世界45か国に300店以上の店舗を構えており、我が国では1960年代から輸入販売が開始され、全国各地(北海道、東京、愛知、大阪、広島、福岡など)に約30店の店舗がある(甲6、甲8,甲10)。
(3)我が国を含む世界各国において、長年にわたり、自己の取扱いに係る皮革製品、衣料品、時計、宝飾品その他の主にファッション関連の商品について引用商標を使用するとともに、引用商標をハウスマークとしても使用し、また、引用商標に係る商品には、犬用キャリーバッグ、犬用首輪、犬用ボウルなどのペット用品が含まれている(甲1〜甲3、甲6、甲8、甲11ほか)。
(4)雑誌やインターネット上の記事情報(「BOAO」、「AneCan」、「GOETHE」、「Them magazine」、「Precious.jp」、「VOGUE」)などにおいて、引用商標に係る商品(バッグ、香水、ブーツ、帽子、スカーフ、ネクタイ、ペンダント等)の紹介記事が継続的に掲載されている(甲12〜甲28)。
(5)小括
上記(1)ないし(4)によれば、引用商標に係るブランド「HERMES」(エルメス)は、創業から180年以上の歴史を有し、我が国でも50年以上の輸入販売実績がある高級アクセサリーや衣料品に係るファッション分野におけるブランド(取扱商品にはペット用品も含む。)であり、雑誌やインターネット記事などのメディアを通じて継続的に商品紹介記事も掲載されていることから、引用商標には、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人に係るブランドまたは請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認められる。
2 本件商標と引用商標の類否について
(1)本件商標について
本件商標は、「HAIRMES」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、辞書等に掲載された成語ではなく、特定の意味合いを有する語として一般に親しまれたものではないから、特定の意味を有しない造語と認識、理解できる。
なお、請求人は、本件商標をフランス語風に称呼すると「エルメス」の称呼が生じ、英語風に称呼すると「ヘアメス」の称呼が生じる旨を主張するが、一般的に特定の意味を有しない欧文字からなる造語にあっては、我が国において親しまれた外国語である英語読み風又はローマ字読み風に称呼されるから、本件商標は、フランス語の成語ではないことも相まって、英語風に「ヘアメス」と称呼されるのが自然である。
したがって、本件商標は、「ヘアメス」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。
(2)引用商標について
引用商標は、「HERMES」の文字を標準文字で表してなるところ、上記1(5)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人に係るブランドまたは請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されていたものであり、また、「HERMES」の語は、「(ギ神)ヘルメス」(「ジーニアス英和辞典 第5版」 大修館書店発行)の意味を有する語であることから、「エルメス」の称呼のほか、「ヘルメス」の称呼を生じる。
したがって、引用商標は、「エルメス」又は「ヘルメス」の称呼を生じ、「(ブランドとしての)HERMES(エルメス)」又は「(ギ神)ヘルメス」の観念が生じる。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標を比較すると、外観においては、需要者の目に留まりやすい語頭の「H」と語尾の「RMES」の文字を共通にすることから、近似した印象を与えるものであり、一定程度の類似性を有するものである。
また、称呼においては、本件商標の称呼「ヘアメス」と引用商標の「エルメス」の称呼については、語尾の「メス」の2音は共通するものの、語頭の2音「ヘア」及び「エル」の音の差異により、明瞭に聴別し得るものである。
そして、本件商標の称呼「ヘアメス」と引用商標の「ヘルメス」の称呼とは、語頭の「へ」と語尾の「メス」の2音は共通するものの、2音目の音「ア」及び「ル」の音の差異により、全体の語調、語感は異なるものとなるから、明瞭に聴別し得るものである。
さらに、観念においては、本件商標は特定の観念を生じないものの、引用商標からは、「(ブランドとしての)HERMES(エルメス)」または「(ギ神)ヘルメス」の観念が生じるから、相紛れるおそれはないものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観において、一定程度の類似性を有するとしても、称呼において、明瞭に聴別し得るものであり、観念において、相紛れるおそれはないものであるから、これらの外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(4)小括
したがって、本件商標と引用商標は非類似の商標である。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人に係るブランドまたは請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されていたとしても、上記2のとおり、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
そうすると、本件商標は、他人(請求人)の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標「HERMES」と同一又は類似する商標ではないから、その指定商品と引用商標に係る指定商品が同一又は類似する商品であるとしても、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第11号該当性について
上記2のとおり、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標の指定商品が、引用商標に係る指定商品及び指定役務と同一又は類似するとしても、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人に係るブランドまたは請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されていた。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、称呼において、明瞭に聴別し得るものであり、観念において、相紛れるおそれはないものであるから、両商標は、称呼及び観念は相違するものである。
しかしながら、外観において、需要者の目に留まりやすい語頭の「H」及び後半の「REMS」の4文字のつづりを引用商標と共通にするものであることから、本件商標と引用商標とは、近似した印象を与えるものであり、一定程度の類似性を有するものというべきである。
(3)引用商標の独創性について
引用商標は、「HERMES」の文字からなるところ、当該文字は、「(ギ神)ヘルメス」(前掲書)の意味を有するものであるから、その独創性が高いものとはいえない。
(4)商品の関連性及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品は、上記第1のとおり、第20類「ペット用ベッド,愛玩動物用枕,ペット用クッション」及び第28類「ペット用のおもちゃ」であるところ、引用商標に係る商品には、犬用キャリーバッグ、犬の首輪、犬用ボウルなどのペット用品も含まれており、本件商標の指定商品と引用商標に係る商品は、いずれもペット用の商品であるから、その関連性は高く、需要者を共通にするものである。
(5)本件商標の使用状況及びその他取引状況等について
ア 請求人は、オレンジ色で蓋部分に茶色の縁取りを有し、引用商標が付された箱を包装用箱として1960年代から使用していることがうかがえるところ(甲31、甲32)、2020年(令和2年)4月16日付けの調査機関のレポートによれば、30歳ないし59歳の男性及び女性で、世帯収入が1,000万円以上を対象者条件とする2,082人を対象とした調査によれば、上記包装用箱を使用しているファッションブランドとして約45%が請求人と回答している(甲35)。
また、請求人は、白い縫い目模様を両側に配した茶色のリボンを使用していることが認められる(甲31、甲34)。
イ 本件商標権者のウェブサイト(抜粋)(甲36、甲37)には、本件商標と白い縫い目を両側に配した茶色のリボンを配したデザインからなるオレンジ色のペット用ベッド・クッションおもちゃが掲載されており、これら商品の色及びデザインは、上記アの引用商標が付された包装用箱の色及びリボンを模したものと認識されるものというのが相当である。
また、「Sweet Candy」のウェブサイト(甲38)には、「Dog Diggin Designs」の表示の下、「超有名高級ブランドをパロディしたユニークなUSAおもちゃブランド」の記載とともに、上記イの本件商標権者のウェブサイトに掲載されている商品が販売され、同様に、その他ペット用品のウェブサイト(甲39〜甲45)においても、同じ商品が販売されている。
ウ 以上の状況を総合的に勘案すると、本件商標権者は、本件商標を登録出願するにあたり、引用商標が、請求人の業務に係る商品に使用して我が国の需要者の間に広く認識されていたことを承知の上で、引用商標の周知性へのただ乗り(いわゆるフリーライド)や希釈化(いわゆるダイリューション)を意図していたとみるべきである。
(6)出所の混同のおそれについて
上記(1)ないし(5)によれば、引用商標は、その独創性が高いとまではいえないものの、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人に係るブランドまたは請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認められる。
また、本件商標と引用商標とは一定程度の類似性を有し、本件商標の指定商品と引用商標が使用されているペット用の商品との関連性は高く、需要者を共通にするものである。
そして、商標法第4条第1項第15号は、周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものである(平成12年7月11日 最高裁平成10年(行ヒ)第85号)ところ、上記(5)のとおり、本件商標権者は、本件商標を登録出願するにあたり、引用商標の存在を承知の上で、それと近似した商標を登録出願したものであり、引用商標の周知性へのただ乗り(いわゆるフリーライド)や希釈化(いわゆるダイリューション)を意図していたとみるのが相当である。
そうすると、本件商標をその指定商品に使用する場合には、その商品が請求人の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあるといわざるを得ない。
(7)むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人に係るブランドまたは請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されていたとしても、上記2のとおり、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
また、請求人は、被請求人が不正の目的で本件商標を登録出願及び登録査定した旨を主張するのみであって、被請求人が不正の目的をもって、本件商標の登録出願を行ったことを客観的に証明し得る証拠の提出はない。
そうすると、本件商標は、引用商標の知名度や名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第19号に該当しないとしても、同項第15号に該当するものであり、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。

審判長 矢澤 一幸
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
審理終結日 2023-06-29 
結審通知日 2023-07-05 
審決日 2023-07-26 
出願番号 2019133625 
審決分類 T 1 11・ 25- Z (W2028)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 矢澤 一幸
特許庁審判官 小田 昌子
豊田 純一
登録日 2020-07-31 
登録番号 6275593 
商標の称呼 ヘアメス 
代理人 石田 晃士 
代理人 高松 薫 
代理人 柴田 真理子 
代理人 鈴岡 正 

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