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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W42
管理番号 1405948 
総通号数 25 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2024-01-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2022-08-24 
確定日 2023-12-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第6336006号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6336006号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成31年3月5日に登録出願、第42類「土木・建築物の設計,人材派遣による土木・建築物の設計,測量,建築物及び土木工事の設計,建築物及び土木工事の設計に関する助言」を指定役務として、令和2年9月18日に登録査定、同3年1月4日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第110号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
1 審判請求書における主張
(1)引用商標の著名性
ア オリコンの会社沿革
本件審判請求人(以下「請求人」という。)には次の沿革(概要)があり、そのハウスマークともいうべき「ORICON(オリコン)」(以下「引用商標」という。)は、請求人らによる長年の使用とその実績によって日本全国で認知された著名商標である。
1967年 株式会社オリジナルコンフィデンス設立(代表:小池聰行)、週刊詰「総合芸能市場調査」創刊(甲2)
1968年 シングルランキング発表開始
2006年 オリコン顧客満足度ランキング発表開始
2008年 “本”ランキング発表開始
2009年 法人向けデータ提供サービス「ORICON Biz online」配信開始
2013年 芸能・エンタメニュースに特化した公式YouTubeチャンネル「ORICON NEWS」を開設
2016年 デジタルアルバムランキング発表開始
2017年 デジタルシングル(楽曲)ランキング発表開始、Webサイト「ORICON STYLE」を「ORICON NEWS」に名称変更
2018年 合算シングルランキング、合算アルバムランキング、ストリーミングランキング発表開始
2019年 オリコン顧客満足度ランキングの調査データの学術研究分野向けの提供を開始
2020年 Webサイト「ORICON NEWS」が月間3億PVを達成、公式YouTubeチャンネル「ORICON NEWS」が登録者数100万人を突破
イ 雑誌媒体(ORICON WEEKLY)
請求人は、「コンフィデンス」「オリジナルコンフィデンス」「ORICONBiZ」「ORIGINAL CONFIDENCE」「コンフィデンス」と誌名を変更しながら、主に業界(芸能事務所やレコード会社等)向けに音楽情報・エンタテイメント情報を提供してきた。この最大販売部数は約1万部である。
その一方で、一般向けには1979年8月に「オリコン全国ヒット速報」(週刊)を創刊し、2016年に休刊するまで誌名変更はありつつも、3年間音楽やエンタテイメントを伝える週刊雑誌を発行してきた。
これらの雑誌の誌面左上には、「オリコン」、その下にそれよりも大きく「全国ヒット速報」と表示されており、誌面の大半を使用して、シングル及びアルバムのヒット曲1位から100位までをランキング表示している。
これらのランキングにおいては、全国のレコード店からのレコード売上枚数の報告に基づいてランキングを作成しており、全国的に調査されている(甲20)。
したがって、限りなく実数に近い客観的な売上枚数(推定枚数)に基づくランキングであり(甲50)、音楽ランキング(ヒットチャート)のスタンダート(標準)となった。例えば、著名なアーティストを報道する場合などに、ヒット曲が「○○万枚」の売上や「ランキング○位」と紹介する新聞記事等にはオリコンのデータが使用されることが非常に多い(甲51〜55)。
一般向けの週刊誌である「ORICON WEEKLY」の販売部数は、1990年2月時点18.5万部(甲63)、1991年2月時点18万部(甲64)、1992年版18万部(甲65)及び1993年版18万部(甲66)である。
また、2006年に発表を開始した「オリコン顧客満足度ランキング」は、当初「エステティックサロン」「人材派遣会社」「英会話スクール」「結婚情報サービス」の4つのランキングからスタートしたが(甲73、74)、本件商標登録の出願の時点(2019年3月)で、141のランキングが発表されており、本件商標の登録査定の時点(2020年9月)でも、約170以上のランキングが発表されている(甲75)。この「オリコン顧客満足度ランキング」を発表することにより、その対象が社会生活全般に広がって、情報提供会社・ブランドとして高い知名度と信頼を確立した(甲78)。
ウ 広告露出
「オリコン顧客満足度ランキング」において、ランキング第1位を獲得した企業はその商品やサービスの広告に「オリコン顧客満足度ランキング(調査)第1位」であることを表示している(甲81)。その数は、請求人が確認できただけで、2016年計596件、2017年計461件、2018年計432件、2019年(3月迄)計461件となっている(甲82)。
さらに、ランキング第1位を獲得した企業は、自社のホームページ上でもその旨を積極的に表示しており、ランキング上位(特に第1位)に選出された企業は、それを積極的に広告媒体(パンフレット、新聞、チラシ、TVCM等)に表示するため、結果的に「オリコン」の社名(略称)やブランドの広告媒体への露出も多くあり、消費者・需要者が「オリコン」の名を頻繁に見聞きすることになっている。
なお、ランキング結果を広告媒体に使用する企業は、請求人のグループ会社であり、「オリコン顧客満足度」の事業会社である「株式会社oriconME」と商標利用契約を結びロゴマーク等を使用している(甲83)。したがって、「オリコン」の社名(略称)やブランドが含まれるランキング結果の広告宣伝使用については、商標権のライセンス契約が存在している。
エ マスコミ露出
新聞では「オリコン」の文字の記載された記事が頻繁に見受けられる。例えば、“本”ランキングに関して、本件商標登録の出願日(2019年3月)前の2018年のオリコン年間本ランキングについての記事が多数掲載されている(甲84)。
2018年9月に引退した元歌手や現役歌手についてもオリコンでのランキング情報を多数の新聞が記事にしている(甲85、甲86)。
また、テレビ番組でも、本件商標登録の出願日である2019年3月5日にも、朝の情報番組では「オリコン」の最新音楽ランキング情報が報道されており(甲87)、夜のバラエティ一番組では過去の「オリコン」の音楽ランキング情報等が紹介されている(甲88)。さらに、本件商標登録の登録査定がされた2020年9月18日にも、ウォーターサーバーのテレビショッピングやトーク番組、歌番組で「オリコン」の文字が表示されている(甲89)。
なお、新聞には、一般人を対象としたものだけではなく、業界紙といわれる特定の業界・分野に特化した専門の新聞でも頻繁に取り上げられることが多い。例えば、住宅産業新聞(甲91の22)、保険毎日新聞(甲91の24)、日刊ドラッグストア(甲91の28)、リフォーム産業新聞(甲91の30)、流通ジャーナル(甲91の31)、日刊油業報知新聞(甲91の32)、燃料油脂新聞(甲91の33)、電化新聞(甲91の34)、電材流通新聞(甲91の36)、日刊自動車新聞(甲91の37)、教育家庭新聞(甲91の43)など、極めて多岐にわたっている。
したがって、オリコンの提供するランキングは様々な業界・分野で注目されているランキングであるといえる。
さらに、創業者「小池聰行」は、たびたびテレビやラジオ等のマスコミに登場し、引用商標の知名度向上に多大な貢献をしている。同氏は、2001年1月20日に死去したが、スポーツ新聞等に非常に大きく報道された(甲97の1〜6)。
オ 小括
以上のことから、引用商標は審判請求人が2016年まで出版していた音楽・エンタテイメント系出版物の雑誌名として著名であり、それは紙媒体から月間3億PVを達成したWebサイト「ORICON NEWS」及び登録者数100万人を突破した公式YouTubeチャンネルになっても引き継がれ、本件商標登録の出願時及び登録時においてその著名性を維持している。また、それのみならず、昨今の本ランキングや顧客満足度ランキングなどを通して、社会生活全般に関する情報提供サービス名として、全国的に広く知られるに至ったものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 当該商標と他人の表示との類似性の程度
本件商標を構成する「ORICON HD」と、引用商標とは「HD」の有無の差異があるだけである。「HD」はアルファベット2文字であるので、識別力の無い付記的部分と認識されるか、或いは、近年では持株会社を意味する「Holdings」の略称として認識されるので、両商標・表示間の類似性の程度は極めて高いものである。
イ 他人の表示の周知著名性及び独創性の程度
引用商標は、その正確なレコードの売上枚数(=データ)に裏付けされた音楽ランキング情報として業界標準というべきものとなり、確固たる地位を占めるに至った。また、昨今では、音楽・エンタテインメント分野で培ったデータ収集・分析の技術力やノウハウを日本で流通しているサービスや商品にまで広げ、本ランキングや顧客満足度ランキングなどを通して、社会生活全般に関する情報提供サービス名として全国的に広く知られ、ハウスマークともいうべきブランドに成長した。
また、引用商標は、創業者である小池聰行が命名した「オリジナルコンフィデンス」を略称としたものであり(甲104)、造語である。これに対して、広辞苑には同じ発音を持つ語として「織紺」(盲縞の別称)が掲載されているが、世間一般で用いられる語とは言い難い。よって、引用商標からは、世間一般で審判請求人以外の商品やサービスを想起させることは考え難く、それゆえに独創性の高い商標である。
したがって、引用商標は、審判請求人が2016年まで出版していた音楽・エンタテイメント系出版物の雑誌名及びそれを引き継いだウェブ媒体として著名であるとともに、昨今の本ランキングや顧客満足度ランキングなどを通して、社会生活全般に関する情報提供サービス名として、全国的に広く知られるに至った周知著名商標であり、造語から成る独創性の高い商標でもある。
ウ 本件商標の指定役務と引用商標に係る役務との関連性等
本件商標の指定役務は「土木・建築物の設計,人材派遣による土木・建築物の設計,測量,建築物及び土木工事の設計,建築物及び土木工事の設計に関する助言」(以下「本件指定役務」という。)である。一方、引用商標の役務は、社会生活全般に関する情報提供サービスであり、その中心となる「オリコン顧客満足度ランキング」では、毎年住宅系ランキングを発表している。この住宅系ランキングには、本件商標に係る指定役務「建築物の設計」に関連する項目、「設計担当者の対応」や「デザイン」などがある(甲105の1〜6)。そして、それに応じた「設計担当者の対応満足度ランキング」(甲106の1)や「デザイン満足度ランキング」(甲106の2)が発表されている。こうしたランキング情報に基づいて、建築物の設計やデザインを行う住宅メーカーは積極的な広告宣伝活動を行っており、本件商標の指定役務と引用商標の役務との間には、強い関連性がうかがえる。
エ 取引者及び需要者の共通性その他取引の実情について
本件商標の指定役務の取引者及び需要者に一般消費者が含まれるとした場合に、「顧客満足度ランキング」を見てランキング上位のサービス(会社)に建築物の設計を依頼する場合などが当然に想定されるので、その場合は引用商標の取引者及び需要者と一致することになる。また、本件商標の指定役務の取引者及び需要者が一般消費者ではなく建築や土木の関係者(専門業者)である場合でも、その専門業者が過去(学生時代)又は現在(就職後)において音楽やエンタテインメント情報或いは各種ランキング情報に全く触れていないとはいえない。引用商標は、音楽やエンタテインメント情報を発信するが故に、その対象が特定の範囲に限定されることなく、老若男女の区別なく、幅広く全国民に提供されるものである。換言すれば、最も身近な娯楽である音楽やエンタテインメントに関する情報に接しない人はいない。そうとすると、本件商標の取引者及び需要者が専門業者であったとしても、引用商標の取引者及び需要者と一致せざるを得ない。したがって、本件商標と引用商標との間には、取引者及び需要者の共通性がある。
オ 結語
以上のように、本件商標は、その出願時及び登録時において、その指定役務が他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品・役務化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る役務であると誤信されるおそれ(広義の混同を生ずるおそれ)がある商標といわざるを得ない。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。
1 引用商標の周知著名性について
(1)「音楽・エンタテイメント情報の提供」という業務分野において
請求人が提出した109の証拠のうち85もの証拠が、音楽のランキングやチャートの情報の提供業務に関わる証拠であるから、「音楽・エンタテイメント情報の提供」という業務分野、とりわけその中の「音楽のランキング情報やチャート情報の提供」という限られた業務分野においては、一定程度以上の認知度を有することを認めることができる。
(2)顧客満足度ランキングという業務分野において
請求人は、「音楽・エンタテイメント情報の提供」という分野以外の業務分野、具体的には顧客満足度や本に関するランキングという分野に近年進出をしていること自体は認めることができるものの、当該進出分野の業務の業務数や業務量は、過去から現在に至るまでに長年蓄積されてきた音楽・エンタテイメント分野のランキングやチャートに関わる情報の提供の業務数や業務量とは、比較にならないほど少ないと考えるのが妥当である。また、請求人から提示された引用商標が、出願時に、顧客満足度や本に関するランキングという分野において、その取引者、需要者の間、さらには、当該分野を超える取引者、需要者の間にまで広く認識されていたことを裏付ける量的規模を示すような証拠はない。
なお、「顧客満足度ランキング」の類の役務は、ランキングにより評価される側の業務やその業務主体である企業とは一線を画すべき業務である。すなわち、「顧客満足度ランキング」などの業務は、その性質上、ランキング評価対象となる業務自体と誤認・混同されるはずもなく、また、誤認・混同されるようなことはあってはならない。
請求人は、住宅系ランキングに関する証拠(甲105)を提出し、本件指定役務に関する項目についてもランキングを行っている旨を主張しているが、このことは、請求人が「建築物の設計」に関する顧客満足度調査及びランキングを行っている以上、請求人が「建築物の設計」という業務を行っていると誤認・混同される可能性はないことを自ら主張していることと同じである。
したがって、請求人から提示された引用商標が、本件指定役務と誤認・混同のおそれが生ずる程度にまで周知・著名に至っているとは明らかにいえない。
2 業務(役務)の混同について
請求人の実際の業務に係る役務「音楽・エンタテイメント情報の提供」と本件指定役務とは、役務間に全く関連性がなく、取引者及び需要者も共通しないことが明らかである。
なお、請求人は、本件審判請求書において、「建築や土木の関係者(専門業者)が過去(学生時代)又は現在(就職後)において音楽やエンタテインメント情報或いは各種ランキング情報に全く触れていないとは言えない」といった理由を根拠として、取引者及び需要者の共通性があると主張しているが、例えば、レストランで食事をした経験がある人が、建築物の設計を依頼することもあるし、病院で診察を受けることもあるが、請求人の論理によれば、「飲食物の提供」という役務も、「建築物の設計」という役務も、「医業」という役務も、全て取引者及び需要者に共通性があることになってしまい、請求人の論理はあまりに飛躍的であるといわざるを得ない。
したがって、本件指定役務と、請求人が行う業務に係る役務「音楽・エンタテイメント情報の提供」とは、役務提供の目的において大きく異なるばかりでなく、その取引者及び需要者の範囲も全く異なり、同一の事業者によって提供される役務とはいえないことから、両役務は混同を生じるおそれがない。
また、請求人が行う業務「顧客満足度調査」、さらには、住宅も一部対象にするランキング情報提供についても、本件商標の指定役務である「土木・建築物の設計等」とは、役務間に全く関連性がなく、取引者及び需要者も共通しないことが明らかである。
なお、請求人は、「顧客度満足度ランキング」を見てランキング上位のサービス(会社)に建築物の設計を依頼する場合などが当然に想定される」といった理由を根拠として、取引者及び需要者の共通性があると主張している。しかしながら、顧客満足度調査は、客観性・公平性が必要であり、調査される側の業務を行う企業とは一線を画す第三者的立場から行う業務であることから、「建築物の設計に関する顧客満足度ランキング」を見た消費者は、当該「建築物の設計に関する顧客満足度ランキング」を行っている請求人が、ランキングの対象となっている「土木・建築物の設計等」を行っていると誤認するはずがない。また、音楽・エンタテイメント分野のランキング情報を提供する会社として知られている請求人の業務と被請求人の業務が混同するはずもない。
したがって、本件指定役務と請求人が行う業務に係る役務「顧客満足度調査」や「ランキング評価」とは、その調査や評価の対象となる役務分野に関係なく、役務提供の目的において両者は大きく異なるばかりでなく、同一の事業者によって提供される役務であるはずがないことから、両役務は混同を生じるおそれがないことが明白である。
3 商標の類似性について
(1)外観について
本件商標は、惑星の図形の下に「ORICON HD」の欧文字を配した構成からなる。一方、請求人から提示された引用商標は、外観上、明確に区別できるものである。
もし仮に、本件商標を、図形部分と文字部分とで分離観察した場合であっても、本件商標の文字部分は「ORICON HD」であり、「ORICON」及び「HD」の文字の間に半角程度のスペースはあるものの、横一列にまとまりよく表されており、係る構成においては、殊更、「HD」の文字部分を省略し、構成中の「ORICON」の文字部分のみをもって取引に当たるとは言い難く、むしろ構成全体をもって一体不可分のものと認識・把握されるとみるのが自然であり、他に、構成中の「ORICON」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特別の事情はない。
よって、本件商標と、請求人が提示する引用商標「オリコン(ORICON)」とは、「ORICON」の文字を共通にするとしても、「HD」の文字の有無、図形の有無等において明らかな相違があるから、外観上、明確に区別できるものである。
(2)称呼について
本件商標の文字部分は、その構成文字全体に相応して、「オリコンエイチディ」の称呼のみが生じる。
また、本件商標の図形部分からは、「ワクセイ」「ドセイ」等の称呼が生じる。
一方、請求人から提示された引用商標「オリコン(ORICON)」からは、「オリコン」の称呼が生じる。
これらを対比すると、本件商標の文字部分から生じる「オリコンエイチディ」の称呼と、請求人から提示された引用商標から生じる「オリコン」の称呼とは、「エイチディ」の音の有無に差異を有するものであり、両称呼を全体として称呼した場合には、その語調、語感が相違したものとなり、称呼において紛れるおそれはない。また、本件商標の図形部分から生じる「ワクセイ」及び「ドセイ」と、請求人から提示された引用商標から生じる「オリコン」の称呼とは、紛れるおそれがないのはいうまでもない。
(3)観念について
本件商標の文字部分からは、特定の観念が生じず、本件商標の図形部分からは、「惑星」「土星」等の観念が生じる。
一方、請求人から提示された引用商標「オリコン(ORICON)」は、辞書等に載録のないものであり、特定の意味合いを有することのない造語であるため、特定の観念を生じない。
これらを対比すると、本件商標からは「惑星」「土星」等の観念が生じる一方で、請求人から提示された引用商標は特定の観念が生じないことから、両商標は、観念においても紛れることはない。
以上を総合すると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼、及び観念において相紛れるおそれはなく、類似するものではないから、その外観、称呼、及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して考慮すれば、両商標は非類似の商標である。
4 まとめ
引用商標と本件商標とは非類似の関係にあるので出所の混同は生ずるおそれはなく、また、請求人の業務に係る「音楽情報の提供」という役務分野においてある程度知られていたと仮定したとしても、「音楽・エンタテイメント情報の提供」という役務分野を超えて、本件商指定役務に係る役務分野の取引者、需要者の間にまで広く認識されていたとは言い得ない。
よって、本件商標は、これを本件指定役務について使用しても、当該指定役務が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれのない商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではないことが明らかである。

第4 当審の判断
1 利害関係について
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがないものであり、請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認められるから、本案に入って審理する。
2 引用商標の周知著名性について
(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次のとおりである。
ア 請求人は、1967年に株式会社オリジナルコンフィデンスを設立し、「総合芸能市場調査」を創刊(甲2)以後、「コンフィデンス」「オリジナルコンフィデンス」「ORICON BiZ」「ORIGINAL CONFIDENCE」「コンフィデンス」と誌名を変更しながら、主に業界(芸能事務所やレコード会社など)向けに音楽情報・エンタテイメント情報を提供しており、この最大販売部数は約1万部であるとされる(主張)。
イ 一般向けには1979年8月に「オリコン全国ヒット速報」(週刊)を創刊し、2016年に休刊するまで誌名変更はありつつも、37年間音楽やエンタテイメントを伝える週刊雑誌を発行してきたとされる(主張)。
ウ ヒット曲の売上やランキングを紹介する新聞記事等には、オリコンの調査に基づくランキング等であることを表す際、例えば「オリコンチャート」「オリコン調べ」のように使用されている(主張、甲51〜55)。
エ 有名な元歌手や現役歌手についてのランキング情報について、多数の新聞で「オリコン年間ランキング」等のように、「オリコン」の文字が使用されている(甲85、甲86)。
オ 2016年〜2019年にオリコン年間本ランキングに関する新聞記事が掲載されている(甲84)。
カ 請求人は、2003年及び2007年に患者満足度に基づいた医療ランキング本「患者が決めた!いい病院」を発刊(甲72)した。
キ 請求人は、2006年にオリコン顧客満足度ランキングの発表を開始し、当初「エステティックサロン」、「人材派遣会社」、「英会話スクール」及び「結婚情報サービス」の4つのランキングからスタートし(甲73、74)、本件商標の出願の時点(2019年3月)では、141のランキングが発表され、本件商標の登録査定の時点(2020年9月)では、約170以上のランキングが発表されたとされる(主張、甲75)。
ク テレビ番組でもたびたび「オリコン顧客満足度ランキング」が紹介され、雑誌や新聞などにも「オリコン」の文字が使用されている(甲91の7〜48)。
ケ 「オリコン顧客満足度ランキング」では、2015年〜2022年に住宅系ランキングを発表し(甲105)、設計担当者の対応やデザインに関する項目として「設計担当者の対応満足度ランキング」(甲106の1)や「デザイン満足度ランキング」(甲106の2)が発表されている。
(2)上記事実によれば、請求人は、1967年頃より主に業界向けの音楽又は芸能情報の提供を開始し、引用商標は、音楽又は芸能向け出版物の雑誌タイトルの一部に使用され、また、音楽等の各種ランキングにおいては、オリコンの調査に基づくランキング等であることを表す際、例えば「オリコンチャート」「オリコン調べ」のように多くのメディアによって紹介、宣伝されるなどして、その取り扱いに係る役務である「音楽又は芸能情報の提供」(以下「請求人役務1」という。)を表示するものとして、本件商標の登録出願前より、音楽又は芸能関係の我が国の取引者、需要者の間において、ある程度知られていたものと推認することができる。
(3)一方、請求人は、2016年頃より「オリコン年間本ランキング」と称して、本のランキングを発表しており、また、2006年よりオリコン顧客満足度ランキングの発表を開始し、「エステティックサロン」、「人材派遣会社」、「英会話スクール」及び「結婚情報サービス」の4つのランキングからスタートし、2015年には、住宅関連についての顧客満足度調査を実施している(以下、「本のランキング」及び「各種の顧客満足度調査」に係る役務を「請求人役務2」という。なお、「請求人役務1」と「請求人役務2」をまとめていう場合は、単に「請求人役務」という場合がある。)。
しかしながら、請求人役務2における引用商標に係る広告の規模、範囲等は不明であり、また、市場シェア、売り上げ等を示す客観的な証拠の提出はないことから、請求人役務2における引用商標の使用事実に基づいて、その周知性の程度を推し量ることはできない。
したがって、請求人提出の証拠によっては、引用商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人役務2を表示するものとして、我が国又は外国の需要者において、広く知られるに至ったものと認めることができない。
3 本件商標と引用商標の類似性の程度について
本件商標は、別掲のとおり、土星と思しき図形とその下に「ORICON HD」の欧文字を配した構成からなるところ、外観上、図形部分と文字部分とは分離して看取されるうえに、称呼及び観念上のつながりもあるとはいえないから、それぞれが独立して、取引者、需要者に対し役務の出所識別標識として機能を果たし得るものである。
そして、当該文字部分に着目すると、「ORICON」及び「HD」の文字の間に半角程度のスペースはあるものの、横一列にまとまりよく表されており、係る構成においては、殊更、「HD」の文字部分を省略し、構成中の「ORICON」の文字部分のみをもって取引に当たるとは言い難く、むしろ、構成全体をもって一体不可分のものと認識し、把握されるとみるのが自然であり、他に、構成中の「ORICON」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき格別の事情を見いだせない。
してみれば、本件商標は、その構成文字全体に相応して、「オリコンエッチデイ」の称呼のみを生ずるものと判断するのが相当である。
さらに、観念については、本件商標の構成文字全体としては、辞書等に載録のないものであり、特定の意味合いを有することのない一種の造語として認識されるとみるのが相当であるから、特定の観念を生じないものである。
一方、引用商標は、「オリコン」又は「ORICON」の文字からなるものであるから、これよりは、「オリコン」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
してみると、本件商標と引用商標とは、「ORICON」の文字を共通にするとしても、「HD」の文字の有無、図形の有無、欧文字と片仮名の相違等において明らかな差異があるから、外観上、明確に区別できるものである。
また、本件商標から生じる「オリコンエッチデイ」の称呼と引用商標から生じる「オリコン」の称呼とは、「エッチデイ」の音の有無に差異を有するものであり、両称呼を全体として称呼した場合には、その語調、語感が相違したもとなり、称呼において紛れるおそれはない。
さらに、本件商標及び引用商標は、共に特定の観念を生じないものであり、観念において比較することができない。
以上を総合すると、本件商標と引用商標は、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれはなく、類似するものではないから、その外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して考慮すれば、両商標は非類似の商標というべきである。
4 本件指定役務と請求人役務との関連性について
本件指定役務は、建築物の設計等に係る役務であり、主に建築士又は建築デザイナー等によって提供されるサービスであるのに対し、請求人役務は、音楽又は芸能等に関する情報の提供や各種の顧客満足度調査を主とするものである。
よって、本件指定役務と請求人役務とは、役務の内容及び目的において大きく異なるばかりでなく、前者は、建築の設計等を求める需要者であるのに対し、後者は、音楽又は芸能等に関する情報や各種の顧客満足度等に関する情報を求める需要者であるから、その需要者の範囲も異なり、また、同一の事業者によって提供される役務とはいえないものであるから、両者の関連性は低い。
なお、請求人は、「住宅関連の顧客満足度調査は、本件指定役務に含まれる「建築物の設計」に係る建設担当者の対応やデザインに関するランキングが発表されており、本件指定役務を提供する住宅メーカーはこうしたランキングに基づき積極的な広告宣伝を行っていることから、本件指定役務と強い関連性がある」旨主張する。
しかしながら、請求人役務2に住宅関連の顧客満足度調査が含まれる場合があるとはいえ、上記のとおり、両者の役務の内容、目的、事業者等が異なることに加えて、第三者的な立場から顧客満足度調査を実施する当該役務の性質において、当該調査をする側とされる側とでは、むしろ、相反関係にあり、その性質が大きく異なるというべきであるから、住宅メーカー等が当該調査結果に基づいて積極的に広告宣伝を行っているところで、本件指定役務と強い関連性があるとはいえない。
5 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記2(2)及び(3)のとおり、引用商標は、我が国における請求人役務1の分野の取引者、需要者にある程度知られていたと推認できるとはいえ、請求人役務2に係る役務を通じて社会全般に関する情報提供を表示するに至るまでに、広く認識されているとすることはできないから、引用商標は、請求人役務1の取引者、需要者の範囲を超えて、我が国又は外国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
また、本件商標と引用商標とは、上記3のとおり、類似するところのない別異のものである。
さらに、本件商標の指定役務と請求人役務とは、上記4のとおり、役務の内容、目的及び性質や事業者等を異にするばかりでなく、その需要者をも異にするものであって、その関連性は低いものである。
してみれば、本件商標は、これをその指定役務について使用しても、その需要者をして、当該役務が請求人又はこれと何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれのある商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲

別掲(本件商標 色彩については原本参照)


(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。
審理終結日 2023-10-20 
結審通知日 2023-10-24 
審決日 2023-11-09 
出願番号 2019033092 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (W42)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 冨澤 武志
特許庁審判官 大橋 良成
小林 裕子
登録日 2021-01-04 
登録番号 6336006 
商標の称呼 オリコンエッチデイ、オリコンエイチデイ、オリコン 
代理人 田中 佑佳 
代理人 井上 美和子 
代理人 岩田 敏 
代理人 渡邊 薫 
代理人 松中 真由美 

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