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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W41
管理番号 1403897 
総通号数 23 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-12-29 
確定日 2023-10-26 
異議申立件数
事件の表示 登録第6630608号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6630608号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6630608号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和3年10月14日に登録出願、第41類「知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),電子出版物の提供,各種講習会の企画・運営・開催」を含む第35類、第37類、第39類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として、同4年10月12日に登録査定され、同月21日に設定登録されたものである。

第2 引用商標等
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりである(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)。
1 申立人が「フィットネスに関する知識の教授,フィットネスに関するセミナーの企画・運営又は開催」などについて使用し、日本及び世界各国における需要者の間に広く認識されているとするもの
(1)登録第5742766号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 別掲2のとおり
指定商品及び指定役務 第28類、第41類及び第44類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成26年6月11日
設定登録日 平成27年2月20日
(2)登録第5284268号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 別掲2のとおり
指定役務 第41類「ヘルスクラブ及びフィットネスクラブの提供」
登録出願日 平成21年6月25日
設定登録日 平成21年11月27日
なお、引用商標1及び引用商標2に係る商標権は現に有効に存続している。

2 申立人の商標として及び同人の略称として、日本又は世界各国において周知・著名であるとするもの
(1)「Anytime Fitness」の欧文字からなる商標又は標章(以下「引用商標3」という。)
(2)「anytime」の欧文字からなる商標又は標章(以下「引用商標4」という。)
(3)「エニタイム」の片仮名からなる商標又は標章(以下「引用商標5」という。)

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標はその指定役務中第41類「フィットネスに関する知識の教授,フィットネスに関するセミナーの企画・運営又は開催,スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),フィットネスに関する電子出版物の提供,フィットネスに関する各種講習会の企画・運営・開催」(以下「申立役務」という。)について、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第35号証(枝番号を含む。なお、以下、証拠については、枝番号を含めて「甲1」のように記載する。)を提出した。
1 申立人の商標(引用商標1、引用商標2)及び名称の略称「Anytime Fitness」の日本及び世界各国における著名性
(1)申立人(商号 エニイタイム フィットネス エルエルシー(英語 Anytime Fitness LLC))は、米国ミネソタ州に本社を置き24時間営業のフィットネスクラブのチェーンを世界中で展開するグローバル企業である(甲3)。申立人の創業者であるチャック・ラニオン氏とデイヴ・モーテンセン氏は、1990年代にフィットネスクラブ事業を共同で購入し、運営していた(甲3)。創業者らは、大手フィットネスクラブの長年の利用者を対象とした聞き取り調査を行い、その調査の結果、利用者たちが、昼夜を問わずいつでも利用でき、手頃な価格で、威圧感がなく親しみやすい環境を備えたジムを必要としていることに気付いた(甲3)。
創業者らは、このような利用者のニーズに着目し、2002年にミネソタ州において申立人企業を設立し(甲3、甲4)、同年にミネソタ州ケンブリッジに第1号店を開店した(甲5)。その後、申立人は米国内外においてそのフィットネスクラブ事業を急速かつ継続的に拡大し、本件出願の出願前である2021年7月7日の時点で、30以上の国・地域において4800店以上を展開するまでに成長した(甲6)。これらの国・地域は米国、カナダ、ケイマン諸島、オーストラリア、バーレーンなどであり(甲7)、申立人に係る店舗は全六大陸に存在している。申立人に係る店舗の会員の数は、本件出願の出願前である2021年7月7日の時点で、全世界で420万人に達していた(甲6)。この間、申立人は、2013年に全世界で6億3400万米ドル(当時の為替レート(甲8)で約618億7567万円)の収益(前年比1億5000万米ドル(約146億3936万円)増)を記録しているところ、過去1年間の収益の伸びにおいて全フィットネスクラブ事業者の間で第2位にランクし、過去5年間の「収益成長率」の点では第3位にランクしている(甲9)。
申立人は、日本において、株式会社Fast Fitness Japan(以下「FFJ」という。)とフランチャイズ契約を締結し、2010年に東京都調布市に第1号店を開店した(甲10)。2010年当時、日本のフィットネス業界においては、総合型スポーツクラブ、女性特化サーキットトレーニングジム、ホットヨガ/ピラティス教室といった女性や高齢者向けの業態が主流であった(甲11)。一方、20〜40代といった働き盛りの比較的若い男性を主な対象顧客層とした業態は存在していなかった(甲12)。このような状況の下、FFJが、この顧客層を主な対象とした24時間営業の業態という前例のない業態を展開したところ、業界のプロから「無茶な業態(である)」「失敗する」といった否定的な意見が多く出た(甲12)。それにもかかわらず、FFJは、その後、日本国内において、集中的な宣伝広告を行い、急速に店舗数を増やし、多くの会員を獲得した。会員数は、本件出願の出願日前の2021年7月に60万人を突破した(甲10)。店舗数は、同じく2021年3月29日の時点で900に達し(甲13)、本件商標の登録査定前の2022年3月31日に1000を超え(甲10)、その後も増え続けている。店舗は、東京、大阪、愛知といった大都市圏だけでなく、他の全都道府県に存在している(甲14)。
ここで、申立人に係る店舗は所謂「24時間ジム」(甲15)の業態をとっているところ、本件商標の登録査定前の2022年8月の時点で、日本国内には約2500の「24時間ジム」店舗が存在していた(甲15)。このうち、申立人に係る店舗は半数近い1030店舗を占めており、「24時間ジム」の中で圧倒的な店舗数を誇っていた。この事実は、申立人が日本におけるジムの「空白地帯」(甲11)に「24時間ジム」という画期的な業態を導入した先駆者であり(甲12)、「24時間ジム」業界において確固たる地位を確立していることの証左に他ならない。
いずれの店舗においても、別掲2のとおりの商標(これと色彩のみにおいて異なる商標など社会通念上同一の商標を含む。以下同じ。以下「別掲商標」という。)は、内装のみならず外装にも付して目立つ態様で使用されている(甲16)。この事実は、後述する証拠(甲24〜甲27)に含まれている画像の一部に表れる店舗の内装・外装からも確認できる。そのため、別掲商標の使用は、店舗の利用者に限らず、単にその前を通過するだけの歩行者等の目につき記憶されやすいため、店舗数の多さも相まって、周知・著名性の獲得に大きく寄与しているとえる。
FFJは、会員である保護者を持つ高校生が無料で申立人に係る店舗を利用できる制度を設けているところ、2022年5月の時点で、全国1万人の高校生がこの制度を利用していた(甲17)。この制度の利用者を全国10万人に増やすための試みとして、2022年6月、人気芸人と人気お笑いコンビをこの制度のアンバサダーに就任させ、当該人気芸人が立ち上げたパーソナルトレーニングジムと業務提携して若年層を支援するといった取り組みを開始した(甲17)。この業務提携はメディア各社に取り上げられ大きく注目された(甲18)。
また、FFJは、申立人に係るフィットネスクラブ事業を行う中で、清掃活動、寄付活動、体験イベント等を開催し、社員をスポーツ大会に参加させるといった種々の活動を継続的に行ってきている(甲19)。このような活動の場においても、別掲商標が参加者の被服や横断幕等の物品に付されていることが確認できるため(甲19)、申立人に係るフィットネスクラブ事業を広告宣伝する結果となっていることは明らかである。
さらに、申立人は、日本の需要者向けに、2017年4月21日以降、動画配信サイトYouTubeに動画を掲載してフィットネスに関する情報を発信しているところ、申立人のYouTubeチャンネルにおいても、別掲商標を使用している(甲20)。この他、Instagram、Facebook等の各種SNSも利用して情報を発信している(甲20)。
このように広範囲で広告宣伝・情報発信を継続した甲斐もあり、日本での売上は、2021年3月期には111億円、2022年3月期には130億円を記録した(甲21)。
以上の各事実から、申立人が、既に20年以上、その名称の略称「Anytime Fitness」と同一のつづりの文字を含む別掲商標を、日本を含む全世界に渡る広範囲の地域において使用してきたこと、及び日本全国で広範囲に相当な営業規模を有していることが確認できる。
(2)商標「ANYTIME FITNESS」に係る第三者名義の商標登録出願に対し、本件出願の出願前の2021年8月30日を起案日とする拒絶理由通知書(甲22)において、商標「ANYTIME FITNESS」が申立人の「著名な略称」であり、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるとの判断が示されている。上記(1)に示すような各種の使用実績によって商標「ANYTIME FITNESS」が著名性を獲得し、その結果として、この拒絶理由通知書が発せられたことは明らかである。そして、この拒絶理由通知書に対しては、何ら応答書類が提出されておらず、当該出願は既に拒絶が確定している。この事実から、当該出願の出願人が上記判断を妥当な判断として受け入れ、商標権の取得を潔く断念したことが推認される。
(3)上記(1)と(2)に示す各事実から、本件商標の出願時及び登録時において、申立人の別掲商標が著名であったことは明らかである。同様に、欧文字「Anytime Fitness」が申立人の名称の略称及び商標として著名であったことも明らかである。
2 申立人の名称の略称「Anytime Fitness」の略称「anytime」等の著名性について
日本においては、「スマートフォン」を「スマホ」と呼ぶように、簡易迅速のために種々の名称を略す場合が多い。フィットネス業界の取引者・需要者も例外ではなく、「Anytime Fitness」とその音訳「エニタイムフィットネス」から「Fitness」と「フィットネス」の語を省略して残る略称「anytime」(大文字と小文字の異なるものを含む。以下同じ。)及びその音訳「エニタイム」を申立人に係るフィットネスクラブ又はフィットネスクラブ事業の通称としている。以下、この事実について詳述する。
申立人の名称の略称として、「anytime」及び「エニタイム」の文字は、FFJのウェブサイトに継続的に使用されてきた(甲23)ばかりでなく、その使用の範囲は第三者のウェブサイトにも及んでいる(甲24〜甲28)。
その使用の結果、「anytime」及び「エニタイム」は、本件出願の出願時及び査定時において、フィットネス関連の分野の取引者・需要者の間において、専ら申立人に係るフィットネス関連業務を表すものとして広く認識され、使用されるに至っていた。
ところで、「24時間ジム」業界には多数の事業者が存在する(甲29)が、英単語「anytime」を含む商標を使用している事業者は申立人以外に見当たらない。この事実は、申立人のみが英単語「anytime」をその名称に含むフィットネスクラブ事業者として想起され、他の同業者は想起されないことの証左である。また、この事実は、申立人よりも後に「24時間ジム」事業を立ち上げた各競業者が、申立人に係る知的財産権の存在を意識し、その侵害を避けるためにあえて英単語「anytime」を含む名称の使用を避けてきたことを示唆するものである。
以上を考慮すると、略称「Anytime Fitness」は勿論のこと、略称「anytime」も、本件商標の出願時及び査定時において、日本国内の需要者等の間において、申立人に係るものとして広く認識されていたことは明らかである。
3 商標法第4条第1項第7号について
本号に規定する「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も含まれ(商標審査基準)、その使用が不正の意図をもってされ、国際信義や公正な取引秩序に反する場合もこれに該当すると解されている(東京高裁平成11年12月22日判決)。
既に述べたように欧文字「anytime」は「24時間ジム」を展開する申立人の著名な略称であるため、本件商標権者はその顧客吸引力にフリーライドする不正な意図を以て本件商標に想到し、これを出願及び使用した可能性がある。
また、「anytime」の語は申立人の略称として通用しているため、申立人と何らの関係も有しない本件商標権者が本件商標を申立役務について独占排他的に使用した場合、市場において多大な混乱を招くおそれがある。したがって、本件商標登録をこのまま維持する場合は、公正な取引秩序に著しい混乱をもたらすことになる可能性がある。
さらに、上記のとおり、申立人は米国を始めとして世界中で著名なフィットネスクラブ事業者である。したがって、「anytime」の語が申立人の略称として多用されているという日本の取引の実情の中、本件商標権者がその語を含む本件商標を申立役務について独占排他的に使用することは、国際信義に反し公の秩序を害するものである。国際的な商標の保護及び取引秩序の維持を考慮するならば、本件商標については、申立人の別掲商標並びに商標「Anytime Fitness」、「anytime」及び「エニタイム」の著名性をもってして登録を取り消すべきである。
したがって、本件商標が、「指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する商標」に該当することは明白である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
なお、仮に本件登録が維持されるとの判断が下された場合、申立人とは何らの関係も有しない者による商標であって「anytime」の語を含み、フィットネス関連役務を指定したものの登録が乱立するおそれがあり、取引者及び一般需要者に多大な混乱を招くおそれは避けられない。このような危険性があるにも関わらず、市場に対する被害に優先して本件登録を維持しなければならないとする判断を下す理由は全くもって見出せない。
4 商標法第4条第1項第8号について
本件商標権者は、申立人とは何らの関係も有しておらず、他人に該当する。
また、本件商標は、申立人の略称「anytime」を含むものであり、当該略称は本件商標の出願時及び登録時において著名であった。
そして、本件商標権者は、申立人より何らの承諾も得ていない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
5 商標法第4条第1項第10号について
上述のように、本件商標権者は、申立人との関係において他人に該当する。
また、申立人の別掲商標及び商標「Anytime Fitness」は、上記1(1)において述べたような使用を含め、広範囲に使用をされた結果、本件出願の指定役務に含まれている申立役務(甲30〜甲33)を含む各分野において、本件商標の出願時及び登録時において需要者の間に広く認識されていた。
ここで、申立人の別掲商標及び商標「Anytime Fitness」において、欧文字「FITNESS」の部分は、フィットネス関連役務との関係において、自他役務識別力が極めて弱いか又は無いため、欧文字「ANYTIME」を含む他の部分が要部となる。
「anytime」及び「エニタイム」も、本件出願の指定役務に含まれている申立役務を含む各分野において、本件商標の出願時及び登録時において、申立人の商標として需要者の間に広く認識されていた(甲23〜甲27)。
本件商標は、既成の語でなく、一見それ自体は特定の意味も有しないとも思える。ここで、フィットネス関連業務に係る商標の中には、営業時間が「24時間」であることを示す数字「24」を含むものが多く存在する(甲15、甲29)。この取引の実情を考慮すると、フィットネス関連役務の需要者が、当該商標中の数字「24」を、当該役務との関係において、「24時間営業」の業態を意味するものと容易に理解できると考えるのが自然である。そのため、数字「24」の部分は自他役務識別力が極めて弱いか又は無いと考えるのが自然である(とりわけ、本件商標は時計の時刻表示部の図形を有していることもあり、この理解に辿り着きやすいものと思料する。)。よって、本件商標は、欧文字「anytime」の部分が要部となる。加えて、黒色の欧文字「anytime」の部分は、オレンジ色の数字「24」の部分と色彩、書体、フォントサイズにおいて大きく異なる上、電話機の受話器の図形によって数字「24」の部分と隔てられているため、数字「24」の部分から分離して認識され把握されやすい態様で表されていることがいえる。
そして、フィットネス関連役務の需要者が本件商標に接した場合に、申立人に係るフィットネス関連役務を想起することは容易に予見できる。
したがって、本件商標は、申立人の別掲商標と要部において、称呼及び観念が同一であり外観が類似する。また、本件商標は、申立人の商標「anytime」とも、要部において、外観、称呼及び観念が同一であることは明らかである。そのため、本件商標は、申立人の別掲商標並びに商標「Anytime Fitness」、「anytime」及び「エニタイム」と、商標全体として類似する。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
6 商標法第4条第1項第11号について
本件商標権者が申立人の他人に該当すること、本件商標が申立人の商標である引用商標1と互いに類似することは既に述べたとおりである。
そして、本件商標の申立役務は、引用商標1の指定商品と同一又は類似の役務である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
7 商標法第4条第1項第15号について
本号該当性について商標審査基準に沿って、以下検討する。
(1)出願商標とその他人の標章との類似性の程度、その他人の標章の周知度
申立人の別掲商標及び商標「Anytime Fitness」は、本件商標の出願時及び登録時において著名な商標であり(甲22)、本件商標と類似することは上述したとおりである。また、申立人の略称「anytime」及びその音訳「エニタイム」も同様に著名であった。
(2)その他人の標章が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるか
申立人の別掲商標及び商標「Anytime Fitness」を構成する文字は、「いつでも」を意味する英語の副詞「anytime」と「フィットネス」を意味する英語の名詞「fitness」とを組み合わせてなる造語である。申立人よりも前に24時間営業のフィットネスクラブのチェーンを展開していた者は存在しないと考えられる。この点を考慮すると、この造語からなる商標は、容易に思いつくような商標とは到底言えない。
(3)その他人の標章がハウスマークであるかどうか
申立人の別掲商標は、申立人のハウスマークである。
(4)企業における多角経営の可能性
申立人に係る事業の事業形態はフランチャイズであるところ、当該事業においては、申立役務や被服類の販売も行われている(甲30〜甲35)。この事実から、申立人に係る事業は多岐に渡っており、申立人の営業規模を考慮すると、今後さらなる多角経営が行われる可能性は高い。
(5)商品間、役務間又は商品と役務間の関連性
本件出願の指定役務のうち申立役務は、いずれもフィットネスに関連する役務である。引用商標1の指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催等,電子出版物の提供,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」は、それぞれがフィットネスに関するものを含む上位概念であることは文言上明らかである。引用商標2の指定役務「ヘルスクラブ及びフィットネスクラブの提供」もフィットネスに関連する役務であることは文言上明らかである。したがって、申立人に係る役務と申立役務の間には、非常に高い関連性が認められる。
(6)商品等の需要者の共通性その他取引の実情
本件出願、引用商標1及び引用商標2の指定役務の需要者は、フィットネスクラブの利用者その他のフィットネスに関心のある人物である。したがって、役務の需要者は共通している。また、上記5において述べたように、フィットネス関連業務に係る商標の中には、営業時間が「24時間」であることを示す数字「24」を含むものが多く存在するという取引の実情が存在する。
以上を総合的に考慮すると、申立役務について使用される本件商標に接した需要者は、その役務が申立人自身が提供するものであるか又は申立人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係若しくは同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る役務であると誤信する可能性が極めて高い。したがって、本件商標は、他人である申立人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標であることが明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
8 商標法第4条第1項第19号について
上述のとおり、本件商標権者は、申立人とは何らの関係もない他人である。
本件商標の出願時及び登録時において、別掲商標及び商標「Anytime Fitness」が日本を含む世界各国における需要者の間に広く認識されていたこと、及び商標「anytime」及び「エニタイム」が少なくとも日本における需要者の間に広く認識されていたことは上述したとおりである。
そして、申立人の別掲商標並びに商標「Anytime Fitness」、「anytime」及び「エニタイム」が本件商標と類似であることも上記のとおりである。
本件商標権者は、申立人の商標が発揮する顧客吸引力にフリーライドし、自らの役務の売り上げを伸ばして不正の利益を得ると共に、出所表示機能を稀釈化し、その名声を毀損させるために本件出願を行った可能性がある。したがって、本件出願は、不正の目的でなされた可能性がある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
なお、本号が設けられた趣旨に鑑みれば、本件登録が維持され、申立人とは何らの関係も有しない者が欧文字「anytime」を要部とする本件商標のような商標を出願し登録するような事態が多発すると、申立人のブランドは世界的に著名であるが故に、深刻な国際摩擦に発展する危険性も極めて高いと言える。よって、本件登録を維持することは、本号が設けられた趣旨にも反することとなる。また、このような国際摩擦のおそれがあるにもかかわらず、それに優先して本件登録を維持しなければならないとする理由は全くもって見いだせない。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次のとおりである。
ア 申立人は、米国ミネソタ州に本社を置く24時間営業のフィットネスクラブのチェーンを展開する企業であり、2002年にミネソタ州ケンブリッジに第1号店を開店したこと(甲3〜甲5)、申立人の24時間営業のフィットネスクラブの店舗(フランチャイズチェーン店舗を含む。以下「申立人店舗」という。)は2021年7月頃には、30以上の国・地域において4,800店以上展開され、その会員数は、全世界で420万人であったこと(甲6、甲7)、2013年における申立人の全世界での収益は約6.3億米ドル(約614.8億円)であったこと(甲8、甲9)などがうかがえる。
イ また、我が国においては、申立人は「株式会社Fast Fitness Japan」(FFJ)をフランチャイズチェーン本部とし、2010年に東京都調布市に第1号店を開店したこと(甲10)、申立人店舗数は2021年3月頃において900に達し(甲13)、2022年8月頃において1,030以上であり、「24時間ジム」といわれる店舗(施設)の中では店舗数第1位であったこと(甲15)、申立人店舗は全都道府県に存在していること(甲14)、申立人店舗の会員数は2021年7月頃に60万人、2022年8月頃に70万人以上であったこと(甲10、甲15)、FFJの売上高は2021年3月期が約112億円、2022年3月期が約131億円であったこと(甲21)、別掲商標(図形と文字の配置が異なるものを含む。)が、申立人店舗内外に掲示等されていること(甲16、甲24〜甲26)などがうかがえる。
ウ そして、FFJは、人気芸人が立ち上げたパーソナルトレーニングジムと業務提携して高校生向けの無料利用制度の促進を図ったり、地域において体験イベント等を開催するなどし、これらの活動について、別掲商標を使用して宣伝を行ったことがうかがえる(甲17〜甲19)。
(2)上記(1)のとおり、申立人及びFFJは、24時間営業のフィットネスクラブの店舗である申立人店舗に別掲商標を使用していることがうかがえること、申立人店舗が全都道府県に存在すること、2021年から2022年にかけて申立人店舗数に急激な変化がない中で、2022年8月頃に申立人店舗がいわゆる「24時間ジム」の中で店舗数第1位であったことを考慮すれば、申立人店舗及びそこで使用されている別掲商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人の業務に係る24時間営業のフィットネスクラブの店舗として及び同店舗を表示するものとして、フィットネスクラブの需要者の間において一定程度認識されているといい得るものである。
しかしながら、申立人の提出に係る証拠によっては、我が国のフィットネス業界全体における、別掲商標を使用した申立人の事業についての市場シェアを確認することができず、申立人店舗の売上高や会員数の多寡を客観的に示す証拠の提出もない。また、広告宣伝に関しても、各種イベント等を通じ、別掲商標を使用した申立人店舗の広告が行われたことはうかがえるものの、その費用、規模、回数及び期間等が不明なことも多いことから、これらの証拠によって、別掲商標が、我が国の需要者の間において広く知られているものと認めることはできない。
その他、別掲商標の周知性を認めるに足る事実は見いだすことができない。
そうすると、別掲商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、当該役務の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
してみれば、別掲商標と同一の構成からなる引用商標1及び引用商標2は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、別掲商標を使用した申立人店舗の米国など各国における店舗数、売上高など各国における取引実績を示す客観的な証拠は見いだせないから、別掲商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして米国など外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることもできない。
(3)さらに、引用商標3ないし引用商標5は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、それらが申立人の業務に係る役務を表示するものとして日本国内若しくは外国における需要者の間に広く認識されているもの又は申立人の略称として著名であると認めるに足りる証左は見いだせないから、需要者の間に広く認識されているもの又は申立人の著名な略称と認めることはできない。
なお、「エニタイム」の文字が記載されているTwitterの投稿が相当数あることはうかがえるものの(甲28)、その具体的な投稿内容が確認できず、該文字が何を示しているのか確認できないから、かかる判断を覆し得ない。
2 商標法第4条第1項第8号について
申立人は、本件商標が申立人の著名な略称「anytime」を含むものである旨述べているが、上記1(3)のとおり引用商標4「anytime」及び引用商標5「エニタイム」は申立人の著名な略称と認められないものであるから、本件商標は、他人(申立人)の著名な略称を含むものといえず、商標法第4条第1項第8号に該当するものといえない。
3 商標法第4条第1項第10号について
(1)商標の類否
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、横書きした「anytime」の文字(以下「文字部分」という。)と、電話の受話器とおぼしき図形、時計の文字盤及び針とおぼしき図形及びやや図案化したオレンジ色の「24」の数字(以下、これらを「図形部分」という。)からなるところ、文字部分と図形部分は視覚上分離して看取されるものである。また、構成中の文字部分は、「いつでも」(株式会社小学館 ランダムハウス英和大辞典第2版)の意味を有する語であるのに対し、図形部分は特定の意味合いを認識させるものではなく、両者に観念上の関連性もないものであることからすれば、これらを常に一体のものとして認識しなくてはならない特段の事情も見受けられないものである。
そうすると、本件商標においては、構成中の「anytime」の文字部分が、独立して自他役務の識別標識としての機能を有し、該文字部分を要部として抽出し、この部分だけを他人の商標と比較することも許されるものである。
してみれば、本件商標は、その構成全体に相応して「エニタイムニジュウヨン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないか、又は、構成中の要部である「anytime」の文字に相応して「エニタイム」の称呼を生じ、「いつでも」の観念を生じるものと判断するのが相当である。
イ 引用商標
(ア)引用商標1ないし引用商標3
引用商標1及び引用商標2は、別掲2のとおり、図形の右にやや図案化された「ANYTIME」と「FITNESS」の欧文字を2段に表してなるものであり、また、引用商標3は、上記第2の2(1)のとおり、「Anytime Fitness」の欧文字からなるところ、引用商標1及び引用商標2の文字部分並びに引用商標3は、それぞれ同じ書体をもって、まとまりよく一体に表されているものである。
そうすると、引用商標1ないし引用商標3は、それぞれの文字部分全体に相応して「エニタイムフィットネス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
(イ)引用商標4及び引用商標5
引用商標4及び引用商標5は、上記第2の2(2)及び(3)のとおり、「anytime」及び「エニタイム」の文字からなり、いずれも該文字に相応し「エニタイム」の称呼を生じ、「いつでも」の観念を生じるものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の類否
(ア)本件商標と引用商標1ないし引用商標3の類否について
本件商標と引用商標1ないし引用商標3を比較すると、両者は、上記のとおりの構成よりなるものであって、その外観及び称呼は構成態様及び語調語感が明らかに異なり、また観念においては、比較できないか相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものである。
なお、申立人は、引用商標はいずれも申立役務の分野において需要者の間に広く知られている、引用商標1ないし引用商標3の構成中「FITNESS(Fitness)」部分は自他役務識別力が極めて弱いか無い、本件商標の構成中「24」は自他役務識別力が極めて弱いか無いなどとして、本件商標と引用商標は、要部「anytime(ANYTIME)」において外観、称呼、観念が同一の類似する商標である旨主張している。
しかしながら、たとえ引用商標1ないし引用商標3の構成中の「FITNESS(Fitness)」の文字部分が自他役務の識別力が弱い若しくは無いとしても、これらはそれぞれまとまりよく一体に表されているものであり、かつ、上記1のとおり、引用商標は申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであることからすれば、引用商標1ないし引用商標3から、構成中の「anytime」の文字部分を分離抽出し、他の商標と比較検討すべきとする事情は見いだせない。
したがって、申立人のかかる主張は採用できない。
(イ)本件商標と引用商標4及び引用商標5の類否について
本件商標と引用商標4及び引用商標5を比較すると、両者は外観においては相違するものの、「エニタイム」の称呼及び「いつでも」の観念を共通にするものであるから、これらを総合して勘案すると、両者は類似の商標とみるのが相当である。
(2)本号該当性
上記1のとおり、引用商標はいずれも申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると認められないものである。
また、上記3のとおり、本件商標と引用商標4及び引用商標5が類似する商標であるとしても、本件商標は引用商標1ないし引用商標3は非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するといえない。
4 商標法第4条第1項第11号について
上記3のとおり、本件商標と引用商標1は、外観及び称呼は構成態様及び語調語感が明らかに異なり、観念は比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標は、その申立役務と引用商標1の指定商品及び指定役務が類似するとしても、引用商標1と非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当するといえない。
5 商標法第4条第1項第15号について
上記1のとおり、引用商標はいずれも申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると認められないものである。また、上記3のとおり、本件商標と引用商標4及び引用商標5が類似する商標であるとしても、本件商標と引用商標1ないし引用商標3は非類似の商標であって別異の商標というべきものである。
してみれば、本件商標は、引用商標の独創性の程度、本件商標の申立役務と申立人の業務に係る役務との関連性の程度、需要者の共通性などをあわせ考慮しても、商標権者がこれを申立役務について使用した場合に、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するといえない。
6 商標法第4条第1項第19号及び同項第7号について
上記1のとおり、引用商標はいずれも申立人の業務に係る役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
また、上記3のとおり、本件商標と引用商標4及び引用商標5が類似する商標であるとしても、本件商標と引用商標1ないし引用商標3は非類似の商標であって別異の商標というべきである。
そして、上記5のとおり、本件商標は引用商標を連想又は想起させるものでもない。
そうすると、本件商標は、引用商標の顧客吸引力にフリーライドするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。なお、外国において申立人役務について使用されている別掲商標との関係においても同様のことがいえる。
さらに、本件商標が、その出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠く、国際信義に反するなど、公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号及び同項第7号のいずれにも該当するといえない。
7 むすび
以上のとおりであるから、本件商標の指定役務中、登録異議の申立てに係る指定役務(申立役務)についての登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1 本件商標(色彩は、原本を参照。)


別掲2 引用商標1及び引用商標2、別掲商標


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異議決定日 2023-10-17 
出願番号 2021128051 
審決分類 T 1 652・ 22- Y (W41)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 旦 克昌
特許庁審判官 大橋 良成
小林 裕子
登録日 2022-10-21 
登録番号 6630608 
権利者 新明和工業株式会社
商標の称呼 エニタイムニジューヨン、エニタイムニヨン、エニタイム 
代理人 安部 光河 
代理人 行田 朋弘 
代理人 弁理士法人あーく事務所 

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