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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W07 |
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管理番号 | 1403890 |
総通号数 | 23 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2023-11-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-11-29 |
確定日 | 2023-10-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6617116号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6617116号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6617116号商標(以下「本件商標」という。)は、「OASE」の文字を標準文字により表してなり、令和4年5月12日に登録出願、第7類「芝刈機(機械),芝刈機,ロボット芝刈機,スイミングプール用電気掃除機,業務用電気掃除機ロボット」を指定商品として、同年9月9日に登録査定され、同月20日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する商標は、以下の3件の商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである。 1 国際登録第938339号商標(以下「引用商標1」という)は、別掲1のとおりの構成からなり、2013年(平成25年)4月17日に国際商標登録出願(事後指定)、第1類、第7類、第9類、第11類、第17類、第19類、第37類、第42類及び第44類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成28年2月5日に設定登録されたものである。 2 国際登録第297508A号商標(以下「引用商標2」という)は、別掲2のとおりの構成からなり、2013年(平成25年)5月8日に国際商標登録出願(事後指定)、第7類、第11類及び第21類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、平成27年11月6日に設定登録されたものである。 3 国際登録第819179B号商標(以下「引用商標3」という)は、別掲3のとおりの構成からなり、2003年(平成15年)4月4日に国際商標登録出願、第1類、第7類、第9類、第11類、第17類、第19類、第37類及び第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成21年8月7日に設定登録されたものである。 なお、引用商標1ないし引用商標3をまとめていうときは、単に「引用商標」という。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 本件商標と引例商標の標章の同一性について 本件商標は、申立人のハウスマーク(社名の一部)の要部である「OASE」又は「Oase」と、小文字か大文字かの差はあるものの、そのアルファベットの順番と構成が全く同一であるため、称呼、外観が類似となり、また観念は生じず、お互いに同一又は類似となることは、明らかである。 2 申立人について 申立人は、ポンプを含む農業用器具の修理店として1949年に設立されたドイツの企業であり、1966年以来、地下水用ポンプや噴水の開発を始めて現在に至っている。また、申立人は、1968年にその社名を「OASE−PUMPEN August Wubker Sohne GmbH&COMaschinenfabrik」(決定注:一部の文字にウムラウト記号を含む。)に変更し、社名の一部を構成する「OASE」を社名商標(ハウスマーク)として使用しており、関連商標を多数保有している。(甲2〜甲4)。 引用商標は、申立人が製造・販売する全ての商品に使用されており、申立人が販売する商品は、一般消費者向けの室内・室外用の水槽及びその水槽の管理・維持に必要なアクセサリやガーデニングに係る商品として、フィルター、ポンプ、照明装置、酸素供給装置、掃除装置、水中生物の飼育用品や水槽等であり、また、公共スペースヘの噴水企画・設置等を提供している(甲5〜甲7)。 申立人は、1949年に設立されて以降、全世界に約950人の従業員を抱え、本国のドイツを含め、フランス、イタリア、イギリス、ベルギー、ハンガリー、ポーランド、スペイン、トルコ、日本、シンガポール、中国、米国を含む15か国に営業所を構えており、また、7か国の製造拠点を有し、100か国以上で販売をしてきている(甲7)。 3 商標法第4条第1項第15号について (1)申立人は、2018年に支社となるOASEジャパン合同会社を日本で設立し(甲8)、我が国において、一般消費者向けの室内・室外用の水槽及びその水槽の管理・維持に必要なアクセサリやガーデニングに係る商品を販売、噴水施設に設置に関する役務を提供しており、2022年の日本での売上げは、約135,545ユーロ(19,433,222円)に至る(甲9、甲10)。 (2)また、積極的に自社商品の広告・宣伝活動を行っており、広告宣伝費は、2019年(会計年度。以下同じ)は約8万ユーロ(約1,051万円)、2020年は約2万ユーロ(約263万円)、2021年は約1万ユーロ(約131万円)である。なお、2021年度の広告宣伝費は、2021年4月13日までのものである。 (3)マッキャンエリクソン(アメリカニューヨーク本社を拠点とし、世界100か国超にオフィスを持つ国際広告会社)の調査報告書によれば、観賞魚オーナー全体から、日本におけるOASEの認知率の認知率は16%から18%である(甲12)。 (4)国内での具体的販売状況 申立人の一般消費者向けの室内・室外用の水槽及びその水槽の管理・維持に必要なアクセサリやガーデニングに係る商品は、我が国において、全国21か所の都道府県において、ペット用品店やホームセンターで販売されており、また、オンラインショップを介し、全国的に販売され、申立人の噴水、水景施設の企画、設計、施工、メンテナンスに関する役務は、日本会社「DoScience」により提供等されている(甲7、甲9〜甲11)。 また、OASEは、日本で開催されたグッドアクアリウムデザイン賞2022を受賞した(甲13の1)。 (5)小結 以上からすると、引用商標は、申立人が1968年にその社名を変更して以来、申立人の社名商標として長年にわたって世界中で使用してきており、少なくとも本件商標の登録出願時(令和4年5月12日)及び登録査定時(令和4年9月20日)には水槽及びその維持・管理用品、水中生物飼育用品との関係で我が国において高い周知性を獲得している。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、取り消されるべきものである。 4 商標法第4条第1号第19号について (1)申立人の事業のシェアは、全世界的には2.5割程度となり、年間売上は、約230億円に達しており(甲7、甲14の2)、特に、本国のドイツでは市場占有率が業界トップである4割を超え、2022年の売上げは、44,954,152ユーロ(6,440,483,730円)に達している(甲14の1)。 そして、2023年2月7日の発表によれば、申立人は、「TOOL&GARDENING」分野で、ドイツ語圏で最も広範囲にわたるマーケティング功績を認められ、9月に開催される「ドイツブランド賞」において、最高賞である「German Brand Award in Gold」の受賞が確定された(甲15)。 以上から、申立人の引用商標は、ドイツでGarden分野ではトップブランドであることは明らかであり、ドイツ語圏内において、需要者の間に広く知られており、全世界的に有名である。 (2)本件商標の出願人には不正目的がある。 本件商標の出願人は、本件商標の出願日(2022年5月12日)の前である2022年5月9日に申立人が所在しているドイツの代理人を通じて、EUIPOに本件商標と同一商標を出願したが(甲18の1、2)、引用商標がドイツを中心としたヨーロッパに広く知られていることを考慮すると、ドイツを中心としたEUでの商標を獲得しようとする本件出願人は、引用商標を有する申立人の存在を知っていることは間違いなく、この事実は、出願人は不正目的があるという裏付けにもなると思われる。 また、EU出願の「Trade mark number:01870048」については、本件出願人と申立人に間には2か月にわたる複数回の協議が行われた結果、2022年10月28日、本件出願人と申立人の協議の下、取り下げられたが(甲18の1、2)、その協議の際、本件商標についても取下協議を進めており、本件出願人は日本での「OASE」という商標に興味がないと示していたにも関わらず、本件商標の出願人は、いまだに日本での本件商標を取り下げていない。 よって、本件出願人は、交渉を長引きさせて、高額買取り、又は高額和解金を求めようとしているという合理的な疑問が生ずることは間違いない。 (3)小結 本件商標の登録出願時及び登録査定時に、引用商標はドイツを中心に高い周知性を獲得しており、本件商標の出願人は不正目的があると思われるので、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当し、取り消されるべきものである。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知著名性について (1)申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、次のとおりである。 ア 申立人は1949年に設立されたドイツの企業であり、1966年以来、地下水用ポンプや噴水の開発を始めて現在に至っている(甲5)。 イ 申立人は1968年に改名した社名の一部を構成する「OASE」をハウスマークとして使用しており、関連商標を保有している(甲2〜甲4、甲6、申立人の主張)。 ウ 申立人は、水槽及びその水槽の管理・維持に必要なアクセサリやガーデニングに係る商品として、フィルター、ポンプ、照明装置、酸素供給装置、掃除装置、水中生物の飼育用品や水槽等を販売し、また、公共スペースヘの噴水企画・設置等の役務を提供している(甲5〜甲7、申立人の主張)。 なお、申立人は、申立人が製造・販売する全ての商品に引用商標を使用している旨述べているが、申立人提出の証拠からは、引用商標2及び引用商標3の使用は見いだせない。 エ 申立人は、1949年に設立されて以降、全世界に約950人の従業員を抱え、本国のドイツを含め、フランス、イタリア、イギリス、ベルギー、ハンガリー、ポーランド、スペイン、トルコ、日本、シンガポール、中国、米国を含む15か国に営業所を有する(甲7)。 オ 申立人は、2018年に支社となるOASEジャパン合同会社を日本で設立し(甲8)、我が国において、噴水、ろ過装置、水槽テラリウム等を製造、販売している(甲8,甲11)。 カ 2022年の日本での売上げは、約135千ユーロ(約19百万円)であり、広告宣伝費は、2019年年度は約8万ユーロ(約1千万円)、2020年度は約2万ユーロ(約263万円)、2021年度は約1万ユーロ(約131万円)である(甲9、申立人の主張)。 キ マッキャンエリクソンの調査報告書によれば、観賞魚オーナー全体から、日本におけるOASEの認知率は約16%である(甲12)。 ク 申立人の水槽及び水槽の管理・維持に必要なアクセサリやガーデニングに係る商品は、我が国の全国21か所の都道府県において、ペット用品店やホームセンターで販売されており、また、オンラインショップを介し販売されている(甲7、甲9〜甲11)。 ケ OASEは、日本で開催されたグッドアクアリウムデザイン賞2022を受賞した(甲13の1)。 (2)以上アないしケを踏まえると、引用商標1は、申立人の水槽及びその関連商品の販売事業のブランドとして、申立人の当該商品を購入する需要者層の間にある程度認識されていたものと推認することができる。 しかしながら、申立人はその業務に係る商品及び役務に関し、日本又は外国での売上高、宣伝広告費についての事実を示す客観的な裏付け資料は提出しておらず、我が国又は外国における量的規模(市場シェア等)を客観的かつ具体的に把握することができる証拠も提出していない。 そうすると、申立人の提出した証拠のみによっては、引用商標1は、申立人に係る商品の販売事業に使用され、水槽及びその関連商品を購入する需要者という限られた範囲において、ある程度知られているということはできても、それを超えて、本件商標の指定商品等の需要者においてまで、広く知られた存在になっているということはできず、引用商標2及び引用商標3においては、その使用に係る証拠も見いだせないから、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に、広く認識されていたと認めることはできない。 2 本件商標と引用商標の類似性について (1)本件商標について 本件商標は、前記第1のとおり、「OASE」の欧文字を標準文字により表してなるところ、これよりは「オアセ」の称呼を生じ、当該文字は、辞書等に載録されている成語ではなく、直ちに何らかの意味合いを理解させるものではないから、一種の造語として認識されるものである。 したがって、本件商標は、その構成文字に相応して「オアセ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標について 引用商標1は、別掲1に記載のとおり、筆記体風の「oase」の欧文字をその構成中に含むものであり、引用商標2は、「Oase」の欧文字からなり、引用商標3は、別掲2のとおり、「OASE」の文字をその構成中に含むものであり、いずれも、その構成文字に相応し、「オアセ」の称呼を生じるものである。 また、上記の各文字は、辞書等に載録されている成語ではないから、一種の造語として認識されるものである。 したがって、引用商標からは、いずれも「オアセ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標の類似性について 本件商標は、上記(1)のとおり、「OASE」の欧文字を標準文字で表してなるのに対し、引用商標は、上記(2)のとおり、筆記体風の「oase」の欧文字又は「OASE」の欧文字をその構成中に含むもの、あるいは「Oase」の欧文字からなるものであるから、両者は、その文字のつづりを同一にするものであり、類似性の程度は高いものといえる。 (4)引用商標の独創性について 引用商標を構成する「oase」、「OASE」及び「Oase」の欧文字は、辞書等に掲載のない造語であると認められることから、引用商標の独創性の程度は高いものといえる。 (5)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品及び役務の関連性、需要者の共通性等について 本件商標の指定商品(芝刈機,業務用電気掃除機ロボット等)、と申立人の業務に係る商品及び役務(水槽及びその関連商品等)とは、業種や事業形態が大きく異なるものであり、また、商品及び役務の内容、商品の販売又は役務の提供の目的、手段等が明確に異なるものである。さらに、需要者においても、需要者の求める商品又は役務の性質や目的が明確に異なるものであるから、その関連性の程度は低く、需要者の共通性の程度も低いものである。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について 上記2(3)及び(4)のとおり、本件商標と引用商標とは、類似性の程度が高く、引用商標の独創性の程度も高いものといえるとしても、上記2(5)のとおり、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品・役務の関連性、需要者の共通性等の程度は相当低いものであり、また、上記1のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に我が国において、需要者の間に広く認識されているとはいえないものであるから、本件商標は、本件商標権者が、これをその指定商品について使用しても、これに接する需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないと判断するのが相当である。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第19号該当性について 上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、類似性の程度が高く、上記2(4)のとおり、引用商標の独創性の程度が高いものといえるとしても、上記1のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品・役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記3のとおり、本件商標は引用商標を連想又は想起させるものでもない。 加えて、申立人が提出した証拠からは、本件商標の商標権者が、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。 そうすると、本件商標は、引用商標の名声にただ乗りする、引用商標に化体した信用等を毀損するなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。 他に、本件商標が、不正の目的をもって使用するものというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 5 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号のいずれにも違反して登録されたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 引用商標1(色彩は原本参照) ![]() 別掲2 引用商標2 ![]() 別掲3 引用商標3(色彩は原本参照) ![]() (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2023-09-29 |
出願番号 | 2022053480 |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Y
(W07)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
小松 里美 |
特許庁審判官 |
渡邉 あおい 鈴木 雅也 |
登録日 | 2022-09-20 |
登録番号 | 6617116 |
権利者 | 安克創新有限公司 |
商標の称呼 | オアセ |
代理人 | 山下 託嗣 |
代理人 | 魯 佳瑛 |
代理人 | 朴 沼泳 |