• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W10
管理番号 1403871 
総通号数 23 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-10-07 
確定日 2023-09-26 
異議申立件数
事件の表示 国際登録第1602156号に係る国際商標登録出願の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 国際登録第1602156号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1602156号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成よりなり、2020年11月16日にGermanyでおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2021年5月12日に国際商標登録出願、第10類「Medical devices; medical devices for treating foot ailments; medical devices for foot treatment; medical devices for foot care; electrical apparatus and instruments for dental and dental technical purposes; dental−technical devices; dental devices; drills for dental use; dental apparatus and instruments; dental apparatus for milling; electrical dental−care apparatus for use by dentists [for medical purposes]; surgical apparatus and instruments for dental use.」並びに第5類及び第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和4年4月12日に登録査定され、同年7月29日に設定登録されたものである。
第2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録5234599号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2に示すとおりの構成よりなり、第10類「医療用機械器具」を指定商品として、平成20年3月4日に登録出願、同21年5月29日に設定登録され、現に有効に存続している。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第10類「全指定商品」(以下「申立商品」という場合がある。)について、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第38号証(枝番号含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、別掲1のとおり、「NWT」の欧文字をやや斜めに傾いた太字のゴシック体調の書体で横書きにしてなり、冒頭の「N」の文字の右上端は他の2字の上部に表された水平線と滑らかな円弧を描いて接続する構成からなる商標である。また、引用商標は、別掲2のとおり、「NSK」の欧文字をやや斜めに傾いた太字のゴシック体調の書体で横書きにしてなる商標であり、冒頭の「N」の文字の右上端は他の2字の上部に表された水平線と滑らかな円弧を描いて接続する構成からなる商標である。
両商標は、冒頭の「N」以外の2字は異なるものの、同様の書体やデザインにて構成されているため、外観上酷似している。特に、引用商標において最も特徴的な部分である、「N」の文字部分における、右上端が水平線と滑らかに接続している点、及びその水平線が他の2字の上部を覆うよう配置されている点が完全に一致していることから非常に相紛らわしく、時と場所を異にして需要者が両商標に接した場合を想定すると、混同を生じる恐れがあることは明白である。たとえ、称呼および観念上の相違があるとしても、両商標はなお相紛らわしいことから、互いに類似するものと解すべきである。
そして、申立商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品である。
また、本件商標と引用商標において共通する第10類に係る医療用機械器具の商品分野においては、需要者の多くは、人の命や健康に密接にかかわる医療行為に関する事業を行う医療機関であるところ、商標の称呼のみによって商標を識別し、商品の出所を知り品質を認識するような取引実情は存在しない。
加えて、商標の出所混同による商品の取り違えは重大な事故に直結しうることから、たとえ称呼や観念が異なるとしても、外観上酷似する商標の併存を認めるべきではない社会的要請が存在することに十分配慮すべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号について
申立人は、栃木県鹿沼市に本社を置く歯科医療用ハンドピース、工業用スピンドルなどを製造販売する企業であり、引用商標は、申立人の商品に長年使用され、我が国のみならず世界的に著名となっているものである。
(1)申立人について
1930年、東京都千代田区において申立人の前身である「中西製作所」が創業され、歯科治療用ハンドピースの製造販売が開始された。1957年より、自社プランドとして社名の頭文字を取った「NSK」の商標を刻んだ製品の販売を開始した。当時のブランドロゴは現在のものと異なるが、「N」の字の右上端が円弧上に伸び、他の2字を覆うように構成されている点において現在のロゴと共通性を有している(甲3)。
1960年代には、国内での販売に止まらず、米国へのOEM製品の輸出を開始した。
1970年代、ニクソンショックによる一時的な輸出停止があったものの、新製品開発により国内市場の開拓や、海外への独自販売ルート確立等により業績を伸ばしていった。
また、1980年前後から、引用商標と同じ構成からなる商標が採用され、製品に刻印される他、会社の看板や広告物等において使用され始める(甲4の1)。これ以降、一貫して同様の態様からなる商標が、会社のロゴマーク及び商品商標として使用され続けている。
1990年代には米国における商標「NSK」を付した製品の販売を開始する。また、「中西製作所」は、2度の社名変更を得た後、1996年に現在の申立人である「株式会社ナカニシ」へ改組された(甲4の2)。
2000年代には、「NSK」のグローバルブランド化を目指し、2011年には申立人の製品がドイツ市場において第2位のシェアを占めるなど、欧州において大きなシェアを獲得したほか、中近東においてはトップシェアを確保し、米国や南米、アジア、日本国内においてもシェアが拡大した(甲4の3)。その間も歯科用機械器具において国内外でトップシェアを確立する数々の製品を開発した(甲4の4)。
現在、申立人は1,200名以上の従業員(2021年12月末時点)を擁する大企業であり、15か国(ドイツ、フランス、イギリス、スペイン、イタリア、UAE、中国、韓国、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、ロシア、米国、ブラジル、日本)に販売拠点を有しており(甲5)、135か国以上の国々に販売実績を持ち、売上高の海外比率が75%を占めるグローバル企業である。このように、申立人は、世界で有数の歯科用機械器具メーカーであるといえる。
(2)引用商標の使用状況
ア 使用態様
引用商標は、申立人の会社自身を示すロゴマークとして使用されているほか、申立人の製造販売する歯科用機械器具に付して使用されている(甲6)。
また、1977年の会社案内及び製品カタログでは、引用商標と同じく「N」の文字の右上端から他の2字の上部を覆う水平線が延伸する構成からなる商標が、会社のロゴマークとして使用されている。このため、申立人は、引用商標と同様の構成からなる商標を少なくとも1977年から使用しているといえる(甲7)。
イ 売上高
2007年〜2021年の株主に向けて毎年発行している業績報告書によれば、申立人は順調に業績を伸ばしていること、及び申立人の製品が国内及び世界各地で販売されていることが分かる(甲8)。特に近年は売上が大幅に伸びており、国内外において申立人の製造販売する歯科製品の市場シェアが拡大していることがうかがえる。
ウ 業界シェア
株式会社アールアンドディによって企画・製作された、「歯科機器・用品年鑑2022年版」(甲10の1)は、歯科機器・用品業界における主要企業77社にヒアリング調査の実施により作成され、各社市場戦略と主要85製品のマーケットシェアを明らかにするものであり、これによれば、申立人の製造する歯科用機械器具は、第一位のシェアを占める製品が少なくない。そのため、申立人製品は極めて高い国内シェアを有しているといえる(甲10の2〜甲10の5)。
エ 宣伝広告状況
申立人は、国内外における申立人及び製品の知名度向上のための営業活動を継続して実施しており、その一環として、各専門誌への広告の掲載、セミナー開催、展示会への出展、パンフレット配布等の宣伝広告活動を精力的に行っている。
(ア)専門誌へ掲載された広告
申立人は、専門誌へ継続的に製品やセミナーに関する広告を掲載している(甲11〜甲30)。
(イ)カタログ・パンフレット
申立人は、定期的に発行する製品カタログやパンフレットにおいて、自社及び自社の商品を表すものとして引用商標を継続的に使用している(甲6、甲31、甲32)。
さらに、引用商標と同様の商標が、少なくとも1977年から会社案内や製品パンフレットにおいて使用されている(甲3、甲4)。
(ウ)ウェブサイト
申立人は、自社のウェブサイトにおいて引用商標を使用している(甲33)。
オ 商標の認知度調査結果
日本、ドイツ、米国で実施された、歯科用ハンドピースの分野における、歯科医業従事者を対象とした申立人商標「NSK」の認知度に関するオンラィンでのアンケート調査結果によると、2014年から2021年にかけての申立人商標「NSK」の認知度は、日本で82〜89%、ドイツで74〜87%、米国で44〜57%であった。
本調査の被験者数は日本では154名、ドイツでは155名、米国では202名である。
この調査結果から、少なくとも日本及びドイツでは極めて高い認知度を有しており、米国でも半数程度の需要者が商標を認知していることが分かる。
本調査結果は3か国での申立人商標の認知度を示すものであるが、ドイツは欧州における歯科業界最大の市場であり、市場シェアの点で米国も世界的に重要な地域である。15か国に販売拠点を有し、135か国以上の国々に販売実績を有している申立人の事業規模に鑑みると、申立人商標「NSK」は、上記3か国に止まらず、世界的に著名な商標であることが推認される。
カ 受賞歴
公益財団法人日本デザイン振興会が運営するグッドデザイン賞において、2000年、申立人の製造販売する歯面清掃用ハンドピースが特別賞を受賞した(甲35)。
海外においても、「EDISON AWARDS」において、2015年、申立人の製造販売するハンドピースが「EDISON BEST NEW PRODUCT AWARDS」を受賞した(甲36)。EDISON AWARDSとは、1987年にアメリカ・マーケティング協会が運営する、革新的な製品・サービスなどを称える国際的な賞である。
これらの受賞歴から、申立人の製品が国内外で高い評価を得ていることが推認される。
以上のとおり、申立人商標「NSK」は、歯科用ハンドピース等の歯科用機械器具について申立人の設立初期から長年使用されており、引用商標と同様のロゴについても40年以上にわたって継続的に使用されている。また、申立人の製品は世界中で販売されており、売上高は継続して大きく、多大な営業活動も相まって高い市場シェアを有し、需要者の認知度も高いことに鑑みれば、歯科用機械器具の分野において、引用商標は世界的に著名であると理解されるところである。
(3)小括
上記のとおり、本件商標は、引用商標と外観上酷似する。また、申立商品は、引用商標に係る指定商品と類似する関係にある。その上、引用商標は世界的に著名の域に達しているものである。
そうすると、仮に申立商品について本件商標が使用された場合には、需要者においてその商品が申立人の商品であるとの誤解が生じることは明白であり、出所混同を回避することは困難である。その上、引用商標は申立人自身を表すハウスマークとしても使用されているものであるから、本件商標に接した需要者は、その商品が申立人の関連会社等、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤解する結果、出所混同する可能性を否定し難い。加えて、第10類に係る医療用機械器具の商品分野において、商標の出所混同による商品の取り違えが重大な事故に直結しうることは前述のとおりであり、社会的要請として、たとえ称呼や観念において相違があるとしても、出所混同の恐れがある商標の併存を認めるべきではないことは十分配慮されるべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第19号について
上記のとおり、引用商標は、歯科用ハンドピース等の歯科用機械器具の分野において、日本国内及び外国において著名な商標といえるものである。また、2(2)オの調査結果が示すように、本件商標の商標権者(以下「商標権者」という。)の所在するドイツにおいても需要者の間における申立人の商標の認知度は非常に高い。
また、引用商標は40年以上前から長期にわたって使用され続けており、同調査結果から、少なくとも2014年の時点において、日本とドイツでの申立人商標の認知度がすでに80%を超えていることが理解できる。そのため、本件商標の国際登録日である2021年5月12日以前において、引用商標はすでに著名性を獲得していると推認されるところである。
さらに、申立人は、ドイツにおいて連結子会社「NSK WELLNESS TECHNOLOGY GmbH」(以下「NSK社」という。)を設立し、同社に申立人の製品をドイツで取扱わせており、その後2013年頃に提携関係を解消した経緯が存在する(甲37)。
米国の非営利団体インターネットアーカイブ(Internet Archive)が運営する「ウェイバックマシン(Wayback Machine)」を用いて調査したところ、2012年2月8日付スクリーンショットから、当初、NSK社は「Portitzer Strafsse 69d,Taucha」(決定注:表記上の制約から、エスツェットは「ss」と表記した。)に所在する会社として運営されていたことが分かるが(甲38の1)、2017年7月16日付のスクリーンショットでは、ウェブサイト左上方に本件商標が表示されるようになり、所在地を同じくする「NWT GmbH」の会社ウェブサイトヘ変貌している(甲38の2)。さらにその後、2018年1月5日付のスクリーンショットでは、「NWT GmbH」の所在地が、商標権者の所在地へ変更されている(甲38の3)。会社ウェブサイトにおけるこの変更履歴から、NSK社は、申立人との提携関係終了後、「NWT GmbH」へ社名を変更し、所在地も変更したと解される(甲38の4)。
商標権者は「NWT Management GmbH」であるが、「NWT GmbH」と社名が部分的に一致するうえ、所在地も一致している。加えて、「NWT GmbH」の会社ウェブサイト上で本件商標と同一の商標が使用されている。これらの事実に鑑みると、商標権者と「NWT GmbH」は、共に業務を行う実質的に同一の者であるというべきである。そして、商標権者は、申立人と従前に取引関係があった者と同視でき、引用商標の存在やその名声について悪意であることが明白である。なお、現在、申立人と商標権者との間で取引関係はなく、商標に関する合意等も一切存在していない。
加えて、本件商標と引用商標は、「N」を除いて異なる文字からなるものの、やや斜めに傾いた太字のゴシック体調の文字で構成される点、冒頭の「N」の文字の右上端が他の二字の上部に表された水平線と滑らかな円弧を描いて接続する構成が同一であり、本件商標は引用商標における構成上顕著な特徴を全て含んでいる。
上述の背景を併せて考慮すれば、商標権者が、引用商標を知らずして偶然に、引用商標と酷似する本件商標を創作して出願したとは、社会通念に照らしていい難い。むしろ、本件商標は、ドイツ及び我が国で著名である申立人及び引用商標の著名性を熟知する商標権者によって、引用商標に化体した業務上の信用を不正利用することを企図して出願されたと考えるのが自然である。そして、仮に本件商標の登録を許すならば、たとえ本件商標と引用商標の間で出所混同の恐れがないとしても、引用商標の出所表示機能を希釈化させ、その名声を毀損させる恐れがあることが明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 申立人は、1930年に申立人の前身となる「中西製作所」として創業し、その後、2度の社名変更を経て、1996年に、現在の社名である「株式会社ナカニシ」へと改組されたこと、創業以来、主として歯科用機械器具を製造販売する会社であること、申立人の商品全体の海外を含む売上高は、2007年に223億円だったものが、2021年には448億円となったこと、現在、申立人は我が国を含む世界15か国に販売拠点を有しており、135か国以上の国々に販売実績を持ち、2007年ないし2021年の売上高の海外比率は75%ないし82%を占めるグローバル企業であることがうかがえる(甲3〜甲5、甲8)。
なお、引用商標と同一視し得る態様の標章(以下「引用標章」という。)が、1979年の申立人の取り扱う歯科用エアタービン(「オプチカシステム」)の広告において、使用されている(甲4の1)。
イ 申立人は、エアタービン、コントラアングル等の歯科用機械器具等を取り扱っており、当該器具のカタログの表紙及び申立人が取り扱う歯科用エアタービン等の商品(以下「申立人商品」という。)には、引用標章が使用されている(甲6、甲31、甲32)。
ウ 申立人は、ハンドピース、コントラアングル等の歯科用機械器具等を取り扱っていること、1977年ないし1997年の製品カタログの表紙(表表紙、裏表紙)等に、引用標章が使用されている(甲7)。
エ 我が国における歯科用機械器具の市場において、申立人商品の多くが、トップシェアに位置づけられている(甲10)。
オ 2005年度ないし2015年度において、申立人はセミナーの主催や、申立人商品に関する広告宣伝を継続的に行っており、これらのセミナー及び商品の広告宣伝には、引用標章が使用されている(甲11〜甲30)。
カ 申立人商品の一である「歯面清掃用ハンドピース [NSK・プロフィーメイトL/プロフィーメイトS]」は、「商品デザイン部門」において、2000年グッドデザイン賞を受賞した(甲35)。
(2)上記(1)によれば、申立人は、少なくとも1977年(昭和52年)から、引用標章を使用した申立人商品の販売を開始し、同商品は、近年、我が国の歯科用機械器具市場においてトップシェアを占めており、商品カタログ及び専門誌においては、同商品についての宣伝広告が、同年より継続して行われていることがうかがえ、また、2005年度からは、当該専門誌において、申立人が主催するセミナーについて、引用標章を使用した宣伝広告が継続して行われていることがうかがえる。
また、2000年のグッドデザイン賞を、申立人商品の一である「歯面清掃用ハンドピース」が受賞している。
以上よりすれば、引用標章は、本件商標の国際商標登録出願の日(2021年5月12日)前から、申立人商品を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているものであって、その状況は本件商標の登録査定日(令和4年4月12日)はもとより、現在まで継続していると推認し得る。
そうすると、引用標章と同一視し得る態様の引用商標も本件商標の国際商標登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認められる。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、1文字目にデザイン化された「N」の文字を太字の斜体で表すとともに、該「N」の文字の右上端は、他の2字の上部に表された直線を描き、これに続き「WT」の文字を同様の太字の斜体で表した構成からなるところ、全体として統一したデザインで「NWT」の欧文字を表したものと無理なく認識、把握されるものである。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「エヌダブリュウティ」の称呼を生じ、また当該文字は、辞書等に載録が認められないから、特定の観念を生じない。
(2)引用商標
引用商標は、別掲2のとおり、1文字目にデザイン化された「N」の文字を太字の斜体で表すとともに、該「N」の文字の右上端は、他の2字の上部に表された直線を描き、これに続き「SK」の文字を同様の太字の斜体で表した構成からなるところ、全体として統一したデザインで「NSK」の欧文字を表したものと無理なく認識、把握されるものである。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「エヌエスケイ」の称呼を生じ、また当該文字は、辞書等に載録が認められないから、特定の観念を生じない。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標は、上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、両者の外観は、「N」の文字部分の態様が同じであるとしても、全体の構成態様が明らかに異なり、両者を離隔的に観察しても、相紛れるおそれのないものである。
次に、本件商標から生じる「エヌダブリュウティ」の称呼と引用商標から生じる「エヌエスケイ」の称呼は、第1音及び第2音の「エヌ」の音を共通にするものの、第3音以降の「ダブリュウティ」と「エスケイ」の音及び音数に明らかな差異を有し、該差異音を弱く発音するとはいい難く、これらを一連に称呼するときは、語調、語感が相違し聞き誤るおそれはないというべきである。
さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観及び称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
その他、これらの商標を類似するというべき事情は見いだせない。
(4)申立人の主張について
ア 申立人は、両商標は、冒頭の「N」以外の2字は異なるものの、同様の書体やデザインにて構成されているため、外観上酷似している。特に、引用商標において最も特徴的な部分である、「N」の文字部分における、右上端が水平線と滑らかに接続している点、及びその水平線が他の2字の上部を覆うよう配置されている点が完全に一致していることから非常に相紛らわしいなどとして、本件商標と引用商標とは、相紛らわしい類似の商標である旨主張する。
しかしながら、本件商標と引用商標とは、共に第1文字目の「N」がデザイン化されており、そのデザイン化の手法も酷似しているといい得るものの、当該デザイン化の程度はさほど高いものとはいえず、両商標における構成各文字は、同じ書体、同じ間隔でまとまりよく一体的に表されているものであり、また、その構成文字に相応して生じる「エヌダブリュウティ」及び「エヌエスケイ」の両称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。
また、本件商標の構成文字は、「N」「W」「T」の各文字を、また、引用商標の構成文字は、「N」「S」「K」の各文字をそれぞれ組み合わせてなるものといえるところ、いずれかの文字が、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識としての機能を果たし得ないものとみるべき事情はなく、一連一体の造語として認識されるものである。
してみると、本件商標からは、「エヌダブリュウティ」の称呼が生じ、特定の観念を生じないものであり、引用商標からは、「エヌエスケイ」の称呼が生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 申立人は、本件商標と引用商標において共通する第10類に係る医療用機械器具の商品分野においては、需要者の多くは、人の命や健康に密接にかかわる医療行為に関する事業を行う医療機関であるところ、商標の称呼のみによって商標を識別し、商品の出所を知り品質を認識するような取引実情は存在しない。加えて、商標の出所混同による商品の取り違えは重大な事故に直結しうることから、たとえ称呼や観念が異なるとしても、外観上酷似する商標の併存を認めるべきではない社会的要請が存在する旨主張する。
しかしながら、申立商品の取引は、医療機関や医療従事者など高度な専門知識を有する者によって、高い注意力をもって慎重になされることからすれば、本件商標と引用商標を同一又は類似の商品に使用した場合であっても、商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。また、本件商標と引用商標は、上記認定のとおり、非類似の商標というべきものであり、医療機関や医療従事者のみならず、一般の需要者の有する通常の注意力においても、本件商標をその指定商品について使用したときには、引用商標の指定商品との間に混同が生じるおそれはないとみるのが相当である。
したがって、申立人の上記ア及びイの主張は採用できない。
(5)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性について
引用商標は、上記1のとおり、申立人の業務に係る商品について使用する商標として、本件商標の国際商標登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものである。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
本件商標と引用商標とは、上記2のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであるから、両者の「N」の文字部分の態様が同じであるとしても、類似性の程度は低いものといえる。
(3)出所の混同のおそれについて
上記(1)及び(2)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているとしても、本件商標と引用商標との類似性の程度が低いことからすれば、本件商標に接する取引者、需要者が、申立人の業務に係る引用商標を連想又は想起するということはできない。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
(4)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第10号該当性について
引用商標は、上記1のとおり、申立人の業務に係る商品を表すものとして、本件商標の国際商標登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されており、本件商標の指定商品と申立人商品が同一又は類似するとしても、上記2のとおり、本件商標と引用商標は、類似する商標とはいえないから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)引用商標は、上記1のとおり、申立人の業務に係る商品を表すものとして、本件商標の国際商標登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されているとしても、上記2のとおり、本件商標と引用商標は、類似する商標とはいえないから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
(2)申立人の主張について
申立人は、申立人がドイツで設立した連結子会社であるNSK社が、2013年頃に申立人との提携関係を解消した後、「NWT GmbH」へ社名を変更し、所在地も変更したが、当該「NWT GmbH」は、商標権者と名称に共通性を有し、所在地を商標権者と同一とすることから、商標権者と実質的に同一の者である旨主張し、そのことから、社会通念に照らして商標権者が引用商標を知らずして、偶然に引用商標と酷似する本件商標を出願したとはいい難い旨主張する(甲37、甲38)。
また、申立人は、本件商標は、引用商標に化体した業務上の信用を不正利用することを企図して出願されたものであり、仮に本件商標の登録を許すならば、引用商標の出所表示機能を希釈化させ、名声を毀損させるおそれがある旨主張する。
しかしながら、上記「NWT GmbH」が、商標権者と実質的に同一人であるとしても、業務上の提携関係を解消し、名称及び所在地を変更したことのみをもって、本件商標の出願の経緯に不正の目的があるとみるべきではない上、本件商標が引用商標に化体した業務上の信用を不正利用することを企図して出願されたものであり、引用商標の出所表示機能を希釈化させ、名声を毀損させるおそれがあるという申立人の主張を裏付ける具体的、客観的な証拠も見いだせない。
(3)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)

別掲2(引用商標)

異議決定日 2023-09-19 
審決分類 T 1 652・ 25- Y (W10)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大森 友子
特許庁審判官 豊瀬 京太郎
小俣 克巳
登録日 2021-05-12 
権利者 NWT Management GmbH
商標の称呼 エヌダブリュウテイ 
代理人 弁理士法人栄光事務所  
代理人 弁理士法人岡田国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ