• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W34
管理番号 1402998 
総通号数 22 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-03-09 
確定日 2023-10-06 
異議申立件数
事件の表示 登録第6656719号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6656719号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6656719号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「MAC」の文字を横書きしてなり、令和4年4月24日に登録出願、同年11月18日に登録査定され、第34類「マッチ」を指定商品として、同年12月26日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において、UAE及びクウェートをはじめとする世界各国における需要者の間で、「たばこ及びたばこ関連商品」の商標として広く認識されていると主張されている商標は、別掲2のとおりの商標(以下「引用商標1」という。)及び別掲3のとおりの商標(以下「引用商標2」という。)である。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第47号証(枝番号あり。以下「甲○」と表記する。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)本件商標と引用商標1(甲2)との対比
本件商標は、「MAC」の欧文字をありふれた書体で表した商標であり、引用商標1はデザイン化した「MAC」の欧文字からなる商標であるから、両商標は、該文字に応じて「マック」の称呼が生じる。
観念については、本件商標及び引用商標1を構成する「MAC」の欧文字は、男性の名前やパソコン「マッキントッシュ」の略称などとして使用されている語であり、様々な意味合いを生じるから、両商標から特定の観念は生じない。
外観については、本件商標は「MAC」をありふれた書体で表している一方、引用商標1は「MAC」の文字をデザイン化した態様であるものの、両者はともに「MAC」と認識されるものであるから、両商標は外観において略同一である。
以上のとおり、本件商標は、称呼、外観、観念の全てにおいて、引用商標1に類似する商標である。
(2)本件商標と引用商標2(甲3)との対比
本件商標は「MAC」の欧文字をありふれた書体で表した商標であり、引用商標2はデザイン化した「M」、「M」及び「MAC」の欧文字を三段に表した商標であるから、本件商標からは該文字に応じて「マック」の称呼が、引用商標2については「MAC」部分から該文字に応じて「マック」の称呼が生じる。
観念については、本件商標及び引用商標2を構成する「MAC」の欧文字は、男性の名前やパソコン「マッキントッシュ」の略称などとして使用されている語であり、様々な意味合いを生じるから、両商標から特定の観念は生じない。
外観については、本件商標は「MAC」をありふれた書体で表している一方、引用商標2の「MAC」の文字部分はデザイン化した態様であるものの、両者はともに「MAC」と認識されるものであるから、両商標は外観において略同一である。
以上のとおり、本件商標は、称呼、外観、観念の全てにおいて、引用商標2に類似する商標である。
(3)不正の目的
ア 申立人と本件商標権者は、イラクをはじめ、UAE、トルコ、ルーマニア、欧州において商標「MAC」をめぐり争った経緯がある(甲5〜甲7)。
したがって、本件商標権者は申立人の存在を把握しており、申立人の名声や評判による利益を得ようと試み、不正の目的を持っていることは明らかである。
イ 本件商標権者は将来の市場に目を向ける方針に切り替え、申立人が商標登録を保有している近隣の国々で、申立人が登録を有していない国に出願する戦略を取り始めた(甲8〜甲26)。
このように、少なくとも9か国において本件商標権者は、一貫して申立人の商標を模倣した商標について出願をすることに固執しており、申立人が商標登録を受けていない国を狙い、申立人に先行して商標登録を受けることで申立人に損害を加える目的で、悪意をもって出願がなされていることに疑いの余地はない。
以上の事実からすれば、本件商標権者が、本件商標の登録出願時及び査定時において、不正の目的をもって、本件商標を使用していたことは明らかである。
ウ 以上の事実を総合的に勘案すると、本件商標権者は、申立人の引用商標1及び引用商標2を始めとする申立人商標を十分に認識していた。よって、本件商標権者は、本件商標の登録出願時及び査定時において、不正の目的をもって、本件商標を使用していたものである。
(4)引用商標の周知性
引用商標は、申立人によるたばこやたばこ関連商品の製造・販売の結果、UAEをはじめとする各国において、他人(申立人)の業務に係る商品や役務を表示するものとして、需要者に広く知られるに至った商標である。引用商標が周知性を獲得するに至った経緯は以下のとおりである。
ア 申立人は、2010年の設立依頼、高品質のたばこの製造・販売等を行っている(甲27)。申立人は様々なたばこのブランドを保有しているが、その中でも「MAC」は申立人の主力商品の一つであり、申立人のパンフレットにおいて大々的に取り上げられている。
イ 申立人は商標権の重要性を熟知していることから、販売地域・販売予定地域において精力的に申立人商標の出願・登録を進めている。申立人の商標出願国の一例は申立人商標リスト(甲4)に記載のとおりだが、例えば引用商標2と同様の商標については第34類を指定商品とし、申立人の所在地であるUAEを始めとする中東や近隣諸国だけでなく、シンガポール、マレーシア、韓国などのアジア圏、ニュージーランド、オーストラリア(オセアニア圏)から、ペルー、ブラジル、コロンビア、ウルグアイ、アルゼンチン、ガイアナ、ベネズエラなど中南米に至るまで、2017年頃から商標出願を行い、商標登録を得ている(甲28〜甲39)。商標出願はそれぞれの国での使用を意図して行うものであり、各国での登録から5年程度が経過していることから、一定の周知性を獲得したと考えることができる。
ウ 使用の事実
申立人の商品はソマリア、エジプト、リビアなどアフリカ諸国だけでなく、アフガニスタン、イラク、ウズベキスタンなど、中央アジア、南アジア、西アジアへも輸出されており、梱包リストには、たばこのブランドを示す「MAC」の文字が、サイズを示す文字「KING SIZE」や商品がたばこであること示す「CIGARETTE」、種類を示す「BLUE」などの文字と共に使用されており、申立人が商品の包装だけでなく、梱包リストにも「MAC」の文字を使用していることがわかる(甲40〜甲45)。
また、アゼルバイジャンやカザフスタンに宛てた請求書においても、上述した梱包リストと同様に「MAC」の文字を使用している(甲46、甲47)。
上述のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、UAEにとどまらず、中東、アフリカ、中央アジア、西アジア、南アジア、東南アジアに南米に及ぶ各国の需要者に広く知られている。
エ まとめ
上述のとおり、本件商標の登録出願日前から本件商標権者は申立人の商標を模倣した商標について世界各国で出願や争いを繰り返しており、引用商標が申立人の商標であることを十分に認識しているにも関わらず、申立人が日本でまだ商標出願していないことを奇貨として、引用商標と同一の称呼が生じる本件商標について登録出願を行ったものであり、本件商標の登録出願時及び査定時に「不正の目的」を持って本件商標の使用の意思を有していたことは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
引用商標はUAEにとどまらず、中東、アフリカ、中央アジア、西アジア、南アジア、東南アジア、南米に及ぶ各国の需要者に広く知られている商標である。
仮に引用商標の周知性が認められないとしても、本件商標権者は申立人の引用商標やその他の商標の存在を知りつつ、申立人が商標登録を受けていない国を狙って、引用商標やそれに類似する商標、その他申立人の商標に類似する商標について、繰り返し商標出願を行っている。
このような出願を行うのは、引用商標が一定の需要者の間で広く知られており顧客吸引力を有するため、顧客吸引力ヘのフリーライドを意図しているからであり、執拗に出願を繰り返していることから、申立人の営業を妨害する目的を有していることは明らかである。かかる経緯による商標出願について商標登録を容認することは、申立人の所有に係る引用商標に化体した業務上の信用を失墜させ、申立人の世界各国における営業努力や投資を無にさせるものであるばかりでなく、海外において一定程度の周知性を備えた商標について日本国内における悪意を有する第三者による商標登録を容認することに他ならない。
さらに、同種の事案の発生を助長することにもなり、かかる取り扱いは国際社会の合意を得られるものでは到底なく、我が国の信用失墜をも招くものである。本件商標に係る出願は社会的妥当性を著しく欠く行為であって、本件商標の登録を認めることは商標法の予定する法秩序に反するものである。
以上のとおり、本件商標は社会の一般的道徳観念に反する剽窃的意図という不正の目的で行われたものであり、出願の経緯に社会的妥当性を欠くものであるため、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第19号について
(1)引用商標の著名性について
申立人は、高品質のたばこの製造、販売等を行っているところ、「MAC」は主力商品の一つであり、アフリカ諸国、中央アジア、南アジア、西アジアに輸出され、商品の包装や梱包リストに「MAC」の文字を使用しているから、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、UAEのほか、中東、アフリカ、中央アジア、西アジア、南アジア、東南アジア、南米に及ぶ各国の需要者に広く知られている旨を主張する。
しかしながら、申立人提出の証拠及び主張によれば、引用商標を包装箱に表示する「たばこ」(甲10、甲11)が申立人の取扱商品にあるとしても、当該商品の具体的な販売実績(販売数量、売上高など)及び広告宣伝実績(広告宣伝媒体、広告宣伝費など)は明らかではない。
そうすると、引用商標に係る商品「たばこ」の外国の需要者の間における認知度の程度を客観的に評価することはできず、引用商標が、外国における需要者の間に広く認識されている商標と認めることはできない。
(2)不正の目的について
申立人は、本件商標権者とは外国で「MAC」の商標をめぐり争った経緯があり、また、本件商標権者は一貫して申立人の商標を模倣した商標を登録出願することに固執しており、申立人が商標登録を受けていない国を狙い、申立人に先行して商標登録を受けていることから、本件商標も、申立人に損害を加える目的で悪意をもって登録出願されている旨を主張する。
しかしながら、外国における商標に関する紛争(申立人の提出証拠には訳文がないため、争いの具体的な内容は明らかではない。)や商標登録出願に関するあつれきがありながら、本件商標が我が国において登録出願されているとしても、本件商標の指定商品「マッチ」と引用商標の使用に係る商品「たばこ」とは非類似の商品であること、本件商標と引用商標とは「MAC」の文字の書体や図案化の有無などが異なることを鑑みれば、それら紛争と本件商標の登録出願との直接の関連性は明らかではなく、その出願目的を推し量ることはできない。
また、本件商標権者が引用商標の存在を認識していたとしても、それのみでは本件商標の登録出願に不正の目的があったと認めるに足りない。
さらに、申立人提出の証拠からは、本件商標権者が、我が国において、本件商標の商標権を持ち出して、申立人の事業活動を阻害するために何らかの行為をしたり、不正の利益を得たなどの具体的な事実は確認できない。
そうすると、本件商標の登録出願の目的及び経緯に、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。)があったと認めることはできない。
(3)小括
以上によれば、引用商標は、外国における需要者の間に広く認識されている商標ではなく、また、本件商標は不正の目的をもって使用をするものとはいえないから、両商標が同一又は類似する商標であるかにかかわらず、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第7号について
本件商標の登録出願は、上記1(2)のとおり、申立人提出の証拠によっては、その目的及び経緯は必ずしも明らかではなく、不正の利益を得る目的又は他人に損害を加える目的などの不正の目的をもってなされたとはいえない。
その他、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
そうすると、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標とはいえない。
したがって、本件商標は、商標法4条第1項第7号に該当しない。
3 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号のいずれの規定にも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
別掲1(本件商標)




別掲2(引用商標1)




別掲3(引用商標2)




(この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。
異議決定日 2023-09-22 
出願番号 2022047482 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W34)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 矢澤 一幸
特許庁審判官 小田 昌子
阿曾 裕樹
登録日 2022-12-26 
登録番号 6656719 
権利者 ハイラト アル ミナフィー シーオー フォー トランスポート アンド ジェネラル トレーディング
商標の称呼 マック、エムエイシイ 
代理人 崔 海龍 
代理人 弁理士法人太陽国際特許事務所 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ