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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W09 |
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管理番号 | 1402993 |
総通号数 | 22 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2023-10-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-11-18 |
確定日 | 2023-09-29 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6623940号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6623940号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6623940号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和4年4月15日に登録出願、第9類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同年9月9日に登録査定され、同年10月5日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、以下のとおりであり(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)、いずれも現に有効に存続しているものである。 1 登録第4413828号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:平成9年12月26日 設定登録日:平成12年9月1日 指定商品:第9類に属する商標登録原簿に記載の商品 2 登録第4980677号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:別掲3のとおり 登録出願日:平成16年2月18日 設定登録日:平成18年8月18日 指定商品:第9類に属する商標登録原簿に記載の商品 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第19号及び同項第7号に該当し、同法第43条の2第1号によって取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 本件商標と引用商標 (1)本件商標と引用商標の比較 本件商標は、「T」を語頭に配置し、それに続く「CELL」の4文字の欧文字を少し小さく記載し、同体同書にて左横書してなるのに対し、引用商標は、いずれも「TCL」の欧文字を均等の大きさで同体同書にて書してなる。 外観については、本件商標も引用商標のいずれも「T」、「C」、「L」をその語順で全て含んでいるが、欧文字「E」と2つの「L」の有無の違いにより、外観が異なっている。 次に、称呼は、本件商標からは「テイセル」、「セル」に加えて、「テイシイイーエルエル」の称呼が生じ、また、「ELL」から「エル」という称呼が生じる(甲3)ことから、引用商標の称呼と同様に全体として「テイシイエル」の称呼が生じる。 つまり、本件商標からは、引用商標と同一の称呼が生じる。 また、本件商標の文字「TCL」及び引用商標は、いずれも辞書等に載録されている語ではなく、特定の意味がないことから観念上は比較することができないものである。 さらに、商取引において、多くが口頭で行われることに鑑み、本件商標からは引用商標の称呼と同一称呼が生じることから、本件商標は引用商標と同一又は類似商品に使用された場合、取引上、紛らわしい商標であるといえる。 (2)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の比較 本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と類似する商品を指定している。 (3)引用商標の周知・著名性について 申立人は、中国初の合弁企業として、1981年に設立された中国広東省恵州市に本社を有するTCL科技集団股有限公司(TCL TECHNOLOGY GROUP CORPORATION)の傘下にある企業である(以下、TCL科技集団股有限公司及び申立人を集合的に「TCLグループ」という。)。 TCLグループは、電気機器メーカーとして世界市場で大きな成果を上げ、また、電気機器業界等において多くの賞を受賞している(甲4)。 また、TCLグループの活動は広く注目されており、様々な媒体で取り上げられている(甲5)。 さらに、自らも積極的に宣伝広告活動を行っており、中国国内でだけでなく世界で広く知られるための努力を行っている。宣伝広告費の概算は、2017年は約133万円、2018年は約459万円、2019年は約4278万円、2020年は約1億1354万円、2021年は約1億8412万円である。 加えて、2013年には、アメリカ合衆国カルフォルニア州ロサンゼルス、ハリウッド通りに位置する中国風寺院建築の世界的な著名な劇場(通称:チャイニーズ・シアター)の命名権を獲得し、その名称をTCL CHINESE THEATER(TCLチャイニーズシアター)とした(甲6)。 また、2018年には国際バスケットボール連盟(FIBA)と包括的なグローバルパートナーシップを締結し、海外バスケットボールでは、NBAのチーム、さらにフィリピンバスケットボール協会のパートナーにもなっている。バスケットボール以外では、アメリカのサッカーチーム、ブラジルサッカー同盟、アルゼンチンのフットボールクラブともパートナーシップを締結している(甲7)。その内FIBAとの提携関係は、2020年から2023年の期間へと延長された(甲8)。 日本では、TCLグループは、日本法人である株式会社TCLジャパンエレクトロニクスを2015年に設立し(甲9)、市場参入を図っている。 また、SNS(Twitter、INSTAGRAM、Youtube)を利用し、積極的に発信も行い、上述の広報活動に加え、2021年シーズンからは、横浜DeNAベイスターズのオフィシャルスポンサー契約を締結し、野球場やスポーツの場面での宣伝広告、野球以外にもフィギアスケート選手を採用した宣伝広告、サッカー選手を採用した宣伝広告活動も積極的に行っている(甲10)。 その他に、TCLグループは、2018年にはオンキヨー株式会社と業務提携し、2022年以降はパナソニックのテレビ生産を受託することに正式に合意している(甲11)。 その結果、サーチエンジンであるGoogle.comの日本語サイトにおいて「TCL」を入力すると238,000,000件にも及ぶ件数が抽出され、そのトップにはTCL家電−TCLジャパンが掲載されている(甲12)。 以上のとおり、申立人は世界的にも著名な企業のグループ企業であり、引用商標は広く使用されており、本件商標の出願日以前には広範囲で、引用商標が需要者に知られていることは明らかである。 (4)本件商標の商標権者の不正の目的について 申立人は、前述のとおり、世界及び日本において積極的に宣伝広告活動を行ってきており、広く知られた企業である。遅くとも本件商標の登録出願時には、我が国の需要者間に広く知られており、TCLグループを本件商標の商標権者は知っていたのが自然と考えられる。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について 本件商標は、引用商標と同一又は類似する商品を指定しており、本件商標の称呼の一つは引用商標と同一である。 以上のことから、本件商標が指定商品に使用された場合、申立人名義の先行商標と類似する商標を同一又は類似する商品に使用するものに該当する。 つまり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 3 商標法第4条第1号第19号該当性について 本件商標と引用商標は、類似している。また、引用商標は、日本を含む世界において一定の周知度を取得している。本件商標が後願であること、その指定商品が申立人の商品と同一又は類似することに鑑み、本件商標の出願人が引用商標の存在を知って出願したことは最も自然であると考えられる。 つまり、本件商標は、他人の著名な商標と類似しており、不正の目的をもって使用する商標に該当する。 4 商標法第4条第1号第7号該当性について 万一、本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同項第19号に該当しないとした場合であっても、引用商標には使用による信用が化体されており、商標法上、保護すべき商標であるので、本件商標の登録は、社会的相当性を欠くものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり、「TCELL」(語頭の「T」の文字は他の文字より大きく表されている。以下同じ。)の文字を斜体で横書きした構成からなるところ、当該文字は、辞書等に載録されている語ではなく、特定の意味合いをもって認識されているような事情も見いだせないことから、特定の観念を有しない一種の造語として認識、把握されるものである。 そして、特定の語義を有しない造語にあっては、これを称呼する場合には、我が国において親しまれているローマ字の読み又は英語の読みに倣って称呼するのが自然であるところ、例えば、英語「cell」が「セル」と発音されることよりすれば、本件商標からは、「ティーセル」の称呼を生じるとみるのが相当である。 そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「ティーセル」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標について ア 引用商標1は、別掲2のとおり、白抜きの幾何図形を内包する黒塗り楕円形状図形とその下に「TCL」の欧文字を横書きした構成からなるところ、当該図形部分と文字部分とは、いずれも重なることなく間隔を空けて配置されているから、視覚上、分離して看取、把握されるものであり、また、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえないものであるから、当該文字部分が独立して自他商品の出所識別標識として機能し得るものである。 そして、本件商標の構成中の「TCL」の文字は、辞書等に掲載のないものであって、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として理解されるものである。 したがって、引用商標1は、その構成文字に相応して「ティーシーエル」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 イ 引用商標2は、別掲3のとおり、「TCL」の欧文字を横書きした構成からなるものである。 そして、「TCL」の文字は、上記アのとおり、一種の造語として理解されるものである。 したがって、引用商標2は、その構成文字に相応して「ティーシーエル」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 (3)本件商標と引用商標の類否について 本件商標と引用商標の類否を検討すると、両者は、それぞれ上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、外観においては、本件商標の構成文字「TCELL」と引用商標の構成文字「TCL」の比較において、両者は3文字目及び4文字目の「EL」の文字の有無に差異を有し、この差異が共に5文字又は3文字という少ない文字構成からなる両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は小さくなく、相紛れるおそれのないものとみるのが相当である。 次に、本件商標から生じる「ティーセル」の称呼と引用商標から生じる「ティーシーエル」の称呼を比較すると、両者は後半の「セル」と「シーエル」の音に差異を有し、この差異が比較的短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は小さくなく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、かれこれ聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。 さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。 そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。 その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。 (4)小括 以上のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第19号該当性について (1)引用商標の周知性について 申立人は、中国初の合弁企業として、1981年に設立されたTCLグループの傘下にある家電企業であり(甲4)、TCLグループは、2015年に日本法人を設立した(甲9)。 また、TCLグループは、2014年以降、テレビ等に関する賞を多数受賞していること(甲4)、2013年に米国の劇場(チャイニーズ・シアター)の命名権を獲得し、「TCL CHINESE THEATER」と命名したこと(甲6)、2018年に国際バスケットボール連盟と包括的なグローバルパートナーシップを締結するなど、その他にもブラジル、アルゼンチン、オーストラリアのサッカーチームともスポーツパートナーとなっていること(甲7、甲8)、また、SNSを利用した情報発信を行っていること、TCLグループの日本法人は、2021年から野球場やスポーツの場面での宣伝広告やフィギアスケート選手やサッカー選手を採用した宣伝広告も行っていること(甲10)、さらに、TCLグループの略称として「TCL」の文字又は引用商標2を使用していることなどが認められる。 なお、申立人は、2017年ないし2021年の宣伝広告費の概算を主張しているが、それを裏付ける証拠は見いだせないから、その金額を採用することはできない。 また、引用商標1に関しては使用に係る証拠が見いだせない。 そうすると、引用商標2は、TCLグループのブランドとして、電気機器業界において、相当程度知られていることがうかがえるとしても、申立人の主張及び同人が提出した証拠によっては、引用商標が使用されている商品の日本国内又は外国における売上高、販売数量などの販売実績はもとより、日本国内又は外国において引用商標がいかなる商品に使用されているのか確認ができないことから、引用商標の周知性を立証する証拠としては不十分なものといわざるを得ない。 したがって、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。 (2)不正の目的について 引用商標は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間で広く認識されていたとは認められないものであり、上記1(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることのないものというのが相当である。 そうすると、本件商標は、使用商標の信用や名声にただ乗りする又は希釈化するなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。 (3)小括 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものといえない。 3 商標法第4条第1項第7号該当性について 上記1(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であり、上記2(2)のとおり、本件商標は、引用商標を連想又は想起させるものでなく、不正の目的をもって使用をするものと認められないものである。 さらに、本件商標が、国際信義に反する又はその出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものといえない。 4 むすび 以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) ![]() 別掲2(引用商標1) ![]() 別掲3(引用商標2) ![]() (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2023-09-21 |
出願番号 | 2022044142 |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Y
(W09)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
鈴木 雅也 |
特許庁審判官 |
渡邉 あおい 小松 里美 |
登録日 | 2022-10-05 |
登録番号 | 6623940 |
権利者 | 冠元科技股▲ふん▼有限公司 |
商標の称呼 | テイセル、セル |
代理人 | 村井 康司 |
代理人 | 崔 海龍 |
代理人 | 魯 佳瑛 |