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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W0935 |
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管理番号 | 1402986 |
総通号数 | 22 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2023-10-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-09-30 |
確定日 | 2023-10-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6590882号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6590882号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6590882号商標(以下「本件商標」という。)は、「Sustech」の欧文字を標準文字で表してなり、令和4年1月13日に登録出願、第9類、第35類、第37類、第39類及び第40類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年7月6日に登録査定され、同年7月22日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、まとめて「引用商標」という。)、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。 (1)登録第5509574号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成 別掲1のとおり 指定役務 第42類に属する商標登録原簿に記載の役務 登録出願日 平成22年1月27日 設定登録日 平成24年7月27日 (2)登録第6021716号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成 別掲1のとおり 指定商品 第9類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 平成29年5月9日 設定登録日 平成30年2月23日 (3)登録第6036046号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の構成 別掲2のとおり 指定商品及び指定役務 第19類及び第37類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務 登録出願日 平成29年6月1日 設定登録日 平成30年4月13日 (4)登録第5606767号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の構成 サンテックパワー (標準文字) 指定商品 第9類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 平成25年4月18日 設定登録日 平成25年8月9日 (5)登録第5663275号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の構成 サンテックパワー (標準文字) 指定商品 第9類「蓄電池」 登録出願日 平成25年4月18日 設定登録日 平成26年4月11日 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標はその指定商品及び指定役務中第9類「全指定商品」及び第35類「全指定役務」について、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当し、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。 (1)引用商標について ア 甲第2号証の1ページに参照されるように、申立人「ウーシー サンテック パワー カンパニー,リミテッド」(無錫サンテックパワー)は太陽光発電のセル・モジュール製造販売を行う中国の会社であり、日本国内で太陽光モジュールシステム販売を行う「サンテックパワージャパン」の親会社である。 イ 甲第2号証の2ページないし4ページは、申立人を権利者とする登録商標(引用商標1〜3)である。それらは、それぞれ白抜きのS字を模した図と文字列「SUNTECH」を横並びにして配置するものであり、図の部分において色が違う点を除き、同一の商標である。 同じく5ページ、6ページは、申立人を権利者とする登録商標(引用商標4、5)である。それらは、標準文字「サンテックパワー」である。 ウ 甲第2号証の7ページは、「サンテックパワージャパン株式会社」のホームページであり、引用商標3と同一の商標が表示されている。 同じく8ページは、PV Expo 2017(PV EXPO 2017 第10回[国際]太陽電池展:東京ビッグサイト)に出展した際のレポートである。展示ブースにおいて、引用商標3と同一の商標が表示されている。 同じく9ページないし15ページは、自社ニュースリリースであり(2017年4月24日〜2022年7月24日)、サンテックパワージャパンは目視点検、草刈等の環境整備、年次法定点検の調整など太陽光発電所の保守管理業務(O&Mサービス)を全国で31か所実施していること、サンテックエナジーディベロップメントは国内19か所の太陽光発電所の開発を行ったことや、それら発電所におけるサンテックパワー社製太陽電池モジュールの設置数、発電規模などが記載され、また、申立人がドイツのEUPD Researchが実施する調査において、「Top Brand PV 2022」を7年連続で受賞したことなどが引用商標3の表示と共に記載されている。 同じく16ページないし18ページは、2009年6月25日及び26日の新聞記事であり、太陽電池見本市「PV Japan」において引用商標3と同一の商標が使用された展示ブースの写真が掲載され、申立人が生産量で世界3位の太陽電池メーカーである旨などが記載されている。 同じく19ページは、「PVeye」(太陽光発電の専門メディア)の2017年9月号に掲載された記事であり、引用商標3の表示とともに、サンテックパワージャパンの歴史が紹介されている。 同じく20ページないし23ページは、2016年3月11日付で大日本印刷株式会社により「サンテックパワージャパン株式会社」宛に送付された展示会「PV EXP0 2016」の実施報告書であり、8小間のブースで展示を行い、ブースには引用商標3が表示されていることなどが示されている。 同じく24ページは、千葉県にあるZOZOマリンスタジアムにおいて表示される広告(「太陽光発電は(図)SUNTECH」)であり、2020年4月13日付のインターネット記事に掲載された写真である。この広告の写真は他にも多く存在する。 同じく25ページは、申立人の紹介ページであり、「無錫サンテックパワーは世界有数の太陽光発電専業メーカーです。2001年に創業し、今年で20周年を迎えました。」「サンテックパワーの太陽電池モジュールは世界中の主要な太陽光発電施設に採用されています。」「世界的に定評があるドイツの第三者調査機関EUPD Research社が毎年実施する調査において、ドイツ、オランダ、スイス、オーストリアでの「TOP BRAND PV 2021」を6年連続で受賞しました。上記に加え、オーストラリアとMENAにおいても「TOP BRAND PV」を受賞し、同地域の市場でもブランド認知の高い太陽光発電メーカーとして評価されています。」と記載されている。引用商標が世界中で使用され、世界的に認知されている。 (2)引用商標の周知性について ア 上記(1)によれば、引用商標3ないし5及び「SUNTECH」「サンテック」「サンテックパワージャパン」の標章が、本件商標の出願日及び登録日において、申立人及び「サンテックパワージャパン株式会社」(以下、両者をあわせて「申立人等」という。)の使用する標章として、日本国内及び外国において周知・著名であることは明らかである。 イ 甲第3号証は、株式会社電通東日本による「企業認知度・イメージに関する調査 集計結果レポート」(2014年12月実施:ネットリサーチ)である。 甲第3号証の2ページに、調査期間(2014年12月24日〜2015年1月7日)、サンプル数(300)、調査対象者詳細データが記載されている。一般家庭用の太陽光発電システムの購入予定者や購入者を含むものであり、一般消費者に対するアンケートである。「太陽光発電システム関連企業の事業認知度」ではサンテックパワーが太陽光発電システムを扱っている企業として50%以上に認知されていること(5ページの調査結果(Q10))、「サンテックパワーの社名認知度」では60%上が社名を知っていること(9ページの調査結果(Q14))など調査結果が示されている。 ウ 甲第3号証のアンケート結果によれば、「サンテックパワー」という会社が太陽光発電システムを取り扱う会社として、一般消費者に認知されていることがうかがえる。また、新幹線での広告やテレビCMも実施していることが確認され、2014年時点において相当な広告活動を実施していた事実が存在する。また、これら広告、CMには、引用商標3が表示されていることが確認できる。 以上より、引用商標3が本件商標の出願日よりも7年ほど前の時点で積極的に広告に用いられており、「サンテックパワージャパン株式会社」の使用する商標として、日本国内において周知・著名であったことがうかがえる。 エ 以上のア〜ウによれば、引用商標3は、「サンテックパワージャパン株式会社」が太陽光発電システム(装置)、発電事業、保守管理業務について使用する商標として、本件商標の出願日及び登録日のいずれにおいても、日本国内において周知著名であったといえる。 また、各種メディアや広告によって表示される引用商標4及び5、及び「SUNTECH」「サンテック」「サンテックパワージャパン」の標章も、「サンテックパワージャパン株式会社」の使用する商標として、日本国内において周知・著名であったといえる。 (3)本件商標と引用商標の類似性 ア 本件商標「Sustech」は、標準文字で構成され、「サステック」の称呼を生じさせるものである。 引用商標1ないし3「図+SUNTECH」は、平行四辺形に白抜きのS字を模した図と一般的なアルファベット文字を黒色で表示した「SUNTECH」とを、横一列に配置したものであり、「サンテック」の称呼を生じさせるものである。 イ 本件商標と引用商標1ないし3を比較すると、称呼において「サステック」と「サンテック」は、語頭の2文字目が「ス」と「ン」が異なるものの、その他において同一である。異なる部分は中間にある。文字数は互いに5文字であり、一連に称呼されるものである。 特に、語頭の1文字目が「サ」で同一であり、語尾の3文字「テック」が同一であることからすると、「サ○テック」と称呼されたときに、語頭の「サ」や、語尾の「テック」の印象が強いことから、「○」の部分にいかなる一文字が配置された場合においても、聞き分け難いものとなる。 そうすると、全体として互いに聞き誤られる可能性は明らかに高いものであり、称呼において相紛らわしい類似の商標である。 ウ 観念について、本件商標「Sustech」の「Sus」の部分は造語であり特段の意味を生じさせるものではない。「tech」の部分は「テクノロジー」「技術」などの意味を生じさせる。なお、ステンレス金属材料(錆びにくい材料)の表記として「SUS」が慣用されているが、いずれの文字も大文字で表示されるものであって、「Sus」といった用いられ方は見受けられるものではない。全体としては、「○○のテクノロジー」といった造語を構成するものである。 一方で、引用商標「図+SUNTECH」の「SUN」の部分からは「太陽」の意味を生じさせる。「TECH」の部分は「テクノロジー」「技術」などの意味を生じさせる。全体としては、「太陽のテクノロジー」といった造語を構成するものである。 以上を踏まえると、両者は語頭の「Sus」と「SUN」において比較できず、語尾の「テクノロジー」の部分において共通することから、観念において相紛らわしい類似の商標である。 なお、引用商標の「図」の部分からは四角形やSの文字の意味が生じるといった違いがあるとしても、両商標は互いに全体として造語であり、「○○のテクノロジー」ということでは共通することを踏まえると、全体として観念において相紛らわしい類似の商標である。 エ 外観について、本件商標「Sustech」の語頭の「S」の部分と、引用商標「SUNTECH」の語頭の「S」の部分は共通する。両商標の語尾の「tech」と「TECH」は、大文字と小文字の違いがあるものの、外観の違いに与える影響は少ないものである。したがって、本件商標と引用商標の文字部分は、外観において相紛らわしい類似の商標である。 引用商標の「図」の部分は、文字部分「SUNTECH」と分離して観察され得るものであることから、当該「図」の部分を除いて両商標を対比観察されることに妥当性はある。 したがって、全体として外観において相紛らわしい類似の商標である。 オ 引用商標4及び5は、カタカナの標準文字「サンテックパワー」で表示されるものであるが、力の意味を有する「パワー」の部分と、その前段の「サンテック」は分離して認識されるものと考える。 そうすると、引用商標4及び5において「サンテック」が抽出される場合には、本件商標「Sustech」との間において、上記のイを参照すれば、称呼において相紛らわしい類似の商標となる。 カ 取引の実情の考慮について 「取引の実情」としては、商品の取引方法、需要者層、その他の一般的取引事情、さらに、商標の周知性、他の商標の存在状況、商標の使用状況・態様等一切の実情が含まれ、類否判断においてはこれらを考慮すべきである。 上記(2)の事情を踏まえると、太陽光発電に関する業界及び一般需要者において、引用商標及び「サンテックパワージャパン」の社名の認知度、知名度は相当高いものであって、太陽光発電に関係する装置、システム、メガソーラーにおいては、「SUNTECH」や「サンテック」を直ちに思い浮かぶものといえる。 このような状況において、少なくとも称呼において類似する本件商標の称呼「サステック」が、例えば、電話取引等で使用された場合には、相手方に対し、著名性の高い「SUNTECH」「サンテック」「サンテックパワー」と混同を生じさせる可能性が高く、相紛らわしいものとなることは容易に想像できる。 キ 以上の外観、称呼、観念及び取引の実情を考慮すると、本件商標は、引用商標1ないし3や、サンテックパワージャパン株式会社の略称である「サンテック」や「サンテックパワー」(引用商標4、5)と相紛らわしく、これらの引用商標などと全体として類似する商標といえる。 (4)商標法第4条第1項各号への該当性 ア 商標法第4条第1項第7号について 本件商標は、申立人等が引用商標の使用を開始して既に日本で相当の著名性が存在していた後に、我が国に登録出願したものであることは明らかである。 そして、本件商標と引用商標4、5及び「SUNTECH」「サンテック」「サンテックパワージャパン」は辞書等に掲載されていない造語であり、その独創性は高いものといえることから、本件商標権者が偶然にそれら引用商標などと相紛らわしい類似の商標を採択したとは想定できず、むしろ、本件商標の出願は、申立人等の引用商標などの存在を認識し、申立人の事業の阻害、あるいは、相紛らわしい類似の商標を利用した有利な事業遂行を目的に採択したものと推認できる。 してみれば、本件商標の登録出願の経緯には、その目的からすれば社会的妥当性を欠くものがあり、その登録を認めることは、健全な商取引の遂行を阻害し、公正な競業秩序を害するものであるから、公序良俗に反するものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。 イ 商標法第4条第1項第10号について 本件商標と引用商標とは互いに類似する商標である。 次に、本件商標と引用商標が使用される商品、役務は、本件商標の指定商品中、少なくとも、第9類「太陽光発電パネル,太陽光発電装置」、第35類「分電盤・インバーター・配電用又は制御用の機械器具・回転変流機・調相機・太陽電池・太陽光発電装置・燃料電池その他の電池の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」において用途、需要者の範囲が一致する。 したがって、本件商標の指定商品は、申立人の使用に係る商品、役務と同一又は類似するものである。 よって、本件商標は、日本国内において周知・著名な引用商標と同一又は類似する商標であって、その指定商品も引用商標が使用される商品・役務と同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。 ウ 商標法第4条第1項第11号について 本件商標と引用商標2、4及び5は、商標が類似する。 本件商標の第9類と第35類の指定商品・役務において付与される類似群コード11A01、11A03は、引用商標2、4及び5の指定商品の類似群コードと共通する。 本件商標は、引用商標2、4及び5の登録日よりも後に出願されたものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 エ 商標法第4条第1項第15号について 引用商標は、特に太陽光発電に関する商品、役務について高い著名性を獲得しているのであって、当該分野の取引者・需要者において広く知られるに至っていることは明らかである。 本件商標の指定商品と、引用商標2の指定商品「太陽光発電インバータ」、引用商標4の指定商品「太陽光発電装置,太陽光発電装置用のパワーコンディショナー,太陽光発電装置用のモニター装置」、引用商標5の指定商品「蓄電池」は、取引者・需要者の範囲が一致し得るものであり、非常に関連性が高いものである。 このため、引用商標の周知著名性が高く、本件商標と引用商標とが類似する状況において、本件商標権者によって本件商標が使用された場合には、その商品に接する取引者・需要者が、その商品が申立人やその子会社の商品であるとか、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずる可能性は十分に予想され、取引者・需要者がその出所について混同を生じることは明らかである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 オ 商標法第4条第1項第19号について 引用商標は、日本の太陽光発電業界において相当の著名性を獲得している。 また、申立人やサンテックパワージャパン株式会社などの関係会社は、日本国内のみならず世界的な著名性を獲得しているものである。 以上によれば、本件商標権者は、太陽光発電関係の製造事業者・取引者及び需要者の間において、広く認識されていた引用商標を知ったうえで、類似商標を使用しての引用商標の信用へのフリーライドや、引用商標のダイリューションといった不正の目的をもって出願をしたものいうべきである。そして、本件商標権者によって本件商標が使用された場合には、引用商標が有する信用や名声、顧客吸引力を毀損するおそれがあることも明らかである。 類似商標を使用する後発の業者によって、正当権利者の信用を損なう事態を引き起こすことは許されないものであって、少しでもそのおそれがある場合には事前に対処することが、日本国特許庁の審査の質、厳格性の担保、信頼性を確保する上では重要である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人は2009年において生産量が世界3位とされる中国の太陽電池メーカーであり、日本国内で太陽光発電システムの開発及び関連機器の販売、技術サポートなどを行う「サンテックパワージャパン株式会社」(以下「サンテックパワージャパン社」という。)の親会社であること(甲2の1ページ、17ページ、18ページ(以下、「ページ」を略し「甲2の1、17、18」のようにいう。)、サンテックパワージャパン社は2016年3月に東京ビックサイトで開催された「PV EXP0 2016 〜第9回[国際]太陽電池展〜」において引用商標3を使用し、住宅向け太陽光発電ソリューションなどを出展したこと(甲20の20〜23)、サンテックパワージャパン社は2020年10月に「熊谷太陽光発電所II」「神埼太陽光発電所」など太陽光発電所の保守管理業務(O&Mサービス)を全国において少なくとも31か所で実施していること(甲2の10、12)、サンテックパワージャパン社の子会社「サンテックエナジーディベロップメント株式会社」は2022年2月に「山口太陽光発電所II」「熊本太陽光発電所」など国内で19か所の太陽光発電所を開発したこと(甲2の13、14)、申立人は2022年にドイツのEUPD Research社の調査において、オランダ、スイス、英国で「TOP Brand PV Seal」を7年連続で受賞したこと(甲2の15、25)、引用商標3はサンテックパワージャパン社のウェブページ、「PV EXP0 2016 〜第9回[国際]太陽電池展〜」、新聞、雑誌などで表示又は掲載されていること(甲2の7、15、19〜25、甲3)などが認められる。 また、申立人は2009年6月に千葉市で開催された太陽電池見本市「PV Japan」に引用商標3を使用して出展したこと(甲2の16)、サンテックパワージャパン社は2017年3月頃に開催された「PV Expo 2017」に引用商標3を使用して出展したこと(甲2の8)、申立人製の太陽電池モジュールは、2018年12月頃「熊谷太陽光発電所II」に8,010枚、2020年10月頃「神埼太陽光発電所」に8,640枚、2021年12月頃「山口太陽光発電所II」に1,104枚、2022年2月頃「熊本太陽光発電所」に7,120枚設置されたこと(甲2の10、12〜14)がうかがえる。 しかしながら、引用商標3がサンテックパワージャパン社のウェブページや「PV EXP0 2016 〜第9回[国際]太陽電池展〜」などで表示され、「サンテックパワー」の文字(引用商標4、5)及び「サンテックパワージャパン」の文字がサンテックパワージャパン社のウェブページなどで申立人等の略称として用いられているものの(甲2の8〜14、17〜19、甲3)、他に引用商標がどのような商品及び役務に、どのように使用されているのか確認できる証左は見いだせず、また、引用商標が使用された商品及び役務の我が国における売上高、売上シェアなど具体的な販売実績(提供実績)を示す主張はなく、その証左も見いだせない。 さらに、引用商標が中国など外国において使用された事実を示す証左も見いだせない。 イ 上記アのとおり、引用商標3、「サンテックパワー」の文字(引用商標4、5)及び「サンテックパワージャパン」の文字が、サンテックパワージャパン社のウェブページなどで表示されていることなどが認められるものの、それらが使用された商品及び役務の我が国における販売実績を示す証左は見いだせないから、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人等の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、いずれも我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 また、引用商標が中国など外国において使用された事実を示す証左も見いだせないから、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人等の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、いずれも中国など外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 ウ なお、申立人は、同人が生産量で世界3位の太陽電池メーカーであることや、2014年12月ないし2015年1月のアンケート調査結果、60%以上が「サンテックパワー」という社名を知っているなどと主張しているが、前者の生産量については本件商標の登録出願の日より10年以上前の2009年頃のものであり、後者のアンケート調査は本件商標の登録出願の日より7年前の調査であり、かつ、「事業内容までよく知っている」との回答は11.7%であること(甲3の9)から、上記判断に影響しない。 また、「SUNTECH」「サンテック」及び「サンテックパワージャパン」の各文字からなる商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人等の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、日本国内又は中国など外国における需要者の間に広く認識されているものと認め得る証左は見いだせないから、そのようなものと認めることはできない。 (2)本件商標と引用商標の類否について ア 本件商標 本件商標は、上記1のとおり、「Sustech」の欧文字を標準文字で表してなり、該構成文字に相応し「サステック」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。 イ 引用商標 (ア)引用商標1及び2は、別掲1のとおり、「S」字状のスペースを有する四角形状の図形と「SUNTECH」の欧文字からなり、該構成文字に相応し「サンテック」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。 そして、両商標は、その構成態様から「SUNTECH」の文字部分が独立して自他商品・役務識別標識としての機能を果たし得るものであって、該構成文字に相応し「サンテック」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものというのが相当である。 (イ)引用商標3は、別掲2のとおり、「S」字状のスペースを有する四角形状の図形を赤色で表し、「SUNTECH」の欧文字を黒色で表してなるものであり、上記(ア)と同様に、「サンテック」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものといえる。 (ウ)引用商標4及び5は、上記2(4)及び(5)のとおり、「サンテックパワー」の片仮名を標準文字で表してなり、該構成文字に相応し「サンテックパワー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。 ウ 本件商標と引用商標の類否 (ア)本件商標と引用商標1ないし3 本件商標と引用商標1ないし3の類否を検討すると、各商標の上記のとおりの外観は、四角形状の図形の有無の差異などにより容易に区別し得るものである。また、本件商標「Sustech」と引用商標1ないし3の構成中それ自体独立して自他商品・役務識別標識としての機能を果たし得る「SUNTECH」の文字のつづりの比較においても、両者は、3文字目に「s」と「N」の文字の差異を有し、この差異が共に7文字という比較的少ない文字構成からなる両者の外観全体の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえず、相紛れるおそれのないものとみるのが相当である。 したがって、本件商標と引用商標1ないし3は、外観において相紛れるおそれのないものである。 次に、本件商標から生じる「サステック」の称呼と引用商標1ないし3から生じる「サンテック」の称呼を比較すると、両者は第2音において「ス」と「ン」の音の差異を有し、この差異音が共に促音を含む5音という短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は小さくなく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、かれこれ聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。 さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。 そうすると、本件商標と引用商標1ないし3は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 (イ)本件商標と引用商標4及び5 本件商標と引用商標4及び5を比較すると、両者の上記のとおりの外観及び称呼は構成態様及び語調語感が明らかに異なり、また観念は比較できないから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 エ 小括 以上のとおり、本件商標は、引用商標のいずれとも相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。 (3)商標法第4条第1項第11号について 申立人は、本件商標は引用商標2、4及び5との関係で本号に該当する旨主張している。 しかしながら、上記(2)のとおり、本件商標は引用商標2、4及び5と相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、両商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。 (4)商標法第4条第1項第10号及び同項第15号について 引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人等の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、本件商標は、上記(2)のとおり、引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であり別異の商標というべきものである そうすると、本件商標は、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起するものということはできない。 してみれば、本件商標は、商標権者がこれを登録異議の申立てに係る指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品及び役務が他人(申立人等)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するものといえない。 (5)商標法第4条第1項第19号及び同項第7号について 引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人等の業務に係る商品及び役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、本件商標と引用商標は、上記(2)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標であり、さらに、上記(4)のとおり、本件商標は引用商標を連想又は想起させるものでもない。 そうすると、本件商標は、引用商標の信用へのフリーライドや引用商標のダイリューションなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。 さらに、本件商標が、「SUNTECH」「サンテック」及び「サンテックパワージャパン」の各文字からなる商標との関係を含め、その出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号及び同項第7号のいずれにも該当するものといえない。 (6)むすび 以上のとおりであるから、本件商標の指定商品及び指定役務中、登録異議の申立てに係る指定商品及び指定役務についての登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(引用商標1及び2) 別掲2(引用商標3:色彩は原本参照。) (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2023-09-26 |
出願番号 | 2022002857 |
審決分類 |
T
1
652・
25-
Y
(W0935)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
小松 里美 |
特許庁審判官 |
鈴木 雅也 渡邉 あおい |
登録日 | 2022-07-22 |
登録番号 | 6590882 |
権利者 | 株式会社Sustech |
商標の称呼 | サステック、サステク |
代理人 | 大上 寛 |
代理人 | 林 栄二 |