ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W0840 |
---|---|
管理番号 | 1402913 |
総通号数 | 22 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2023-10-27 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2022-02-04 |
確定日 | 2023-05-01 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5724809号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5724809号商標(以下「本件商標」という。)は、「藤原兼房」の文字を標準文字で表してなり、平成26年7月30日に登録出願、第8類「手動利器,刀剣」及び第40類「受託による手動利器、刀剣の製造加工」並びに第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定商品及び指定役務として、同年12月12日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 そして、本件審判の請求の登録日は、令和4年2月21日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成31年2月21日から令和4年2月20日までの期間(以下「要証期間」という。)である。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の指定商品及び指定役務中、第8類「手動利器,刀剣」及び第40類「受託による手動利器、刀剣の製造加工」(以下「請求に係る商品及び役務」という。)についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第9号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品及び指定役務中、請求に係る商品及び役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。 2 答弁に対する弁駁 (1)被請求人の本件商標の使用は、商標法第50条第3項の「その登録商標の使用がその審判の請求がされることを知った後」のため、商標法第50条第1項の使用に当たらないこと ア 商標法第50条第3項は、商標権者の駆け込み使用防止の親点から、審判請求3か月前からその審判請求の登録の日までの間、商標権者がその審判請求がされることを知った後に登録商標の使用をしたことを証明した場合には、商標権者が登録商標を使用しても、商標法第50条第1項の使用にならない旨規定している。 イ 請求人は、令和3年10月20日頃、被請求人から登録商標の使用をしてはならない旨警告された(甲1)。そこで、被請求人の登録商標の使用状況を調査したところ、被請求人が専ら使用しているのは「二十五代兼房」又は「二十五代藤原兼房」である可能性が高く、商標法第50条第1項に基づく不使用取消審判請求に理由があるものと思われた。 もっとも、請求人としては、決して被請求人ともめたいわけではなく、穏便に解決したいと考えており、第1に、話合いによる解決を志向し、次善の策として、商標法第50条第1項に基づく不使用取消審判請求をすることとした。そこで、令和3年11月26日、「ご連絡」(甲2)と題する書面において、話合いをしたいこと及び話合いが早期に成立する見込みがないと判断する場合には商標法第50条第1項に基づく不使用取消審判請求すること等を記載し、被請求人代理人に送信した。 ウ すると、被請求人代理人は、令和3年12月4日、「FAX送信票」(甲3)と題する書面において、大要、話合いに応じる意向はなく法的措置を採られることもやむなしと回答してきた。 エ このように、請求人は「ご連絡」(甲2)をもって、不使用取消審判請求することを警告したにもかかわらず、被請求人は「FAX送信書」(甲3)において、被請求人が話合いに応じる意向がなく法的措置を採られることもやむなしと回答している。よって、商標権者は、令和3年11月26日には請求人が不使用取消審判請求をすることを知った上で、あえて令和4年1月に刀を製作し、本件商標を使用したのだから、商標法第50条第1項の使用に当たらない。 オ 本件商標を使用する明確な計画は立証できておらず「正当な理由」がない 被請求人は、乙第3号証を根拠に、日本刀籏谷から、令和3年6、7月頃、刀の製作依頼があって、本件商標の明確な計画があったと主張したいようである。 しかし、乙第3号証によれば、発注日の記載がない。とすれば、そもそも令和3年6月、7月頃に日本刀籏谷から刀の製作依頼があったということすら立証できていない。 (2)「二十五代藤原兼房」、「二十五代兼房」及び「兼房」は、本件商標と社会通念上同一とはいえず、これらの使用では、本件商標を使用したとはいえないこと ア 本件商標と「二十五代藤原兼房」の社会通念上同一性の有無 (ア)歴代の名跡に代を付加すれば特定人を示すことや、刀の取引においてどの藤原兼房が作者であるかが重要であり、それは刀の銘文がその一要素として判断されるという取引の実情を踏まえると、自他商品の識別力は「二十五代藤原兼房」に生じる。 (イ)本件商標と「二十五代藤原兼房」は、外観、呼称及び想起される観念いずれも一致しないことから、社会通念上同一とはいえない。 イ 本件商標と「兼房」の社会通念上同一性の有無 (ア)「兼房」という刀匠が確認できるだけでも少なくとも複数名存在している以上、兼房の呼称では、兼房=藤原兼房と直ちにいえないことになる。 (イ)本件商標と「兼房」は、外観、呼称及び想起される親念いずれも一致しないことから、社会通念上同一とはいえない。 ウ 本件商標と「二十五代兼房」の社会通念上同一性の有無 (ア)二十五代と兼房が結合したことによって特別の意味が生じるため、「二十五代兼房」が自他商品の識別力を有する。 (イ)本件商標と「兼房」は、外観、呼称及び想起される観念いずれも一致しないことから、社会通念上同ーとはいえない。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証から乙第10号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 被請求人が本件商標を使用していること (1)本件商標使用の事実について ア 二十五代藤原兼房という刀匠について 被請求人は、文化庁認定の刀匠となった後、昭和59年、藤原兼房を襲名した。すなわち、襲名したのは「藤原兼房」であって、「○○代」というのは、何番目に襲名した「藤原兼房」かを指しているにすぎない。被請求人は、藤原兼房として、平成16年11月、靖国神社にて親子三代奉納鍛錬をし、後に脇差を奉納した(乙1の1)。他にも熱田神宮を始めとする神社に、鍛錬した刀剣を奉納している(乙1の2、乙1の3)。 また、被請求人は、被請求人の実子(二十六代藤原兼房)とともに、大相撲の第72代横綱に昇進した稀勢の里関の土俵入りで、太刀持ちが掲げる太刀を鍛錬した。当該太刀には、「二十五代二十六代藤原兼房」と銘文されている(乙2の1〜乙2の3)。 以上のとおり、被請求人は、世界中から「藤原兼房」として認識されている、有名という言葉では表現することができず、乙第8号証のインターネット記事等、様々なメディア媒体において特集されている刀匠である。 イ 本件商標の使用について 被請求人は、令和3年6、7月頃、「日本刀籏谷」という刀剣商より、日本刀の製造を依頼された。 被請求人は、令和4年1月頃、日本刀籏谷の上記依頼に基づいて、「藤原兼房」と銘文された日本刀(以下「本件日本刀」という。)を製造した。本件日本刀には、本件日本刀の写真ではないが、乙第4号証に掲載されている写真と同様に「藤原兼房」と銘文している。 そして、被請求人は、岐阜県知事に対し、本件日本刀について、製造登録手続をし、その旨登録された(乙5)。 その後、被請求人は、令和4年2月24日、日本刀籏谷に対し、売買代金150万円で、本件日本刀を納品した(乙6)。 (2)上記(1)は、商標法第50条第2項の要件を満たした登録商標の使用であること ア 被請求人は、日本刀籏谷からの「受託」により、本件日本刀という「刀剣」を「製造加工」しているため、本件日本刀は、本件商標の指定商品に当たる。 イ 被請求人は、令和3年6、7月頃から、遅くとも令和4年1月20日までの期間に、「藤原兼房」と銘文した本件日本刀を製造した。 乙第4号証に掲載されている写真は、被請求人が平成7年に製造した日本刀であり、「藤原兼房」と銘文されているが、本件日本刀にも、同様の方法により、「藤原兼房」と銘文されている。 かかる銘文方法からすれば、「藤原兼房」という文字が商標法第2条第1項にいう標章であることは明らかであり、この標章は、本件日本刀の商標として使用されている。 ウ したがって、被請求人は、令和4年1月20日に、岐阜県において、本件日本刀という「商品」に、「藤原兼房」という本件商標を、「付する」ことにより、商標法第2条第3項第1号にいう本件商標の「使用」をしている。 (3)被請求人代理人が、令和3年12月4日、請求人代理人に対し、甲第3号証の書面を送付したところ、請求人代理人は、被請求人代理人に架電をした。しかし、被請求人代理人は、不在で電話に出られなかったため、翌16日、請求人代理人に架電をした。しかし、請求人代理人が不在であった。そこで、被請求人代理人は、令和4年1月12日、再び請求人代理人に架電をしたところ、請求人代理人は、請求人が被請求人に対していくらか支払うことを骨子とする金銭的解決を希望していると述べた。被請求人代理人においては、請求人代理人の提案を受けて、請求人の希望する和解案を提示するように述べたところ、請求人代理人は承知した旨述べたものであった。そうしたところ、被請求人において、令和4年2月下旬頃、特許庁より、本件不使用取消審判の請求書が郵送されて、請求人が当該審判請求をしたことを初めて認識したものである。すなわち、被請求人においては、請求人より和解案の提示を待っていたものであり、請求人が当該審判請求をするとは全く予想だにしていなかったものである。 以上の経緯から、被請求人において、請求人が審判請求する意思を有していることを認識したのは、特許庁より本件審判の請求書が郵送された時点であり、本件商標の「使用」をした令和4年1月20日時点では、「その審判の請求がされることを知った」とはいえないというべきである。 2 「二十五代藤原兼房」という商標が本件商標と社会通念上同一であること (1)被請求人は、「受託」により「製造加工」した「刀剣」という本件商標の指定商品に、「二十五代藤原兼房」、「二十五代兼房」又は「兼房」と銘文している。そして、「二十五代藤原兼房」等の文字が商標法第2条第1項にいう標章であり、この標章は、当該刀剣の表面に付されている(乙2の3、乙4)のであるから、「二十五代藤原兼房」等という標章は、当該刀剣の商標として使用されているということができる。 (2)「二十五」の語は、単に藤原兼房の刀匠名をこれまでに襲名した人数を示しており、これに接尾して付加されている「代」の語は、「家・位・名前などを継いだ順序を数えるのに用いる」(乙7)単位を意味する。すなわち、「二十五代」とは、代々襲名され続けている藤原兼房を名乗る刀匠について、25番目に襲名した人物としての被請求人を指しているものにすぎないから、当該商標に接した取引者、需要者は、通常、その構成中の「二十五代」の部分は、藤原兼房を襲名したうちの誰を指しているのかを特定するために表示したものと理解することになるが、もとより被請求人の直系の者以外に藤原兼房を名乗る刀匠は存在せず、「二十五代」自体を自他商品の識別力を有する部分とは考えない。 (3)そうすると、「二十五代藤原兼房」の語は、「藤原兼房」の部分において、取引者、需要者の注意を引くものであり、その部分が自他商品の識別力を有するものというべきである。 そして、なによりこの「藤原兼房」は、本件商標と同一なのであるから、「二十五代藤原兼房」は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標とみるべきである。 (4)また、「二十五代兼房」の語は、「二十五代」自体に自他商品の識別力はなく、「兼房」の部分において、取引者、需要者の注意を引くものであり、その部分が自他商品の識別力を有するものというべきである。 そして、「兼房」の語は、本件商標のうちの名前部分をピックアップするものである。一般的に人の名称において、識別機能の重点とされるのは、名前部分であり、名前で個人を特定することが広く認識されている。 したがって、「二十五代兼房」及び「兼房」は、本件商標のうちの名前部分をピックアップするものであり、被請求人の通例の呼称名であるから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標とみるべきである。 3 被請求人は商標法第50条第2項の要件を満たした本件商標の使用をしていること (1)本件商標の使用の事実について 被請求人は、令和3年5月から同年12月の間に、刃物の卸及び販売をしている有限会社三秀商会(以下「三秀社」という。)より、「藤原兼房」と銘文された包丁の製造を依頼された。 被請求人は、令和3年5月以降、三秀社の上記依頼に基づいて、「藤原兼房」と銘文された包丁を製造した。これらの包丁には、これらの包丁の写真そのものではないが、乙第9号証に掲載されている写真と同様に「藤原兼房」と銘文している。 そして、被請求人は、令和3年5月3日に売買代金1万2500円で、同年7月1日に売買代金1万2500円で、同月23日に売買代金1万2500円で、同年8月9日に売買代金1万2500円で、同年9月8日に売買代金9900円で、同年11月28日に売買代金2万2500円で、「藤原兼房」と銘文された包丁をそれぞれ納品した(乙9)。 (2)上記(1)は、商標法第50条第2項の要件を満たした登録商標の使用であること ア 被請求人は、三秀社からの「受託」により、包丁という「手動利器」を「製造加工」しているため、上記包丁は、本件商標の指定商品に当たる。 イ 被請求人は、少なくとも令和3年5月から同年11月28日までの期間に、「藤原兼房」と銘文した上記包丁を製造した。 かかる銘文方法からすれば、「藤原兼房」という文字が商標法第2条第1項にいう標章であることは明らかであり、この標章は、上記包丁の商標として使用されている。 ウ したがって、被請求人は、令和3年5月3日、同年7月1日、同月23日、同年8月9日、同年9月8日及び同年11月28日に、岐阜県において、上記包丁という「商品」に、「藤原兼房」という本件商標を、「付する」ことにより、商標法第2条第3項第1号にいう本件商標の「使用」をしている。 第4 当審の判断 1 請求人及び被請求人の提出に係る証拠によれば、次の事実が認められる。 (1)本件商標の商標権者(以下、単に「商標権者」という。)は、昭和57年(1982年)に文化庁認定の刀匠となり、同59年(1984年)に25代「藤原兼房」を襲名した(甲6)。 (2)三秀社は、令和3年5月3日、同年7月1日、同月23日、同年8月9日、同年9月8日及び同年11月28日に、商標権者から、「藤原兼房」という銘が彫られた「包丁」(以下「使用商品」という。)を仕入れた(乙9)。 (3)使用商品には、「藤原兼房」の文字を縦書きにしてなる商標(以下「使用商標」という。)が彫られている(乙9)。 2 上記1において認定した事実によれば、次のとおり判断できる。 (1)使用商標について 本件商標は、上記第1のとおり、「藤原兼房」の文字を標準文字で表してなるものであり、使用商標は、上記1(3)のとおり、「藤原兼房」の文字を縦書きにしてなるものである。 そうすると、本件商標及び使用商標は、書体及び縦書きか横書きかの違いはあるものの、同一の文字からなるものであるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。 (2)使用商品について 使用商品は「包丁」であるから、請求に係る商品及び役務中、第8類「手動利器」に含まれる商品である。 そして、使用商品には使用商標が彫られていたのだから、使用商品には、使用商標が付されていたといえる。 (3)使用時期について 三秀社は、令和3年5月3日、同年7月1日、同月23日、同年8月9日、同年9月8日及び同年11月28日に、商標権者から、使用商品を仕入れたのだから、商標権者は、三秀社に対し、これらの日に使用商品を納品、すなわち譲渡したといえる。 そして、これらの日は、いずれも要証期間内である。 (4)小括 以上によれば、商標権者は、要証期間内である令和3年5月3日、同年7月1日、同月23日、同年8月9日、同年9月8日及び同年11月28日に、請求に係る商品及び役務中、第8類「手動利器」に含まれる使用商品に使用商標を付したものを三秀社に対し譲渡したと認めることができる。 そして、この行為は、商標法第2条第3項第2号にいう「商品・・・に標章を付したものを譲渡・・・する行為」に該当する。 3 まとめ 以上のとおり、被請求人は、要証期間内に日本国内において、商標権者が、請求に係る商品及び役務中「包丁」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことを証明したものと認められる。 したがって、本件商標の請求に係る商品及び役務についての登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分に御注意ください。 |
審理終結日 | 2023-03-02 |
結審通知日 | 2023-03-06 |
審決日 | 2023-03-22 |
出願番号 | 2014068217 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Y
(W0840)
|
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
岩崎 安子 |
特許庁審判官 |
山田 啓之 大橋 良成 |
登録日 | 2014-12-12 |
登録番号 | 5724809 |
商標の称呼 | フジワラノカネフサ、フジワラカネフサ |
代理人 | 河村 佳起 |
代理人 | 足立 洋 |