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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W3542
管理番号 1401996 
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-03-10 
確定日 2023-08-25 
異議申立件数
事件の表示 登録第6657261号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6657261号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6657261号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和3年11月9日に登録出願、第35類及び第42類に属する別掲2のとおりの役務を指定役務として、同4年12月2日に登録査定され、同月27日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する商標は、以下のとおりであり、(1)は現に有効に存続しているものである。
(1)本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標
国際登録第951204号商標(以下「引用商標」という。)
商標の構成:DIGITAS
国際商標登録出願日:2007(平成19年)年7月26日
設定登録日:2009年(平成21年)12月25日
指定商品・指定役務:第9類、第16類、第35類、第39類、第41類及び第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
(2)本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標
申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は、上記(1)の引用商標及び「Digitas」の欧文字からなり(以下「使用商標」という。)、申立人の業務に係る役務を表す識別標識として需要者に広く知られているとするものである。
なお、「使用商標」と「引用商標」をまとめていう場合は、「引用商標等」という場合がある。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標の特定
本件商標は、外観について、横一列に表した欧文字「digitan」及びこの文字の下部に配置された水平の線からなる図形を組み合わせた文字と図形の結合商標である。
称呼について、「digitan」の欧文字から、「デジタン」の称呼が生じる。
観念について、「digitan」の欧文字は、辞書や辞典に掲載された単語や成句ではなく、特定の意味合いを有しない。また、文字の下に配置された水平の線は特定の意味合いを有する図形等ではない。
したがって、本件商標から特定の観念は生じない。
イ 引用商標の特定
引用商標は、平成19年7月26日に国際登録され、日本においては平成21年12月25日に登録され、現に有効に存続している。
外観について、横一列に表した欧文字「DIGITAS」からなる文字商標である。
称呼について、「DIGITAS」の欧文字から、「デジタス」の称呼が生じる。
観念について、「DIGITAS」の欧文字は、辞書や辞典に掲載された単語や成句ではなく、特定の意味合いを有しないため、特定の観念は生じない。
ウ 本件商標と引用商標の対比
(ア)本件商標は、外観について、横一列に表した欧文字「digitan」及びこの文字の下部に配置された水平の線からなる図形を組み合わせた文字と図形の結合商標である。一方、引用商標は、横一列に表した欧文字「DIGITAS」からなる文字商標である。本件商標が全て小文字で表記されているのに対し、引用商標は全て大文字で表記されている。また、欧文字の下部に配置された水平の線の有無において両商標は相違する。さらに、本件商標は語尾が「n」であるのに対し、引用商標の語尾は「S」である点で相違しており、これらの相違点は容易に識別できる。したがって、本件商標と引用商標は外観において相紛らわしくない。
称呼について、本件商標は欧文字に相応した「デ」「ジ」「タ」「ン」の4音の称呼が生じる。一方、引用商標は欧文字に相応して「デ」「ジ」「タ」「ス」の4音の称呼が生じる。両商標の称呼を比較すると、相違点は語尾の「ン」または「ス」の称呼1音のみである。他方、両商標は音数が4音と共通し、共通する3音である「デ」「ジ」「タ」は強音であり、相違する1音である「ン」または「ス」の音はともに弱音であるから、聴覚上印象の強い部分が共通するものであり、聴覚されるときに需要者に与える称呼の全体的印象は互いに近似している。よって、簡易迅速を尊ぶ取引の実際において、本件商標と引用商標は称呼において相紛らわしい。
観念について、本件商標を構成する欧文字「digitan」からは特定の観念は生じず、引用商標からも特定の観念は生じない。また、本件商標を構成する欧文字の下部に配置された水平の線は特定の観念を持つ図形ではない。したがって、両商標は観念において対比できない。
以上より、本件商標と引用商標は称呼において相紛らわしい類似商標である。
(イ)本件商標の指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務中、第35類及び第42類の役務は類似するものである。
エ 小括
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 申立人の使用した商標
申立人は、横一列に表した欧文字「DIGITAS」及び「Digitas」からなる商標を使用した。
甲第5号証、甲第6号証、甲第10号証及び甲第11号証には「Digitas」、甲第7号証から甲第9号証には、「DIGITAS」の文字が表されている。
(ア)甲第5号証は、ブランディング・顧客関係管理・デジタルクリエイティブ等の専門分野を持つ代理店の系統図であり、「Digitas」はデジタルクリエイティブ分野(デジタル広告)について役務を提供していることを表している。すなわち、申立人が第35類「広告及びマーケティングに関する助言等」の役務及び第42類「宣伝資料及び広告物のデザイン等」の役務に商標を使用したことを表すものである。
(イ)甲第6号証は、申立人の日本拠点であるピュブリシス・グループ・ジャパンの傘下にある企業であるデジタス・ジャパンが、デジタル分野に強みを持つ企業であることを紹介する記事である。申立人及びその関連会社が提供する役務には、「デジタルを中心とした媒体取扱いやウェブサイトの制作など」が含まれることが表されている。すなわち、申立人が第35類「ラジオ用・ビデオ用・映画用・コンピュータ用・インターネットウェブサイト用・テレビジョン用及び携帯機器用の広告物の制作等」の役務及び第42類「宣伝資料及び広告物のデザイン等」の役務に商標を使用したことを表すものである。
(ウ)甲第7号証は、申立人の関連会社であるDigitasの東京支社の求人情報である。職務説明欄に「戦略、設計及びデータの優越性を介して、ブランドが人々とより良好に繋がる支援」との記載、概要欄に「制作、データ、メディア、技術の各分野からの専門スタッフによる合同チームと連携し、ブランドと人々とのつながりを豊かにするサービスの提供に携わります」との記載がある。すなわち、申立人が第35類「広告及びマーケティングに関する助言等」の役務及び第42類「宣伝資料及び広告物のデザイン等」の役務に商標を使用したことを表すものである。
(エ)甲第8号証は、申立人の関連企業であり日本において総合広告代理業を営む企業のウェブサイトの写しである。当該関連企業は広告・販売促進のための企画・実行の代理等の役務を提供しているから、申立人が第35類「広告及びマーケティングに関する助言等」の役務及び第42類「宣伝資料及び広告物のデザイン等」の役務に商標を使用したことを表すものである。
(オ)甲第9号証は、申立人の関連企業であり日本において総合広告代理業を営む企業のウェブサイトの写しである。甲第9号証1ページ目の上部にある写真部分は、当該ウェブサイト上において映像として再生されるものであり、申立人の日本支社を紹介する広告映像である。この広告映像では、申立人の事業である「広告、ブランドによるマーケティング戦略、広告物のデザインの考案」を紹介するものであるから、申立人が第35類「広告及びマーケティングに関する助言等」の役務及び第42類「宣伝資料及び広告物のデザイン等」の役務に商標を使用したことを表すものである。
(カ)甲第10号証は、申立人がフットウェアメーカーのデジタル技術を用いたメディア戦略について委託されたことを紹介する記事である。申立人は日本を含む複数の国において「広告」及び「コンサルティング」の役務を提供していることが表されている。また、申立人にとっての顧客であるフットウェアメーカーから「Digitasが市場の洞察力に創造性とメディア戦略を組み合わせ、そのすべてを一つのまとまったプランとしてパッケージ化し、グローバルな枠組みを持ちながら、地域に関連した規模で迅速に実行できる能力でした。米国だけでなく、英国、中国、日本、韓国などの主要な地域市場において、当社のブランドを加速させるために、より迅速に市場に投入する能力は、当社のデジタル成長戦略の重要部分です。」と評価されていることが表されている。すなわち、申立人が第35類「広告及びマーケティングに関する助言等」の役務及び第42類「宣伝資料及び広告物のデザイン等」の役務に商標を使用したことを表すものである。
(キ)甲第11号証は、申立人がフットウェアメーカーのメディア、クリエイティブ、分析にまたがって業務を委託されたことを紹介する記事である。また、申立人は「メディア、データ、クリエイティブ、テックの各分野で事業を展開しており、世界中のデジタルプレゼンスとコミュニティの拡大・進化を目指すクロックスを支援する上で、最適なポジションにあると言える。」「Digitasは、その高度なデータと技術のコネクティビティを活用して、カルチャーのスピードに合わせて活動し、米国、APAC、EMEAにまたがるグローバルなクロックスのコミュニティを、地域ごとの微妙な違いを加味して支援する。」と紹介されている。さらに、この業務委託には「グローバルブランドのメディア、クリエイティブ、分析にまたがる」と言及されている。すなわち、申立人が第35類「広告及びマーケティングに関する助言等」の役務及び第42類「宣伝資料及び広告物のデザイン等」の役務に商標を使用したことを表すものである。
イ 引用商標等の周知性について
引用商標等は、多数のウェブサイト及び雑誌に掲載されていることから(甲5〜甲11)、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者に広く認識されている。
本件商標の査定日は令和4年12月2日であるが、申立人は現在に至るまで引用商標等を継続して使用しており、使用中止や日本国における事業の撤退などの周知性を喪失するような特別の事情は生じていないため、引用商標等の周知性は、査定日においても継続している。
ウ 本件商標と引用商標等の類似性の程度について
本件商標は横一列に表した欧文字「digitan」及びこの文字の下部に配置された水平の線からなる図形を組み合わせた文字と図形の結合商標であり、「デ」「ジ」「タ」「ン」の4音の称呼が生じる。
一方、引用商標等は、横一列に表した欧文字「DIGITAS」又は「Digitas」であり「デ」「ジ」「タ」「ス」の4音の称呼が生じる。
観念について、本件商標からは特定の観念は生じず、また、引用商標等からも特定の観念は生じない。
両商標は、外観において、欧文字の下部に配置された水平の線の有無において相達する。また、本件商標は語尾が「n」であるのに対し、引用商標等の語尾は「S」である点で相違しており、これらの相違点は容易に識別できる。したがって、本件商標と引用商標等は外観において相紛らわしくない。
両商標の称呼を比較すると、相違点は語尾の「ン」または「ス」の称呼1音のみである。他方、両商標は音数が4音と共通し、共通する3音である「デ」「ジ」「タ」は強音であり、相違する1音である「ン」または「ス」の音はともに弱音であるから、称呼において聴覚上印象の強い部分が共通するものであり、聴覚されるときに需要者に与える称呼の全体的印象は互いに近似している。よって、簡易迅速を尊ぶ取引の実際において、本件商標と引用商標等は称呼において相紛らわしい。
したがって、本件商標と引用商標等の外観、称呼、観念によって需要者及び取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に観察すれば、本件商標と引用商標等は称呼において相紛らわしいものであり、類似性の程度は高い。
エ 商標の独創性について
引用商標等は、申立人が使用した役務との関係において、普通名称慣用商標、記述的表示等の識別力を欠いた商標ではない。したがって、引用商標等は、申立人の業務に係る役務を表すものとして独創的な識別標識である。
オ 役務の関連性について
甲第5号証ないし甲第11号証に表された業務は、第35類「広告及びマーケティングに関する助言,ブランドによるマーケティング戦略,事業の紹介,ラジオ用・ビデオ用・映画用・コンピュータ用・インターネットウェブサイト用・テレビジョン用及び携帯機器用の広告物の制作,市場調査,データベースの管理,事業に関する情報の提供,広告及びマーケティングの管理における代理業務、すなわちダイレクトメール・新聞・ラジオ・テレビジョン・携帯機器・グローバルコンピュータネットワーク及びその他の双方向メディア経由での広告及び販売促進用品の作成・開発及び配布」、及び、第42類「宣伝資料及び広告物のデザイン,工業デザイン及び商業デザインの考案,デザインの考案,広告のためのウェブサイトの設計,ウェブサイトの設計,コンピュータを利用したビデオグラフィックの設計」(以下「申立人使用役務」という場合がある。)にあたるものである。
一方、本件商標は第35類及び第42類に属する別掲2のとおりの役務を指定役務としているため、本件商標の指定役務は、申立人が商標を使用した役務と類似する役務であるから、関連性を有するものである。
カ 需要者及び取引者の共通性・注意力について
上記のとおり、申立人が商標を使用した役務と本件商標の指定役務は類似するものであるから、需要者及び取引者は共通する。そして、需要者及び取引者の注意力に関して特に考慮すべき事情は見当たらない。したがって、本件においては一般的な需要者及び取引者の注意力をもって判断すればよい。
キ 小括
以上のことから、本件商標と引用商標等の類似性の程度は高く、本件商標の指定役務と申立人が商標を使用した役務は関連性があり、引用商標等は周知性を獲得している。そして、引用商標等は独創性の程度が高く、取引者及び需要者も共通し、考慮すべき取引者及び需要者の注意力や取引の実情も無い。したがって、これらの事実を総合的に判断すると、本件商標を指定役務に使用すれば、申立人の業務に係る役務と出所の混同を生じさせるものである。また、本件商標の使用は、本件商標の商標権者と申立人との間に、いわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係がある等の広義の混同を生じさせるものである。さらに、本件商標の使用は、引用商標等に化体した顧客吸引力へのただ乗り希釈化を招くものである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
ク 結び
以上により、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、商標法第43条の2第1号により、取り消されるべきものである。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり「digitan」の欧文字を多少デザイン化して横書きにし、当該文字の下に水平な線を配してなるものである。そして、構成中の水平な線は、特徴のない一本線であって、単に装飾的なものとして看取されるというのが相当であるから、これより特定の称呼及び観念は生じないものである。
そうすると、本件商標構成中の明確に表された「digitan」の文字部分が、自他役務の識別標識としての機能を強く発揮する部分といえるから、当該文字部分を要部として抽出し、他人の商標と比較し、その類否を判断することが許されるというべきである。
したがって、本件商標は、「digitan」の構成文字に相応して「デジタン」の称呼が生じるが、当該文字は、一般的な辞書等に掲載されている語ではなく、造語として認識されるから、特定の観念は生じない。
イ 引用商標
引用商標は、「DIGITAS」の欧文字を横書きにしてなるものであり、その構成文字に相応して「デジタス」の称呼が生じるが、当該文字は、一般的な辞書等に掲載されている語ではなく、造語として認識されるから、特定の観念は生じない。
ウ 本件商標と引用商標の類否
(ア)外観について
本件商標の要部である「digitan」と引用商標とを比較すると、外観においては、両者は7文字からなり、語頭から6文字は、「d(D)」、「i(I)」、「g(G)」、「i(I)」、「t(T)」、「a(A)」と、つづりを共通にするものであるが、語尾の「n」と「S」の文字が相違するものである。また、本件商標の文字部分は、全て小文字で書してなるのに対し、引用商標は全て大文字で書してなる点において相違する。さらに、本件商標の文字部分はデザイン化された字体で表されているのに対し、引用商標は一般的な書体で構成されている点についても相違しており、これらの差異が、両商標の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえず、全体として看者に別異の印象を与えるものである。
したがって、両者は外観において相紛れるおそれのないものとみるのが相当である。
(イ)称呼について
本件商標の要部から生じる「デジタン」と、引用商標から生じる「デジタス」との称呼を比較すると、両者は、語尾において「ン」と「ス」の音に差異を有するところ、「ン」は前舌面、または、後舌面を軟口蓋後部に押しあてて、有声の気息を鼻から洩らして発する鼻音(株式会社岩波書店「広辞苑第六版」)であるのに対し、「ス」は、舌端を前硬口蓋に寄せて発する無声摩擦子音「s」と母音「u」の結合した音節(前掲書)であるから、互いに音質の異なるものである。また、ともに4音構成という短い音数の両称呼において、語尾に位置するとはいえ、上記の差異が称呼全体の語調、語感に与える影響は決して小さくないというべきであり、両者をそれぞれ一連に称呼するときには、全体の音調が異なり、相紛れることなく聴別し得るものである。
したがって、両者は、称呼において相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
(ウ)観念について
観念においては、本件商標の要部と引用商標とは、いずれも特定の観念を生じないものであるから、両者は観念上、比較できない。
(エ)小括
以上から、本件商標の要部と引用商標は、観念において比較できないものの、外観、称呼において相紛れるおそれがないものであるから、両者の外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定役務が同一又は類似のものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標等の周知性について
申立人の提出に係る甲各号証及び同人の主張によれば、申立人のグループの「Digitas」は、デジタルクリエイティブ分野(デジタル広告)についての役務を提供していること(甲5)、申立人の日本拠点であるピュブリシス・グループ・ジャパン傘下の企業、デジタス・ジャパンがデジタルに強みを持つこと(甲6)、当該企業の求人情報(甲7)に引用商標と同じ文字つづりからなる標章や使用商標を使用していることがうかがえる。また、広告を取扱う申立人の関連会社(beacon)のウェブサイトに使用商標が掲載されていること(甲8)、当該会社のウェブサイトの写真(甲9の1葉目)に申立人の日本支社を表す「PUBLICIS GROUPE」「JAPAN」の文字や引用商標と同じ文字つづりからなる標章(甲9の5葉目)が掲載されていること、申立人のグループの「Digitas」がフットウェアメーカーのクロックスのグローバル・デジタル・イノベーション・エージェンシーに任命され、グローバルブランドのメディア、クリエイティブ、分析にまたがる業務を行う予定であること(甲10、甲11)が認められる。
しかしながら、提出された証拠のうち、使用商標が日本の雑誌に掲載されたもの(甲6)は一回のみであり、その他の証拠(甲5、甲7、甲10、甲11)は、内容を英語で記載していることから、引用商標等が掲載されているとしても、我が国の需要者に向けた申立人使用役務の宣伝広告等とは認められない。また、関連会社(beacon)のウェブサイト(甲8、甲9)に引用商標等が掲載されていることをもって、申立人使用役務に使用された引用商標等に関する我が国の需要者の認識を確認することはできない。
さらに、申立人の提出した証拠によっては、引用商標等を使用した申立人使用役務の周知性の度合いを客観的に判断するための証拠、例えば、申立人使用役務の提供地域、市場シェア、広告宣伝の方法、時期、地域及び規模等は確認できない。
その他、引用商標等の周知性を認めるに足る事実は見いだすことができない。
以上からすると、申立人使用役務及びそれに使用される引用商標等は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
イ 本件商標と引用商標等の類似性の程度
本件商標と引用商標は、上記(1)ウのとおり非類似の商標である。また、使用商標は「Digitas」の欧文字からなるところ、引用商標と構成文字のつづりを同じくするものであるから、上記(1)ウと同様に、本件商標と使用商標は非類似の商標であるといえる。
そうすると、本件商標と引用商標等とは、観念において比較できないものの、外観、称呼において相紛れるおそれがないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
したがって、本件商標と引用商標等は、非類似の商標であって、別異の商標というべきあるから、類似性の程度は低いものである。
ウ 出所の混同のおそれ
上記アのとおり、引用商標等は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国における需要者の間に広く認識されていたものと認められないものであり、上記イのとおり本件商標は、引用商標等と相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものであるから、類似性の程度が低いものである。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標等を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反して登録されたものではなく、他に、本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、本件商標の登録は、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲

別掲1 本件商標



別掲2 本件商標の指定役務
第35類「コンピュータのオンラインシステムによる広告物の配布,広告(インターネットによるものを含む。),広告の代理・媒介又は取次ぎ,販売促進のための宣伝広告に関する企画,広告用スペースの提供(ウェブサイト上の広告スペースの提供を含む。),広告用具・ホームページ又はウェブサイト上における広告スペースの貸与に関する情報の提供,インターネットユーザーのウェブサイトへのアクセス動向等のコンピュータネットワークに関する市場調査並びにそれらの調査結果の分析及びその調査結果に関する情報の提供,ウェブサイトへアクセスしたユーザの視聴行動パターンの調査並びに分析及びその結果に関する情報の提供,顧客に関する情報の収集・管理・分析,顧客の取引記録の集計・管理,商品の売上管理・在庫管理・顧客管理,商品の販売・役務の提供の事業に関する企画・管理,電子商取引に係る事業の運営・管理,売上管理に関する情報の提供,販売時点情報管理システムによる売上管理・在庫管理・商品管理及び顧客情報の管理,インターネットにおけるドメイン名取得に関する検索事務の代行,コンピュータのオンラインシステムによる商品の受注事務,コンピュータによるファイルの管理(電子計算機データベースに蓄積された電子データの管理を含む。),コンピュータによるファイルの管理及びこれに関する情報の提供,ドメイン更新・延長手続の事務処理代行,ドメイン名取得申請事務手続きの事務処理代行,ドメイン名取得申請事務手続に関する情報の提供,ドメイン名又はIPアドレスの登録申請事務の代行,ドメイン名又はIPアドレス取得申請手続の事務処理代行,メールアドレス取得申請手続の事務処理代行,コンピュータデータベースへの情報構築・情報編集及びこれらに関する情報の提供,コンピュータデータベースへの入力処理・情報構築・情報編集,電子計算機ファイルのデータ検索,コンピュータシステムの操作及びコンピュータ制御が可能な機器の操作に関する運用管理,サーバーコンピュータの操作に関する運用管理又はこれに関する情報の提供,電子計算機・電子計算機システムの操作に関する運行管理,インターネットによる商品の販売に関する情報の提供及びその他の商品の販売に関する情報の提供,インターネットによる商品の売買契約の代理・取次ぎ・媒介及びその他の商品の売買契約の代理・取次ぎ・媒介,広告の制作・制作進行管理をする者の紹介」
第42類「ホームページの作成又は保守に関する情報の提供,インターネットを用いた検索用エンジンの提供,オンラインシステムにおける電子計算機による計算処理,コンピュータデータベース用プログラムの設計・作成又は保守,コンピュータデータベース用プログラムの設計・作成又は保守に関する情報の提供,コンピュータにおけるウィルスの検出・排除及び感染の防止・パスワードに基づくインターネット情報及びオンライン情報の盗用の防止並びにコンピュータにおけるハッカーの侵入の防止等の安全確保のためのコンピュータプログラムによる監視,コンピュータを用いて行うデータの加工(データベースへの情報構築・情報編集を除く。),検索エンジンの提供に関する情報の提供,電子計算機データの暗号化,電子計算機プログラム及びデータを防護するためのプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機を用いて行う各種情報及びデータの情報処理,インターネットサーバーの貸与,インターネットのサーバーの貸与に関する情報の提供,電子計算機によるデザインの考案,コンピュータグラフィックスによるデザインの考案,ウェブサイトのデザインの考案,電子メール用の電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子メール受信者のためのメールサーバーの記憶領域の貸与,電子メール用の電子計算機用プログラムの提供,その他の電子計算機用プログラムの提供(インターネットを利用した電子計算機用プログラムの提供を含む。),その他の電子計算機用プログラムの設計・作成または保守(ウェブサイトの作成または保守を含む。)」


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異議決定日 2023-08-17 
出願番号 2021139534 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W3542)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 旦 克昌
特許庁審判官 小林 裕子
清川 恵子
登録日 2022-12-27 
登録番号 6657261 
権利者 コロニーインタラクティブ株式会社
商標の称呼 デジタン 
代理人 白浜 秀二 
代理人 弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所 

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