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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W03
管理番号 1401992 
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-01-23 
確定日 2023-08-31 
異議申立件数
事件の表示 登録第6640586号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6640586号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6640586号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、令和4年7月27日に登録出願、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料」を指定商品として、同年10月20日に登録査定され、同年11月14日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第4750265号商標(以下「引用商標」という。)は、「AXE」の欧文字を横書きしてなり、平成15年9月18日に登録出願、第3類「オーデコロン,身体防臭用化粧品,頭髪用化粧品,ひげそり用クリーム,スキンローション,香水類,その他の化粧品,ボディーシャンプー,その他のせっけん類,口臭消臭スプレー,練り歯磨き,その他の歯磨き,香料類」及び第8類「かみそり刃,その他のかみそり,はさみ類」を指定商品として、同16年2月20日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第42号証を提出した。
(1)申立人について
申立人は、オランダとイギリスに本拠を有する世界有数の多国籍企業であり、ヘアケア製品、化粧品、飲食料品、洗剤、トイレタリーなどの一般消費財を広く製造・販売する企業である(甲5、甲6)。
1885年に始まる申立人の長い歴史の中で、人々の要望に応じ、時代の変化に対応し、きわめて多岐にわたる商品・サービスを提供する事業を世界中で行ってきた(甲6)。
申立人は、世界中で製品に使用され、世界中の需要者・取引者に広く知られている著名な商標を多数保有しており、日本においてもこれらの著名な商標を付した商品が全国津々浦々で販売されている。このような商標の中には、例えば、「LUX」「Axe」「Dove」「ポンズ」「ジフ」「ドメスト」などがある(甲7〜甲13)。申立人のブランドは大小合わせて世界で400以上あり、これらのブランドを付した商品の製造・販売を行って、世界で実に34億人の人々が毎日同社の製品を使用している(甲5)。
(2)商標法第4条第1項第11号の該当性
ア 引用商標が本件商標よりも先の出願であること
本件商標は令和4年7月27日に登録出願され(甲1)、引用商標は平成15年9月18日に登録出願され、同16年2月20日に商標登録されている(甲3)。
これより、引用商標が本件商標の出願日より前の登録出願であることは明白である。
イ 本件商標と引用商標の同一・類似性
本件商標と引用商標との類否を判断するにあたって、最高裁判所の示してきた判断基準及び判断手法(「橘正宗」事件、「氷山印」事件など)を考慮して判断する。
(ア)本件商標と引用商標が称呼上同一・類似であること
本件商標は、ややデザイン化したローマ字の大文字「AX」(黒い字)とシンプルな六角形の中に記載された「MEN」(黒い地の図形の中に白抜きの文字)が組み合わされた構成となっていることから、その構成及び外観からみて全体としてまとまっていると言い難いばかりでなく、むしろ、「AX」からなる部分と「MEN」からなる部分が別々の部分として認識されるとみるのが自然である。また、「AX」と「MEN」の語が結合した言葉としても、親しまれた特定の観念的な結びつきが生ずるものとも、親しまれた熟語的意味合いが生ずるものとも言い難いことから、「AX」と「MEN」を常に一体不可分のものとして把握しなければならない格別の理由は存在しない。すなわち、取引者・需要者からは、個々の「AX」の部分と「MEN」の部分が容易に分離して看取、認識される。
したがって、本件商標は、各構成部分(「AX」と「MEN」)がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない。
さらに、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が抵触する商品の分野においては「MEN」の語は男性用の商品を示すものとして業界で一般的に使用されている(甲14〜甲19)ことから、これらの商品分野においては、商標を構成する語について、「MEN」の語とそれに組み合わされている他の語とを分離して認識し、かつ、「MEN」の語は識別力が弱いものと理解されていることが明らかである。
そうすると、本件商標からは、構成全体を称呼した場合の「アックスメン」の称呼のほか、「AX」の文字より「アックス」の称呼も生ずるものである。
これに対して、引用商標からはその構成より「アックス」の称呼が生じる。なお、スペルは異なっても「AX」も「AXE」も英語では「アックス」と同じに発音され、同じ意味を有する(甲20〜甲23)。
本件商標と引用商標から生ずる称呼を対比するに、「アックス」の称呼において両称呼は同一である。
このように、両商標からは完全に同一の称呼が生じ、両商標に接する需要者・取引者がこれらの称呼を混同するおそれは避けられないのであって、両称呼は相紛れて認識される。
よって、本件商標は引用商標と称呼上、同一又は類似である。
(イ)本件商標と引用商標が観念上同一・類似であること
上記のとおり、本件商標は分離して観察することが不自然と思われるほどに不可分的に結合しているものとは認められないことから、観念上も分離して看取、把握されるというべきである。
そうすると、本件商標からは単に「AX」と「MEN」の他、「AX」の観念も生ずる。「AX」と「AXE」は英語において同じとされており(甲20〜甲23)、「AX」の単語も「AXE」の単語も「斧」「戦斧」「まさかり」という同一の意味を有している。つまり、本件商標から生じる観念は引用商標から生じる観念と同一である。
したがって、本件商標は観念上も引用商標と同一又は類似の商標である。
(ウ)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は称呼及び観念上同一・類似であって、本件商標をその指定商品に使用すると、本件商標及び引用商標に接する需要者・取引者が本件商標と引用商標の商品の出所を混同し、相紛らわしく認識するおそれがきわめて高い。
したがって、本件商標は引用商標と類似する。
ウ 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の同一・類似性
本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似である。
混同を生ずるおそれ
(ア)本件商標と引用商標が同一・類似であることはすでに述べたが、特に、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が抵触する商品の分野においては、「MEN」の語は男性用の商品を示すものとして業界で一般的に使用されそのように認識されていることと(甲14〜甲19)、申立人が2007年3月以降、商標「AXE」を付して日本において販売してきた商品(以下「申立人商品」という。)が男性用化粧品、男性用ヘアケア製品等、男性用の商品であることから(甲9、甲24〜甲38)、本件商標をその指定商品に使用した場合、取引者・需要者が出所を混同する可能性はきわめて高いと言わざるを得ない。
つまり、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の分野においては、主に化粧品、ヘアケア製品といった商品については、男性用と女性用が分けられていることが多く、商標に「MEN」の語を付けて男性用商品であると識別できるようにしたり、「MEN」の語を付して男性用商品を紹介・宣伝広告することは常となっている(甲14〜甲19)。そのため、「MEN」の文字は識別力が弱いものと言わざるを得ない。このような取引の実情がある中で、本件商標は「MEN」の文字部分と「AX」の単語部分とは外観上、分離して認識することが容易な構成・デザインとなっている。また、観念上もひとまとまりにして意味が生じるものでも熟語となるものでもない。つまり、本件商標に接する取引者・需要者は、「MEN」の部分は男性用商品であることを記述した説明的な部分と認識し、「AX」の方に着目して「AX」が識別力のある部分の認識で取引にあたることになる。しかしながら、この「AX」の部分からは、引用商標と同一の称呼及び観念が生じるのであるから、本件商標に接する取引者・需要者が出所を混同する可能性はきわめて高いと言うべきである。
また、2007年3月以降、申立人商品の日本全国における長期間の継続的な使用に加え、著名な俳優・芸能人・スポーツ選手等を起用したコマーシャル、街頭ポスター、インターネットでの広告、プレスリリース、インターネットその他を通じたニュース情報などによっても、申立人商品は広く日本国内の取引者・需要者に知られるところとなっている(甲9、甲24〜甲38)。
さらに、申立人商品は、北海道・東北地方から九州・沖縄地方まで日本各地の店舗で広く販売されており、東京都内だけでも360店舗、関東地方に絞っても929店舗にものぼる(甲39〜甲42)。これらは、申立人商品が日本国内の取引者・需要者に広く知られるところとなっていることを示すものである。なお、申立人商品の売り上げは、男性用化粧品ブランドとしては世界で第1位との調査結果も出ている(甲25)。
このように申立人商品が男性用商品であることと、そのことが日本国内の取引者・需要者に広く知られていることとも相まって、本件商標をその指定商品に使用することは引用商標の商品との出所混同を生じる蓋然性がきわめて高いというべきである。
上記のような取引の実態からみると、本件商標と引用商標のような構成の同一・類似商標の場合であって指定商品が互いに抵触する場合に、本件商標をその指定商品に使用すると、取引者・需要者が出所を混同する可能性はきわめて高いことから、本件商標の登録を維持すべきではない。
(イ)申立人はその商標のブランドイメージを維持し、より一層発展させるため、世界各国の市場において徹底したブランド管理を行っている。したがって、万が一、本件商標の登録が維持されると、申立人と何ら関係のない者により、申立人の意図とは無関係に、申立人商品とその需要者層・取引者層を共通にする商品について、引用商標と近似する商標、すなわち本件商標が自由に使用されてしまうことになる。その結果として、申立人の「AXE」ブランドについて商標の希釈化が生じるおそれがあることも否定できない。
このような事態が生じた場合、申立人が年月をかけて日本を含む世界の多くの国において多大な努力と費用を費やして培ってきたブランドイメージは著しく毀損され、多大な損害を被ることは明白である。
したがって、かかる見地からも本件商標の登録は維持されるべきではない。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、取引の実情を鑑みても本件商標の指定商品への使用は、引用商標に係る商品と出所の混同を生じるというべきであって、本件商標の登録は維持されるべきではない。
オ 結論
本件商標は引用商標と類似し、本件商標の指定商品は引用商標の指定商品と抵触するものであって、本件商標がその指定商品に使用された場合、引用商標に係る指定商品と出所の誤認混同を生じるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人は、1880年代半ばに英国で石けんを発売し、以後、ヘアケア製品、化粧品、飲食料品、洗剤など多種の商品の製造・販売や広告代理店事業、市場調査事業など多岐にわたる商品・サービスを世界中に提供する企業であること(甲5、甲6)、申立人は「LUX」「AXE」「Dove」など多数のブランドを扱っていること(甲7〜甲13)、引用商標「AXE」を使用した商品「ボディースプレー、ボディーソープ、シャンプー、トリートメントなど」(申立人商品)は2007年からほぼ全国で販売されていること(甲9、甲24、甲32、甲39)などが認められるものの、我が国における申立人商品の売上高、販売数量など販売実績を示す主張はなく、その証左は見いだせない。
そうすると、申立人商品及び同商品に使用されている引用商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品として及び同商品を表示するものとして、いずれも需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)本件商標と引用商標の類否
ア 本件商標
本件商標は、別掲のとおり、「A」と「X」の欧文字をデザイン化して組み合わせてなる部分(以下「AX部分」という。)と「MEN」の欧文字を白抜きした横長の六角形(以下「MEN部分」という。)からなり、その構成文字に相応し「エーエックスメン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
そして、本件商標の指定商品の分野において、「MEN」の文字が「man(男)」の複数形として親しまれた英単語であること及び「男性用の商品であること」を表すものとして使用されていること(甲14〜甲16、甲19)から、本件商標の構成中のMEN部分は、男性用の商品であるとの商品の品質を表したものと認識させることが少なくなく、出所識別標識としての称呼、観念が生じないということができる。
そうすると、本件商標は、その構成中AX部分を分離抽出し他の商標と比較検討することが許され、該部分から、その構成文字に相応し「エーエックス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないというのが相当である。
イ 引用商標
引用商標は、上記2のとおり、「AXE」の欧文字を横書きしてなり、該文字に相応し「アックス」の称呼を生じ、「斧(おの)」の観念を生じるものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の比較
本件商標と引用商標を比較すると、本件商標は別掲のとおりの構成及び引用商標は上記イのとおりの構成からなるところ、両者の外観について、本件商標の構成全体と引用商標とは、構成文字数の差及び文字のデザイン化の有無からすれば、構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。また、本件商標の構成中のAX部分と引用商標との比較においても、両者は、2文字と3文字という短い構成文字数であること、構成態様の差異により、容易に区別し得るものと判断するのが相当である。
次に、本件商標から生じる「エーエックスメン」及び「エーエックス」の称呼と引用商標から生じる「アックス」の称呼を比較すると、両者は、構成音数及び音質の差異からすれば、語調語感が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。
さらに、観念においては、本件商標が特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は「斧(おの)」の観念を生じるものであるから、相紛れるおそれのないものである。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
エ 申立人の主張について
申立人は、AX部分から引用商標と同一の称呼及び観念が生じる旨、及びそれに加えて、申立人商品が男性用商品であって取引者・需要者に広く知られていることから、本件商標をその指定商品に使用することは申立人商品との出所混同を生じる蓋然性がきわめて高い旨主張している。
しかしながら、AX部分は「A」と「X」の欧文字2文字を組み合わせたモノグラムと認識させるものであり、また、「AX」の語は「斧(おの)」の意味を有する英単語ではあるが、我が国で親しまれたものとはいえないから、AX部分からは、「エーエックス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないと判断するのが相当である。
また、申立人商品は、男性用の商品であるが、上記(1)のとおり需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記アないしウのとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標というべきものであるから、本件商標は引用商標との関係において出所混同を生じるおそれはない。
したがって、申立人のかかる主張は採用できない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品中、第3類「オーデコロン,身体防臭用化粧品,頭髪用化粧品,ひげそり用クリーム,スキンローション,香水類,その他の化粧品,ボディーシャンプー,その他のせっけん類,練り歯磨き,その他の歯磨き,香料類」が同一又は類似のものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲 本件商標



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異議決定日 2023-08-22 
出願番号 2022087194 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W03)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 高野 和行
特許庁審判官 小俣 克巳
石塚 利恵
登録日 2022-11-14 
登録番号 6640586 
権利者 クラシエホームプロダクツ株式会社
商標の称呼 アックスメン、エイエックスメン 
代理人 達野 大輔 
代理人 中山 真理子 
代理人 竹中 陽輔 
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