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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W0712
管理番号 1401985 
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-12-05 
確定日 2023-09-11 
異議申立件数
事件の表示 登録第6619793号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6619793号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6619793号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、令和4年1月13日に登録出願、第7類、第9類、第12類及び第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年9月9日に登録査定、同月27日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標(以下、これらをまとめて「引用商標」という場合がある。)は、次のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4775126号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:FLY(標準文字)
登録出願日:平成14年1月21日
設定登録日:平成16年5月28日
指定商品:第9類、第12類、第18類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(2)登録第4728752号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:FLY RACING(標準文字)
登録出願日:平成14年1月21日
設定登録日:平成15年11月21日
指定商品:第9類、第12類、第18類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標はその指定商品及び指定役務中、第7類「発電機,機械用連接棒,原動機(陸上の乗物用のものを除く。),交流発電機,点火用マグネト発電機,自転車用発電機,電機ブラシ(機械部品),船舶用の軸受,航空機用の軸受,オートバイ用キックスターター,交流サーボモーター」及び第12類「電動自転車,三輪車,モペット,陸上の乗物用の電動機,電動式乗物,遠隔操作式乗物(おもちゃを除く。),自転車,自動平衡機能付きスクーター,オートバイ,乗物用盗難防止警報器,陸上の乗物用の軸受」(以下「申立てに係る指定商品」という。)について、商標法第4条第1項7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標は、黒塗り四角形の中に若干デザイン化した文字にて「VFLY」と書してなり、当該文字は造語であるため定まった読み方はないものの、日本人になじみの英単語「FLY」を含むものであることから「ブイフライ」の称呼が生じる。また、アルファベット一文字は品番又は商品展開のシリーズを示すために使用されること、「V」と「FLY」に何ら観念的な繋がりがないことから、「V」と「FLY」に分離して認識し、「フライ」のみの称呼も生じるものである。
観念については、本件商標は造語であるため特定の観念は認識されない。
イ 引用商標1は、標準文字にて「FLY」と書してなる商標であり、その文字に照応して「フライ」の称呼が自然に生じ、「飛ぶ」又は「申立人のブランドであるフライ」の観念が生じる。
引用商標2は、標準文字にて「FLY RACING」と書してなり、その指定商品には競技用(racing)用の商品が多数含まれていることから、構成中「RACING」は単に用途を表すにすぎず、「FLY」部分が要部として認識されるから、その文字に照応して「フライレーシング」及び「フライ」の称呼が生じ、「申立人のブランドであるフライの競技用商品」の観念が生じる。
ウ 本件商標と引用商標を対比すると、その構成文字は欧文字一文字のみの相違にすぎず、本件商標全体からは特定の意味合いを認識しない一方、「FLY」は簡単な英単語であることから、本件商標に接する取引者、需要者はこのなじみのある部分のみを認識、記憶するといえる。そのため、本件商標及び引用商標からも「フライ」の称呼を生じ、「飛ぶ」の観念が生じる。
これらを総合的に勘案し、時と場所を異にして指定商品等の需要者が通常有する注意力を基準として判断すれば、本件商標と引用商標は相紛れるおそれの高い類似の商標である。
エ さらに、本件商標の指定商品「電動自転車」等と引用商標の指定商品「二輪自動車用金属製のハンドル」等とは同一又は類似する商品である。
オ したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 申立人について
申立人は、アメリカ合衆国アイダホ州を拠点として1960年に法人化された自転車・二輪自動車・スノーモービル等の製品を製造販売する会社である(甲5)。また、申立人が2022年に日本で行ったマーケティング費用の総額は、43,000ドルに及ぶ。
引用商標は、申立人が製造販売する二輪自動車やスノーモービル、マウンテンバイク・BMXなどの自転車についてのブランドであり、当スポーツ業界においては著名性を獲得している(甲6)。
例えば、フリースタイルモトクロス(FMX)の日本人ライダーである渡辺元樹氏も申立人が提供するポッドキャストに出演した(甲7)。
イ 混同の有無について
申立人の引用商標が使用されている商品自体が、野球やサッカーほどに一般的に知られていないとしても、日本においても一定の競技人口があり、日本モーターサイクルスポーツ協会が提供する各種モータースポーツの競技人口は、2019年時点に延べ人数で8,000人を超える(甲8)。当該分野の人気選手が、申立人主催のイベントにも登場することから(甲7)、当該競技分野での一定の著名性は是認されるものである。
さらに、本件商標は、引用商標1「FLY」を含む商標であるところ、著名な引用商標1にアルファベット一文字を結合したものにすぎないため、本号に該当するものである。
ウ EUIPOにおける異議決定について
申立人は、本件商標権者相手に、世界中において「FLY」商標に関し、異議申立てを含む多くの法律的手段を執っており、その一つとして申立人が請求したEUIPOにおいて申立人商標「FLY」と商標「vfly」(決定注:欧州連合商標出願第18511649号)が混同を生じるとして取消決定が通知された(甲9)。
このことからも本件商標と引用商標とが混同を生じるという上記主張は首肯できるものである。
以上のことを総合的に勘案すれば、仮に本件商標と引用商標が類似しないとしても、申立人と何ら関係のない本件商標権者等が本件商標の申立てに係る指定商品について使用するときは、あたかも申立人の系列会社等の緊密な営業上の関係にある営業主の業務に係る商品であると、取引者、需要者に誤信されるおそれが多分に存するものである。
エ 小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号について
上述とおり、引用商標は、日本及び外国における需要者の間に広く認識されており、また、本件商標と引用商標が類似する商標であり、加えて、本件商標権者は、不正の目的をもって本件商標に係る商品等に使用するものであると容易に推認することができる。
すなわち、本件商標権者は、電動バイクなどを取り扱うものであり(甲10)、モータースポーツについて有名な引用商標を知らなかったとは考えられない。本件商標権者は申立人が築き上げた信用、名声、顧客吸引力等にフリーライドする意図をもって本件商標を採択したと考えるのが自然であり、本件商標に係る指定商品に使用されれば、著名商標「FLY」に化体した信用や名声等を毀損させるおそれが多分に存するものである。
以上のことを総合的に勘案すれば、本件商標権者は、不正の目的をもって本件商標の申立てに係る指定商品に使用するものであると容易に推認することができる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第7号について
商標「FLY」が日本及び外国における需要者の間に広く認識されており、本件商標と商標「FLY」が類似する商標であることは、上述したとおりである。そのため、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれの高い類似の商標であるといえる。
申立人は、モータースポーツの世界においては取引者、需要者の間に広く認識されていることから、本件商標権者が引用商標ないしは申立人の存在を知らなかったものとはいい難く、本件商標は、意図的に「FLY」の文字を含み、申立人の著名商標に近似した構成態様にすることにより、本件商標に接する取引者、需要者に引用商標を連想、想起せしめ、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗りフリーライド)する不正な目的で採択、出願し登録を受けたものといわざるを得ない。そのため、本件商標は、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって引用商標の特徴を模倣して出願し登録を受けたものといわざるを得ず、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、その登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
申立人の提出に係る証拠によれば、申立人は、1960年に法人化されたオフロード及びストリートバイク、スノーモービル等の製品を製造販売する米国の会社である(甲5)。
そして、「FLY Racing」とするウェブサイト(甲6)には、「2023 MOTO RACEWEAR」の表題の下、「FLY RACING」の表示があるとしても、ウェブサイトに掲載されている具体的な商品が不明であり、また、この掲載日も確認できない。
また、「Swapmoto Podcast」の紹介記事(甲7)には、「Genki Watanabe on the Fly Racing Swapmoto Podcast」(September 10.2019)と記載されているが、申立人の業務に係る商品に引用商標を付しているかは確認できない。
そうすると、提出された証拠からは、申立人はオフロード及びストリートバイク、スノーモービル等を取り扱う会社であることはうかがえるとしても、「FLY RACING」に関するウェブサイトにおいては、商品や掲載日が不明であって、引用商標の使用も確認できない。
また、引用商標を付した商品についての我が国及び外国における売上高、市場シェア等のほか、我が国における発売日、広告方法等について、その事実を客観的に把握することができる証拠は見いだせない。
なお、申立人は、2022年に我が国で行ったマーケティング費用の総額は43000ドルに及ぶと主張するが、それを裏付ける証左はない。
したがって、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、黒塗り四角形の中に若干デザイン化した文字をもって「VFLY」と書してなるところ、当該構成文字から「ブイフライ」の称呼が生じ、当該文字は、辞書等に載録が認められないから、特定の観念は生じない。
イ 引用商標
引用商標1は、「FLY」の欧文字を標準文字で表してなり、その文字に相応して「フライ」の称呼が生じ、当該文字は、「飛ぶ」の意味を有する我が国で親しまれた英語といえることから、「飛ぶ」の観念が生じる。
引用商標2は、「FLY RACING」の欧文字を標準文字で表してなり、同書同大でまとまりよく表してなり、その構成文字に相応して、さほど冗長ともいえない「フライレーシング」の称呼を生じるといえ、当該文字は、辞書等の載録が認められないから、特定の観念を生じるとはいえない。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標は、黒塗り四角形の中に若干デザイン化した文字をもって「VFLY」と書してなり、一方、引用商標は、「FLY」又は「FLY RACING」の欧文字からなるものであるから、外観上明らかに相違する。
また、本件商標からは、「ブイフライ」の称呼を生じ、引用商標からは、「フライ」又は「フライレーシング」の称呼が生じ、音数において明らかな差異を有するから、これらを一連に称呼した場合、称呼上相紛れるおそれがない。
さらに、観念においては、本件商標と引用商標2とは、特定の観念は生じないというべきであり、一方、引用商標1からは、「飛ぶ」の観念が生じるから、本件商標は、引用商標2とは、観念において比較することができず、加えて、引用商標1とは、観念において類似するとはいえない。
以上からすると、本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念において相紛れるおそれのない非類似の商標であり、本件商標と引用商標2とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において、相紛れるおそれがないから、本件商標と引用商標は、いずれも非類似の商標というべきである。
したがって、本件商標の指定商品及び指定役務中、申立てに係る指定商品と引用商標の指定商品とが同一又は類似であるとしても、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできない。
また、本件商標と引用商標とは、上記(2)のとおり、相紛れるおそれがない非類似の商標であり別異の商標であるから、両商標の類似性の程度は低いものといえる。
さらに、本件商標の指定商品及び指定役務中、申立てに係る指定商品は、申立人の業務に係る商品と一部の商品について関連性があるといえる。
さらにまた、引用商標1は、成語よりなるものであるから、独創性があるとはいえない。
そうすると、申立てに係る指定商品は、申立人の業務に係る商品と一部の商品について関連性があるとしても、引用商標は、申立人の取扱いに係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているとはいえない上、本件商標と引用商標の類似性の程度が低く、引用商標1については、独創性があるとはいえないことからすれば、本件商標に接する取引者、需要者が、申立人の業務に係る引用商標を連想又は想起するものということはできない。
以上から、本件商標は、本件商標権者がこれを申立てに係る指定商品について使用しても、取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第7号及び同項第19号該当性について
引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできない。
また、本件商標と引用商標とは、上記(2)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標である。
そして、申立人の提出に係る証拠は、不正の目的があるとする客観的な証拠の提出がなく、引用商標の周知性を前提とした申立人の主張は採用することができない。
さらに、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないこと明らかであり、又は社会の一般的道徳観念に反するなど、公序良俗に反するものというべき証左も見あたらない。
そうすると、申立人の提出に係る証拠からは、本件商標権者が申立人の事業の阻害等、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、申立てに係る指定商品について、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲(本件商標)



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異議決定日 2023-09-01 
出願番号 2022003106 
審決分類 T 1 652・ 22- Y (W0712)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 山田 啓之
鈴木 雅也
登録日 2022-09-27 
登録番号 6619793 
権利者 ヤデア テエクノロジー グループ カンパニー, リミテッド
商標の称呼 ブイフライ、ブイフリー、フライ、フリー、エフエルワイ 
代理人 鈴木 亜美 
代理人 保崎 明弘 
代理人 水野 勝文 
代理人 和田 光子 
代理人 関口 一哉 
代理人 竹山 尚治 
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