• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0916
管理番号 1401968 
総通号数 21 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-08-08 
確定日 2023-09-11 
異議申立件数
事件の表示 登録第3046613号商標の防護標章登録第1号の防護標章登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第3046613号商標の防護標章登録第1号の防護標章登録を維持する。 登録異議の申立ての理由中、「本件防護標章は商標法第4条第1項第16号に該当する。」との申立ては、却下する。
理由 第1 本件防護標章
登録第3046613号商標の防護標章登録第1号の防護標章(以下「本件防護標章」という。)は、別掲1のとおり、「少林寺拳法」の文字を横書きしてなり、登録第3046613号商標(以下「原登録商標」という。)に係る防護標章として、令和元年12月5日に登録出願され、第9類「電子出版物(通信ネットワークを介してダウンロードされるものを含む。),録音済み又は録画済みのコンパクトディスク・ビデオディスク・DVD・磁気カード・磁気ディスク・光ディスク及びビデオテープ」及び第16類「書籍及び雑誌」を指定商品として同4年3月8日に登録査定され、同年6月3日に設定登録されたものである。
なお、本件防護標章の登録出願に係る審査を以下「原審」ということがある。

第2 原登録商標
原登録商標は、別掲2のとおり、「少林寺拳法」の文字を横書きしてなり、平成4年5月31日に登録出願、第41類「技芸・スポ−ツ又は知識の教授,図書及び記録の供覧,運動施設の提供,美術品の展示,図書の貸与,娯楽施設の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏」を指定役務として同7年5月31日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
なお、原登録商標の商標権者は、当初、「宗教法人金剛禅総本山少林寺」であったが、「金剛禅総本山少林寺」に表示変更があり(平成14年12月9日登録)、その後、「有限責任中間法人少林寺拳法知財保護法人」に移転があり(平成16年1月9日登録)、さらに、平成25年2月20日を受付日とする登録名義人の表示変更により「一般社団法人SHORINJI KEMPO UNITY」となった。

第3 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件防護標章は、商標法第4条第1項第16号に該当するから、同法第43条の2第1号に該当し、また、本件防護標章は、商標法第64条の要件を具備していないので、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第19号証(枝番号を含む。以下、枝番号を含む号証で枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
1 具体的理由
(1)原登録商標の「少林寺拳法」について
原登録商標は、「少林寺拳法」の文字のみにより構成される商標であり(甲2)、その出願に係る全部書類(甲3)によると、宗教法人金剛禅総本山少林寺(代表者:宗由貴)より、平成4年5月31日に登録出願され、同7年1月20日に同人に対して登録査定がされ、後に設定登録がされた。
ア 「少林寺拳法」の意味
「広辞苑第7版」によれば、「少林寺拳法」の文字は「少林寺で達磨大師が授けたという心身鍛錬の法を起源とする拳法」を意味する名称である(甲4)。
なお、広辞苑の記載にある「本部、香川県多度津町。」は、現在、名称「少林寺拳法」を使用する者(団体)が、本件防護標章を使用する団体(本部香川県多度津町)のみであることを表しており、原登録商標の登録がされた後から現在の間、本件防護標章(原登録商標)の権利者が、申立人等の名称「少林寺拳法」の使用を阻害し続けてきた結果が表れたものといえる。
また、平成29年刊「資料集少林寺拳法研究」植木隆雲編(甲5)の表紙の記載を引用すれば、「少林寺拳法」とは「中国嵩山少林寺で行われていた拳法を日本から見て呼ぶ総称」である。
イ 昭和60年の新聞記事
昭和60年11月17日付け「サンケイ新聞」(甲6)には、「「少林寺拳法」使える 名称訴訟 連盟側の上告棄却 最高裁」の見出しで、「「少林寺拳法」の名称をめぐり、社団法人日本少林寺拳法連盟(宗由貴代表理事、本部香川県仲多度郡多度津町)が同様の拳法を教えている大阪市東区谷町の種川亀六さんを相手に、不正競争防止法に基づいて、表示使用差止めを求めた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(谷口正孝裁判長)は一六日までに、「少林寺拳法」の名称は種川さんも、連盟とは無関係に昭和二十七年ごろから使っており、種川さんの使用を禁止できないとした大阪高裁判決を支持、連盟側の上告を棄却した。」との記載がある。
上記新聞記事(甲6)より、次の(ア)及び(イ)が分かる。
(ア)日本では戦後、宗道臣や種川亀六氏の少林寺拳法が行われていたこと。
(イ)社団法人日本少林寺拳法連盟による名称「少林寺拳法」の独占使用は認められないとの判決が、昭和60年に最高裁で確定したこと。
ウ 最高裁判決の固有名称ではない「少林寺拳法」
上記新聞記事(甲6)中の「上告審」とは、最高裁判所昭和59年(オ)第770号事件(昭和60年11月14日判決)を指しており、「大阪高裁判決」とは、大阪高等裁判所昭和55年(ネ)第516号表示使用差止請求事件(昭和59年3月23日判決。甲7)を指している。また、当該「大阪高裁判決」の一審は、大阪地方裁判所昭和48年(ワ)第1491号表示使用差止請求事件(昭和55年3月18日判決。甲8)である。
大阪高裁判決(甲7)及び大阪一審判決(甲8)の判決文中の「理由」によれば、次の(ア)ないし(エ)が認定された上で、「社団法人日本少林寺拳法連盟は、「少林寺拳法」の名称の独占使用はできない。」とされたことが分かる。
(ア)我が国においては、往時嵩山少林寺において行われ後に山門外に流出した拳技が、極く一部の者の間においてではあるが、昭和の初期ころから「少林寺拳法」の名称で知られて使用されていた。その拳技の一部は、古くに禅僧を通じて日本に伝来した。
(イ)中国においては「少林拳」と称し、「少林寺拳法」とは称されていなかった。
(ウ)宗道臣が普及した「少林寺拳法」が広く知られており、普通名称であるとはいえない。
(エ)昭和27年ごろから、宗道臣の少林寺拳法と不動禅少林寺拳法は、無関係で「少林寺拳法」の名称を使用している。
上記(ア)ないし(エ)より、昭和60年には日本の最高裁で「「少林寺拳法」の名称は、宗道臣の団体の固有名称ではない。」と認められたことが分かる。ところが、この当時、社団法人日本少林寺拳法連盟の指導者たち(申立人代表者を含む。)に、この裁判内容が知らされることはなかった。
エ 昭和5年刊「拳法概説」の「少林寺拳法」
大阪一審判決(甲8)の判決文中の「理由」に引用された、昭和5年(1930年)東京帝国大学唐手研究会発行、三木二三郎/高田瑞穂編「拳法概説」(甲9)には、「支那小林寺に於て達磨大師が子弟の精神上並に肉体上の向上発展をはかる大道として創案せられたと伝えられる小林寺拳法」の記載がある。
また、昭和5年刊「拳法概説」には、他にも多数の「小林寺拳法」の文字(名称)が記載されている。
オ 昭和8年刊「唐手拳法 全」の「少林寺拳法」
昭和8年(1933年)東京帝国大学唐手研究会発行の陸奥瑞穂編「唐手拳法 全」(甲10)にも、「少林寺拳法」の文字(名称)が多数記載され、「少林寺拳法」について、「この達磨大師が座禅によつて衰へ行く子弟の肉体上並びに精神上の向上発展を計る為に創案されたのが即ち少林寺拳法の源を為したものとせられて居る。」「我が国に少林寺拳法の渡来したのは・・・萬治二年帰化明人陳元ピンが・・伝授したのがそもそもの始めである。」と記載されている。
カ 昭和27年刊「拳法教範第一巻」の「少林寺拳法」
平成29年刊「資料集少林寺拳法研究」(甲5)には、昭和27年(1952年)に宗教法人金剛禅総本山少林寺が刊行した宗道臣著「拳法教範第一巻」(以下「昭和27年刊「拳法教範」」という。)が紹介されており、昭和27年刊「拳法教範」には、「少林寺拳法」について、「少林寺拳法が、日本に初めて伝来されたのは、鎌倉時代に宋僧兀庵禅師によって、一部伝えられた事が、古文献に残されている・・・武術として移入されたのは、正保年間(江戸時代)に、随員として来朝し、陳元ピンが・・・伝えたのが始めであり」と記載されている。
キ 昭和30年刊「少林寺拳法教範」の「少林寺拳法」
平成29年刊「資料集少林寺拳法研究」(甲5)には、昭和30年(1955年)に宗教法人金剛禅総本山少林寺が刊行した宗(中野)道臣著「少林寺拳法教範」も紹介され、昭和30年刊「少林寺拳法教範」には、「少林寺拳法」について、「達磨大師によつて伝えられた印度拳法が、少林寺拳法と称されるようになったのは、相当後のこと考えられる」「かくして、何時の間にか少林寺拳法の主流は山門の外に流出し、後には武人の表芸となり、憂国の志士の特技ともなって演練研究せられ、今日伝えられるような、精妙を極めるものとなり、宋末より清にかけた数百年間は、少林寺拳法の黄金時代を形成していたのである。」「日本で再興されつつある正統少林寺拳法・・・中国で絶滅しつつあった少林寺拳法が、奇しくも日本帝国の敗戦を天の時として、正式に日本に移入され、燎原の火の如き勢いを以て発展しつつある」と記載されている。
ク 本件原商標登録願の「少林寺拳法」
平成4年5月31日には、宗教法人金剛禅総本山少林寺より原登録商標出願がなされ(甲3)、その登録時審査においては、原登録商標に使用されている「少林寺拳法」の文字(名称)に関する記述が一切なかったことが明らかになる。平成29年刊「資料集少林寺拳法研究」(甲5)には、原登録商標の出願人(権利者)の宗教法人金剛禅総本山少林寺の法人登記証明書が紹介されているが、昭和36年5月に変更されたこの宗教法人の「目的」として「達磨の遺法正統少林寺拳法」が記載されている。
また、平成15年5月8日付け「現在事項全部証明書」の「目的等」欄にも「達磨の遺法正統少林寺拳法」と記載されている(甲5)。
昭和60年には最高裁で「「少林寺拳法」は普通名称であるとはいえないが、宗道臣の団体の独占使用も許されない(宗道臣の団体の固有名称ではない)。」と認められたことと考えあわせれば、原登録商標は、固有名称ではない「少林寺拳法」のみを使用した商標の登録出願(区分第41類)を、最初に提出した出願人に対して登録が認められたと推察される。
(2)本件防護標章の「少林寺拳法」について
本件防護標章も「少林寺拳法」の文字のみにより構成されるが、本件防護標章の権利者(一般社団法人SHORINJI KEMPO UNITY)が使用する名称「少林寺拳法」の意味合いは、原登録商標を構成する「少林寺拳法」の文字の意味合いと大きく異なっており、本件防護標章は、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある。
ア 本件防護標章の権利者のウェブサイトの「少林寺拳法」
本件防護標章の権利者(代表:宗昂馬)のウェブサイト(甲11の1)の「世界で一つの少林寺拳法 知的財産権、商標について」のページ(甲11の2)には、「少林寺拳法の知的財産権 少林寺拳法の教え・技法・教育システムは、創始者・宗道臣によって生み出された、独自的固有の知的財産です。したがって、少林寺拳法という名称、ロゴマーク等も、事業活動に用いられる商品または役務を表示するという知的財産です。よって、勝手に教授したり、使用することはできません。」と掲載され、本件防護標章の権利者は、標章「少林寺拳法」を「宗道臣が創始した独自的固有の知的財産」として使用している。
これを本件異議申立書で明らかになった「原登録商標は、固有名称ではない(普通名称でもない)「少林寺拳法」の文字のみを使用した商標(区分第41類)に対して認められた。」ことに照らせば、本件防護標章の権利者の標章「少林寺拳法」の使用は、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある。
したがって、本件防護標章は、商標法第4条第1項第16号に該当する標章といえる。
イ 一般財団法人少林寺拳法連盟のウェブサイトの「少林寺拳法」
少林寺拳法グループの公式サイト(甲12)によれば、少林寺拳法グループには、本件防護標章の権利者の他、金剛禅総本山少林寺(原登録商標の出願人かつ元権利者)及び一般財団法人少林寺拳法連盟他が含まれる。
一般財団法人少林寺拳法連盟(会長:宗昂馬)のウェブサイト(甲13の1)の「少林寺拳法連盟について 沿革」のページ(甲13の2)には、「1947年 少林寺拳法創始」「1963年に「社団法人日本少林寺拳法連盟」が設立され、1992年に「社団法人日本少林寺拳法連盟」が解散し、「財団法人少林寺拳法連盟」が設立されました。その後、2011年に「一般財団法人少林寺拳法連盟」へと組織形態を変更して今日に至っております。」の掲載があり、同サイトの「中学校武道必修化への取り組み 少林寺拳法の特徴」のページ(甲11の3)には、「1.少林寺拳法について」の「少林寺拳法とは」「少林寺拳法は、1947(昭和22)年に創始者・宗道臣によって自信と行動力と慈悲心を持った社会で役立つ人を育てる、「人づくりの道」として香川県において創始された日本の武道です。」の掲載もある。
一般財団法人少林寺拳法連盟も、名称「少林寺拳法」を「宗道臣が1947(昭和22)年に創始した武道」として使用し、指導普及しているが、これも、標章「少林寺拳法」の商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある。
(3)原登録商標の不正使用の経緯
ア 公益法人登記簿に記載された「少林寺拳法」
原登録商標が出願された少し前、原登録商標の出願人代表者の宗由貴氏が代表を務める社団法人日本少林寺拳法連盟に対して、文部省から公益法人が認可され、平成4年1月10日には、財団法人少林寺拳法連盟(代表理事:宗由貴)が設立された。この時には、宗道臣の少林寺拳法の団体の指導者になった多くの青年たち(申立人代表者を含む。)が、この団体に入門して修得した「中国から伝わった少林寺拳法」を日本中に普及して、青少年教育に貢献した成果が文部省(日本政府)に評価されたものと思われる。
ところが、財団法人少林寺拳法連盟は、彼らに事前に知らされることなく設立され、この法人の登記簿(甲14)の「目的」欄には、「少林寺拳法の統括団体として、初代師家宗道臣が創始した」が密かに書き込まれた。
イ 財団法人少林寺拳法連盟刊行書籍の「少林寺拳法」
平成7年5月に原登録商標が登録されると、財団法人少林寺拳法連盟は、その翌8年2月10日に宗道臣著「拳法教範・初版[復刻版]」(以下「平成8年刊「拳法教範復刻版」」という。)を刊行したが、当該刊行物は、昭和27年刊「拳法教範」の復刻版とされているが、昭和27年刊「拳法教範」で「少林寺拳法」と記載されている箇所が、平成8年刊「拳法教範復刻版」では「少林寺の拳法」や「中国の拳法」に書き換えられた。
平成29年刊「資料集少林寺拳法研究」(甲5)には、昭和27年刊「拳法教範」と、平成8年刊「拳法教範復刻版」を並べて紹介し、書き換えられた名称「少林寺拳法」を詳しく紹介した。
翌年(平成9年)1月1日には、財団法人少林寺拳法連盟は「少林寺拳法50年史 第一部 正史」(甲15)を刊行した。当該刊行物には、「古来、中国でも日本でも、中国河南省の嵩山少林寺に源を発する拳法を「少林寺拳法」と呼んだ事実はない。」「「少林寺拳法」は、開祖自身が付けた名称である。」の記載がある。「開祖」とは宗道臣を指す。
平成29年刊「資料集少林寺拳法研究」(甲5)の第2章では、「少林寺拳法50年史 第一部 正史」(甲15)に記載された「宗道臣が創始した少林寺拳法」や「他人の家系の乗っ取り」他の虚偽が、立証されている。
平成8年刊「拳法教範復刻版」や平成9年刊「少林寺拳法50年史 第一部 正史」の記載内容から判断すると、「「少林寺拳法」の名称は、宗道臣の固有名称である。」となるが、「原登録商標は、固有名称ではない(普通名称でもない)「少林寺拳法」の文字のみを使用した商標(区分第41類)に対して認められた。」ことに照らせば、これが嘘であることが分かる。
ウ 無効2000−35136の「少林寺拳法」
平成12年3月には、宗教法人金剛禅総本山少林寺が、財団法人少林寺拳法連盟と連名で、無効2000−35136を請求した。
無効2000−35136の請求人(原登録商標権利者等)は、「少林寺拳法」の名称について、「古来、中国でも日本でも、嵩山少林寺に源を発する拳法を「少林寺拳法」と呼んだ事実はない。」「「少林寺拳法」は、開祖自身が付けた名称である。」「開祖宗道臣が独自に案出した語である。」と主張している(甲16の1)が、被請求人は何も答弁していない(甲16の2)。
無効2000−35136の対象である登録第2719292号商標の商標登録願(甲17)、不服審判請求書(甲18)、及び本件異議申立書で明らかになったことを考えあわせると、登録第2719292号商標(区分第24類)は、「打、突、蹴の三技を主とする格闘技の一流である」の意味合いを持つ「少林寺拳法」の文字(名称)のみを使用した商標であり、固有名称ではない(普通名称でもない)「少林寺拳法」のみを使用した商標(区分第41類)の登録査定(平成7年1月20日付け)の後に、原登録商標(区分第41類)に関連する商標(区分第24類)として、平成8年9月17日付け「審決」にて登録が認められたものと推察される。
無効2000−35136の結果、請求人(原登録商標の権利者等)の虚偽主張が特許庁において事実として認められ、登録第2719292号商標は平成13年9月に登録取消処分された。無効2000−35136の担当審判官は、上告審、甲第7号証及び甲第8号証の判決内容を知らなかったと思われる。
この時に、原登録商標の権利者が主張した「「少林寺拳法」は、宗道臣が独自に案出した語である。」が特許庁で認められたことより、昭和60年の最高裁判決で固有名称ではないと認められた「少林寺拳法」が、宗道臣の固有名称の「少林寺拳法」に書き換えられ、名称「少林寺拳法」の意味合いが大きく歪められたと推察される。
エ 本件防護標章の権利者による原登録商標の不正使用
上記無効審判が確定すると、原登録商標は、宗教法人の権利者(宗教法人金剛禅総本山少林寺)から、平成15年10月に設立された普通法人である現権利者に権利譲渡され、本件防護標章の権利者の商標「少林寺拳法」の不正使用につながった。また、この無効審判の請求人の財団法人少林寺拳法連盟は、平成23年1月4日に、普通法人の一般財団法人少林寺拳法連盟に名称変更して移行し、一般財団法人少林寺拳法連盟の商標「少林寺拳法」の不正使用につながった。
(4)本件防護標章の登録要件不備
原登録商標を構成している「少林寺拳法」の文字は、「少林寺で達磨大師が授けたという心身鍛錬の法を起源とする拳法」を意味する名称(普通名称とはいえない)であり、「中国嵩山少林寺で行われていた拳法を日本から見て呼ぶ総称」であるといえる。昭和60年には、最高裁で「宗道臣が独占使用できる名称ではない」との判断が認められている。本件異議申立書により、本件防護標章の権利者は、本件防護標章を構成する「少林寺拳法」の文字を、「宗道臣が創始した拳法」「宗道臣が創始した独自的固有の知的財産」等として使用している。
したがって、本件防護標章の権利者の標章「少林寺拳法」の使用は、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがあるといえるので、本件防護標章は、商標法第4条第1項16号に該当する標章であって、商標法第43条の2第1号に該当する。
また、本件防護標章の権利者の標章「少林寺拳法」の使用をもって、商品(役務)に係る登録商標が、自己の業務に係る指定商品(役務)を表示するものとして需要者の間に広く認識されているということはできない。よって、本件防護標章は、商標法第64条の登録要件を具備していない。
(5)不服2020−3234号における名称「少林寺拳法」
原登録商標の審査において、原登録商標の権利者は、拒絶査定不服審判事件(不服2020−3234)の審決(甲19)を引用し、「原登録商標は、需要者の間に広く認識されている。」と主張している。
上記審決(甲19)には、「判断においては、ある名称を誰が最初に使用したかを過去に遡って検証しなければならないものではないというべきである。」のように記述されている。
上記審判は、申立人が請求した不服審判であるが、審判請求書及び意見書の中で、「少林寺拳法」の誤った使用に関する証拠資料を多数提出したが、無効2000−35136(甲16)における原登録商標の権利者等による不正使用は、いまだ解明されておらず、名称「少林寺拳法」の検証は行われなかったものと推察される。上記審決においても、原登録商標の権利者等による原登録商標の不正使用は、見破られなかった。
2 むすび
以上の理由より、本件防護標章は、商標法第64条の登録要件を具備しているとはいえず、本件防護標章は登録を取り消されるべきである。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第16号に該当することを理由とする申立てについて
申立人は、申立ての理由において、本件防護標章が商標法第4条第1項第16号に該当することを理由に、その登録の取消しを申し立てている。
しかしながら、登録異議の申立てに係る商標法第43条の2(第3号を除く。)の規定は、防護標章登録に係る登録異議の申立てに準用されてはいるものの、その場合においては、同条の2第1号中「第3条第4条第1項、・・・」とあるのは「第64条」と読み替えるものとされている(商標法第68条第4項)。
そうすると、防護標章登録に係る登録異議の申立てにおいて、その防護標章登録が商標法第4条第1項の規定に違反してされたことを理由とすることは法律上の根拠を欠くものであって、本件防護標章が同項第16号に該当することを理由とする申立ては実体法の根拠を欠く不適法な申立てといわざるを得ない。
したがって、本件登録異議の申立ての理由中、本件防護標章が商標法第4条第1項第16号に該当することを理由とする部分は、不適法な申立てであって、その補正をすることができないものであるから、商標法第68条第4項において準用する同法第43条の15第1項において準用する「第56条第1項において準用する特許法第135条」の規定により却下すべきものである。
2 商標法第64条の要件を具備しているか否かについて
原登録商標は、役務に係る登録商標であり、かつ、地域団体商標ではないから、商標法第64条第1項及び同条第3項ではなく、同条第2項の要件を具備しているか否かが問題となる。
(1)商標法第64条第2項について
防護標章登録制度に係る商標法第64条第2項は、「商標権者は、役務に係る登録商標が自己の業務に係る指定役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合において、その登録商標に係る指定役務及びこれに類似する役務以外の役務又は指定役務に類似する商品以外の商品について他人が登録商標の使用をすることによりその役務又は商品と自己の業務に係る指定役務とが混同を生ずるおそれがあるときは、そのおそれがある役務又は商品について、その登録商標と同一の標章についての防護標章登録を受けることができる。」旨規定している。
そこで、本件防護標章が商標法第64条第2項の要件を具備しないにもかかわらず、登録されたものであるか否かについて検討する。
(2)防護標章と原登録商標との同一性、権利主体の同一性について
本件防護標章は、別掲1に示した構成からなるものであって、別掲2に示した構成からなる原登録商標と同一の構成からなるものであること、原登録商標に係る商標権は、前記第2のとおり、現に有効に存続するものであること、当該原登録商標の商標権者は、本件防護標章の権利者と同一の者であることは、商標登録原簿等の記載から明らかである(以下、「原登録商標の商標権者」及び「本件防護標章の権利者」を「本件商標権者」という。)。
(3)原登録商標の周知著名性について
ア 本件商標権者が原審において提出した甲第1号証ないし甲第86号証(以下「原審甲1」のように「原審甲○」と表記する。)、申立人が当審において提出した甲各号証及び当審における職権調査によれば、以下の事実が認められる。
(ア)本件商標権者について
a 「少林寺拳法公式サイト」(原審甲17)には、「少林寺拳法グループリンク」として、「金剛禅総本山少林寺」(原審甲19)、「一般財団法人少林寺拳法連盟」(原審甲20)及び「少林寺拳法世界連合(WSKO)」(原審甲21)とともに、本件商標権者である「一般社団法人SHORINJI KEMPO UNITY」(原審甲13等:以下「SHORINJI KEMPO UNITY」ということがある。)のウェブサイトへリンクが張られ、本件商標権者を含むこれらの団体が、「少林寺拳法」に係る業務をグループとして一体的に行っているものといえる(以下「金剛禅総本山少林寺」、「一般財団法人少林寺拳法連盟」、「少林寺拳法世界連合(WSKO)」及び「SHORINJI KEMPO UNITY」を「本件商標権者ら」ということがある。)。
b 本件商標権者のウェブサイト(原審甲13、原審甲18、職権調査)には、以下(a)ないし(c)の記載がある。
(a)「SHORINJI KEMPO UNITYとは」の見出しの下、「一般社団法人SHORINJI KEMPO UNITYは世界でひとつ、流派のない固有の“少林寺拳法(SHORINJIKEMPO)”の独自性を今後も守り、正しく普及し発展させることを目的に2003年に設立されました。少林寺拳法の知的財産を保護するとともに有効活用を行うための事業、また、少林寺拳法の普及・発展に貢献する団体などに対する支援事業を行っています。」の記載がある(https://shorinjikempo.or.jp/unity/jurstic/about:職権調査)。
(b)「SHORINJI KEMPO UNITY/教えと技法と教育システムを兼ね備えた少林寺拳法を守ります。少林寺拳法を普及し、発展させるための活動・団体を支援します。」の記載の下、「2021.09.14 日本武道学会 第54回大会にて「少林寺拳法で介護ができる」を発表しました。」、「2021.10.18 多度津町社会福祉協議会「少林寺拳法介護技術講習会」開催」、「2021.11.10 善通寺市家族介護教室にて「少林寺拳法で介護ができる」を紹介しました。」等の記載がある(原審甲18)。
(c)「少林寺拳法の歴史」の項には、「創始者・宗道臣(1911〜1980)は、第二次世界大戦終戦(1945年)後、・・・心身一体の教育手段「少林寺拳法」を1947年に考案したのです。・・・少林寺拳法を創始した宗道臣の先見性を象徴する事実の一つに、創始当初から、独自のカリキュラムが存在していたことが挙げられます。・・・少林寺拳法のカリキュラムは、易しいものや基礎となるものから順序よく学べるようになっています。そして、その節目として、昇格考試に挑戦することができるようになっています。昇格考試は学科試験、実技試験、・・・口述試験があり、審査基準・審査員資格も世界共通のもので、その審査結果は日本にあるSHORINJI KEMPO UNITYで一元管理されています。」の記載がある(原審甲13)。
c 本件商標権者らのウェブサイト(原審甲20)のリンク先である「少林寺拳法グループ 東京都」のウェブサイト(原審甲22)には、「少林寺拳法とは」の項の下、「少林寺拳法の沿革」として以下の記載がある(http://www.shorinjikempo-tokyo.com/toren/about/:職権調査)。
・1947年10月、日本の香川県多度津町の自宅で、宗道臣は教えと技法と教育システムを兼ね備えた「人づくりの行」として、少林寺拳法の指導を開始しました。
・1951年、宗教法人法に基づき、金剛禅総本山少林寺を開基。
・1956年、日本少林寺武芸専門学校を設立。その後、二度の名称変更を経て、現在は学校法人禅林学園として、少林寺拳法の理念に基づく学校教育を展開しています。
・1963年、社団法人日本少林寺拳法連盟を設立。
・1991年、社団法人日本少林寺拳法連盟は解散し、財団法人少林寺拳法連盟を設立。
・2011年、一般財団法人少林寺拳法連盟に移行して、学校・職域などで少林寺拳法のクラブ活動を展開しています。
・1972年、国際少林寺拳法連盟が発足。
・1974年、国際少林寺拳法連盟は解散し、少林寺拳法世界連合が発足して、2008年3月現在、世界33カ国で少林寺拳法が愛されています。
・2003年、有限責任中間法人少林寺拳法知財保護法人を設立。
・2006年、有限責任中間法人SHORINJI KEMPO UNITYに名称変更。
・2008年、一般社団法人に移行し、少林寺拳法の知的財産を保護・有効活用し、人づくり運動をサポートしています。
d 以上aないしcによれば、本件商標権者は、我が国において「少林寺拳法」の名称の下、当該拳法の知的財産を保護・有効活用し、人づくり運動をサポートする業務を行っている団体であり、同じく、「少林寺拳法」の普及、教育支援等の業務を行っている本件商標権者らの中核的な団体であることが認められる。
(イ)「少林寺拳法」に関する本件商標権者らによる活動状況について
a 本件商標権者らのウェブサイトに、「少林寺拳法連盟」に係る「組織機構」の見出しの下、「運営機構図」には、下部組織として、「各都道府県連盟」、「全日本実業団連盟」、「全自衛隊連盟」、「全国高等学校連盟」、「全国中学校連盟」、「全日本学生連盟」などの記載がある(https://www.shorinjikempo.or.jp/federation/about/organization:職権調査)。
b 「はじめよう!少林寺拳法」(2009年10月30日、株式会社ベースボール・マガジン社発行)の24頁には、「Q1 少林寺拳法は、中国の武術なの?」の見出しの下、「少林寺拳法の創始者は宗道臣、という人。1947年、36歳のときに香川県の多度津町というところに小さな道場を開き、それが現在では世界34カ国に広まり、170万人の人が拳士として登録している(09年5月現在)大きな団体になったのです。」の記載があり、32頁には、「私も少林寺拳法をやっています。」の見出しの下、落語家やビジネスマンの3人及び家族のコメントが紹介され、143頁には、「少林寺拳法で鍛えた心と身体を活かし、人命救助に備える航空救難団の精鋭たち」の見出しの下、航空自衛隊航空救難団千歳救難隊の2名の紹介がなされ、144頁には、「忙しい政治の仕事の合間をぬって、少林寺拳法を続ける」の見出しの下、国会議員の活動の紹介がなされ、168頁には、日本武道館における「少年少女錬成大会」の様子が、169頁には、「全国中学生少林寺拳法大会」の様子が、170頁には、「全国高等学校少林寺拳法大会」の様子が紹介され、173頁には、「連絡先一覧」の見出しの下、47都道府県に加え、「全国高校」「近畿高校」「全日本実業団」「関東実業団」「東海実業団」「関西実業団」「全自衛隊」の連盟連絡先が紹介されている(職権調査)。
c 2017年7月25日付けスポーツ報知10頁には、「[イベントナビ]少林寺拳法創始70周年 1500人が演武競う」の見出しの下、「「少林寺拳法創始70周年・東京進出60年記念 2017少林寺拳法東京都大会」(報知新聞社後援)が16日、東京・足立区の東京武道館で開催された。総勢約1500人の拳士たちが参加。日頃の修練の成果を競い合った。/◆東京都大会「男子五段以上の部」檜物五段梅原四段がV/創始70年、東京進出60周年と、少林寺拳法の歩みの中で大きな節目となった今大会には、都内の各道院をはじめ、幼稚園から大学までの部活や、さらにクラブ、実業団まで約1500人の拳士が集結した。(略)◆宗道臣氏が創始…39か国180万人/少林寺拳法は、戦中に中国各地を巡り、様々な拳法を学んだ宗道臣氏(故人)が、帰国後の1947年、香川・多度津町で創始した。敗戦で荒廃した国土と人の心のさまを憂う宗氏は、「力愛不二(※りきあいふに=力のない愛は無力であり、愛のない力は暴力であるという意味)」の教えと、「自己確立」「自他共楽」の「教え」と「技法」を中心とした、社会に役立つ「人づくりの行」として少林寺拳法を完成させると、普及に尽力。心と体が調和した「拳禅一如」の教育システムは、今や世界39か国で180万人が学ぶまでになった。」の記載がある(職権調査)。
d 2018年7月16日付け毎日新聞地方版24頁には、「少林寺拳法:正しい構え、突き、蹴り学ぶ 山口市で指導者研修会」の見出しの下、「県内で少林寺拳法を指導する人たちの資質向上を図る研修会が7日、山口市の維新百年記念公園スポーツ文化センター武道館であり、約20人が参加した。少林寺拳法の普及と効果的な指導につなげようと、日本武道館や少林寺拳法連盟が主催。」の記載がある(職権調査)。
e 2019年7月31日付けスポーツ報知(20頁)には、「【広告】[イベントナビ]少林寺拳法東京都大会 1600人演舞競う」の見出しの下、「東京都少林寺拳法連盟(90支部)が主催する2019年少林寺拳法東京都大会(報知新聞社など後援)が21日、東京・足立区の東京武道館で開催された。小学生見習からマスターズ、親子、夫婦の部などの演武審査、さらに論文の部まで39種目で競われ、約1600人の拳士が参加した。上位入賞者は11月23、24日に愛知・豊田市で行われる全国大会に進出。さらに21年に東京で開催される世界大会に向けて発進した。/◆39種目実施/少林寺拳法は中国から帰国した開祖・宗道臣氏が1947年に香川・多度津町で創始し、57年に高弟の内山滋氏が東京道院を設立。全国、世界へと普及した。(略) 全国大会は、11月23、24日に愛知・スカイホール豊田(豊田市総合体育館)で、さらに2021年には、4年に1度の世界大会が東京で行われる。17年に米国・カリフォルニア州で開催された創始70周年記念世界大会からの架け橋は続いている。」の記載がある(職権調査)。
f 「少林寺拳法」に係る周年行事として、創始10周年記念全国演武大会(1958年3月)、創始20周年記念全国演武大会(1967年1月)、創始30周年記念全国演武大会(1977年11月)、創始40周年記念全国大会、創始50周年記念大会、創始60周年記念大会、創始70周年記念事業(2017年)等が行われた(原審甲15、原審甲16)。
g 「月刊 武道 2013年10月号」(公益財団法人 日本武道館)には、2013年8月24日、25日に、「2013少林寺拳法世界大会 in Osaka,Japan」が開催され、大阪市中央体育館には世界22か国から3000名の拳士が集結した旨の記載がある(原審甲24)。
また、日本国内各地において、2018年には140か所、2019年には132か所で、少林寺拳法に関する各種大会が開催された(原審甲25、原審甲26)。
h 2017年から2021年にかけて、全国紙を含む新聞記事に、「少林寺拳法」に関する記事が多数掲載された(原審甲31〜原審甲56)。
また、1964年から2020年にかけて、NHKのテレビ番組で「少林寺拳法」に関する話題が放送されたことがうかがえる(原審甲57〜原審甲77)。
i 少林寺拳法の習得者(国内)は、2017年度には49,320人、2018年度には46,832人、2019年度には44,086人、2020年度には42,056人、2021年度には37,486人であり、少林寺拳法支部・道場(国内)は、2017年度には2,813か所、2018年度には2,804か所、2019年度には2,774か所、2020年度には2,722か所、2021年度には2,675か所とされる(原審甲10、原審甲11)。
また、少林寺拳法の支部・道場(海外)は、2017年度には511か所、2018年度には555か所、2019年度には559か所、2020年度には567か所、2021年度には571か所とされる(同上)。
さらに、令和3年11月現在、全国各地の約280の大学・短大、約210の高等学校、100の実業団、自衛隊、教職員支部等に少林寺拳法部が設置されているとされる(原審甲78〜原審甲83)。
(ウ)「少林寺拳法」なる表示の周知著名性に係る過去の判決について
a 昭和48年(ワ)第1491号昭和55年3月18日大阪地裁判決(甲8)において、「少林寺拳法」に係る商品等表示について、「「少林寺拳法」・・・なる名称は、原告(決定注:「社団法人日本少林寺拳法連盟」)の事業規模等からして、単に一地方のみでなく全国的に、ことにスポーツとしての武技に関心を有する青少年層の間において、ほかでもない原告の事業表示として周知されているものというべきである。」旨判示されている。
上記判示事項は、上記事件の控訴審である昭和55年(ネ)第516号昭和59年3月23日大阪高裁判決(甲7)及び上記控訴事件の上告審である昭和59年(オ)第770号昭和60年11月14日最高裁判決(甲5)においても維持された。
b 平成5年(ワ)第38号平成9年9月25日大分地裁判決(原審甲3)において、「少林寺拳法」に係る商品等表示について、「原告(決定注:「財団法人日本少林寺拳法連盟」)が使用している「少林寺拳法」という表示は、宗道臣の編み出した拳技及びその普及事業を指すものとして、遅くとも、昭和30年代初期には、自他の識別力を備え、その全国的な周知性、著名性を確立したというべきであり、したがって、同人や社団法人の事業を継承した原告が設立された当時(決定注:平成4年1月)には、原告の営業たることを示す固有の表示として、日本国内において、一般に、広く認識されていたと認めることができる。」旨判示されている。
上記判示事項は、上記事件の控訴審である平成9年(ネ)第1050号平成10年11月11日福岡高裁判決(原審甲4)においても維持された。
c 上記aに係る判決における原告「社団法人日本少林寺拳法連盟」及び上記bに係る判決における原告「財団法人少林寺拳法連盟」は、いずれも、本件商標権者らの前身である(上記(ア)c参照)。
イ 上記アの事実によれば、次のとおり判断できる。
(ア)本件商標権者について
本件商標権者である「SHORINJI KEMPO UNITY」は、他の本件商標権者らとともに「少林寺拳法グループ」を形成し、我が国において、宗道臣の編み出した「少林寺拳法」の普及事業を行っている。
(イ)原登録商標の使用役務について
原登録商標である「少林寺拳法」は、宗道臣の編み出した拳技及びその普及事業を指す名称として、本件商標権者により使用されているところ、そのウェブサイトによれば、当該「少林寺拳法」は、教えと技法と教育システムを兼ね備えたものとして、基礎から順序よく学べるような独自のカリキュラムを有し、その節目には、世界共通の審査基準・審査員資格に基づき、学科試験、実技試験及び口述試験からなる昇格考試が実施され、その審査結果は本件商標権者によって一元管理されていること、「少林寺拳法グループ」を形成する本件商標権者らに係る少林寺拳法習得者及び支部・道場が国内外に相当数あること等から、「少林寺拳法」の文字からなる原登録商標は、第41類の指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授」に含まれる役務である「拳法の教授」について使用されているといえる。
(ウ)原登録商標の使用開始時期、使用期間、使用地域について
原登録商標の構成文字である「少林寺拳法」は、昭和20年代前半に、香川県仲多度津郡多度津町において宗道臣が教授する独自の拳法の名称として使用が開始され、本件商標権者らの前身の団体により、遅くとも昭和32年には、当該拳法の名称として統一的に使用され、現在においても、本件商標権者によって使用されているから、原登録商標は、本件商標権者らにより我が国において70年以上にわたって使用されているものといえる。
また、原登録商標の使用地域は、本件商標権者とともに「少林寺拳法グループ」を形成する本件商標権者らに係る少林寺拳法習得者及び支部・道場数が全国的であること、日本国内各地において、本件商標権者らに係る少林寺拳法に関する各種大会が多数開催されていること、全国各地の大学・短大、高等学校、実業団等に本件商標権者らに係る少林寺拳法部が多数設置されていることからすれば、その使用地域は我が国全体に及んでいるものといえる。
(エ)原登録商標の普及度について
上記(ア)ないし(ウ)のとおり、原登録商標を構成する「少林寺拳法」の文字は、70年以上にわたって、本件商標権者を含む本件商標権者ら(前身の団体を含む。)により広く全国各地で使用されている。そして、周年の記念行事も含め、本件商標権者らによる少林寺拳法に係る各種行事が少なくとも1958年以降、定期的、継続的に開催されていること、2017年から2021年にかけて、全国紙を含む新聞記事に本件商標権者らに係る「少林寺拳法」に関する記事が多数掲載されていること、1964年から2020年にかけて、NHKのテレビ番組でも本件商標権者らに係る「少林寺拳法」に関する話題が放送されたことなどからすれば、原登録商標を構成する「少林寺拳法」の文字の普及度は極めて高いものといえる。
(オ)「少林寺拳法」が周知著名であることを認めた判決について
原登録商標である「少林寺拳法」の文字は、本件商標権者らないしその前身である法人による、「少林寺拳法」の普及事業の商品等表示として全国的に著名であることが、判決において判示されている。
ウ 以上を総合すれば、原登録商標である「少林寺拳法」の文字は、本件防護標章の登録査定時(令和4年3月8日)において、本件商標権者らが形成する「少林寺拳法グループ」の中核的な団体である本件商標権者の業務に係る役務(「拳法の教授」)を表示するものとして、「技芸・スポーツ又は知識の教授」に係る需要者の間で広く全国的に認識されていたものと認めることができる。
(4)混同を生ずるおそれについて
本件防護標章に係る指定商品は、上記第1のとおり、「電子出版物(通信ネットワークを介してダウンロードされるものを含む。),録音済み又は録画済みのコンパクトディスク・ビデオディスク・DVD・磁気カード・磁気ディスク・光ディスク及びビデオテープ」及び「書籍及び雑誌」であり、原登録商標の指定役務は、上記第2のとおり、「技芸・スポ−ツ又は知識の教授,図書及び記録の供覧,運動施設の提供,美術品の展示,図書の貸与,娯楽施設の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏」であるから、両者は類似しないものである。
しかしながら、原登録商標の使用役務は、上記(3)イ(イ)のとおり、「拳法の教授」であるところ、「拳法の教授」の活動に関連して、書籍の発行、ビデオの制作等が行われることは顕著な事実である(なお、別掲3のとおりの事実も参照。)ことから、原登録商標の使用役務と本件防護標章に係る指定商品は関連性が高く、需要者が共通する場合も多いといえる。
そうすると、上記(3)の原登録商標の周知著名性も考慮すれば、原登録商標が、他人によって本件防護標章に係る指定商品について使用された場合には、これに接する需要者は、その商品があたかも本件商標権者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の需要者が商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
(5)小括
以上(1)ないし(4)によれば、本件防護標章は、商標法第64条第2項の要件を具備するものである。
3 申立人の主張について
(1)申立人は、申立人自身が編集、発行する「資料集少林寺拳法研究」(甲5)、昭和60年のサンケイ新聞の記事(甲6)、昭和5年及び同8年に「東京大学唐手研究会」なる団体から発行された刊行物(甲9、甲10)等を引用して、「原登録商標を構成している「少林寺拳法」の文字は、「少林寺で達磨大師が授けたという心身鍛錬の法を起源とする拳法」を意味する名称(普通名称とはいえない)であり、「中国嵩山少林寺で行われていた拳法を日本から見て呼ぶ総称」であるから、本件商標権者に係る標章「少林寺拳法」の使用をもって、自己の業務に係る指定役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているということはできない。」旨主張している。
しかしながら、中国河南省の嵩山少林寺で行われた、達磨大師の拳法が、鎌倉時代に我が国に伝来し、昭和の初期に「少林寺拳法」などの名称で、これが知られていたことがあったとしても、上記2(3)のとおり、原登録商標である「少林寺拳法」の文字は、本件防護標章の登録査定時(同4年3月8日)においては、本件商標権者の業務に係る役務(「拳法の教授」)を表示するものとして、「技芸・スポーツ又は知識の教授」に係る需要者の間で広く全国的に認識されていたものと認められるものであり、原登録商標に係る「少林寺拳法」を「少林寺で達磨大師が授けたという心身鍛錬の法を起源とする拳法」「中国嵩山少林寺で行われていた拳法を日本から見て呼ぶ総称」ということはできない。
(2)申立人は、最高裁(決定注:上記2(3)ア(ウ)aの昭和59年(オ)第770号)で「宗道臣が独占使用できる名称ではない」との判断が認められたにもかかわらず、本件防護標章出願人が「宗道臣が創始した拳法」「宗道臣が創始した独自的固有の知的財産」等として使用していることから、「本件防護標章の権利者の標章「少林寺拳法」の使用をもって、役務に係る登録商標が、自己の業務に係る指定役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているということはできない。」旨主張している。
しかしながら、申立人が引用する最高裁判決は、大阪高裁の判決を支持したものであるが、当該高裁判決は、「少林寺拳法」の商品等表示について、「「少林寺拳法」・・・なる名称は、原告(決定注:「社団法人日本少林寺拳法連盟」)の事業規模等からして、単に一地方のみでなく全国的に、ことにスポーツとしての武技に関心を有する青少年層の間において、ほかでもない原告の事業表示として周知されているものというべきである。」(上記2(3)ア(ウ)a)として、本件商標権者らの前身である社団法人日本少林寺拳法連盟の事業表示としての全国的な周知著名性は認めた上で(甲7、甲8)、以前から同種の拳法を連盟とは無関係に教えていた者に、不正競争防止法に基づく先使用権(不正競争防止法第19条第1項第3号)を認めることにより、同法の適用除外として例外的に「少林寺拳法」の名称の使用を認めたものである。
してみれば、上記最高裁判決により、本件商標権者らに係る標章「少林寺拳法」の周知著名性が否定されたものとはいえず、本件においても、上記2(3)のとおり、原登録商標である「少林寺拳法」の名称は、原登録商標の商標権者の業務に係る「拳法の教授」を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると判断するのが相当である。
(3)申立人は、申立人が編集、発行する「資料集少林寺拳法研究」(甲5)、一般財団法人少林寺拳法連盟のホームページ(甲13)、財団法人少林寺拳法連盟の登記簿(甲14)、「少林寺拳法50年史 第1部 正史」(甲15)、過去の審判事件に係る審判請求書及び審決書類(甲16、甲17、甲18)等を引用して、「財団法人少林寺拳法連盟の登記簿の目的欄に「少林寺拳法の統括団体として初代師家宗道臣が創始した」が密かに書き込まれた。」「「宗道臣が創始した少林寺拳法」や「他人の家系の乗っ取り」他の虚偽が立証されている。」「最高裁判決で固有名称ではないと認められた少林寺拳法が宗道臣の固有名称の少林寺拳法に書き換えられ、少林寺拳法の意味合いが大きく歪められた」「本件原商標の商標権利者等による不正使用は、未だ解明されていない」等として、原登録商標の「不正使用」があった旨主張している。
しかしながら、上記2(3)のとおり、我が国において、原登録商標の「少林寺拳法」は、宗道臣及びその事業を承継した本件商標権者らによって、普及、発展してきたものというのが相当であり、申立人の提出した甲各号証をみても、これと異なる事実を客観的に認定することはできない。
そうすると、登記簿(甲14)の目的欄にあるとされる、「少林寺拳法の統括団体として、初代師家宗道臣が創始した」との記載が、虚偽の記載に当たるということはできないし、我が国において現在行われている「少林寺拳法」について、その創始者を宗道臣と認定し、その事業を承継した本件商標権者の事業を表示する商標として、その周知著名性を認定することが事実誤認に当たるということもできない。
その他、申立人が提出した証拠からは、原登録商標の「不正使用」があったことを認めるに足りる具体的、客観的な事実は見いだせない。
(4)したがって、申立人の上記主張はいずれも採用することはできない。
4 むすび
以上のとおり、本件防護標章は、商標法第64条第2項の要件を具備するものであり、その登録は同条に違反してされたものではないから、同法第68条第4項において準用する同法第43条の3第4項により、その登録を維持すべきである。
また、本件防護標章が商標法第4条第1項第16号に該当することを理由とする申立てについては、不適法な申立てであって、その補正をすることができないものであるから、商標法第68条第4項で準用する同法第43条の15第1項で準用する「同法第56条第1項において準用する特許法第135条」の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1(本件防護標章)


別掲2(原登録商標)


別掲3 「拳法の教授」の活動に関連して、書籍の発行、ビデオの制作が行われている事実
(1)「Amazon」の通販サイトに「少林寺拳法 剛法の秘密 DVDでよくわかる!」単行本(ソフトカバー)(2018/11/6)の掲載がある。
https://www.amazon.co.jp/%E5%B0%91%E6%9E%97%E5%AF%BA%E6%8B%B3%E6%B3%95-%E5%89%9B%E6%B3%95%E3%81%AE%E7%A7%98%E5%AF%86-DVD%E3%81%A7%E3%82%88%E3%81%8F%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8B-SHORINJI-KENPO/dp/4583111142/ref=asc_df_4583111142/?tag=jpgo-22&li%E2%80%A6
(2)「Amazon」の通販サイトに「連続写真で究める少林寺拳法 柔法編〈1〉SHORINJI KEMPO UNITY,少林寺拳法連盟他|2015/3/18)」ほか、全4タイトルの「単行本」の掲載がある。
https://www.amazon.co.jp/%E6%9C%AC-SHORINJI-KEMPO-UNITY/s?rh=n%3A465392%2Cp_27%3ASHORINJI+KEMPO+UNITY
(3)「一般財団法人 少林寺拳法連盟 インターネットショッピング」のウェブサイトに「東映ビデオDVD「ROAD OF KURO−OBI WORLD 少林寺拳法編」/2022年8月下旬より順次発送いたします。」ほか、全6タイトルの「DVD」の掲載がある。
https://shop.shorinjikempo.or.jp/products/list?category_id=14
(4)「Amazon」の通販サイトに「Dm7−006 DVD 少林寺拳法 柔法原理其の一 技の成り立ちと習得法 著作:一般社団法人 SHORINJI KENPO UNITY※DVDにキズあり/Amazon.co.jp での取り扱い開始日:2023/3/5」の掲載がある。
https://www.amazon.co.jp/Dm7-006-%E6%8A%80%E3%81%AE%E6%88%90%E3%82%8A%E7%AB%8B%E3%81%A1%E3%81%A8%E7%BF%92%E5%BE%97%E6%B3%95-%E8%91%97%E4%BD%9C%EF%BC%9A%E4%B8%80%E8%88%AC%E7%A4%BE%E5%9B%A3%E6%B3%95%E4%BA%BA-SHORINJI-%E2%80%BBDVD%E3%81%AB%E3%82%AD%E3%82%BA%E3%81%82%E3%82%8A/dp/B0BXJGRYFT/ref=sr_1_11?__%E2%80%A6

(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには、御注意ください。
異議決定日 2023-09-01 
出願番号 2019153066 
審決分類 T 1 651・ 8- Y (W0916)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 鈴木 雅也
山田 啓之
登録日 2022-06-03 
登録番号 3046613 
権利者 一般社団法人SHORINJI KEMPO UNITY
商標の称呼 ショーリンジケンポー 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ