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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0942
管理番号 1400834 
総通号数 20 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-11-28 
確定日 2023-07-27 
異議申立件数
事件の表示 登録第6615429号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6615429号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6615429商標(以下「本件商標」という。)は、「Timecho」の欧文字を標準文字で表してなり、令和4年3月24日に登録出願、第9類「コンピュータソフトウェア(記憶されたもの),コンピュータ用プログラム(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの),コンピュータソフトウェア用アプリケーション(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの),コンピュータプログラム(記憶されたもの),コンピュータ操作用プログラム(記憶されたもの),情報・データ・音響又は映像の中央処理装置,コンピュータ周辺機器,データ処理装置,データ管理用のコンピュータ,コンピュータ記憶装置」及び第42類「コンピュータソフトウェアのバージョンアップ及び保守,コンピュータソフトウェアの設計・作成・保守に関する助言,データ処理用プログラムの作成,データベースの設計及び開発,遠隔操作によるデータのバックアップ,電子データの保存用記憶領域の貸与,コンピュータプログラムの変換及びコンピュータデータの変換(媒体からの変換でないもの),コンピュータによるデータの移行,電子データ用クラウドストレージの貸与,データの暗号化処理」を指定商品及び指定役務として、同年8月8日に登録査定、同年9月15日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標(以下、これらをまとめて「引用商標」という場合がある。)は、次のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第6072707号商標
商標の態様:ECHO(標準文字)
登録出願日:平成27年4月10日
優先権主張:2014年(平成26年)10月31日、トリニダード・トバゴ共和国
設定登録日:平成30年8月17日
指定商品及び役務:第42類「電子計算機用プログラムの提供,クラウドコンピューティング」を含む第9類、第35類、第38類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
(2)登録第6114778号商標
商標の態様:ECHO(標準文字)
登録出願日:平成27年4月10日
優先権主張:2014年(平成26年)10月31日、トリニダード・トバゴ共和国
設定登録日:平成31年1月18日
指定商品:第9類「磁気記憶媒体・記録ディスク(未記録のもの),未記録のコンパクトディスク,未記録のDVD,未記録のデジタル記録媒体,データ処理装置,コンピュータ,コンピュータソフトウェア,電子応用機械器具(「ガイガー計数器・高周波ミシン・サイクロトロン・産業用X線機械器具・産業用ベータートロン・磁気探鉱機・磁気探知機・地震探鉱機械器具・水中聴音機械器具・超音波応用測深器・超音波応用探傷器・超音波応用探知機・電子応用扉自動開閉装置・電子顕微鏡」を除く。),電子管,半導体素子,電子回路(「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路」を除く。),電子計算機用プログラム,音声によって制御される情報機器用のコンピュータハードウエア及びコンピュータソフトウエア」
(3)登録第6156450号商標
商標の態様:ECHO(標準文字)
登録出願日:平成29年12月19日
設定登録日:令和元年6月28日
指定役務:第42類「パーソナルアシスタント機能によりユーザーの音声を認識して特定タスクの実行を可能とするコンピュータソフトウェアの提供」を含む第35類、第42類及び第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
(4)登録第6288940号商標
商標の態様:ECHO(標準文字)
登録出願日:平成30年9月21日
設定登録日:令和2年9月7日
指定商品及び役務:第9類「移動電話・タブレット又はその他のモバイル機器用のコンピュータアプリケーションソフトウエア」及び第42類「プロファイリングを完成させ、特性に基づいておすすめを提供するためにユーザーが音楽の特性の選択をインプットすることを可能にする技術又はユーザーの選択に基づいて音楽の特性を区別する技術を特徴とするダウンロード不可能なソフトウェアの提供」を含む第9類、第35類、第38類、第39類、第41類、第42類及び第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
(5)登録第6489225号商標
商標の態様:ECHO(標準文字)
登録出願日:令和2年3月2日
優先権主張:2019年(令和元年)9月2日、ジャマイカ
設定登録日:令和3年12月21日
指定商品:第9類「コンピュータソフトウェア」を含む第9類及び第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(6)登録第6531295号商標
商標の態様:ECHO(標準文字)
登録出願日:令和2年3月2日
優先権主張:2019年(令和元年)9月2日、ジャマイカ
設定登録日:令和4年3月22日
指定商品:第9類「コンピュータソフトウェア」を含む第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第111号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号省略する。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標の周知著名性について
引用商標は、申立人の親会社であるAmazon.com,Inc.(以下「アマゾン社」という。)が開発した、いわゆるAIスピーカーについて使用され、本件商標の出願日までに、我が国及び世界において広く知られるに至っていた著名商標である(甲3〜甲97)。
アマゾン社は、アメリカ合衆国ワシントン州シアトルに本拠地を置く、世界最大級のインターネット通販サイトやインターネット事業者向けのデータセンター事業などを手掛ける世界最大手のIT企業である(甲98)。申立人は、アマゾン社の100%子会社として(甲99)、アマゾン社の知的財産を管理するとともに、我が国を含む世界中において、引用商標を始めとする多数の商標登録出願を行っている。
AIスピーカーとは、人工知能(AI)を搭載し、無線通信接続機能と音声操作のアシスタント機能を備えたスピーカーをいい(甲95)、「スマートスピーカー」と呼ぶこともある(甲100、甲101)。これまで、スマートフォンの分野においては、米アップル社が「シリ」を、米グーグル社が「グーグル・ナウ」を、それぞれ音声操作によるアシスタント機能としてスマートフォンに搭載する形で提供していたが(甲41)、アマゾン社は、AIアシスタントをスピーカーに搭載するという独自の発想に基づき、AIスピーカー「ECHO」を開発した(甲102)。
アマゾン社は、2014年11月6日に、アメリカにおいて招待制による「ECHO」の販売を開始し、2015年6月23日には、アメリカでの一般販売を開始した(甲102)。「ECHO」は、無線通信によりインターネットに接続されており、内蔵された音声アシスタント「アレクサ」にユーザーが声をかけることによって、スピーカーを通じて音楽を鑑賞したり、ニュースや天気予報を確認したりすることができるほか、照明やエアコン、掃除機、自動車などの外部の対応機器を接続することにより、音声ひとつでそれらの機器を操作することが可能となる(甲3、甲24、甲28)。画面やタッチボタン等を介した指先での操作を必要とせず、音声のみで一切の操作を可能にするという点で、単なるスピーカーを超えた、これまでにない画期的な情報通信機器として、最初の発売国であるアメリカでは瞬く間に爆発的な大ヒット商品となった(甲22、甲25、甲35)。
アメリカで「ECHO」が発売された時点では、我が国における「ECHO」の発売に関する具体的な見通しは明らかにされていなかったにも関わらず、我が国の全国紙だけでなく地方紙においても、アメリカで「ECHO」の販売予約の受付が開始されたことを伝える記事が掲載されるほど、我が国でも大きな注目をもって報道された(甲4〜甲14)。その後も、実際にアメリカで「ECHO」を購入した在米の日本人ジャーナリストや知識人らが、「ECHO」の使い心地や、「ECHO」が自宅にあることによっていかに生活の利便性が向上したかについて、各種媒体を通じて伝えるなど(甲19、甲24、甲25、甲96)、アマゾン社の「ECHO」は、我が国の新聞・雑誌・インターネット等の記事において頻繁に取り上げられた(甲15〜甲97の36)。このように、アマゾン社による「ECHO」のアメリカでの販売開始から本件商標の出願日まで、我が国における「ECHO」に関する報道は途切れることなく続き、「ECHO」は、アマゾン社が提供するAIスピーカーを表す商標として、我が国の取引者、需要者の間に広く知られるに至った。
「ECHO」のアメリカにおける販売開始以降、複数の電機メーカーやインターネット企業が、「ECHO」と同種のAIスピーカーを相次いで発売・発表したことにより、世界におけるAIスピーカー市場は、アマゾン社の「ECHO」がそれを牽引する形で急速な盛り上がりを見せた(甲103)。アマゾン社の「ECHO」は、2014年11月の招待制による販売及びそれに続く2015年6月の一般販売がされた結果、2016年4月までの間に累計300万台もの売り上げをアメリカにおいて記録した(甲35、甲39、甲41)。その後も順調に販売台数を伸ばし(甲80、甲87)、2016年12月末時点で、アメリカにおける販売台数は1000万台を超えたとの報道もあった(甲94)。2017年5月時点におけるアメリカのAIスピーカーの市場シェアは、アマゾン社の「ECHO」が約71%、グーグル社の「Google Home」が約24%と、市場の先駆者であるアマゾン社が圧倒的なシェアを獲得している(甲90、甲104)。
アマゾン社は、2016年9月に英国及びドイツにて「ECHO」の販売を開始し(甲58)、2017年10月にはインドで(甲105)、同年11月には我が国でも「ECHO」の販売を開始した(甲106、甲107の1)。当初はアマゾンジャパン社の運営するオンラインショッピングサイト「Amazon.co.jp」での申し込みを通じた招待制による販売であったが、2018年3月30日からは同サイト上で一般販売が開始され、同年4月からは、全国1千か所以上の家電量販店の店頭でも販売された(甲97の2、甲107の2)。その後、2018年6月には、競合に先駆けて我が国で画面付きのAIスピーカー「Amazon Echo Spot」(アマゾン エコー スポット)の販売が開始された(甲97の3、甲107の3)。また、同年同月には、「ECHO」で使用できるアプリに該当する「スキル」と呼ばれる機能が、2017年11月の発売当時の265種類から約3.8倍の1千種類に達し、アマゾン社の「ECHO」は、国内で販売されるAIスピーカーの中では最多の機能を有するものとなった(甲97の4)。そして、2017年のAIスピーカー市場におけるアマゾン社のシェアは6割に達し、世界での出荷台数は数千万台を超えるものとなった(甲97の6)。さらに、2021年10月に我が国で実施された調査では、AIスピーカーを所有したことのある人のうち、最も多く利用されているのがアマゾン社の「ECHO」であった(甲97の37)。
以上のことから、本件商標の登録出願日には、「ECHO」は、アマゾン社が開発し、我が国を始めとする世界各国で販売されているAIスピーカーの名称として、我が国の取引者及び需要者の間において広く知られており、世界的な著名商標としての地位を獲得していた事実は疑いようがないのであり、本件商標の査定時においても継続してその著名性を維持していたと推認できるものである。
また、申立人は、「ECHO」の文字について、イスラエル、ニュージーランド、フィリピン、ロシア、シンガポール、トルコ、ウクライナにおいて商標権を有しており、EU及びアメリカにおいても商標登録出願を行っている(甲108)。
さらに、申立人は、「ECHO」の文字をその構成中に含む商標(甲109)についても、我が国において商標権を有しているほか、広くアジア、ヨーロッパ、中東、オセアニアの各国・地域においても上記商標について商標権を有している(甲110)。
このように、申立人は、世界中で「ECHO」及び「ECHO」をその構成中に含む商標の保護に努めており、その著名性は我が国だけでなく世界中においても維持されている。
イ 本件商標と引用商標の類似性について
本件商標は、「Timecho」の構成よりなるところ、そのうち「echo」の文字部分は、「反響、こだま」などの意味合いを有する語として我が国の需要者の間で広く親しまれた平易な英単語であることに加えて、上記のとおり、アマゾン社の業務に係るAIスピーカーを表すものとして、我が国を含む世界中で周知著名性を獲得している申立人の引用商標「ECHO」とつづりを同一にするものである。そうすると、本件商標の構成中、「echo」の文字部分が、取引者、需要者の記憶や印象に最も強く残りやすい部分であるといえる。
したがって、本件商標の構成中、強く支配的な印象を与える要部は、「echo」の文字部分にあるとみるのが相当であり、時と所を異にして本件商標と引用商標を対比した場合には、両者は相紛らわしく類似するものといわなければならない。
ウ 出所混同の生ずるおそれについて
引用商標の著名性については、上述のとおり、AIスピーカーにつき世界的な著名性を有していることはいうまでもないことである。そして、審査基準上、本件商標の指定商品及び指定役務は、引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似するものである。このように、指定商品及び指定役務の分野が共通し、審査基準上も互いに類似する商品・役務として取り扱われている実情に鑑みると、両商標の指定商品及び指定役務は、その用途又は目的における関連性が極めて高く、またその取引者、需要者も共通にするものである。
さらに、アマゾン社は、「ECHO」の製品展開に当たって、「Echo」の文字の後に他の文字を結合させた態様からなる名称を有する、様々なバリエーションの「ECHO」シリーズの製品を我が国において販売している(甲107、甲111)。そして、申立人は、我が国において、引用商標のほかに、「ECHO」と他の文字を結合させた態様の商標についての商標登録を有している。これらの具体的な取引の実情に鑑みても、申立人の著名な引用商標「ECHO」とつづりを同一にする「echo」の文字を構成中に含む本件商標がその指定商品及び指定役務に使用された場合、それがアマゾン社の製造・販売に係る「ECHO」シリーズ製品の一つとして、あるいはそれに関する役務として、取引者、需要者において誤認される可能性は極めて高く、取引上相紛らわしいものである。
以上より、本件商標と引用商標の指定商品及び指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準に、商品・役務間の関連性、商標自体の類似性の程度、引用商標の著名性の程度、取引者及び需要者の共通性、並びに実際の具体的取引の実情を勘案すると、本件商標がその指定商品及び指定役務に使用された場合、本件商標に接した取引者、需要者は、あたかも申立人若しくは申立人と何らかの関係がある者の業務に係る商品及び役務であるかのように、商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
エ 小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は「Timecho」の構成よりなるところ、そのうち「echo」の文字部分は、「反響、こだま」といった平易な意味を有する、我が国の需要者の間で広く親しまれた平易な英単語であることに加えて、アマゾン社の業務に係るAIスピーカーを表すものとして、我が国を含む世界中で周知著名性を獲得している申立人の引用商標「ECHO」とつづりを同一にするものである。そうすると、本件商標の構成中、「echo」の文字部分が、取引者、需要者の記憶や印象に最も強く残りやすい部分であるといえる。
したがって、本件商標の構成中、強く支配的な印象を与える要部は「echo」の文字部分にあるとみるのが相当であり、時と所を異にして本件商標と引用商標とを対比した場合には、両者は相紛らわしく類似するものといわなければならない。
そして、本件商標の指定商品及び指定役務は、引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

4 当審の判断
(1)「ECHO」の文字からなる商標の周知性について
ア 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、次のとおりである。
(ア)申立人は、アマゾン社の100%子会社として(甲99)、アマゾン社の知的財産を管理する会社である。そして、アマゾン社は、AIスピーカー「ECHO」を開発し、2014年11月6日に、アメリカにおいて招待制による販売を開始し、2015年6月23日には、アメリカでの一般販売を開始した(甲102)。
(イ)2017年5月時点におけるアメリカのAIスピーカーの市場シェアは、アマゾン社の「ECHO」が約71%となっている(甲90、甲104)。
(ウ)我が国では、アメリカにおける「ECHO」の販売予約の開始を伝える記事(甲4〜甲14)、「ECHO」の使い心地、利便性に関する各種媒体(甲19、甲24、甲25、甲96)における報道を始め、アマゾン社の「ECHO」は、我が国の新聞・雑誌・インターネット等の記事において取り上げられた(甲15〜甲97の36)。
(エ)スマートスピーカーに関する調査(2021年11月4日/MMD研究所:甲97の37)には、「スマートスピーカー、所有率が21.6%、利用トップは『Amazon Echo』で16.7%」とされている。
(オ)一方、「ECHO」の文字からなる商標を使用したアマゾン社のAIスピーカー(以下「使用商品」という。)の我が国における販売数量、売上実積等の販売実績及び広告宣伝費、時期、回数、地域、頒布の方法等の実績を示す証拠は見いだせない。
イ 上記アによれば、AIスピーカー「ECHO」は、アメリカにおいて、2014年11月6日に招待制による販売が開始され、2015年6月23日には一般販売が開始されたことが認められ、アメリカ市場における販売シェアからすると、アメリカにおいてある程度知られていることはうかがい知ることができる。
また、我が国においても、上記のアメリカにおけるAIスピーカー「ECHO」の販売開始の事実やその利便性等が、新聞・雑誌・インターネット等の記事に取り上げられ、また、当該商品の所有者も一定数存在することがうかがえる。
しかしながら、我が国における、商標の周知著名性の度合いを客観的に判断するための、使用商品の販売実績や広告宣伝の時期、回数等その取引状況を具体的に示す証拠は見いだせないから、アマゾン社の業務に係る「ECHO」の文字からなる商標の周知著名性の程度を客観的に推し量ることができない。
そうすると、「ECHO」の文字からなる商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、アマゾン社の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
(ア)本件商標は、前記1のとおり、「Timecho」の欧文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、辞書類に載録された成語ではなく、特定の観念を生じない造語と認められるものである。そして、造語は、通常、ローマ字又は英語の読みに倣って発音されるものであるところ、本件商標の語頭部分の「Time」は、「時間」の意味を有し、「タイム」と発音する極めて親しまれた英語であるから、本件商標に接する取引者、需要者は、通常、本件商標を英語の読みに倣って、「タイムチョ」と発音するというのが自然である。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して、「タイムチョ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(イ)申立人は、本件商標の構成中の「echo」の文字部分は、「反響、こだま」といった平易な意味を有する、我が国の需要者の間で広く親しまれた平易な英単語であることに加えて、アマゾン社の業務に係るAIスピーカーを表すものとして、我が国を含む世界中で周知著名性を獲得している申立人の引用商標「ECHO」とつづりを同一にするものであるから、本件商標の構成中、「echo」の文字部分が、取引者、需要者の記憶や印象に最も強く残りやすい要部であり、時と所を異にして本件商標と引用商標とを対比した場合には、両者は類似する旨主張している。
しかしながら、本件商標は、その構成文字を、同じ書体、等間隔で、語頭の「T」を大文字、その余の文字を小文字で、一連一体に表してなるものであって、外観上、その構成中、中間から語尾に位置する「echo」の文字部分が強調されているものではない。
また、本件商標の構成中の「echo」の文字部分は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、アマゾン社の業務に係る商品を表す商標として、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものということはできない。そして、本件商標は、上記(ア)のとおり、「時間」の意味を有し、「タイム」と発音する極めて親しまれた英語である「Time」を語頭部分に有するものであるから、これに接する取引者、需要者は、通常、その構成中に、「反響、こだま」の意味を有する「echo」の語が含まれていることを容易に認識し難いものというのが相当である。
さらに、本件商標は、「タイムチョ」とよどみなく称呼し得るものである。
してみれば、本件商標と引用商標との類否を判断するに当たっては、本件商標全体と引用商標を対比すべきであり、本件商標から「echo」の部分を抽出し、これを引用商標と対比してその類否を判断することは許されないというべきである。
したがって、申立人のかかる主張は採用できない。
イ 引用商標
引用商標は、いずれも「ECHO」の欧文字からなるものであり、その構成文字に相応して、「エコー」の称呼を生じ、当該文字は、「反響、こだま」の意味合いを有する英語として親しまれていることから、「反響、こだま」の観念を生じるものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標の外観についてみるに、本件商標を構成する「Timecho」と引用商標を構成する「ECHO」とは、その構成文字、全体の文字数及び外形が明らかに異なるものであるから、外観上、相紛れるおそれがないものである。
次に、称呼についてみるに、本件商標から生じる「タイムチョ」の称呼と引用商標から生じる「エコー」の称呼とは、構成音において明らかな差異を有するから、両者は、称呼上、相紛れるおそれがないものである。
さらに、観念についてみるに、本件商標が特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は、「反響、こだま」の観念が生じるから、両者は、観念上、相紛れるおそれがないものである。
以上からすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、相紛れるおそれがないものであるから、これらの外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は、非類似の商標というべきである。
したがって、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品又は指定役務とが同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 「ECHO」の文字からなる商標の周知性について
申立人が、本件申立ての理由において、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものであるとして引用する「ECHO」の文字からなる商標(以下「申立人商標」という。)は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、アマゾン社の業務に係る商品を表す商標として、我が国の需要者の間に広く認識されていたものということはできない。
イ 本件商標と申立人商標の類似性の程度について
申立人商標は「ECHO」の欧文字からなるところ、本件商標と申立人商標とは、上記(2)と同様に、外観、称呼及び観念において、相紛れるおそれのない別異の商標であるから、その類似性の程度は低いものといえる。
ウ 申立人商標は、「反響、こだま」の意味合いを有する親しまれた英語「ECHO」からなるものであるから、その独創性は低いといわざるを得ない。
エ 本件商標の指定商品及び指定役務とアマゾン社の取扱いに係るAIスピーカーとの関連性は、一定程度あるといえる。
オ 出所の混同のおそれについて
上記アないしエからすると、申立人商標は、アマゾン社の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていたものではなく、また、本件商標と申立人商標の類似性の程度が低く、申立人商標の独創性も低いことからすれば、本件商標の指定商品及び指定役務とアマゾン社の取扱いに係るAIスピーカーとが一定程度の関連性があるとしても、本件商標に接する需要者が、アマゾン社の業務に係る申立人商標を連想又は想起するものということはできない。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれを本件商標の指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者が、申立人商標を連想又は想起することはなく、その商品及び役務が他人(申立人若しくはアマゾン社)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
カ 小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとはいえず、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

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異議決定日 2023-07-18 
出願番号 2022033884 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W0942)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 鈴木 雅也
特許庁審判官 山田 啓之
渡邉 あおい
登録日 2022-09-15 
登録番号 6615429 
権利者 天謀科技(北京)有限公司
商標の称呼 タイムチョー、タイムチョ、ティメチョー、ティメチョ 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 小林 奈央 
代理人 弁理士法人三枝国際特許事務所 
代理人 廣中 健 
代理人 田中 克郎 
代理人 押野 雅史 

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