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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1400832 
総通号数 20 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-11-25 
確定日 2023-07-08 
異議申立件数
事件の表示 登録第6614369号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6614369号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6614369号商標(以下「本件商標」という。)は、「a few good kids」の文字を標準文字で表してなり、令和3年10月29日に登録出願、第25類「洋服」を指定商品として、同4年4月1日に登録査定され、同年9月14日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する商標は、別掲のとおりの構成よりなる商標(以下「引用商標1」という、)及び「A few good kids」の欧文字を横書きしてなる商標(以下「引用商標2」という。)であり、いずれも、申立人が申立人の業務に係る商品「洋服」に使用するファッションブランドとして、中華人民共和国及び我が国において需要者の間に広く知られている旨主張するものである。
なお、以下、引用商標1及び引用商標2をまとめていう場合は、「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第27号証を提出した。
なお、証拠の表記にあたっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。
1 商標法第4条第1項第7号について
(1)申立人及び同開(北京)商貿有限公司並びにその関係について
申立人は、被服の生産、輸入及び販売を行う者であり(甲2)、「同開(北京)商貿有限公司」(以下「同開社」という。)は、ファッションブランド「a few good kids」の製造販売を行う法人であって、中華人民共和国における登録商標(甲3、甲4)の商標権者である。
申立人は、同開社が中華人民共和国において製造販売を行っているファッションブランド「a few good kids」の我が国における正規代理店であり(甲5)、同開社より我が国におけるファッションブランド「a few good kids」の管理を委託されている(甲6)。
なお、申立人は、我が国におけるファッションブランド「a few good kids」の管理を委託されていることから、同開社とともに、指定商品を被服等とする欧文字「a few good kids」を図形化した商標登録出願を令和4年(2022年)2月14日付けで行っており(商願2022−16218号:甲7)、当該商標登録出願については、令和4年(2022年)7月13日(発送日)付けで、本件商標を引用して商標法第4条第1項第11号に該当するとした拒絶理由が通知されている。
(2)本件商標の出願人及び権利者について
本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)は、輸入代行を行う者である(甲8)。
なお、本件商標の登録出願時において、出願人は自然人であったが(甲26)、同者は、本件商標権者の関連するサイトに、本件商標権者の代表者・店舗運営責任者として掲載されている(甲9、甲10)。
本件商標権者の関連するサイトの代表者・店舗運営責任者の姓と、現本件商標権者の代表者の姓が同一であり、本件商標の商標掲載公報に記載された住所、現本件商標権者の住所、関連するサイトの代表者・店舗運営責任者の住所が全て一致していることから、本件商標権者と関連サイトの代表者・店舗運営責任者は、血縁者と推測される。
また、本件商標権者が自らのサイトで「当社運営サイト」と紹介するリンク(甲11)と関連サイトの代表者・店舗運営責任者が運営するサイトのURL(甲9)が一致しており、本件商標の名義人の名義変更届も滞りなく行っていることからも、本件商標の登録出願時の出願人と現本件商標権者は、実質的に同一視できる。
以後、本件商標の登録出願時の出願人と現本件商標権者は、特に区別する必要がないときは単に本件商標権者という。
(3)「a few good kids」について
「a few good kids」の欧文字をポータルサイトで検索すると、多数のウェブサイトがヒットし(甲12)、その内容を確認すると、「A FEW GOOD KIDS(AFGK)は中国発の新鋭ストリートウェアブランド。」、「ア・フュー・グッド・キッズ/中国発の新鋭ストリートウェアブランド。中華圏を中心に活躍するレコードレーベル88risingに所属するヒップホップグループ、Higher BrothersのリーダーMasiweiとDONCARE(ドンケア)とのコラボレーションブランド。」等と説明されていることがわかる(甲13)。
なお、「DONCARE」は、申立人と同開社が正規代理店契約を行った契約書においてもその名が記載されている(甲5)。
また、ファッションブランドを紹介する複数のサイトにおいて、例えば、「2019年から発足した注目の新鋭ストリートブランド」等と紹介されている(甲14、甲15)。
さらに、動画配信サイトにおいて、「a few good kids」を紹介する動画が多数配信されている(甲16〜甲18。それらに表示された日付は、甲16が2021年4月14日、甲17が2021年6月8日、甲18が2020年12月22日である。)。
ファッションブランド「a few good kids」は、本件商標権者以外が運営する複数のオンラインショップサイトにおいて実際に販売されている(甲19、甲20)。
中華人民共和国のポータルサイトで「a few good kids」の文字を検索しても、多数のサイトがヒットし(甲21)、実際に中華人民共和国のオンラインショップでファッションブランド「a few good kids」は、広く販売されている(甲22)。
また、「ZOZOTOWN」のウェブサイト(甲19)には、2019年より「AFGK(A FEW GOOD KIDS)」をスタートさせ、瞬く間に急成長を遂げた旨が記載されている。
「Google Trends」のウェブサイト(甲27)には、「A FEW GOOD KIDS」の語について人気度が時系列で解析された結果が記載されており、当該解析によれば、2020年11月29日ないし同年12月5日に人気度は71を記録し、2021年7月18日ないし同月24日に人気度81を記録している。
これらのことから、本件商標の登録出願日以前に、ファッションブランド「a few good kids」は、中華人民共和国だけでなく、我が国において取引業者や需要者において広く知られたファッションブランドであるといえる。
(4)申立人とファッションブランド「a few good kids」の関係について
申立人は、ファッションブランド「a few good kids」が発足した2019年から、我が国における代理店として、当該ブランドの周知性獲得に寄与し、この事実は、ファッションブランドを紹介するネット記事からも読み取ることができる(甲23)。
申立人は、遅くとも2019年10月にはファッションブランド「a few good kids」の正規代理店であったが(甲5)、当該ブランドヘの長年の貢献から、我が国における当該ブランドの商標の管理を委託されるまでに至った(甲6、甲7)。
(5)本件商標権者が「a few good kids」を登録した経緯について
本件商標権者は、輸入代行を行う者であり(甲8)、実際にオンラインショップサイトにおいて本件商標の指定商品である「洋服」を販売しており(甲9)、販売されている複数のファッションブランドのうちの一つとして「a few good kids」が取り扱われている(甲9)。
また、本件商標権者は、自らの運営サイトの名称である「F.M.C.」の標章を、本件商標の登録出願・登録査定前である2020年12月23日付で商標登録出願をし、2021年6月17日に登録されている(甲24)。
本件商標権者は、自らが運営するサイトにおいて販売する複数のファッションブランドのひとつとして「a few good kids」を取り扱っていることから、周知・著名なファッションブランド「a few good kids」の存在を知らぬはずがなく、当該ブランドが自らの出所を表示するものではないことを承知の上で商標登録を行った。
過去に自らが使用する標章を登録した経緯から(甲24)、商標権制度を理解した上で本件商標の登録出願を行ったといえる。
さらに、本件商標について、登録出願時の名義人は自然人であるが(甲26)、あえて、本件商標の登録出願の実体審査が終わった登録査定後に名義変更を行っており、旧名義人の名称をポータルサイトにおいて検索しても、多数ある一個人を特定することは難しく、旧名義人の業務態様を具体的に知ることは容易ではなかったと思われる。
しかし、名義変更後の「株式会社FABMIC」を検索すると、容易に本件商標権者の情報を得ることができる。
特に、当該名称から本件商標権者のオンラインショップヘたどり着くことは明らかに容易である。
これは、商標の実体審査時に名義人を自然人としておくことで、審査官が本件商標権者の情報を得ることを困難にする目的でなされたものと思われる。
「株式会社FABMIC」名義の登録出願であれば、ポータルサイトの検索結果から、当該法人が運営するオンラインショップに容易にたどり着くことができ、そのサイトのトップ画面にファッションブランド「a few good kids」が掲載されていることから、審査官も、単なる一代理店が自らの出所を表示しない標章を登録出願したことに気付いたと推測できるため、商標権制度を理解した上での極めて悪質な行為といえる。
なお、同開社は、本件商標権者が本件商標を我が国において登録することについて、一切承諾していない(甲25)。
つまり、本件商標権者は、少なくとも中華人民共和国及び我が国において周知・著名なファッションブランド「a few good kids」の標章が、我が国において商標登録なされていないことを奇貨とし、自らの出所を表示するものでないと認識しながら、自らの存在を悟らせづらくするべく名義人を自然人として本件商標の登録出願を行い登録に至った。
その極めて悪質な行為から、本件商標は、中華人民共和国及び我が国において周知・著名なファッションブランド「a few good kids」について、独占販売して不当な利益を得るなどの不正の目的で使用するものであるといえる。
日本国内外において広く知られた商標「a few good kids」について、当該商標の正当権限を有する者から何ら承諾を得ず、不当な利益を得るなどの不正の目的をもって使用することは、公正な取引秩序を著しく乱すものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
2 商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、「a few good kids」の文字を標準文字で表してなり、「アフューグッドキッズ」の称呼及び「数人(少数派)の良い子供」という観念を生ずるものである。
これに対し、引用商標1は、「A FEW GOOD KIDS」の各文字を立体的に表示した上で円形状に配した図形よりなることは明らかであることから、これより「アフューグッドキッズ」の称呼、「数人(少数派)の良い子供」の観念を生ずるものとするのが取引の実情に即して妥当である。
図形化されていない「a few good kids」の文字からなる標章は、商標として使用されていることは明らかであり(甲12〜甲22)、当該標章からなる引用商標2は、「アフューグッドキッズ」の称呼、「数人(少数派)の良い子供」という観念を生ずるものとするのが取引の実情に即して妥当である。
そうすると、本件商標と引用商標とは、ともに「アフューグッドキッズ」の称呼、「数人(少数派)の良い子供」の観念を共通にするものである。
そして、本件商標の指定商品と引用商標の商品は、同一又は類似のものである。
さらに、引用商標は、本件商標の登録出願前から我が国において、MasiweiとDONCARE(ドンケア)のファッションブランドとして周知・著名である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、本件商標の登録出願前から我が国において、MasiweiとDONCARE(ドンケア)のファッションブランドとして周知である。
また、本件商標の指定商品と引用商標に係る商品は同一又は類似である。
申立人は、同開社と販売契約を締結し、遅くとも2019年から日本国内において引用商標を使用して洋服等を販売している(甲2、甲5、甲23)。
したがって、本件商標の指定商品の分野における需要者は、「a few good kids」からなる本件商標が、その指定商品について使用された場合には、申立人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 商標法第4条第1項第19号について
引用商標は、本件商標の登録出願前から、MasiweiとDONCARE(ドンケア)のファッションブランドとして中華人民共和国及び我が国において周知・著名であり、本件商標権者の出所を表示するものとしては認識されていない。
さらに、本件商標権者は、我が国の商標制度を十分に理解した上で、自らは単なる輸入業者として取り扱う多数あるブランドの一つとして取り扱っているにすぎないブランドを、当該ファッションブランドを表示する「a few good kids」が商標登録されていないことを奇貨とし、独占販売して不当な利益を得るなどの不正の目的をもって使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
申立人の主張及び同人が提出した証拠によれば、本件商標権者は、輸入代行業者であり(甲8)、同人が取り扱う商品の一つに、引用商標が使用された「洋服」を取り扱っていることは認められるが、そもそも輸入代行業者にすぎず、同人が取り扱う引用商標が使用された「洋服」等の商品の売上高、販売量、市場シェアなどの販売実績及び広告宣伝の期間・規模・頻度等など、その周知・著名性を数量的に判断し得えないから、同人の使用をもって、引用商標の周知著名性を判断することはできない。
また、申立人が提出した全証拠によっても、引用商標の具体的な使用開始日は不明であり、引用商標を表示した商品の売上高、販売量、市場シェアなどの販売実績及び広告宣伝の期間・規模・頻度等など、その周知・著名性を数量的に判断し得えないから、引用商標が、申立人が主張するように、本件商標の登録出願前から、MasiweiとDONCARE(ドンケア)のファッションブランドとして、及び申立人の業務に係る商品として、取引者、需要者の間にどの程度認識されるに至ったものであるのか、うかがい知ることはできない。
その他、申立人の提出に係る全証拠を総合してみても、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、取引者、需要者の間で、MasiweiとDONCARE(ドンケア)のファッションブランドとして、及び申立人の業務に係る商品として、広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。
したがって、申立人が提出した証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることができない。
2 商標法第4条第1項第7号及び同項第19号該当性について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、MasiweiとDONCARE(ドンケア)のファッションブランドとして、及び申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
そうすると、本件商標をその指定商品に使用しても、需要者において、申立人及び申立人の取り扱う商品を連想、想起するということはできないものであるため、本件商標は、引用商標の知名度や名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
また、本件商標が、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべき事情は見いだせず、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号のいずれにも該当するものではない。
3 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、MasiweiとDONCARE(ドンケア)のファッションブランドとして、及び申立人の業務に係る商品として、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
よって、本件商標と引用商標の類否や本件商標の指定商品及び引用商標の指定商品の類似性及びその程度を判断するまでもなく、本件商標は、他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標ではなく、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標にも該当しない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、その登録は、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲

別掲(引用商標1)


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異議決定日 2023-06-22 
出願番号 2021135476 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W25)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 豊田 純一
特許庁審判官 小田 昌子
杉本 克治
登録日 2022-09-14 
登録番号 6614369 
権利者 株式会社FABMIC
商標の称呼 アフユーグッドキッズ、アヒューグッドキッズ、フユーグッドキッズ、ヒューグッドキッズ、アフユーグッド、アヒューグッド、フユーグッド、ヒューグッド 
代理人 中川 信治 
代理人 栗原 浩之 
代理人 山▲崎▼ 雄一郎 

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