• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W35
管理番号 1400829 
総通号数 20 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-11-11 
確定日 2023-08-03 
異議申立件数
事件の表示 登録第6610570号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6610570号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6610570号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、令和2年6月22日に登録出願、第35類「織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同4年7月13日に登録すべき旨の審決がなされ、同年9月6日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する商標は、以下の5件の商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は、以下の(1)ないし(3)の商標である(以下、これらをまとめていうときは「11号引用商標」という場合がある。)
(1)登録第681739号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「シヤングリラ」の片仮名を横書きしてなるもの
登録出願日:昭和39年4月11日
設定登録日:昭和40年7月21日
指定商品:第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品(平成17年7月27日書換登録)
(2)登録第696875号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「シヤングリラ」の片仮名を横書きしてなるもの
登録出願日:昭和39年4月11日
設定登録日:昭和41年1月29日
指定商品:第20類、第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品(平成18年3月29日書換登録)
(3)登録第2527803号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:「SHANGRI−LA」の欧文字を横書きしてなるもの
登録出願日:平成2年8月22日
設定登録日:平成5年4月28日
指定商品:第3類、第8類、第18類、第21類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品(平成17年1月26日書換登録)
2 本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は、以下の(1)及び(2)の商標である(以下、これらをまとめていうときは「15号引用商標」という場合がある。)
(1)登録第3343775号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:「SHANGRI−LA」の欧文字を横書きしてなるもの
登録出願日:平成4年9月30日
設定登録日:平成9年9月5日
指定役務:第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
(2)登録第4245511号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:「シヤングリラ」の片仮名を横書きしてなるもの
登録出願日:平成4年9月30日
設定登録日:平成11年3月5日
指定役務:第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである旨申立て(合議体注:令和5年1月27日付けの手続補正書により補正された申立ての理由には、商標法第4条第1項第10号該当性に関する言及がないため、同号該当性は申立ての理由から削除されたと理解した。)、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第104号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)商標について
ア 本件商標の構成
本件商標は、欧文字「Shangri−La−Golf」を筆記体で横書きしてなるところ、本件商標を構成する「Shangri−La」の文字は、「理想郷。楽園。」等の意味を有し(甲7)、「−」(ハイフン)の文字は、「英文などで、合成度の浅い複合語の連結、1語が行末までに収まりきれず2行にまたがる時のつなぎ、または1語内の形態素の区切りを明確するのに使う。」等の意味を有し(甲8)、「Golf」の文字は、「ゴルフ【golf】球技の一つ。18のホールを設けた競技場で、クラブでボールをホールに打ち入れ、順次にホールを追って回り、総打数の少ない者を勝ちとする。」等の意味を有する語(甲9)である。
ここで、本件商標の構成中の「−Golf」の文字部分は、ゴルフ用品であることを示す語として、ハイフンの前の語に対し接尾語のように使用されているものであり、自他商品を識別するための識別機能を有しないものである。また、本件商標は、ハイフン以外の語がそれぞれ、頭文字の大文字ではじまりその後が小文字で続くことから、外観上分離した印象を与える。
よって、本件商標は「Shangri−La」の文字部分をもって、商標の類否判断がなされるのは明らかである。
イ 11号引用商標の構成
引用商標1及び引用商標2は、片仮名「シャングリラ」を標準的な字体で表した横書きからなり、引用商標3は、欧文字「SHANGRI−LA」を標準的な字体で表した横書きからなる。
ウ 外観について
本件商標は、「Shangri−La」の文字部分をもって、商標の類否判断がなされる。一方、引用商標3は、欧文字「SHANGRI−LA」を標準的な字体で表した横書きからなるから、両商標は、外観において類似する。
エ 称呼について
本件商標からは、「シャングリラ」の称呼が生じ、11号引用商標からは、「シャングリラ」の称呼が生ずるから、両商標は、称呼が同一である。
オ 観念について
本件商標及び11号引用商標からは、「理想郷。楽園。」程の意味合いが生じるから、観念においても同一である。
(2)指定役務について
引用商標1の指定商品は、本件商標の指定役務「織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の取扱商品であり、また、引用商標2及び引用商標3の指定商品は、本件商標の指定役務「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の取扱商品である。
よって、11号引用商標と本件商標とは、指定商品及び指定役務との関係において、類似すると推定される。
(3)上述のとおり、本件商標の「Golf」の文字部分は、指定役務との関係により、被服の小売等役務、履物の小売等役務、身の回り品の小売等役務に使用された場合には、ゴルフ関連の小売等役務と一般的に認識されることから、識別力を有しない文字であり、「Golf」の文字部分を除いた「Shangri−La」の部分で類否を判断するのが自然である。
そして、本件商標の指定役務と11号引用商標の指定商品とは、類似する。
よって、本件商標と11号引用商標とは類似する。
(4)小括
以上のとおり、本件商標の「Shangri−La」の部分と11号引用商標とは、称呼及び観念において同一であることから、互いに類似する商標である。
また、指定商品・役務も類似し、本件商標及び11号引用商標に係る指定商品・役務は、これらの商品・役務に同一又は類似の商標が付された場合、取引者や需要者は出所について誤認混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法4条1項11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)「SHANGRI−LA」「シャングリラ」及び「シャングリ・ラ」が著名であること
以下の各事情を踏まえると、申立人の所有する15号引用商標は著名である。
ア 申立人について
申立人は、1982年に設立された法人であり、シャングリ・ラの歴史は、シンガポール初のラグジュアリーホテルをオープンした1971年に遡り、シャングリ・ラホテルの他にも、トレーダースホテルやケリーホテルを経営している(甲38、甲39)。
イ 申立人の事業展開
申立人が管理運営する「シャングリ・ラ ホテルズ&リゾーツ(Shangri−La Hotels and Resorts)」(以下「申立人事業ホテル」という。)は、アジア太平洋地区のラグジュアリーホテルグループの先駆けとして、また、世界有数のホテルオーナー&マネージメント企業として事業を展開している(甲40、甲41)。現在では、アジア、北米、中東、ヨーロッパ等に90軒以上のホテルを擁し、さらにオーストラリア、カンボジア、日本国内では京都での新規オープンに向け、各地で開発が進められている(甲41、甲75)。
また、「SHANGRI−LA」は、シンガポール、ミャンマー、中国等の世界中で商標登録が行われており(甲42)、日本においても、「SHANGRI−LA」「シャングリラ」を含む申立人の商標は、約10件登録されている(甲4〜甲6、甲43〜甲48)。
ウ 申立人事業ホテルの評価
申立人が経営するホテルは、顧客、雑誌、業界パートナーから最も好まれるホテルとして称賛され、グループ全体あるいはベストホテルアワード、ビジネストラベラーベストアワード(甲52〜甲56、甲59、甲60)に示すように各ホテルは、様々な権威ある賞を受賞している。
また、国賓クラスの宿泊や国際会議も開催されている(甲57、甲58)。
エ インターネット上の評価
GoogleMapsにおいて、SHANGRI−LA東京は、2023年1月12日時点で、2550件の口コミが寄せられており、4.5の高評価を受けている(甲61)。また、シンガポールでは2022年11月21日の時点で、1.1万件の口コミが寄せられ、4.6の高評価を受け(甲62)、バンコクでは、2023年1月12日の時点で、8335件の口コミ及び4.6の高評価を受けている(甲63)。著名なホテルであるザ・リッツ・カールトン東京は2023年1月12日時点で、3149件の口コミで4.5の評価(甲64)、ザ・リッツ・カールトン・ミレニア・シンガポールは5371件の件の口コミで4.6の評価であるので(甲65)、申立人事業ホテルに対する口コミの件数及び評価は世界に誇るリッツ・カールトンにも劣らないものである。
オ 申立人事業ホテルの売上
(ア)雑誌FACTA(2015年1月号)では帝国ホテル等をおさえて、都内一流ホテルの「収益力」ランキングで首位と紹介されている(甲66)。
(イ)アニュアルレポート(年次報告書)
申立人は、アニュアルレポートを毎年度末に発行しており、グループ全体の総売上を公表している(甲67〜甲69)。2020年からは新型コロナウイルスの影響により、売上高の大幅な減少がみられるが、それでも、2021年度においては約1655億円の売り上げがされており、日本での2021−2022年のホテル業界売上高ランキング1位であるリゾートトラストの売上高が1577億円であることからも(甲70)、申立人の売上高は、日本のホテル業界第1位の売上高に匹敵する。
カ 宿泊施設の提供以外での著名性
申立人事業は「宿泊施設の提供」以外にも、異業種との関係においても、その顧客吸引力を如何なく発揮している(甲71〜甲73)。
キ ホテル名の略称について
ホテル名については、国内外問わず、正式名称で呼ばれるよりも、略して呼ばれるのが通例であって、これは、超一流のホテルであればあるほどその傾向にあり(甲74)、申立人についても、「SHANGRI−LA」「シャングリラ」及び「シャングリ・ラ」等で表記されており(甲75〜甲77)、かかる表記は申立人事業ホテルのハウスマークとして認識されている。
ク 総合考慮・小括
上記のように、申立人は、申立人事業ホテルを1971年にオープンして以来、各国で登録された自己の商標を使用して、世界中に事業展開しており、売上総額は6年間で110億ドルを超え、上位ランキング等により評価されるだけの上質なサービスを提供する超高級外資ホテルである。
さらに、申立人は2009年に我が国において、東京駅に隣接するロケーションでシャングリラ東京をオープンしており、受賞歴や第三者による評価などを踏まえると、申立人事業ホテルである「Shangri−La」は、世界各国及び国内で継続的に高い評価を得ている有名なホテルであるといえる。
これらの事情を考慮すれば、遅くとも、本件商標の出願日である2022年6月22日の時点で、申立人のハウスマークである「SHANGRI−LA」「シャングリラ」は既に日本及び全世界の需要者の間で高度に認識され著名となっていたのであり、2022年9月6日の登録日の時点においても同様であることは明らかである。
(2)出所混同のおそれがあること
類似性の程度
上述したように、11号引用商標と本件商標は類似し、また、引用商標3と引用商標4、引用商標1及び2と引用商標5とは、それぞれほぼ同様といえる。そのため、外観において類似し、称呼及び観念において同一であるため、申立人の商標である15号引用商標と本件商標とは類似するといえ、類似性の程度は極めて高い。
イ その他人の標章の周知度
上述したように、申立人が「宿泊施設の提供」において使用する「SHANGRILA」及び「シャングリラ」は本件商標の出願時及び査定時において、申立人の商標(15号引用商標)として国内外における取引者・需要者の間に著名である。
ウ その他人の標章がハウスマークであるか
「SHANGRI−LA」は、申立人事業に係るハウスマークであり、申立人のブランドとして世界中の申立人事業ホテル等で使用されている。
エ 企業における多角経営の可能性
国内外を問わず、多くのホテルが、オリジナル商品や、お土産品などをホテルの店舗又はオンラインストアを通じて販売していることは周知の事実である。シャングリラホテルでも、オンラインブティックにおいて、子供用パジャマ、オリジナル枕、オリジナルバスローブ、キャンドル、ルームスプレー等が販売されている(甲78〜甲81)。
また、主に小売業を営んでいる事業主が、「宿泊施設の提供」に係る事業を行うこともある(甲82〜甲84)。
さらに、スポーツの種目である「ゴルフ」に着目すると、宿泊施設の近くにゴルフ場が併設されている事例が多くあり、宿泊施設とゴルフは極めて密接な関連性を持つ。申立人事業ホテルにおいても、宿泊者がゴルフを行うことができるサービスを行っている。
このように、「宿泊施設の提供」に係る事業を主に行う者が、「小売業」を行うこともあり、又、「小売業」を主に行う者が「宿泊施設の提供」に係る事業を行うことある。さらに、「宿泊施設の提供」に係る事業を行う者が「ゴルフ」に関連する事業を行うこともあり、当該分野において企業における多角経営が行われている。申立人はオンラインブティックやゴルフのサービスを提供していることから、多角経営を行っていることは明らかである。
オ 商品間、役務間又は商品と役務間の関連性
ホテル事業とゴルフコースの運営、ゴルフ関連商品の販売業とは、非常に親和性が高く、密接な関連性がある。まず、ゴルフコースがホテルに併設されており、ホテル事業とゴルフ場の運営について、同一事業者が行うことが数多くある(甲85〜甲87)。
そして、ゴルフコースを併設するホテルは、ゴルフ関連の商品(例えば、アパレル)等についても広く事業展開をしている(甲92、甲93)。
したがって、「宿泊施設の提供」に係る事業を行う申立人はゴルフに関連する小売業も行っているといえるから、本件商標に係る指定役務と申立人の役務とでは一定程度の関連性がある。
さらに、宿泊事業も本件商標に係る指定役務も、いずれも一般消費者を需要者とするのであるから、需要者の共通性は高い。
カ 総合考慮
「SHANGRI−LA」及び「シャングリラ」は、著名な申立人のハウスマークであり、本件商標との類似性の程度は極めて高く、申立人が「宿泊施設の提供」に付随するサービスに関連する役務を多角化していることも相まって、本件商標に係る指定役務と一定程度の関連性があり、需要者も一定程度共通する。
そうすると、需要者等が本件商標に接した場合には、申立人を連想・想起し、申立人の商標である15号引用商標との関係において、本件商標の商標権者が、世界各国において著名なリゾートホテル事業者である申立人と、いわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る役務であると誤信するおそれ(「広義の混同」を生ずるおそれ)が高い。
その結果、申立人の持つ顧客吸引力ヘのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を生じかねない。
キ 小括
以上より、本件商標は、商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」に該当する。
3 商標法第4条第1項第7号及び第19号について
(1)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するため、商標登録を認められるべきではない。
ここで、近年様々な企業がゴルフ業界に参入する際には、著名な商標に続いて「GOLF」という語を結びつけてブランド展開をしており、かかる事情を考慮するならば、本件商標の権利者は偶然に採択したというよりは、申立人の著名な商標にあやかる形で、さも申立人がゴルフ業界に参入し、ゴルフ用品を扱っているものと一般需要者が誤認・混同を生ずるものである。
よって、上述のように指定商品又は指定役務について使用することが「当該商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合。」に該当するため、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第19号について
15号引用商標の著名性及び類似性に鑑みれば、本件商標の出願時において、世界的に広く知られていた申立人ブランドの引用商標の存在を本件商標権者が認識していたことは想像に難くない。したがって、本件商標権者は、申立人の引用商標に化体した信用にフリーライドするという「不正の目的」を持っていたことが強く推認される。
以上より、本件商標は、日本国内及び外国の需要者の間で広く認識されている15号引用商標と類似するものであり、不正の目的を持って使用をするものと推認されるため、商標法第4条第1項第19号に該当する。
4 商標法第4条第1第8号について
本件商標を構成する「Shangri−La」は、申立人が経営する「Shangri−La Hotels and Resorts」の著名な略称として、遅くとも本件商標の出願日前から現在にかけて、我が国において広く知られ著名であったことは、すでに述べたとおりである。また、ホテルの名称は我が国において、有名であればあるほど、略して呼ばれることも前述したとおりである。
本件商標に対し本件異議申立をしている以上、申立人の許諾を得た事実はない。
したがって、本件商標は、「他人の・・・名称」の「著名な略称を含む商標」に該当するものであって、申立人の承諾を得ていないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当する。

第4 当審の判断
1 15号引用商標の周知性について
(1)申立人の提出に係る証拠及び主張によれば、以下のとおりである。
ア 申立人は、1982年に設立された、「シャングリ・ラ ホテル」、「トレーダースホテル」、「ケリーホテル」及び「ホテル ジェン」等のホテルを経営する法人である(甲38)。
イ 申立人は、1982年より「シャングリ・ラ ホテル シンガポール」の運営を手がけ、以来、「シャングリ・ラ ホテル」をはじめとする「シャングリ・ラ ホテルズ&リゾーツ」を、アジア、中東、北米、ヨーロッパの主要都市を中心に、世界中に展開している(甲39)。
ウ 「シャングリ・ラ ホテル」は、国賓クラスの宿泊先や、国際会議の会場としても選定された(甲57、甲58)。
エ 受賞歴及びインターネット上の評価
「シャングリ・ラ ホテル」は、国内外の様々な賞を受賞している(甲52〜甲56、甲59、甲60)。
また、「シャングリ・ラ ホテル」は、GoogleMapsにおいて、東京では2023年1月12日時点で2550件の口コミ及び4.5の評価(甲61)、シンガポールでは2022年11月21日時点で1.1万件の口コミ及び4.6の評価(甲62)、バンコクでは2023年1月12日時点で8335件の口コミ及び4.6の評価を受けている(甲63)。
オ 申立人事業ホテルの売上
申立人は、アニュアルレポートにより、グループ全体の総売上を公表しており(甲67〜甲69)、申立人の売上高は、2021年度においては約1655億円であるとしている。
(2)判断
上記によれば、申立人は、1984年に「シャングリ・ラ ホテル シンガポール」の運営を開始して以来、アジア、中東、北米、ヨーロッパの世界各地に「シャングリ・ラ ホテル」を展開していること、これらのホテルは、通常の宿泊客だけでなく、国賓クラスの宿泊先としても使用されたほか、国際会議の会場等としても使用されたことがうかがえることからすれば、「シャングリ・ラ ホテル」の文字は、申立人の業務に係る役務「宿泊施設の提供」を表示するものとして、需要者の間においてある程度知られていたといい得るものである。
しかしながら、申立人の売上高を示すアニュアルレポートは、いずれも外国語で表示されており、ほとんどの部分について翻訳文の提出もないため、その詳細な内容や、我が国における売上高が不明であるだけでなく、そのうち、15号引用商標が使用されたホテル等の売上高も明らかでない。
また、受賞歴についても、それらの賞の主催者や受賞理由、選定基準が不明であり、口コミによる評価についても、単に投稿者の個人の感想が反映されているにすぎず、その評価基準が不明であるから、これらが直ちに、15号引用商標の周知性に結び付くものともいい難い。
さらに、我が国又は外国における15号引用商標を使用した申立人の業務に係る商品又は役務の売上高や市場占有率(市場シェア)については、これを示す証拠の提出はなく、また、我が国又は外国における15号引用商標を使用した申立人の業務に係る商品又は役務の宣伝広告の期間、回数、地域及び規模等の広告実績が定量的に確認できる客観的な資料も提出されておらず、15号引用商標が申立人の業務に係る商品又は役務に使用された事実を客観的・具体的に把握することができないといわざるを得ないから、本件商標の登録出願時及び登録審決時における15号引用商標の周知性の程度を推し量ることはできない。
そして、申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても、15号引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録審決時において、我が国又は外国の需要者の間で、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するもの、又は申立人の略称として需要者の間に広く認識されていたと認めるに足りる事実は発見できない。
以上を総合勘案すると、15号引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録審決時において、申立人の業務に係る役務を表示するもの、又は申立人の略称として、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲のとおり「Shangri−La−Golf」の文字を横書きしてなるところ、本件商標を構成する「Shangri」、「La」及び「Golf」の各文字部分は、同じ書体、同じ大きさをもって、ハイフン(−)により一体的に結合して表されており、いずれかの文字部分又はそれらを組み合わせた文字部分が視覚上分離して看取し得るものではない。
また、本件商標の構成全体から生じる「シャングリラゴルフ」の称呼は、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標は、その構成中の「Golf」の文字部分が、球技の一種である「ゴルフ」の意味を有する語(ベーシックジーニアス英和辞典第2版 株式会社大修館書店)であるとしても、上記のとおり、まとまりよく一体に表された本件商標においては、「Golf」の文字部分が直ちに本件商標の指定役務の質等を直接的に表示するものとして理解、認識されるというよりは、むしろ、かかる構成からすれば、その構成文字全体をもって一連一体のものとして認識、把握されるものと判断するのが相当である。
その他、本件商標の構成において、いずれかの文字部分が、役務の出所識別標識として、取引者、需要者に強く支配的な印象を与えるといった特段の事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、構成全体で一体不可分のものとみるべきものであるから、その構成文字に相応して「シャングリラゴルフ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)11号引用商標
引用商標1及び引用商標2は、前記第2の1(1)及び第2の1(2)のとおり、「シャングリラ」の片仮名を横書きした構成からなるところ、該文字は、「理想郷。桃源郷。」(デジタル大辞泉 株式会社小学館)の意味を有するものであるから、これよりは、「シャングリラ」の称呼を生じ、「理想郷。桃源郷。」の観念を生じるものである。
また、引用商標3は、前記第2の1(3)のとおり、「SHANGRI−LA」の欧文字を横書きした構成からなるところ、該文字は、「理想郷。桃源郷。」の意味を有するものであるから、これよりは、「シャングリラ」の称呼を生じ、「理想郷。桃源郷。」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と11号引用商標との類否
ア 外観について
本件商標と引用商標1及び引用商標2とを比較すると、両者は、片仮名と欧文字の文字種の差異を有するものであるから、外観上明らかに相違する。
また、本件商標と引用商標3とを比較すると、両者は書体の相違に加え、後半における「Golf」の文字の有無において差異を有するものであるから、外観上明らかに相違する。
よって、本件商標と11号引用商標とは、外観において相紛れるおそれはない。
イ 称呼について
本件商標から生じる「シャングリラゴルフ」の称呼と、11号引用商標からそれぞれ生じる「シャングリラ」の称呼とは、後半部における「ゴルフ」の音の有無において差異を有するものであって、音数及び音構成において明らかに相違するものであるから、互いに聴き誤るおそれのないものである。
ウ 観念について
本件商標は、特定の観念は生じないものであり、他方、11号引用商標は、「理想郷。桃源郷。」の観念を生じるものであるから、両者は、観念においても相紛れるおそれはない。
以上からすると、本件商標と11号引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのないものであるから、これらを総合して全体的に考慮すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(4)小括
上記のとおり、本件商標は、11号引用商標とは非類似の商標であるから、その指定役務と11号引用商標の指定商品及び指定役務との類否について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第8号該当性について
本件商標は、前記第1のとおり、その構成中に「Shangri−La」の文字を有するものであるが、上記1(2)のとおり、「Shangri−La」の文字が、本件商標の登録出願時及び登録審決時において、申立人(他人)の名称の略称として、需要者の間に広く認識され、著名になっていたものと認めることはできないものである。
してみれば、本件商標は、その構成中に他人の名称の著名な略称を含む商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1(2)のとおり、15号引用商標は、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録審決時において、需要者の間に広く認識されていたということはできないものである。
また、上記2(3)のとおり、本件商標と11号引用商標は非類似のものであるから、11号引用商標と構成文字を同じくする15号引用商標についても、本件商標とは非類似であって、両商標の類似性の程度は低いというべきである。
そうすると、本件商標は、これをその指定役務に使用しても、需要者が15号引用商標を連想又は想起することはなく、その役務が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じるおそれがある商標とはいえない。
その他、本件商標が役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべき事情を見いだすこともできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記1(2)のとおり、15号引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録審決時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているとは認められないものであり、また、本件商標は、上記4のとおり、11号引用商標及び15号引用商標とは非類似の商標である。
そうすると、本件商標は、商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くとものといわざるを得ない。
その他、商標権者が、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的な証拠は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第7号該当性について
上記1(2)のとおり、15号引用商標は、申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして、我が国及び外国において需要者の間で広く認識されていたものと認められないものであり、かつ、上記4のとおり、本件商標と11号引用商標及び15号引用商標とは非類似の商標であって、商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれはないから、本件商標が、11号引用商標及び15号引用商標の持つ顧客吸引力(名声・信用・評判)にただ乗りフリーライド)することや、信用、名声、顧客吸引力等を毀損(希釈化)させるなどの不正の目的をもって使用をするものであると認めることもできない。
また、申立人の提出した証拠からは、本件商標の出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠く等の事実は見当たらず、本件商標をその指定役務について使用することが、社会の一般道徳観念に反し、商取引の秩序を乱すものともいえず、その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であると認めるに足りる証拠の提出はない。
さらに、本件商標は、他の法律によりその使用等が禁止されているものではないし、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものとはいえない。
加えて、本件商標は、その構成自体が、非道徳的、きょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるようなものではない。
してみると、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」に該当するということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
7 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものではないから、同条第1項の規定に違反してされたものとはいえず、ほかに同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。


別掲
別掲(本件商標)


(この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。
異議決定日 2023-07-26 
出願番号 2020077180 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W35)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 旦 克昌
特許庁審判官 馬場 秀敏
小林 裕子
登録日 2022-09-06 
登録番号 6610570 
権利者 小山 秀樹
商標の称呼 シャングリラゴルフ、シャングリラ 
代理人 小川 清 
代理人 弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ