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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない W03
管理番号 1400737 
総通号数 20 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2023-08-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2022-01-05 
確定日 2023-05-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第6091065号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6091065号商標(以下「本件商標」という。)は、「UNNY CLUB」の文字を横書きしてなり、平成30年1月25日に登録出願、第3類「化粧品,口紅,アイシャドウ,ペンシル状アイライナー,スキンケア用クリーム,洗浄用化粧水,メイクアップ用ファンデーション,香水類,化粧用の美顔用パック」を指定商品として、同年9月26日に登録査定、同年10月19日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件審判の請求において引用する商標は、別掲のとおりの構成からなる商標のほか、「UNNY CLUB」の文字からなる商標、「unny club」の文字からなる商標、「UNNY CLUB」のロゴからなる商標(以下これらの商標まとめて「引用商標」という。)であり、請求人が商品「化粧品」に使用して中国において周知な商標と主張するものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標はその登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。
1 請求の理由(要点)
本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当し、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効にすべきものである。
2 請求人について
請求人は、スキンケアやメイクアップ製品等を販売する香港設立の中国企業であり、日本での商標出願「UNNY CLUB(ロゴ)」(商願2021−045442、甲2)の出願人である。
当該出願の審査において、被請求人所有の本件商標(甲1)及び登録商標「UNNY CLUB(ロゴ)」(登録第6096445号、甲3)を引用商標とする商標法第4条第1項第11号に基づく拒絶理由通知がされたが、これらの引用商標は、被請求人により、正当な理由なく先回りして出願、登録されたものである。
3 本件商標の帰属について
請求人は、親会社である中国企業「ペイライ ブランド マネージメント カンパニーリミテッド」(英文社名 Peilai Brand Mangement Co.,Ltd/中文社名 佩莱品牌管理有限公司、以下「ペイライブランド」という。)や「ペイライカンパニーリミテッド(英文社名 Peilai(China)Co. , Ltd/中文社名 (「蘇」の中国新字体)州佩莱(「電」の中国新字体)子商(「務」の中国新字体)有限公司)、以下「ペイライカンパニー」という。)等と共に、ペイライグループを形成している。
同グループは、2010年(平成22年)の設立以降、中国の化粧品業界の革新的な共創モデルのパイオニア企業として知られ、蘇州に本社を置き、上海、杭州に支社、韓国のソウル、日本の東京に生産及び研究部門を置き、江蘇省如東に90エーカーのエリアをカバーするサプライチェーンロジスティクス拠点を持っている。また、UNNYCLUB、RNW Ruwei、auou Aiyuなどの化粧品ブランドを立ち上げており、その製品としてメイクアップ、スキンケア及びパーソナルケアなどの分野の商品を取り扱っている(甲4)。
「UNNY CLUB」のブランド(甲5)は、中国で非常に高い人気を博しており、中国の大手オンラインショッピングモール「淘宝網(Taobao)」で、製品販売量が、年間を通じて製品カテゴリー内トップ10に入り、2014年(平成26年)の販売開始以来、2021年(令和3年)5月の時点で、UNNY関連ブランドの累積オムニチャネルGMV(オンライン、オフラインを含む流通総取引額)は28億人民元(約507億円)を超えている。また、2021年(令和3年)開催の「第5回中国化粧品市場年次会議」では、実際の消費者美容購入行動データに基づき、各ブランドを購入する消費者の数と平均購入頻度を測定して算出される「2021年のチャイナビューティーブランドフットプリントランキング−消費者に好まれる化粧品ブランド」賞に選出され、中国の3,484のメイクアップブランドの中でも、トップ5の評価を受けている、中国においてよく知られたブランドである(甲6)。
請求人及びペイライブランドは、上記「UNNY」関連の商標(「UNNY」、「UNNY CLUB」、「UNNY CLUB(ロゴ)」、「UNNY COLOB」、「UNNYCOLOR」、「UNNYHOMME」)の出願人又は登録権者であり、2015年(平成27年)以降、中国、欧州共同体、英国、米国、オーストラリア、韓国、日本、タイなどグローバルに出願をしている(甲7)。
一方、被請求人も、「UNNY」関連の商標(「UNNY」、「UNNY CLUB」、「UNNY CLUB(ロゴ)」、「UNNY COLOB」、「UNNYCOLOR」、「unny brand」、「unny club brand」、「unny professional」、「unny club professional」、「unny professional by damiin」、「unny club produced by damiin」)の出願人又は登録権者であり、請求人より後の2016年(平成28年)以降に、韓国、中国、タイ、日本、米国、ロシア、欧州共同体、フィリピンなどに出願をしている(甲7)。
両者が「UNNY」関連の商標を共に出願している背景は、本来「UNNY」関連の商標の出願について無権原である被請求人が、請求人から許諾を受けずに、各国に商標出願をしていることに起因している。
甲第7号証にあるように、2015年(平成27年)4月16日に、ペイライグループにより、はじめて「UNNY」商標の中国出願がされ、被請求人は、その後、2016年(平成28年)6月1日に「UNNYCOLOB」を自国の韓国で出願している。
「UNNY CLUB」商標は、ペイライグループにより2016年度に発案、作成された造語商標であり、2016年(平成28年)10月21日に中国で文字商標「UNNY CLUB」の出願(出願・登録番号21641850:以下「中国商標」という。)がされたのが最初である。これに対し、被請求人は、その後、2016年(平成28年)10月24日以降に、韓国で、文字商標「unny club」の出願をしており、それ以外にも、本件商標やタイ、米国、ロシアといった国にペイライグループに知らせることなく出願をしている。中国については、ペイライグループより約3年遅く、2019年(令和元年)11月に「UNNY.CLUB」及び「UNNY CLUB(ロゴ)」商標を出願している(甲7)。
ペイライグループと被請求人は、元々、被請求人が、ペイライグループ社商品の中国での販売業者になった関係から始まっている。中国商標の登録権者ペイライブランドから商標の使用許諾に関するマネージメントを任せられたペイライカンパニーが、中国商標について、2018年(平成30年)7月1日から2021年(令和3年)6月30日までの間、使用許諾する授権証を発行したが、その内容は「UNNY CLUB」商標(ロゴも含む)の中国での使用を許可したに過ぎない(甲8)。
また、請求人が、被請求人による「UNNY」関連の出願を許諾した事実もなく、請求人は、本件商標の出願についても許諾しておらず、出願について知らされていなかった。
ペイライグループは、欧州共同体やシンガポールにおいて、被請求人による「UNNYCLUB」関連の商標について異議申立請求をしている(甲9、甲10)。
そして、被請求人は、日本における公式ホームページに「2021年1月から、旧ブランド名『UNNY CLUB』を改名してリニューアルしました」と記載し、ブランド変更を明言している(甲11)。
上記より、「UNNY CLUB」商標は、発案、作成し、その後最初に出願したペイライグループに帰属するのは明らかである。
また、被請求人は、2021年(令和3年)1月から、「IM UNNY」へのブランドの変更を宣言し、「UNNY CLUB」商標の使用をやめている。
4 商標法第4条第1項第7号について
上述のとおり、中国での販売活動に当たり、「UNNY CLUB」商標の使用許諾を受けていたにすぎない被請求人が、本来の帰属者であるペイライグループに対して知らせることなく、「UNNY CLUB」を含む「UNNY」関連商標を各国に先取り目的で出願し、独占排他的権利を得ることで、ペイライグループによる各国での使用を阻止することは、不正の目的を有する出願である。
また、かかる出願は、社会的な妥当性を欠いた出願であり、国際信義にも反するものである。
したがって、日本において請求人が出願していないことを奇貨として、先取り出願により登録を得た本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し、本件商標の登録は、同号に違反してされたものである。
5 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、上記3で記載したとおり、2014年(平成26年)の販売開始以来、中国で高い人気と知名度があり、本件商標出願時の2018年(平成30年)より現在に至るまで登録権者であるペイライグループのブランドとして、少なくとも中国における需要者の間で広く認識されている商標(甲5)と同一のものである。
また、特許庁商標審査基準では以下の場合に、他人の周知な商標を不正の目的をもって使用するものと推認して取り扱う旨、定めている。
(1)一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するものであること。(2)その周知な商標が造語よりなるものであるか、又は、構成上顕著な特徴を有するものであること。
本件商標は、中国において周知な商標と同一であり、辞書などに記載のある特定の意味を有する既存語ではなく、請求人が考案した造語であるので、上記要件を満たしており、不正な目的が推認される。
実情としても、中国での使用についての許諾を受けていたにすぎない被請求人が、本来の帰属者であるペイライグループに対して知らせることなく、各国に先取り目的で出願している経緯があり、かかる出願経緯は、独占排他的権利を得ることで、ペイライグループによる各国での使用を阻止する目的を有するものであり、自身の利益を図るための不正の目的による出願に該当する。
このような登録出願に基づく本件商標は、商標法第4条第1項第19号「他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的をもって使用をするもの」に該当する商標であり、本件商標の登録は、同号に違反してされたものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第40号証を提出した。
1 本件商標の帰属について
(1)被請求人について
被請求人は、2015年(平成27年)9月22日に大韓民国において、化粧品の製造、卸売業、小売業、輸出業、輸入業等を目的に設立された(乙1)。中国語表記は「多美人株式会社」、英語表記は「Damiin Co.,Ltd」である。「タミ カンパニー リミテッド」の「タミ」の部分は「ダミイン」とも表される。
(2)被請求人と本件商標の関係について
本件商標「UNNY CLUB」及び「UNNY」に関連する商標は、自らが製造する商品に対して使用するために、被請求人が発案、作成したものである。
そして、被請求人が「UNNY CLUB」又は「UNNY」に関連する商標を使用して展示会に出展した記録は以下アないしカのとおりである。
ア 被請求人は、2016年(平成28年)5月、国際的な展示会「21ND CHINA BEAUTY EXPO」(於:中国上海)に「UNNY」ブランドを出展した(乙2、乙3)。
イ 被請求人は、2016年(平成28年)9月、国際的な展示会「China International Beauty Expo(Guangzhou) Autumn 2016」(於:中国広州市)に出展した(乙4、乙5)。
ウ 被請求人は、2016年(平成28年)10月、国際的な展示会「The 8th K−BEAUTY EXPO 2016」に「Unny」ブランドの化粧品を出展した(乙6〜乙9)。この展示会は、34の国の参加者があり、その中にはMINISO INTERNATIONAL CO.,LTDやSasa Cosmetics Company Ltdなど中国のバイヤーも含まれていた。
エ 被請求人は、2017年(平成29年)5月、国際的な展示会「22nd CHINA BEAUTY EXPO」(於:中国上海)に「UNNY CLUB」ブランドの化粧品を出展した(乙10、乙11)。
オ 被請求人は、2018年(平成30年)11月、国際的な展示会「COSMOPROF ASIA 2018」(於:中国香港)に「UNNY CLUB」の化粧品を出展した(乙12〜乙14)。
カ 被請求人は、2019年(令和元年)5月、国際的な展示会「24ND CHINA BEAUTY EXPO」(於:中国上海)に「UNNY CLUB」の化粧品を出展した(乙15〜乙17)。
被請求人は、中国の流通業者に対して、「UNNY CLUB」ブランドの製品を販売する権限を付与してきた(乙18〜乙20)。中国における「UNNYCLUB」製品の流通業者との契約は、全て被請求人が行っている。
中国で販売されている製品の情報表示面には、被請求人が製造販売者と記載されている。中国のSNSの小紅書にて「unnyclub 化粧水」と検索すると、被請求人が製造販売業者として記載されている商品を確認できる(乙21)。
被請求人は、中国のWeibo(ミニブログサイト)においても、「UNNY CLUB」製品が本物であることを示す鑑定書を発行している(乙22)。需要者は、Weiboで商品を見つけて、その場で購入することが可能である。
なお、被請求人は、「unny.co.kr」ドメインを2015年(平成27年)11月29日に取得している(乙23)。
2016年(平成28年)5月の時点において、韓国にて、被請求人は、「UNNY」ブランドの化粧品を製造販売している(乙24)。
以上のとおり、「UNNY CLUB」や「UNNY」ブランドは、被請求人の商品の出所を表示するものである。
(3)悠宜化妝品(江(「蘇」の中国新字体))有限公司について
被請求人は、2017年(平成29年)8月17日に中国において、「悠宜化妝品(江(「蘇」の中国新字体))有限公司」(英文表記:Unny Co.,Ltd。以下「悠宜化粧品」という。)を設立し、その株式のすべてを保有した(乙25、乙26)。その後、2020年(令和2年)4月9日付で、被請求人は株主から除外されて、請求人が株主として登記された(乙27、乙28)。しかしながら、これは請求人が違法に行った手続きに起因するものであり、被請求人の意思に反するものであった。被請求人は、請求人の違法な手続きに関して、江蘇省南通市中級人民法院(裁判所)に対して訴訟を提起した結果、ア 被請求人こそが悠宜化粧品の株式の100%を保有する者であることを確認する判決が下された。また、イ 請求人は、アについて協力することを命じられた(乙29、乙30)。なお、このような判決、命令が下されたにも関わらず、請求人は必要な対応を行っていない。
なお、被請求人は、2019年(平成31年)4月15日付で悠宜化粧品に対して、巨額の投資金を追加送金している(乙31〜乙33)ことからも、被請求人が悠宜化粧品の経営を支配することが理解できる。
以上の経緯より、悠宜化粧品は、被請求人が株式を100%保有する、被請求人の中国支社である。
そして、被請求人は、中国の悠宜化粧品に「UNNY CLUB」ブランドに関する商品を輸出して、悠宜化粧品は、ペイライグループを含む卸売業者に対して、「UNNY CLUB」ブランドに関する商品を販売している(乙34)。このとおり、悠宜化粧品は、「UNNY CLUB」ブランドにおいて大変重要な企業であるからこそ、請求人は不正な手段を使って、悠宜化粧品の100%株主になることを試みたのである。
(4)請求人について
被請求人は、中国事業の初期段階において、請求人に対して、一時的に中国における「UNNY CLUB」ブランドの商品の販売を委託しており、請求人は、被請求人の委任を受けて行政事務を代行していた。その際、被請求人は、請求人に、名目上、中国における商標登録の出願人・商標権者となることを依頼したことがある。しかしながら、請求人が商標登録出願する際には、被請求人に書類を要請することもあった(乙35、乙36)ことからもわかるとおり、実質的に商標を使用する権利を有する者は被請求人である。
当然ながら、蘇州佩莱電子商務有限公司(請求人側)は、中国以外の国では「UNNY CLUB」ブランドに関して何らの権限も有していない(乙37)。
被請求人が、その中国支社である悠宜化粧品を設立した後は、請求人側に対して行政事務を委任していないため、請求人側が名目上保有した商標権は、被請求人に移転されなければならないが、請求人側がこれを拒否したため、被請求人は、中国において商標登録無効審判を請求し、現在審理が行われている(乙38、乙39)。
そして、請求人側は、他国でも、商標の正当な使用者である被請求人の許可を得ないで、UNNY関連の商標の登録を受けている。
2 請求人の主張について
以下のとおり、請求人の主張は誤りである。
(1)請求人は「また、UNNYCLUB・・・などの化粧品ブランドを立ち上げており、その製品としてメイクアップ、スキンケア、パーソナルケアなどの分野の商品を取り扱っている」旨述べて、その証拠として、ペイライグループのホームページ(甲4)を挙げているが、これは第三者による客観的な証拠ではない。
(2)請求人は「UNNY CLUB」のブランドが中国で知名度が高い旨を述べているが、以下の理由から、中国の需要者は、「UNNY CLUB」のブランドの商品をペイライグループの出所に係る商品として認識しない。
被請求人は、遅くとも2016年(平成28年)から、中国における国際的な展示会で「UNNY CLUB」ブランドの化粧品を展示・販売してきた(乙2〜乙17)。また、中国で流通する「UNNY CLUB」の商標に係る化粧水には、「製造者」として「多美人」(被請求人の中文表記)が表記されている(乙21)。さらに、被請求人は、中国の流通業者に対して、「UNNY CLUB」製品を販売する権限を付与している(乙18〜乙20)。
また、請求人は、「中国の大手オンラインショッピングモール「淘宝網(Taobao)」で、製品販売量が、年間を通じて製品カテゴリー内トップ10に入り、2014年(平成26年)の販売開始以来、2021年(令和3年)5月の時点で、UNNY関連ブランドの累積オムニチャネルGMV(オンライン、オフラインを含む流通総取引額)は28億人民元(約507億円)を超えている。」と主張しているが、審判請求書にはこれを裏付ける証拠の提出がない。
(3)請求人は、被請求人が各国で「UNNY」関連の商標の出願を無権原で、請求人の許諾を受けずに出願したと主張しているが、上記1で述べたとおり、「UNNY」に関連する商標は、被請求人が製造する商品に対して使用するために、被請求人が発案、作成したものである。そのため、被請求人は、各国で「UNNY」関連の商標の出願を行うことができ、請求人の許諾を得る必要もない。
(4)請求人が発案、作成した造語商標であると主張する中国商標は、被請求人の依頼によって、ペイライブランドが名目上商標権者となったに過ぎず、実質的に商標を使用する権利を有する者は被請求人である。
(5)請求人は、元々、被請求人はペイライグループ社商品の中国での販売業者であったと主張しているが、「UNNY CLUB」及び「UNNY」に関連する商標の商品を製造する者は被請求人であり、それを中国において販売する業者がペイライグループである。
このことは、2016年(平成28年)6月8日付の輸出申告証明書によっても明らかである(乙40)。
(6)請求人は、本件商標の出願についても、出願を許諾していない旨主張している。しかしながら、そもそも、被請求人が請求人に対して許諾を得る必要はない。
(7)被請求人の「UNNY CLUB」関連の商標について、請求人から異議申立がなされているが、これは請求人による妨害行為である。
(8)被請求人が「IM UNNY」ブランドを立ち上げたのは、事業活動の多角的に向けたものであり、また、請求人側が、粗悪な商品に「UNNY CLUB」の商標を無断で使用して「UNNY CLUB」商標の信頼を損ねているため、請求人のこのような行為を禁止させるための臨時措置である。
3 商標法第4条第1項第7号該当性
被請求人は、上記1のとおり、自らが製造する商品に対して、本件商標を使用するものであり、請求人の許諾を得ずに出願し商標登録を受けることは問題がない。
また、本件商標は、自らの製品を独占排他的に販売するために出願したものであり、不正の目的はない。
さらに、本件商標の出願は、出願の経緯に社会的相当性を欠くものではなく、国際信義に反するものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性
本件商標は、登録出願時及び登録査定時において、ペイライグループの業務に係る商品を表示するものとして、中国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標には該当しない。
また、本件商標は、被請求人が自ら製造する商品に対して使用するものであって、不正の目的をもって使用するものには該当しない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に違反してされたものではない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理し、判断する。
1 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)引用商標の周知性について
ア 請求人の主張及び同人の提出した証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)請求人は、スキンケアやメイクアップ製品等を販売する香港設立の中国企業であり、ペイライブランドやペイライカンパニー等と共に、ペイライクループを形成している。また、「UNNYCLUB」、「RNW Ruwei」等の化粧品ブランドを立ち上げており、その製品としてメイクアップ、スキンケア、パーソナルケアなどの分野の商品を取り扱っているとする(請求人の主張、甲4)。
(イ)「UNNY CLUB」の商標は、ペイライグループにより2016年度に発案、作成された造語商標であり、2016年(平成28年)10月21日に中国で出願された中国商標が最初であるとする(請求人の主張、甲7)。
(ウ)ペイライグループのウェブサイト内ブランド紹介とするページには、引用商標のうちのいくつかが記載されており、「UNNY CLUB」は、中国で非常に高い人気を博しているブランドであるとする(請求人の主張、甲5)。
(エ)同ブランドは、中国の大手オンラインショッピングモール「淘宝網(Taobao)」で、製品販売量が、年間を通じて製品カテゴリー内トップ10に入り、2014年(平成26年)の販売開始以来、2021年(令和3年)5月の時点で、UNNY関連ブランドの累積オムニチャネルGMV(オンライン、オフラインを含む流通総取引額)は28億人民元(約507億円)を超えており、また、2021年(令和3年)開催の「第5回中国化粧品市場年次会議」では、実際の消費者美容購入行動データに基づき、各ブランドを購入する消費者の数と平均購入頻度を測定して算出される「2021年のチャイナビューティーブランドフットプリントランキング−消費者に好まれる化粧品ブランド」賞に選出され、中国の3,484のメイクアップブランドの中でも、トップ5の評価を受けている中国においてよく知られたブランドであるとする(請求人の主張、甲6)。
また、「ペイライグループの子会社であるUNNYは、・・・「中国の美容消費者に好まれる化粧品ブランド」の称号を獲得しました。」、「ペイライグループの子会社であるUNNY Youyiは、・・・「2021年のチャイナビューティーブランドフットプリントランキング−消費者に好まれる化粧品ブランド」の称号を獲得しました。」等、ペイライグループの子会社であるとする「UNNY」及び「UNNY Youyi」との記載がある(甲6)。
(オ)請求人及びペイライブランドは、引用商標のほか、「UNNY」、「UNNY COLOB」等の商標を、2015年(平成27年)以降、中国、欧州共同体、英国、米国、オーストラリア、韓国などで出願又は登録している(甲7)。
イ 判断
上記アにおいて認定した事実によれば、請求人は、スキンケアやメイクアップ製品等を販売する香港設立の中国企業であり、中国蘇州に本社を置くペイライブランドの子会社である。
そして、引用商標は、請求人が属するペイライグループにより2016年度に発案、作成された造語商標であり、同グループにより、商品「化粧品」(以下「請求人の業務に係る商品」という。)について使用されていることはうかがえる(甲5)。
また、ペイライブランドが、2016年(平成28年)10月21日に中国で出願した中国商標を取得したことはうかがえる(甲7)。
しかしながら、請求人が主張する、2014年(平成26年)の販売開始からの流通総取引額が28億人民元(約507億円)であったこと、及び「2021年のチャイナビューティーブランドフットプリントランキング−消費者に好まれる化粧品ブランド」においてトップ5の評価を受けたこと(甲6)については、いずれも請求人の属するペイライグループのウェブサイトにおける記載であることから、客観的な証拠とはいい難く、また、その他これら事実を裏付ける証拠が提出されていないことからすると、取引額の多寡及び需要者の評価について客観的に確認することができない。
さらに、甲第6号証の「ペイライグループの子会社であるUNNY」及び「ペイライグループの子会社であるUNNY Youyi」との記載からすれば、「UNNY」及び「UNNY Youyi」は請求人とは異なる会社であることがうかがえる。
そのうえ、甲第7号証において、請求人及びペイライブランドは、引用商標のほか、「UNNY」、「UNNY COLOB」等の商標について、2015年(平成27年)以降、中国、欧州共同体、英国、米国、オーストラリア、韓国などグローバルに出願をしている旨主張しているが、これらの国等に出願し、商標登録を受けていることは、引用商標の周知性を直接的に裏付ける証拠とはいえず、また、ペイライブランドが、請求人主張のとおり、請求人の親会社であるとすれば、請求人とは異なる会社である。
そうすると、中国における市場占有率等の量的規模を客観的な使用事実に基づいて、引用商標の使用状況を把握することができず、また、請求人が引用商標を使用したことによる周知性の程度を推し量ることができないものといわざるを得ない。
仮に、上記取引額が事実であるとしても、当該実績がその周知性を基礎づける程多数、多額であると認めるに足りる証拠は見いだせない。
その他、引用商標が、中国において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、周知著名性を有していたと判断し得る証拠は見いだせない。
してみると、請求人が提出した全証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が請求人の業務に係る商品を表示するものとして、中国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)本件商標が不正の目的をもって使用するものであること
ア 請求人の主張及び同人の提出した証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)本件商標は、中国において周知な商標と同一であり、辞書などに載録のある特定の意味を有する既存語ではなく、請求人が考案した造語であるので、上記(不正の目的をもって使用するものと推認して取り扱う)要件を満たしており、不正な目的が推認される。
(イ)中国での使用についての許諾を受けていたにすぎない被請求人が、本来の帰属者であるペイライグループに対して知らせることなく、各国に先取り目的で出願している。
イ 判断
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
そうすると、引用商標が需要者の間に広く認識されていた商標であることを前提に、本件商標は、ペイライグループによる各国での使用を阻止する目的を有し、不正の利益を得る目的をもって使用されるとする請求人の主張は、その前提を欠くものである。
また、被請求人は、請求人に対し、本件商標の買取りを迫った事実はなく、引用商標が我が国で登録されていないことに乗じて、先回りして同商標と同一又は類似する本件商標につき出願、登録を受けた上で、請求人との間で、請求人に損害を与え、被請求人において不正の利益を得る意図があったものとも認められない。
その他、請求人が提出した証拠からは、被請求人が、引用商標の信用にただ乗りし、引用商標の出所表示機能を希釈化し又は名声を毀損させるものというべき事実は見いだせないし、他に、本件商標が不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実も見いだせない。
(3)まとめ
本件商標が引用商標と同一又は類似の商標であるとしても、上記(1)及び(2)のとおり引用商標は本件商標の登録出願時及び登録査定時において、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標ということはできず、また、不正の目的をもって使用をするものであるということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号該当性の判断については、以下の判示がある。
ア 商標法第4条第1項第7号に規定する、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(ア)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(イ)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(ウ)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(エ)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(オ)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれると解される(知財高裁 平成17年(行ケ)第10349号同18年9月20日判決参照)。
イ 出願人が本来商標登録を受けるべき者であるか否かを判断するに際して、先願主義を採用している日本の商標法の制度趣旨や、国際調和や不正目的に基づく商標出願を排除する目的で設けられた同法第4条第1項第19号の趣旨に照らすならば、それらの趣旨から離れて、同法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである。
そして、特段の事情があるか否かの判断に当たっても、出願人と、本来商標登録を受けるべきと主張する者との関係を検討して、例えば、本来商標登録を受けるべきであると主張する者が、自らすみやかに出願することが可能であったにもかかわらず、出願を怠っていたような場合や、契約等によって他者からの商標登録出願について適切な措置を採ることができたにもかかわらず、適切な措置を怠っていたような場合は、出願人と本来商標登録を受けるべきと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから、そのような場合にまで、「公の秩序や善良の風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない(知財高裁 平成19年(行ケ)第10391号同20年6月26日判決参照)。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性
上記(1)の判示に照らして、本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性を判断すると、以下のとおりである。
ア 本件商標は、「UNNY CLUB」の欧文字を横書きしてなるものであって、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字等からなるものではない。
イ また、本件商標は、これをその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものともいえず、さらに、他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されているものではないし、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。
ウ さらに、請求人の主張及び同人の提出に係る甲各号証を総合してみても、商標法の先願登録主義を上回るような、本件商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底認容し得ないような場合に該当すると認めるに足りる具体的事実を見いだすことができない。
エ そして、請求人は、本件商標と引用商標はその構成態様が同一であり、引用商標が中国において周知であることから、被請求人は、その指定商品について我が国において引用商標が登録されていないことを奇貨として、先取り的に登録出願し、商標権を取得したものであり、その行為は、社会的妥当性を欠き、国際信義にも反するものであり、ひいては公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある旨主張している。
しかしながら、上記1(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
また、上記1(2)のとおり、被請求人が、引用商標の信用にただ乗りし、引用商標の出所表示機能を希釈化し又は名声を毀損させるものというべき事実は見いだせないし、他に、本件商標が不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実も見いだせない。
さらに、請求人の提出に係る全証拠を勘案しても、本件商標が先取り的に出願されたものであり、公正な商取引の秩序を乱すおそれがあるなど、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠く、又は本件商標をその指定商品について使用することが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものとすべき具体的事情等を見いだすことができない。
その他、本件商標が、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標というべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲(引用商標:甲5 色彩は原本を参照。)



(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。

審判長 佐藤 松江
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
審理終結日 2022-12-06 
結審通知日 2022-12-08 
審決日 2022-12-26 
出願番号 2018009897 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (W03)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 豊瀬 京太郎
小俣 克巳
登録日 2018-10-19 
登録番号 6091065 
商標の称呼 ウニークラブ、ユニークラブ、ウニー、ユニー、クラブ、アニークラブ、アニー 
代理人 弁理士法人RYUKA国際特許事務所 
代理人 小暮 理恵子 
代理人 行田 朋弘 
代理人 藤森 三奈 

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