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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W45
管理番号 1399761 
総通号数 19 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-12-07 
確定日 2023-07-01 
異議申立件数
事件の表示 登録第6622150号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6622150号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6622150号商標(以下「本件商標」という。)は、「NATURAL SOAP」の欧文字を書してなり、令和4年4月15日に登録出願、第45類「個室において異性の客に接する役務の提供,派遣による人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務の提供」を指定役務として、同年9月14日に登録査定、同月30日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号について
ア 本件商標は、主として東京都吉原地域で事業を展聞する「Natural Soap Group(ナチュラルソープグループ)」(以下「ナチュラルソープグループ」という。)が、本件商標の登録出願日以前から役務「個室において異性の客に接する役務の提供」等(以下「本件役務」という。)について使用し、本件役務に係る需要者間に広く認識されている商標である「Natural Soap」及び「ナチュラルソープ」(以下、併せて「使用商標」という。)と同一又は類似であり、かつ、上記役務と同一又は類似の役務に使用するものである。
イ 使用商標の周知性について
(ア)店舗店頭、ウェブページ、その他広告媒体での使用
ナチュラルソープグループは、本件商標の登録出願日前の2020年9月1日に、同グループの吉原地域における店舗(吉原FANTASY)にて、使用商標の使用を開始し、現在に至るまで使用を継続している。また、吉原における他の2つの店舗(吉原カラフル部及び吉原美女革命)においても、本件商標の登録出願日前に使用商標の使用を開始し、現在に至るまで使用を継続している。
ナチュラルソープグループは、使用商標を、本件商標の登録出願日以前から現在に至るまで、上記3店舗の店頭看板や店内表示など(甲2)、上記3店舗に係るホームページ上(甲3)、インターネット上の複数のポータル情報サイト(甲4)、また、TwitterなどのSNS上(甲5)で使用し、本件役務における需要者の間での認知度を高めブランドを確立してきた。
なお、ナチュラルソープグループは、複数の情報ポータルサイトに掲載しており、最大手のシティヘブンネットについては高額プランに掲載しているところ、その広告費は、同ポータルサイトだけでも3店舗合計で、年間約1700万円にも上る。
(イ)本件商標権者が使用商標の周知性を自認した行動をしていること
「Natural Soap」及び「ナチュラルソープ」という用語は、ナチュラルソープグループが自ら考案し、本件役務分野で初めて使用した用語である。そして、上記のとおり、同グループが現在に至るまで様々な媒体で使用し続け、本件役務分野でのブランドを自ら確立してきたものである。
また、後述のとおり、本件商標権者及びその関係者(以下「本件商標権者」という。)は、ナチュラルソープグループが確立した「ナチュラルソープ」ブランドにフリーライドする形で、2021年12月に、本件役務分野で「ナチュラルソープ」を使用し始め、その後、このようなフリーライド行為に気付いたナチュラルソープグループが、本件商標権者に対し、2022年3月以降、直接又は代理人弁護士を介して抗議をしていたところ、本件商標権者は、ナチュラルソープグループに秘して、2022年4月15日に冒認出願を行ったものである。
(ウ)需要者における認識
上記のとおり、「Natural Soap」及び「ナチュラルソープ」という用語が、本件役務における需要者の間での高い認知度、ブランドを確立しているからこそ、ナチュラルソープグループの同業他社である本件商標権者は、使用商標にフリーライドし、ひいては、本件商標の出願に至ったのである。このような時系列からしても、使用商標が本件役務における需要者の間で周知性を有していたことは論を待たない。
まず、使用商標は周知性を有しているため、ナチュラルソープグループでは、店舗検索サイトにおける店舗説明において、そのことを前提とする説明を行っている。例えば、「特徴/割引」の欄において、ナチュラルソープグループのカラフル部(店舗2)については「学園系初のNatural Soap」(甲6の1)、吉原美女革命(店舗3)については「全ての女性が対応のNatural Soap」(甲6の2)とそれぞれ説明しており、本件役務における需要者が「Natural Soap」というブランドを、多くを説明せずとも認識できることを前提として説明を行っている。
口コミサイトでは、「ナチュラルソープ(NS)の文字が!」(甲7の1)や、「店の正面には、床屋のサインポールのような大きなキャンディーのオブジェがあり、ココにも大きく「学園系初のNatural Soap(ナチュラルソープ)」と掲げられています。」といった投稿が行われており、本件役務における需要者が「Natural Soap」、もしくは「ナチュラルソープ」というブランドを認識した上での口コミを投稿していることが分かる。
インターネット検索エンジンでの検索結果も、需要者の認識を示すものといえるところ、例えば、Googleで「ソープランド Natural Soap」で検索をすると、吉原ファンタジー、吉原カラフル部、吉原美女革命が、1番目から3番目にヒットする(甲8)。このように、インターネット上では、ソープランドという役務分野において、「Natural Soap」という表示がナチュラルソープグループの運営する上記3店舗に関連するものとして扱われているといえる。
以上のような例からも、遅くとも本件商標の登録出願日までに需要者において、使用商標が広く認識されていることが分かる。
なお、甲第7号証の2については、本件商標の登録出願日後の日付での投稿であるものの、2022年4月18日と登録出願日直後の投稿であり、かつ、投稿日以前の体験を投稿したものであるから、登録出願日時点での需要者の認識を推認することができる。
そして、商標法第4条第1頂第10号の周知性は、全国的ではなく一地方で獲得されているものであれば足りるところ、ナチュラルソープグループは、登録出願日以前より、本件役務分野では、わが国で最も著名な吉原地域で事業を展開しており、使用商標のブランドを確立してきた。したがって、吉原地域という本件役務分野で最も著名な地域で周知性が獲得されていたといえる。
ウ 本件商標と使用商標との同一性及び類似性について
本件商標は、「NATURAL SOAP」の欧文字からなる商標であり、その称呼は、「ナチュラルソープ」である。
これに対し、使用商標は、「Natural Soap」及び「ナチュラルソープ」という文字であり、称呼も同じく「ナチュラルソープ」である。
そして、観念が同じであることは、外観及び称呼が同一であることから議論するまでもなく、同一である。
したがって、本件商標と使用商標とは、同一ないしは類似である。
エ 役務の同一性及び類似性について
本件役務と、使用商標に係る役務「個室において異性の客に接する役務の提供」とが同一の役務又は類似する役務であることは明らかである。
オ 小括
したがって、本件商標は、他人であるナチュラルソープグループの業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その役務又はこれらに類似する役務について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
カ 本件商標権者のフリーライド行為及び冒認出願行為について
「Natural Soap」及び「ナチュラルソープ」という用語は、本件役務分野においてナチュラルソープグループが自ら考案し初めて使用した用語であり、同グループが現在に至るまで、多くの労力と費用をかけて様々な媒体で使用し続け、本件役務分野でのブランドを自ら確立してきたものである。
ナチュラルソープグループの同業他社である本件商標権者は、ナチュラルソープグループに無断で、同グループが確立した「ナチュラルソープ」ブランドにフリーライドする形で、2021年9月頃から、本件役務分野で従前使用していた「川崎制服アイドルソープ」という表示を「川崎制服ナチュラルソープ」という表示に突如変更して使用し始めた(甲9)。その後、このようなフリーライド行為に気付いたナチュラルソープグループが、本件商標権者に対し、2022年3月に直接抗議をしたが、本件商標権者が引き続き本件商標の無断利用を継続したため、代理人弁護士名義で2022年4月25日付け内容証明郵便を送付した(甲10)。しかし、その後も、無断での使用を継続していたところ、本件商標権者は、ナチュラルソープグループに秘して2022年4月15日に冒認出願を行っていたことが判明した。
このような、悪意による冒認出願は法的に保護されるべきではなく、かかる冒認出願が登録査定されることはあってはならない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、他人であるナチュラルソープグループの商標として広く一般に知られている商標と類似しており、その指定役務に使用された場合、役務の出所について混同を生ずるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号について
上記(1)カのとおり、本件商標権者は、ナチュラルソープグループが使用する使用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等にフリーライドする目的で「Natural Soap」の商標を使用し始め、本件商標を冒認出願したものである。
したがって、使用商標は、他人であるナチュラルソープグループの商標として、需要者の間に広く認識されており、本件商標はこれに類似する商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的)をもって使用するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

3 当審の判断
(1)使用商標の周知性
ア 申立人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)「Natural Soap」が表示された店舗看板や店補内の写真(甲2)は、撮影日が確認できないものである。
(イ)「Wayback Machine」を利用した「吉原美女革命」のウェブサイト(甲3)には、吉原美女革命が2021年7月12日にグランドオープンの記載及び「Natural Soap Group」の表示がされているものの(甲3の3の1)、他の同ウェブサイトは、不鮮明なもの、ナチュラルソープグループの表示がないものであり、また、「シティへブンネット」や「風俗じゃぱん」のウェブサイト(甲4)は、掲載日が確認できないものである。
(ウ)「Natural Soapグループ(ナチュラルソープグループ)吉原ファンタジー」のTwitterアカウントのウェブページ(甲5の1)には、「Natural Soapグループ(ナチュラルソープグループ)」及び「FANTASY」の表示のほか、円弧内に小さく「NATURAL SOAP」の表示がある一方、「カラフル部」の同ウェブページ(甲5の2)には、「ナチュラルソープグループ」の表示及び「吉原美女革命の同ウェブページ(甲5の3)には、「Natural Soap グループ(ナチュラルソープグループ)」の表示があるものの、これらには、使用商標の表示が見いだせない。
(エ)「THEソープランド」のウェブサイト(甲6)は、掲載日が確認できず、「口コミ風俗情報局」のウェブサイト(甲7)は、店名「FANTASY(ファンタジー)」及び「カラフル部」に関して、本件商標の登録出願前に投稿されたものであって、店舗に関する説明文中に「ナチュラルソープ(NS)の文字が!」及び「学園系初のNatural Soap(ナチュラルソープ)」の文字が表示されている。
(オ)「ソープランド Natural Soap」に関する「Google」による検索結果(甲8)には、「吉原・学園系Natural Soap【カラフル部】が2021/4/1(木)にOPEN!吉原の学園系ソープランド初のNatural Soap対応」の記載がある。
(カ)広告費については、主張のみでそれを裏付ける具体的な証拠の提出はない。
(キ)「Wayback Machine」を利用した「川崎制服アイドルソープKiseki」のウェブサイト(甲9)によれば、「KiSeKi」の文字の上部の記載が、2021年7月28日時点で「川崎制服 アイドルソープ」であるのに対し、同年9月16日時点で「川崎制服NATURAL SOAP」となっている。また、ナチュラルソープグループは、2022年(令和4年)4月25日に、神奈川県川崎市堀之内町6−5所在の「川崎制服アイドルソープKiSeKi」に対し、「Natural Soap」の営業表示の使用中止を求める通知書を書留内容証明郵便物として差し出した(甲10)。
イ 上記ア(ア)ないし(カ)からすると、ナチュラルソープグループは、本件商標の登録出願前に「吉原美女革命」、「FANTASY(ファンタジー)」及び「カラフル部」とする店をオープンしていることが認められる。
しかしながら、申立人の提出に係る証拠は、撮影日、掲載日やナチュラルソープグループとの関係が確認できないもの、また、本件役務に関する使用商標の広告の範囲、市場シェア等が不明なものが大半であって、使用商標が本件指定役務の需要者の間に広く知られているとする客観的な証拠の提出は不十分であるといわざるを得ない。
そうすると、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、使用商標は、ナチュラルソープグループの業務に係る商標として我が国の本件指定役務の需要者の間に広く認識されているとはいえない。
(2)本件商標と使用商標の類似性について
本件商標と使用商標とは、同一の文字列又は称呼からなるものであるから、両者の類似性の程度は高いものである。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
本件商標は、上記(2)のとおり、使用商標と同一又は類似するものであるとしても、使用商標は、上記(1)イのとおり、ナチュラルソープグループの業務に係る商標として、我が国の本件指定役務の需要者の間に広く認識されているとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
使用商標は、上記(1)イのとおり、ナチュラルソープグループの業務に係る商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の本件指定役務の需要者の間に広く認識されていたとは認めることができない。
以上から、本件商標は、上記(2)のとおり、使用商標と類似性の程度が高いとしても、使用商標は、ナチュラルソープグループの取扱いに係る役務を表示するものとして、我が国の本件指定役務の需要者の間に広く認識されているとは認めることはできないことからすれば、本件商標に接する需要者が、これよりナチュラルソープグループの業務に係る使用商標であると連想又は想起するものということはできない。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定役務について使用しても、需要者が、ナチュラルソープグループの使用商標であると連想又は想起することはないからその役務が他人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第19号該当性について
使用商標は、上記(1)イのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、ナチュラルソープグループの業務に係る役務を表示する商標として、広く認識されていたとは認められないものである。
また、申立人の主張及び上記(1)ア(キ)の証拠から、直ちに、本件商標権者が使用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等にフリーライドする目的で使用し、冒認出願したものともいうことはできず、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2023-05-22 
出願番号 2022044175 
審決分類 T 1 651・ 251- Y (W45)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大橋 良成
特許庁審判官 冨澤 武志
馬場 秀敏
登録日 2022-09-30 
登録番号 6622150 
権利者 株式会社エース
商標の称呼 ナチュラルソープ、ナチュラル、ソープ 
代理人 寺井 勇人 
代理人 弁理士法人Toreru 
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