• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W36
管理番号 1399760 
総通号数 19 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-11-17 
確定日 2023-06-23 
異議申立件数
事件の表示 登録第6613436号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6613436号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6613436号商標(以下「本件商標」という。)は、「ESCRYPTO」の欧文字を標準文字で表してなり、令和4年2月24日に登録出願、第36類「金融又は財務取引,金融又は財務の管理,金融又は財務に関する計画の立案,金融又は財務に関する調査・分析・情報の提供・助言及び指導,金融又は財務に関するコンサルティング,銀行業務,資金の貸付け,資金の調達,為替取引,両替,ウェブサイト経由による金融又は財務に関する情報の提供,暗号資産の交換,ブロックチェーン技術を介して提供される金融又は財務取引」を指定役務として、同年8月3日に登録査定され、同年9月12日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する国際登録第1449686号商標(以下「引用商標」という。)は、「Scrypto」の欧文字を横書きした構成からなり、2018年(平成30年)10月3日に国際商標登録出願、「Electronic transmission of data over a global communications network, including the internet, television and satellite networks; providing access via data networks to software; telecommunications.」を含む第38類、第9類、第16類及び第35類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和3年2月19日に日本国において設定登録されたものである。

第3 登録異議の申立ての理由の要旨
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号の規定により、取り消されるべきものである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標との対比
本件商標は、「ESCRYPTO」の欧文字を書してなり、引用商標は、「Scrypto」の欧文字を横書きしてなるものである。
したがって、本件商標は、引用商標の先頭に欧文字「E」が一文字追加されたに過ぎないため、その外観において類似の商標である。
また、本件商標は、構成文字から「エスクリプト」又は「エスクライプト」の称呼を生ずること明らかである。
他方、引用商標は、構成文字から「エスクリプト」又は「エスクライプト」の称呼をも生ずるものである。
してみれば、本件商標と引用商標は、共に「エスクリプト」又は「エスクライプト」の称呼を生ずるから、その称呼において類似の商標である。
さらに、本件商標及び引用商標は、「script」(すなわち文字)と「crypto」(すなわちデジタル)の概念を組み合わせた「SCRYPTO」という語が共通して使用されている。
したがって、本件商標と引用商標とは、共に外観、称呼、観念を共通にするものである。
(2)本件指定役務と引用指定商品及び指定役務との対比
そして、本件商標の第36類指定役務「金融又は財務取引,金融又は財務の管理,金融又は財務に関する計画の立案,金融又は財務に関する調査・分析・情報の提供・助言及び指導,金融又は財務に関するコンサルティング,銀行業務,資金の貸付け,資金の調達,為替取引,両替,ウェブサイト経由による金融又は財務に関する情報の提供,暗号資産の交換,ブロックチェーン技術を介して提供される金融又は財務取引」と、引用商標の第38類指定役務「Electronic transmission of data over a global communications network, including the internet, television and satellite networks; providing access via data networks to software; telecommunications.」(特許情報プラットフォームにおいて提供された和訳:グローバル通信ネットワーク(インターネット・テレビジョン及び衛星ネットワークを含む。)上でのデータの電子送信,データネットワーク経由でのソフトウエアヘのアクセスの提供,電気通信)とは、極めて密接な関連性を有しているといえ、両者の指定役務も互いに抵触するものである。
また、申立人及び商標権者の事業内容は、いずれもオンラインによって提供され、その目的はブロックチェーン上における暗号資産やデジタル資産の決済や金融サービス等であり、両者の提供の手段、目的は共通にし、需要者の範囲も一致する。
そして、申立人及び商標権者は、いずれもブロックチェーン上における暗号資産やデジタル資産の決済や金融サービス等の提供を行っており、業種が同一であり、さらに、これらの役務に関する業務や事業者を規制する法律は、いずれも資金決済に関する法律や犯罪による収益の移転防止に関する法律等で同一である。
このように、本件商標と引用商標の指定商品又は指定役務は互いに類似するということができるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
申立人は、金融サービスの分野において、欧州全域にわたり、引用商標を広く使用し高い知名度を誇り今日に至っており、本件商標の出願時点で既に日本においても事業を拡大している(甲3)。したがって、本件指定役務の分野の需要者は、「ESCRYPTO」の欧文字からなる本件商標が、本件指定役務について使用された場合には、申立人の業務に係る役務と出所の混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
申立人は、金融サービスの分野において、欧州全域にわたり、引用商標を広く使用し高い知名度を誇り今日に至っており、本件商標の出願時点で既に日本においても事業を拡大している旨主張している(甲3)。
しかしながら、申立人は、引用商標の使用に係る当該サービスの開始日、売上高、提供数、及び提供場所や引用商標の実際の使用態様、表示方法等に関する証拠は何ら提出しておらず、我が国における市場占有率等も明らかではない。
さらに、引用商標の周知性に関する証拠は、「Twitter」の記事(甲3)のみであり、そのフォロワー数等も明らかではなく、その他、我が国における宣伝広告費用、宣伝広告を行った媒体、その回数や期間等を客観的に把握し得る証拠は提出されていない。
そうすると、申立人が提出した証拠によっては、引用商標が、申立人が提供する役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知著名性を獲得していたとは認められないものである。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「ESCRYPTO」の欧文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は既成の語として辞書等に載録されておらず、一般に親しまれた語でもないから、特定の観念を生じないものである。
そして、特定の意味を有しない欧文字は、一般に、我が国において親しまれたローマ字読みに倣って称呼されることから、「ESCRYPTO」のつづりからなる本件商標からは、「エスクリプト」の称呼を生じるものというのが相当である。
してみれば、本件商標からは、「エスクリプト」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標
引用商標は、前記第2のとおり、「Scrypto」の欧文字を横書きした構成からなるところ、当該文字は既成の語として辞書等に載録されておらず、一般に親しまれた語でもないから、特定の観念を生じないものである。
そして、特定の意味を有しない欧文字は、一般に、我が国において親しまれたローマ字読みに倣って称呼されることから、「Scrypto」のつづりからなる引用商標からは、「スクリプト」の称呼を生じるものというのが相当である。
してみれば、引用商標からは、「スクリプト」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標とを比較するに、両者は、上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、外観においては、本件商標が、全て大文字からなるのに対し、引用商標は、語頭の「S」が大文字、続く文字が全て小文字で表されていることに加え、文字の太さ及び文字商標における外観の識別上重要な要素である語頭において「E」の文字の有無という差異を有している。
これらの差異が、両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく、両者は別異の語であるとの印象を強く与えるものであるから、外観上、判然と区別し得るものである。
次に、本件商標から生じる「エスクリプト」の称呼と引用商標から生じる「スクリプト」の称呼とを比較すると、称呼の識別上重要である語頭において、「エ」の音の差異を有するものであるから、両者をそれぞれ一連に称呼しても語調語感が異なり、相紛れるおそれはなく、明瞭に聴別可能なものと判断するのが相当である。
さらに、観念については、本件商標及び引用商標のいずれも特定の観念を生じないから、両者は、観念上、比較することができないものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができず、外観において判然と区別し得るものであり、称呼においても相紛れるおそれはないことが明らかなものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であるというのが相当である。
したがって、本件商標は、引用商標に類似しない商標である。
(4)本件商標の指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務の類否
申立人は、本件商標の第36類指定役務と引用商標の第38類指定役務とは、極めて密接な関連性を有しており、互いに類似する旨主張している。
しかしながら、本件商標の第36類の指定役務である「金融又は財務取引,金融又は財務の管理,金融又は財務に関する計画の立案,金融又は財務に関する調査・分析・情報の提供・助言及び指導,金融又は財務に関するコンサルティング,銀行業務,資金の貸付け,資金の調達,為替取引,両替,ウェブサイト経由による金融又は財務に関する情報の提供,暗号資産の交換,ブロックチェーン技術を介して提供される金融又は財務取引」は、いわゆる金融サービス関連の役務であり、他方、引用商標の第38類の指定役務である「Electronic transmission of data over a global communications network, including the internet, television and satellite networks; providing access via data networks to software; telecommunications.」は、電気通信サービス関連の役務であるところ、両者は、一般的には事業者が異なる場合が多いほか、取引の対象、形態、役務の提供場所、役務の目的等においても相違するものであるから、両者が類似する役務ということはできない。
したがって、申立人の上記主張は採用することができない。
その他、本件商標の指定役務と、引用商標の指定商品又は指定役務が類似するというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認められないものである。
そして、上記2(3)のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、両者の類似性の程度も低いものである。
また、上記2(4)のとおり、本件商標の指定役務と引用商標の第38類の指定役務は、一般的には事業者が異なる場合が多いほか、取引の対象、形態、役務の提供場所、役務の目的等においても相違するものであり、本件商標の指定役務と、引用商標のその他の指定商品又は指定役務についても類似するものとはいえないから、両者が関連性の高い商品又は役務ということはできない。
そうすると、本件商標は、これを本件商標権者がその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が申立人(他人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2023-06-13 
出願番号 2022020393 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W36)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 冨澤 武志
特許庁審判官 馬場 秀敏
小林 裕子
登録日 2022-09-12 
登録番号 6613436 
権利者 エンジェル マリノフ
商標の称呼 エスクリプト、エスクライプト 
代理人 今村 光広 
代理人 鈴木 礼至 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ