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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W43 |
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管理番号 | 1398576 |
総通号数 | 18 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2023-06-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-11-30 |
確定日 | 2023-05-31 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6619901号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6619901号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6619901号商標(以下「本件商標」という。)は、「Amy」の文字を横書きしてなり、令和4年3月22日に登録出願、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、同年8月23日に登録査定され、同年9月27日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する登録第5502232号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成24年1月10日に登録出願、第43類「コーヒーを主とする飲食物の提供,飲食物の提供」を含む、第30類及び第43類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年6月22日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきものである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第23号証を提出した。 1 商標法第4条第1項第11号について まず、本件商標と引用商標とを比較すると、本件商標はアルファベット三文字で記された「Amy」によって構成されている。一方、引用商標は、家の図形部分と文字部分の結合商標であって、文字部分として「AMI」、「アミ」及び「Ami」を含む商標によって構成されている。 次に、本件商標と引用商標との類否を考察するに際し、引用商標から「AMI」、「アミ」及び「Ami」の文字部分のみを抽出して類否判断を行うことが許されるかについて検討すると、裁判例によれば、引用商標のように図形部分と文字部分とを組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の文字部分を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが認められる場合もある。 実際に商標を構成する文字部分を抽出できるかどうかは、図形部分と文字部分とを明確に区別できるかどうか、それらの各部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているかどうかの程度が問題となる。 そこで、引用商標の構成を検討すると、引用商標は、全体として家の図形部分と、それ以外の文字部分とから構成されるところ、文字部分について着目すると、上から順番に、(a)「COFFEE SHOP」、(b)「珈琲専門店/アミ」(二段書き)、(c)「COFFEE AMI COFFEE」(AMIは白抜き表記)、(d)「珈琲専門店/アミ」(二段書き)、(e)「cafe’Ami」との文字部分を、商標を観察した取引者・需要者がそれぞれ認識することができる。 上記(a)及び(b)については、引用商標の家の図形の中に組み込まれているため、図形部分と文字部分とがそれぞれ明確に区別されているとはいえない。 しかし、上記(c)ないし(e)については、引用商標の家の図形とは分離して表記されているため、図形部分と文字部分とを明確に区別することができ、それらの各部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているともいえない。 そうとすれば、引用商標からは、(c)「COFFEE AMI COFFEE」(AMIは白抜き表記)、(d)「珈琲専門店/アミ」(二段書き)、(e)「cafe’Ami」との文字部分を抽出することができるといえる。 次に、引用商標の文字部分である上記(c)ないし(e)について検討すると、上記(c)における「COFFEE」の部分は、役務の提供の用に供するものであるコーヒーを示す表記にすぎない。加えて、AMIの文字部分は白抜き表記されていて、「COFFEE」の部分との一体性を欠く。 また、上記(d)における「珈琲専門店」の部分は、役務の提供の態様を示す表記にすぎない。 さらに、上記(e)における「cafe’」の部分は、広辞苑の記載(甲5)によれば、「カフェ【cafe’(仏語の意味)】(コーヒーの意)主としてコーヒーなどの飲み物を提供する店」と記載されていて、これも役務の提供の態様を示す表記にすぎない。 そうとすれば、上記(c)ないし(e)についての「COFFEE」の部分、「珈琲専門店」の部分及び「cafe’」のそれぞれの部分は、指定役務「飲食物の提供」との関係において、自他商品等を識別する機能が著しく低いということができる。 そうすると、引用商標の構成にあっては上記(c)ないし(e)についての「AMI」「アミ」及び「Ami」のそれぞれの部分が取引者、需要者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえる。 上記の考察を総合すると、引用商標からは、それぞれ「AMI」「アミ」及び「Ami」の文字部分を抽出することができる。 そこで次に、実際に、本件商標と、引用商標から抽出される「AMI」「アミ」及び「Ami」の文字部分とを、それぞれ対比検討する。 2 本件商標と引用商標から抽出される「AMI」の部分との対比 本件商標と引用商標から抽出される「AMI」の部分とにおいて、外観ではアルファベット三文字から形成される点で共通する。なお、観念については特に指摘できる共通部分はない。 一方、本件商標からは「アミー」又は「エーエムワイ」との称呼が生じ、引用商標から抽出される「AMI」の部分からは「アミ」又は「エーエムアイ」との称呼が生じる。 そこで、本件商標の称呼「アミー」と、引用商標から抽出される「AMI」の部分の称呼「アミ」とを対比すると、両者は最終の長音の有無の違いがあるものの、それ以外の相違点はない。 さらに、役務の需要者・取引者の立場を念頭におきつつ、実際に「アミー」を発音してみると、「アミー」の最終長音部分は消え入る様に発音されるため、明確に聞き取ることが非常に難しい。 また「アミ」の部分についても、「ミ」の子音には「ミィ」との「イ」の母音が隠れているため、「アミ」を実際に発音すると、「アミー」の最終長音部分と非常に近似している。 そうとすると、本件商標の称呼「アミー」と、引用商標の称呼「アミ」との間には、実質的な違いはなく、両者は同じであると評価できる。 また、本件商標の称呼「エーエムワイ」と、引用商標から抽出される「AMI」の部分の称呼「エーエムアイ」とを対比すると、両者は一音の「ワ」か「ア」かの違いがあるものの、それ以外の相違点はない。 ここで、実際に「エーエムワイ」と発音すると、「ワ」との発音の直前に、「ム」と口を結んでから「ワ」と発音される。このため「エーエムワイ」と一気一連に発音された場合、「ム」から「ワ」への移行時に「ワ」特有の発音が聞き取りにくく「ワ」なのか「ア」なのか渾然としていて判別が難しく、非常に紛らわしいといえる。 そうとすると、本件商標の称呼「エーエムワイ」と、引用商標の称呼「エーエムアイ」との間には、実質的な違いはなく、両者は同じであると評価できる。 よって、本件商標と引用商標から抽出される「AMI」の部分は、それぞれ称呼において相紛らわしく、互いに類似する商標であるといえる。 3 本件商標と引用商標から抽出される「アミ」の部分との対比 本件商標と引用商標から抽出される「アミ」の部分とにおいて、外観及び観念については特に指摘できる共通部分はない。 一方、本件商標からは、「アミー」との称呼が生じ、引用商標から抽出される「アミ」の部分からは、「アミ」との称呼が生じる。 そこで、本件商標の称呼「アミー」と、引用商標の称呼「アミ」とを対比すると、両者の間には、実質的な違いはなく、両者は同じであると評価できる。 よって、本件商標と引用商標から抽出される「アミ」の部分は、それぞれ称呼において相紛らわしく、互いに類似する商標であるといえる。 4 本件商標と引用商標から抽出される「Ami」の部分との対比 本件商標と引用商標から抽出される「Ami」の部分とにおいて、外観ではアルファベット三文字から形成される点、さらに最初は大文字のAで始まり、残る二つが小文字で表現されている点で共通する。なお、観念については特に指摘できる共通部分はない。 一方、本件商標からは、「アミー」または「エーエムワイ」との称呼が生じ、引用商標から抽出される「AMI」の部分からは、「アミ」又は「エーエムアイ」との称呼が生じる。 そこで、本件商標の称呼「アミー」と、引用商標から抽出される「AMI」の部分の称呼「アミ」とを対比すると、両者の間には、実質的な違いはなく、両者は同じであると評価できる。 また、本件商標の称呼「エーエムワイ」と、引用商標から抽出される「Ami」の部分の称呼「エーエムアイ」とを対比すると、両者の間には、実質的な違いはなく、両者は同じであると評価できる。 よって、本件商標と引用商標から抽出される「AMI」の部分は、それぞれ称呼において相紛らわしく、互いに類似する商標であるといえる。 5 本件商標と引用商標との称呼についての客観的検討 本件商標と、引用商標から抽出される「AMI」「アミ」及び「Ami」の文字部分とのそれぞれの称呼をどのように解釈するかについて、より客観的な判断材料があるので以下に検討する。 検索エンジンのgoogleを用いて、検索キーワード「Amy アミ」、「Amy アミー」、「AMI アミ」、「AMI アミー」、「Ami アミ」及び「Ami アミー」について検索した結果(甲6〜甲11)から、需要者・取引者視点から観たそれぞれの単語の読み方は、圧倒的に「アミ」との称呼との親和性が良いことが分かり、本件商標と、引用商標から抽出される「AMI」「アミ」及び「Ami」の文字部分の称呼が実質同じとの結論が強く支持される。 6 本件商標と引用商標との類似についての特許庁の判断事例 直近の特許庁の6件の判断事例(甲12〜甲23)によれば、これらの出願に係る商標は、全て、本件商標と類似するとして、商標法第4条第1項第11号の拒絶理由通知が発せられている。一貫して、本件商標と、出願商標「アミー」、「アミー(デザイン付き)」及び「AMI(デザイン付き)」が相互に同一又は類似する、と判断されている。 出願商標「AMI(デザイン付き)」からはアルファベットの構成から「アミ」との称呼を生じさせるのは明らかであり、この称呼が本件商標「Amy」、出願商標「アミー」及び出願商標「アミー(デザイン付き)」からそれぞれ出る称呼「アミー」と類似する、という判断である。この判断は、先に説明した申立人の説明を強く支持する内容である。 7 本件商標と引用商標との指定役務の対比 本件商標と引用商標との指定役務とは、それぞれ「飲食物の提供」を含むため、一致する。 8 本件商標と引用商標との出願日の対比 本件商標は、2022年3月22日に出願され、2022年9月27日に登録されたのに対し、引用商標は、2012年1月10日に出願され、2012年6月22日に登録されたものである。 9 結論 したがって、本件商標は、当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標に類似する商標であって、その商標登録に係る指定役務について使用をするものに該当し、商標法第4条第1項第11号に該当し、商標登録を受けることができないものである。 第4 当審の判断 1 本件商標について 本件商標は、「Amy」の文字を横書きしてなるところ、該文字は、「エイミー(女性名)」(ベーシックジーニアス英和辞典第2版 株式会社大修館書店)を意味する語であることから、本件商標は、その構成文字に相応して「エイミー」の称呼を生じ、「エイミー(女性名)」の観念を生じるものである。 2 引用商標について 引用商標は、別掲のとおり、内部にコーヒーミルを配し、左右及び上部に装飾を施した、家を模したとおぼしき図形(以下「図形部分」という。)を表し、図形部分の内部上方に白抜きで「COFFEE SHOP」、「珈琲専門店」及び「アミ」の文字、図形部分の下方には「COFFEE AMI COFFEE」、「珈琲専門店」、「アミ」、「Cafe」(「e」の右上には、アクサンテギュを表したとおぼしき点が付されている。以下同じ。)及び「Ami」の文字(以下、これらを合わせて「文字部分」という。)を表してなるところ、構成中の図形部分と文字部分とは、視覚上分離して把握されるものである。 また、構成中の図形部分は、直ちに特定の事物を表したものと認識されるものとはいえないことから、特定の称呼及び観念を生じないものである。 そして、構成中の文字部分についてみると、「COFFEE SHOP」及び「珈琲専門店」の文字は、いずれも「コーヒーを提供する店」程の意味合いを容易に理解させるものであり、また、「COFFEE」の文字は「コーヒー」の意味を、「Cafe」の文字は「喫茶店」(いずれもベーシックジーニアス英和辞典第2版 株式会社大修館書店)の意味を有する語であるところ、これらの文字は、引用商標の指定役務中「コーヒーを主とする飲食物の提供,飲食物の提供」との関係において、役務の一業態(役務の質)や、役務の提供の用に供する物を表すものといえるものであるから、これらは自他役務の識別標識としての機能を有しないか、極めて弱い部分とみるのが相当である。他方、構成中の「アミ」「AMI」「Ami」の各文字は、「友人」(クラウン仏和辞典第7版 株式会社三省堂)の意味を有するフランス語及びその読みを表したものといえるものの、我が国において一般に馴染みのある語とはいえないことから、当該文字に接する取引者、需要者が、直ちに特定の意味合いを理解するとはいい難く、特定の観念を認識させない一種の造語として理解されるというのが相当である。 そうすると、引用商標において、構成中の図形部分と文字部分は、視覚的に分離して観察されることに加え、観念的な関連性も見いだすことはできないから、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいい難く、さらに、文字部分については、上記のとおり、引用商標の指定役務中「コーヒーを主とする飲食物の提供,飲食物の提供」との関係においては、「COFFEE SHOP」「珈琲専門店」「COFFEE」「Cafe」の各文字部分が自他役務の識別標識としての機能を有しないか、極めて弱い部分といえるから、「アミ」「AMI」「Ami」の各文字部分が独立して出所識別機能を有する要部の一つとして機能し得るとみるのが相当である。 そして、欧文字からなる特定の観念を生じない造語にあっては、我が国において親しまれているローマ字読み又は英語の読みに倣って称呼するのが自然である。 したがって、引用商標は、その指定役務中「コーヒーを主とする飲食物の提供,飲食物の提供」との関係において、構成中の要部の一つである「アミ」、「AMI」及び「Ami」の文字に相応して「アミ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 3 本件商標と引用商標の類否について 本件商標と引用商標とは、全体の構成において外観上明らかに相違する。 また、本件商標「Amy」と、引用商標の要部である「アミ」「AMI」「Ami」の文字部分を比較しても、両者は欧文字と片仮名の差異、又は欧文字同士であっても末尾の「y」と「I(i)」のつづりにおける差異を有するものであるから、外観上相紛れるおそれはない。 そして、本件商標から生じる「エイミー」の称呼と、引用商標から生じる「アミ」の称呼を比較すると、両者は音数及び音構成において相違し、明確に聴別し得るものであるというべきであるから、両者は称呼において相紛れるおそれはない。 さらに、本件商標が「エイミー(女性名)」の観念を生じるのに対し、引用商標は、特定の観念を生じないものであるから、観念において相紛れるおそれはない。 よって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない、非類似の商標である。 その他、本件商標と引用商標とが類似するというべき特段の事情は見いだせない。 4 小括 以上のことから、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、本件商標の指定役務と、引用商標の指定商品及び指定役務中、第43類「コーヒーを主とする飲食物の提供,飲食物の提供」が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 5 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではないから、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものとはいえず、ほかに同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲(引用商標) (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
異議決定日 | 2023-05-18 |
出願番号 | 2022032124 |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Y
(W43)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
旦 克昌 |
特許庁審判官 |
小林 裕子 馬場 秀敏 |
登録日 | 2022-09-27 |
登録番号 | 6619901 |
権利者 | 瀬川 瑠二 |
商標の称呼 | アミー、エイミー、エーミー、エイエムワイ |
代理人 | 都築 健太郎 |
代理人 | 秋和 勝志 |
代理人 | 平野 泰弘 |