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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W43
管理番号 1398573 
総通号数 18 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-10-13 
確定日 2023-06-05 
異議申立件数
事件の表示 登録第6596577号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6596577号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6596577号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、平成30年3月1日に登録出願された商願2018−24376に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として、令和3年5月19日に登録出願、同4年6月23日付けで登録審決、同年8月4日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する商標は、以下のとおりの登録商標であり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
1 登録第6097581号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成30年2月7日
設定登録日:平成30年11月9日
指定役務:第43類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
2 登録第5650429号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「sacai」(標準文字)
登録出願日:平成25年7月19日
設定登録日:平成26年2月21日
指定商品:第14類、第18類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(なお、引用商標1と引用商標2をまとめていう場合は、「引用商標」という。)。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、その指定役務である「飲食物の提供」(以下「申立対象役務」という場合がある。)について、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第43号証(枝番号を含む。ただし、甲第37号証は欠番。)を提出した(表記にあたっては、枝番号を含めて「甲1」のように記載する。)。
1 引用商標の周知著名性について
申立人の代表者でありデザイナーでもある阿部千登勢氏(以下、単に「阿部氏」という。)は、平成11(1999)年に同氏の自宅の一室で「sacai」というブランドを立ち上げて以降、日本のみならず世界的にも周知著名性を有している。
平成21(2009)年には、阿部氏が、一般社団法人日本ファッション・エディターズ・クラブが主催する、ファッション界に貢献した人を称えるFEC賞を受賞し(甲4)、平成21(2009)年6月22日付け朝日新聞では、「欧米で高い評価を得ている日本ブランド、sacai(サカイ)のデザイナー、阿部千登勢」、「国内だけでなく、パリのコレットやロンドンのドーバーストリートマーケットなど、今では世界30か国120店の有力ショップや百貨店が彼女のブランドを扱う。」などと報じられた(甲5)。また、同年9月17日付け朝日新聞でも、「来春からダウンで有名なフランスの「モンクレール」の新ラインも手がける。」、「若手の日本人が欧米の人気ブランドのデザインを担当するのは異例のことだ。」などとの評価もされている(甲6)。
平成23(2011)年には、「sacai」は、パリでショー形式のコレクション(パリ・コレクション)を開始し、現在も最新コレクションを発表し続けている。同年10月10日付け雑誌「AERA」(朝日新聞出版)の記事においては、「sacai(サカイ)」の服が、ファストファッション一色に染まるアパレル業界の中で、異例の快進撃を続けている。流行の発信地、パリでは3指に入る旬のデザイナーと目され、アジア市場からも出店の打診が引きもきらない。」、「日本で最も有力なファッションフロアを持つ伊勢丹新宿店は、2006年にサカイの導入を決めている。昨夏はメインフロアである1階のステージ、今夏はハイファッションを扱う4階のエスカレーター前という、店舗内の一等地でフェアを組み、いずれも通常の2倍近くの売り上げを達成した。」と報じられ、国内外において、高い人気・売上げを誇っていることがうかがえる(甲7)。
平成27(2015)年には、阿部氏が、毎日ファッション大賞において、二度目となる大賞を受賞しているところ、過去の複数回受賞者は、国内ファッションデザイナーの中でも最も著名な部類に入る4名のみであり、高い評価・人気を有するに至ったといえる(甲9)。また、同年以降、「NIKE」他の有名ブランドとのコラボレーションも次々と発表して話題を呼んだ(甲10、甲11)。特に「NIKE」とのコラボレーションについては、新作が発表される度に大きな注目を集め、発売予定日には「sacai」がTwitter(ツィッター)で短期間に数多くツイートされ、同サービスの「トレンド」として表示される「トレンド入り」を複数回果たしている(甲12)。また、「sacai」と「NIKE」のコラボレーションテニスウェアを女子プロテニス選手である大坂なおみ選手が平成27(2019)年の全米オープンで着用すること等も多数のメディアで取り上げられるなどして話題を集めた(甲10、甲13)。
「sacai」のコレクションは、令和2(2020)年10月時点において、日本を含む世界40か国、260以上の店舗で展開されるに至っている(甲10)。そして、女子プロテニス選手の他、ハリウッドセレブや、日本の芸能人等の多くの著名人によって「sacai」の服が着用されるなどした結果、「sacai」は、一般消費者の間でも人気・知名度を獲得し、その人気・知名度は益々高まってきていることは明らかである(甲10)。また、令和3(2021)年5月時点においても国際的な日本人デザイナーブランドの中で、「コム・デ・ギャルソン」に次ぐ2番目に多いフォロワー数を有していたことは、「sacai」の人気・知名度の高さを端的に示すものである(甲15)。
以上のとおり、申立人のブランドである「sacai」は日本を代表する超一流ファッションブランドとして知られ、引用商標は、申立人を表す商標として、日本を含む世界中で、平成11(1999)年から現在に至るまで、継続的に使用されている。
したがって、引用商標は、本件商標出願の先願権発生日(平成30(2018)年3月1日)及び登録審決時(令和4(2022)年7月5日)(審決注:登録審決日は「令和4(2022)年6月23日」の誤記と認める。)のいずれの時点においても、世界的に広く知られた周知著名商標であったことは明らかである。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)商標の類否について
本件商標は、別掲1のとおり、その構成中の「Sacai」の文字部分と「Cafe」の文字部分を上下二段に配した態様からなる商標であり、両者が視覚的に分断して看取されるものである。
このうち「Sacai」の文字は、一般には特定の観念を生じない造語であるが、申立人のブランドを表すものとして世界的に広く知られ周知著名性を獲得している引用商標「sacai」と商標を構成するアルファベットの文字が同一である。
これに対し、「Cafe」の文字は、「主としてコーヒーなどの飲み物を供する店。」との意味を有する語(出典:株式会社岩波書店 広辞苑 第七版)として一般に定着している業態名であって、本件商標の指定役務との関係では役務を提供する場所、あるいは提供する役務の質(業種)を示すものとして一般的な語である。したがって、当該部分は、自他役務の識別力がないか又は極めて弱いものであり、そこに出所識別機能としての称呼、観念は生じない。
このため、本件商標は、「Cafe」と「Sacai」の語からなる結合商標として認識されるものであるが、「Cafe」が一般的な成語であるのに対し、「Sacai」が造語であり、かつ、日本に多数存在する喫茶店の別名として定着している「カフェ」を特定ないし識別する部分に当たるため、「Cafe」と「Sacai」の語の間に出所識別標識としての機能(識別力)に大きな軽重の差がある。そして、この差は、引用商標が獲得した周知著名性によってさらに大きなものとなるから、本件商標は「Sacai」を要部とする商標であると強く認識されるものである。
そうすると、本件商標のうち、その構成中の「Sacai」の文字部分を要部として抽出して引用商標1との類否を判断するのが相当である。
そして、商標審査基準は、結合商標の類否の判断において、「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。」と定めているところに照らせば、本件商標は、申立人の周知著名性を獲得した引用商標と実質的に同一である「Sacai」と一般的な語である「Cafe」が結合した商標であり、「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標」であることが合理的に導き出される。
したがって、本件商標は、「Sacai」の文字部分を要部とする商標であり、当該要部と引用商標1を対比すると、各々、アルファベット文字がロゴ化されているか否か、別段に同一のアルファベットの文字から成る語を有するか否かという差異はあるものの、いずれも同一のつづりからなる語のみによって構成されることから、外観において近似した印象を与えるものである。また、「サカイ」の称呼及び周知著名な申立人のブランドとしての「sacai」の観念を共通にするものであるから、これらを総合してみれば、両者は、互いに相紛らわしい類似の商標と認められる。以上より、本件商標は、引用商標1に類似する。
(2)本件商標の指定役務と引用商標1の指定役務の類否について
本件商標の指定役務である「飲食物の提供」と、引用商標1の指定役務中の「飲食物の提供」とは、同一又は類似の役務である。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標2の周知著名性及び独創性の程度
申立人のブランドである「sacai」について、通常、「サカイ」の文字を欧文字表記で記載する場合、「sakai」と記載されるにもかかわらず、あえて引用商標2のように「sacai」と表記することによって通常の表記との違いを際立たせている。また、「sacai」という既成語は存在しないから、明らかに造語である。
したがって、引用商標2は、高い独創性を有するものである。
(2)本件商標と引用商標2の類似性の程度
本件商標の要部は「Sacai」の文字部分であるところ、本件商標と引用商標2とは、各々、アルファベット文字の構成文字のうち頭文字が大文字か小文字か、アルファベット文字がロゴ化されているか否かという僅かな差異はあるものの、いずれも同一のつづりから成ることから、外観において共通し、また、「サカイ」の称呼及び周知著名な申立人のブランドとしての「sacai」の観念を共通にするものであるから、これらを総合してみれば、両者は、互いに相紛らわしい類似の商標と認められる。
したがって、本件商標は、引用商標2との類似性が極めて高いものである。
(3)本件商標の指定役務と申立人の業務に係る商品及び役務等との関連性の程度、取引者・需要者の共通性等
引用商標2は、ファッションブランドとして周知著名性を獲得したのに対し、本件商標の指定役務は「飲食物の提供」である。ファッションブランドは、「飲食物の提供」それ自体とは、一般には、商品や役務として互いに類似しないものとされているが、いずれの需要者も、年齢、性別、職種等を問わず、あらゆる分野の広汎な一般消費者である点で共通する。
また、今日の企業径営において多角化・グループ化が行われる傾向が顕著であり、ファッションブランドについては、近年、カフェをはじめとする飲食店を出店する例が無数に存在する(甲21、甲22)。これにとどまらず、ファッションブランドの店舗にカフェを併設する例(甲23、甲24)やカフェでアパレル製品や雑貨を販売する例(甲25)、ファッションブランドのレセプションパーティー等のイベントの開催時に飲食物を提供する例(甲26)も多数見受けられる。実際、申立人のブランドである「sacai」でも、平成29(2017)年9月、パリの一流セレクトショップ「コレット(colette)」において、「庭」を意味する「Jardin」を冠した「Jardinsacai」とのポップアップストアをオープンさせるとともに、その店内にカフェもオープンさせ、同カフェにおいて、世界中から集めた最高級のコーヒー豆を最適な焙煎で提供する「TORIBACOFFEE」、16世紀はじめに創設された伝統的な菓子屋である「虎屋」、デザイン性・機能性に優れた家電製品等を製造・販売する電機メーカー「BALMUDA」の協力の下で限定メニューを提供するなどして話題を呼び、かかる催しに関する記事は多数の媒体で取り上げられて日本に向けて配信されている(甲27)。
このようなファションブランドによる飲食業界への進出は、昨今の新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響によって、多くのファッションブランドがライフスタイル産業に再編されている状況から、今後、ますます加速することが予見されている(甲28)。
したがって、本件商標に係る指定役務と、申立人が提供するファッションブランドに係る商品・役務とが、密接な関連を有することは明らかである。
そして、「sacai」の周知著名性に鑑みれば、本件商標の指定役務である「飲食物の提供」の需要者である一般消費者の多くにおいて、申立人のファッションブランドである「sacai」の存在はもとより、「sacai」が日本を代表する超一流ブランドであり、多種多様な有名ブランドと多数のコラボレーションを行っている等の実情も知られていること等に加え、「飲食物の提供」の需要者が一般消費者であり、取引の際に普通に払われる注意力は高いとはいえないことからすれば、本件商標に接した需要者は、周知著名な「sacai」を想起連想して、本件商標に係る指定役務である「飲食物の提供」が申立人及びその関係会社の業務に係る役務ではないかと誤認して取引にあたるであろうことは容易に想像される。
以上のとおり、本件商標に係る指定役務は、引用商標2が周知著名性を獲得したファッションブランドに係る商品・役務の提供とは、具体的な取引の実情に照らして密接な関連性を有し、本件商標と引用商標の取引者・需要者の共通性も極めて高いものである。
(4)その他の取引の実情
本件商標権者は、平成26(2014)年11月に「Cafe Sacai」の屋号でカフェ(以下「本件カフェ」という。)を開業し、現在もその営業を継続している。本件カフェの屋号に「Sacai」との語を用いているが、「Sacai」が造語であり、かつ、「sacai」が日本を代表するブランドとして知られていたことからすれば、「Sacai」の語が申立人あるいは申立人のブランドの存在を認識せずに採択されたものとは考え難い。通常、店舗名を検討・決定するにあたっては、インターネットの検索エンジンで調査するはずであるところ、例えば、本件カフェの開業約6か月前の期間(平成26(2014)年6月1日〜同年11月11日)を指定して「Sacai」との語を検索すると、検索結果の一番上位に申立人が運営するウェブサイトが表示されることからすれば、本件商標権者が「Sacai」との名称を採択した時点で申立人の存在を認識していたことは明らかである(甲28)。
その後、申立人は、平成30(2018)年1月頃、本件商標権者が本件カフェを営んでいることを発見したため、同年2月5日、不正競争防止法上の不正競争行為に該当する可能性が高いことを理由に、上記屋号の使用中止やドメイン名の変更等を要求する通知書を送付し(甲29)、これを契機として、申立人と本件商標権者との間で上記屋号の変更等に関する交渉が行われるようになった。ところが、当該交渉を行っていた同年3月1日、本件商標権者は、本件商標に係る商標について第30類及び第43類の商品を指定商品とする商標出願(商願2018−24376。以下「親出願」という。)を行い、その後、令和3(2021)年5月19日に、親出願の分割出願として本件商標を出願した。
以上の経緯や本件商標権者が複数のカフェ経営を行っていること(甲30)に鑑みれば、本件商標権者は、親出願を出願した遅くとも平成30(2018)年3月1日時点で申立人の存在のみならず、申立人のファッションプランド「sacai」が周知著名であり、また、近年、多くのファッションブランドがカフェ等を出店している等、ファッションブランドに係る商品・役務の提供と飲食物の提供との間に密接な関連性がある実情を確実に知っていたはずである。実際、本件商標権者が運営するカフェの一つにおいても、2019年6月に雑貨等のセレクトショップの併設を始めている(甲31)。
このように、本件商標権者が、「Cafe Sacai」との屋号の下、本件カフェの運営を行い、本件商標を出願しているのは、申立人の存在を知り、その業務に使用されている引用商標が高い著名性を有すること及び引用商標が高い顧客吸引力を有することを確知し、かかる顧客吸引力にただ乗り(いわゆるフリーライド)し、その出所表示機能を希釈化(いわゆるダイリューション)させる意図を有していたからにほかならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するから、取り消されるべきである。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標権者は、親出願を行った平成30(2018)年3月1日より前である同年2月5日に申立人から通知を受け、少なくともその時点において、申立人のブランド「sacai」についての周知性や、申立人が「CafeSacai」の屋号の使用停止・変更等を要求していることを認識しながら、申立人との交渉における自己の立場を有利にするため、あるいは対抗手段を確保するためなどの目的で親出願に及び、しかも、その審査過程において、存在しない交渉の事実を告げるなど、事実と明らかに異なる意見書を提出し、かかる交渉を理由に審査を引き伸ばす行為を繰り返し、そのような行為の経緯については何ら回答しない姿勢を続けているものであって、親出願及び本件出願は信義則に反する不正の目的をもってなされた出願であることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものであるから、取り消されるべきである。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標権者は、存在しない交渉の事実を告げるなど、客観的事実と異なる意見書を提出しており、出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、取り消されるべきである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
(1)申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、次のとおりである。
ア 「sacai」は、申立人の代表者でありデザイナーでもある阿部千登勢氏(以下「阿部氏」という。)が、平成11年(1999年)に立ち上げたファッションブランド(以下「申立人ブランド」という。)であり、現在も継続的に使用されている(申立人主張)。
イ 平成23年(2011年)には、申立人ブランドは、パリでショー形式のコレクション(パリ・コレクション)を開始し、現在も最新コレクションを発表し続けている(甲8、甲9)。
ウ 平成27年(2015年)には、阿部氏が、毎日ファッション大賞において、二度目となる大賞を受賞している(甲9)。
エ 申立人ブランドは、女子プロテニス選手である大坂なおみ選手が平成27年(2019年)の全米オープンで着用したことも話題を集め(申立人主張)、その他、ハリウッドの著名人や日本の芸能人等によって着用されたとされる(甲10、申立人主張)。
オ 申立人ブランドは、他社ブランド「NIKE」等とのコラボレーション企画なども行っている(甲10〜12)。
カ 2021年5月時点での日本人デザイナーズブランドのInstagram(インスタグラム)のフォロワー数による、純粋な日本ブランドで絞ったランキングでは、「コム・デ・ギャルソン」に次ぐ2位であることがうかがえる(甲15)。
キ 申立人ブランドのコレクションは、令和2年(2020年)10月時点において、日本を含む世界40か国、260以上の店舗で展開されているとされる(甲10、申立人主張)。
しかしながら、提出された証拠からは、我が国又は外国における引用商標を使用した申立人商品の売上高、市場シェアなどの具体的な販売実績並びに広告宣伝費などについては、その事実を具体的に把握することができる証拠は提出されていない。
(2)上記(1)のとおり、申立人ブランドは、平成11年(1999年)に申立人の代表者である阿部氏が立ち上げたファッションブランドであり、現在も継続的に使用されており、また、その取り扱う商品は、主に洋服等のファッション関連商品(以下「申立人商品」という。)である。
また、平成23年(2011年)には、パリでショー形式のコレクション(パリ・コレクション)を開始し、現在も発表し続けている。また、ファッションに携わる人々の優れた業績を称える賞の受賞や、申立人ブランドを有名人が着用したこと等で話題を呼び、メディアに多く取りあげられるようになり、インターネット上のデザイナーズブランドのランキングでは、高い人気を集めていることがうかがえる。
しかしながら、上記のとおり、申立人商品の販売実績等の客観的な証拠を確認することができない。
そうすると、申立人商品に使用される引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、ファッション関連の需要者の間では、相当程度知られているといい得るとしても、申立対象役務に至るまで需要者に広く認識されていると認めることはできない。
2 本件商標と引用商標の類似性について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1に記載のとおり、手書き風の特徴ある書体で「Cafe」及び「Sacai」の文字を上下二段に書してなるものであり、その構成は、同じ書体、大きさ及び文字種を用いて、各段の中心及び横幅をほぼ揃え、外観上まとまりよく一体に表されており、本件商標全体から生じる「カフェサカイ」の称呼も冗長ではなく、無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標は、上記構成及び称呼からすれば、これに接する取引者、需要者は、あえて上段部分を捨象して、下段の「Sacai」の文字部分に着目するというよりは、むしろその全体を一体不可分のものとして認識し、把握するとみるのが相当である。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応し、「カフェサカイ」の称呼を生じるものであり、当該文字は、辞書等に載録されている成語ではなく、ただちに何らかの意味合いを理解させるものではないから、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標1は、別掲2に記載のとおり、「sacai」、「SACAI」及び「Sacai」の欧文字を三段に書してなり、また、引用商標2は、「sacai」の欧文字を書してなり、いずれも、その構成文字に相応し、「サカイ」の称呼を生じるものである。
また、上記の各文字は、辞書等に載録されている成語ではないものの、上記1(2)のとおり、ファッション関連商品について使用する商標として、取引者、需要者間に相当程度知られているものであるから、申立人のファッションブランドの観念を生じる余地がある。
よって、引用商標は、「サカイ」の称呼及び申立人のファッションブランドの観念を生じる余地がある。
(3)本件商標と引用商標の類似性について
ア 本件商標と引用商標1の類似性について
(ア)外観について
本件商標は、手書き風の特徴ある書体で「Cafe」及び「Sacai」の文字を上下二段に書してなるものであり、他方、引用商標1は、「sacai」、「SACAI」及び「Sacai」の欧文字を三段に書してなるものであるから、係る構成態様から、全体として、明らかに異なる印象を受けるものである。
そうすると、本件商標と引用商標1とは、外観上、相紛れることのない、別異のものとして認識し、把握されるというべきである。
(イ)称呼について
本件商標から生じる「カフェサカイ」の称呼と引用商標1から生じる「サカイ」の称呼とは、「カフェ」の音の有無により、明瞭に聴別できることから、全体の語調語感は相違したものとなり、互いに紛れるおそれはない。
(ウ)観念について
本件商標は、特定の観念を生じないものであり、引用商標1は、申立人のファッションブランドの観念を生じる余地があるから、本件商標と引用商標とは、観念において相紛れるおそれはない。
イ 本件商標と引用商標2の類似性について
(ア)外観について
本件商標は、手書き風の特徴ある書体で「Cafe」及び「Sacai」の欧文字を上下二段に書してなるものであり、他方、引用商標2は、「sacai」の欧文字を書してなるものであるから、係る構成態様から、全体として、明らかに異なる印象を受けるものである。
そうすると、本件商標と引用商標2とは、外観上、相紛れることのない、別異のものとして認識し、把握されるというべきである。
(イ)称呼について
本件商標から生じる「カフェサカイ」の称呼と引用商標2から生じる「サカイ」の称呼とは、「カフェ」の音の有無により、明瞭に聴別できることから、全体の語調語感は相違したものとなり、互いに紛れるおそれはない。
(ウ)観念について
本件商標は、特定の観念を生じないものであり、引用商標2は、申立人のファッションブランドの観念を生じる余地があるから、本件商標と引用商標とは、観念において相紛れるおそれはない。
ウ 小括
以上から、本件商標と引用商標とは、外観及び称呼において相違し、観念において相紛れるおそれはないものであるから、これらを総合して判断すれば、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
その他、本件商標と引用商標とが類似するというべき特段の事情は見いだせない。
したがって、本件商標と引用商標とは非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
(4)引用商標の独創性について
引用商標を構成する「sacai」の文字は、辞書等に掲載のない造語であると認められることから、引用商標の独創性の程度は、高いものといえる。
(5)本件商標の指定役務と申立人商品の関連性、需要者の共通性等について
本件商標の指定役務と申立人商品とは、業種や事業形態が大きく異なるものであり、また、商品の販売又は役務の提供の目的、内容及び手段等が明確に異なるものであり、また、需要者においても、需要者の求める商品又は役務の性質や目的が明確に異なるものであるから、その関連性の程度は低く、需要者の共通性の程度も低いものである。
3 商標法第4条第1項第11号について
上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標1とは非類似の商標であるから、本件商標の指定役務と引用商標1の指定役務が類似するとしても、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
4 商標法第4条第1項第15号について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、ファッションブランド名を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間において、相当程度知られているといい得るものであるとしても、上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であり、別異の商標というべきであり、また、上記2(5)のとおり、本件商標の指定役務と申立人の業務に係る商品の関連性、需要者の共通性等の程度も低いものである。
そうすると、たとえ、本件商標が独創性の高い造語からなるものであるとしても、本件商標をその指定役務に使用しても、需要者において、申立人の取り扱う商品を連想、想起するということはできず、よって、その商品及び役務が申立人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品及び役務であるかのように、商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれがある商標とはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号及び同項第7号該当性について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申申立人商品を表示するものとして、ファッション関連の需要者の間においては、相当程度知られているといい得るものであるとしても、上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であり、また、上記2(5)のとおり、本件商標の指定役務と申立人商品の関連性、需要者の共通性の程度が低いことも合わせ考慮すると、本件商標をその指定役務に使用しても、需要者において、申立人の取り扱う商品及び役務を連想、想起するということはできないものである。
そうすると、本件商標は、申立人のファッションブランドの知名度や名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
また、本件商標が、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべき事情は見いだせず、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号及び同項第7号のいずれにも該当するものではない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反して登録されたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標1)


(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2023-05-23 
出願番号 2021060726 
審決分類 T 1 651・ 26- Y (W43)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 旦 克昌
特許庁審判官 大橋 良成
馬場 秀敏
登録日 2022-08-04 
登録番号 6596577 
権利者 パブリック・スペース株式会社
商標の称呼 カフェサカイ、サカイ 
代理人 太田 知成 
代理人 関川 淳子 
代理人 村瀬 純一 
代理人 渡邉 泰帥 
代理人 山本 鋼 
代理人 廣中 健 

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