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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W2528
管理番号 1397342 
総通号数 17 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-06-03 
確定日 2023-03-09 
異議申立件数
事件の表示 登録第6543181号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6543181号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6543181号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和3年8月19日に登録出願、第25類「被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第28類「ゴルフ用具」を指定商品として、同4年3月31日に登録査定、同年4月11日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)申立人について
申立人は、2017年9月1日から大阪市西区南堀江において「クラブハウス」の屋号にて、ゴルフショップを開店しており、2021年2月14日に「大阪市西区靱本町」へ移転し、現在に至るまで、各種商品を販売し、同時にオンラインショップも開設している。
さらに、申立人は、2019年3月に「BEAMS GOLF NAMBA PARKS」に商品の出品をしており、該店舗にて商品を販売している(甲8〜甲12)。そして、申立人の代表取締役、申立人が事業をしている店舗(クラブハウス)、申立人の未登録商標(甲2)は、ゴルフ雑誌及びWEBマガジンに紹介されている(甲13〜甲15)。
上記店舗等における1年間の売上高は、「スウェット、ポロシャツ、パンツ」に関し、約2500万円ほどであり、その他の商品を含むとそれ以上である。
また、申立人は、2017年からインスタグラムなどにおいて、店舗や商品の宣伝やゴルフイベント等の情報の提供を行っている。
申立人の店舗及び取り扱う商品は、度々雑誌に掲載され、話題になっている。
(2)申立人標章
申立人は、ハリネズミをデザイン的に描いた美術の著作物(以下「デザイン画」という。)の著作者から、少なくとも2018年3月3日に複製の承諾を得て(甲6、甲7)、デザイン画からなる標章(甲2 以下「申立人標章1」という。)及びデザイン画と「Clubhouse」の文字の組合せからなる結合標章(甲3 以下「申立人標章2」といい、申立人標章1と申立人標章2をまとめて「申立人標章」という。)を、ワンポイントマークとして、ゴルフウェア、つばのある帽子、ゴルフボール等の商品に付して、2018年8月26日から販売を開始し、現在まで継続的に使用している(甲1、甲8〜甲15)。
なお、デザイン画の原画は、著作者が保有しており、申立人は、原画のコピーを2018年3月3日に通信網で取得し、以後、申立人標章を前記商品に継続的に使用していることから、日本国内の少なくとも一地域での周知性は認められるべきものである。
(3)申立人と商標権者との関係
商標権者は、2021年7月1日にメールを介して申立人にアクセスしてきた。その際、自己紹介をし、ゴルファー歴が35年近くになること、アマチュアゴルファーを指導していること等を述べ、一度、申立人の意見を聞きたい旨を伝えてきた(甲16)。
その後、申立人は、商標権者に対して相談内容が不明である旨の返信をした(甲17)。その返信後、商標権者は、商品を販売させてほしい旨の申入れをしてきた(甲18)。
申立人は、商標権者からの申入れに対し「当店のオリジナルアパレルに関しては、卸売りを行っていない」と断った(甲19)。その後、申立人は商標権者から「卸売りをされていないのは残念です」との返信を受け取った(甲20)。なお、商標権者は、申立人標章を付した商品を、申立人から複数回にわたって購入した。
商標権者は、著作者からデザイン画の図形を商品化する許諾を得ている申立人が、申立人標章を商品に付して販売していることを知っていながら、本件商標を著作者から許諾を得ることなく、無断で登録出願した。さらに、2021年7月1日に連絡があり、同月10日のメールにて当該商標を含む商品の取引の申込みがあった。
その後、本件商標の登録出願の事実を知った申立人は、2021年12月20日に特許庁に刊行物を提出し、この後、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の拒絶理由通知を受けたものの、最終的に登録査定になったものである。
(4)商標法第4条第1項第7号について
上記のとおり、2021年7月10日、商標権者は、申立人に本件商標を使用したい旨の取引の申込みをしたが、同月15日に申立人は該契約の申込みを断った。
そして、商標権者は、申立人標章を付した商品を、申立人から複数回にわたって購入した。
また、申立人の店舗がある地域において、申立人の販売するゴルフウエア、ゴルフボール等に関して、申立人標章が商品商標として出所表示機能を発揮し、本件商標の登録査定時には、少なくとも日本国内の一地域において、営業を継続している事実を、商標権者は認識していたはずである。
さらに、令和3年12月20日付け刊行物等提出書があった場合において、その旨が通知され、これにより、商標権者は、刊行物の内容を知り得る状態となる。
しかして、例えば申立人が、著作者からデザイン画の図形を商品化する許諾を得ているにもかかわらず、商標登録出願をせず、一方、申立人標章1が前記著作者の著作物であるところ、本件商標が申立人標章1と偶然一致したこと、申立人標章1と全く同一の本件商標を商標権者が創作したとも認め難いこと、商標権者は、申立人標章1の使用許諾の打診を申立人に対してきたこと、この契約の申出に対して申立人は断ったこと等を考慮すると、商標権者が単独で、しかも、個人名義で商標登録出願したという事実は、客観的に誰が考えても、「商標権者は、申立人が本件商標の登録申請をしていないことを奇貨として、何らかの不正の目的で商標登録出願をしたもの」と推認することができる。
以上の事実や状況を考慮すると、仮に、将来、商標権者が本件商標権の権利行使をしたならば、それは申立人の商売に対して「嫌がらせ行為」以外何物でもないことになる。そうすると、本件商標の出願の経緯は、取引上競業関係を有しない者の図利目的・加害目的による出願、いわゆる他人が創作した美術の著作物であって、申立人が該美術の著作物を譲り受けて商品化し、現行法の下では商品商標と認められる図形を剽窃出願したものであり、登録後に害悪性を十分に推測することができるので、商標法第1条の制度趣旨に照らして社会的妥当性を著しく欠き、本件商標の登録は、公序良俗に反するものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

3 当審の判断
(1)申立人の提出に係る証拠及び申立人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 申立人及び申立人標章(色彩が付されたものも含む。以下同じ。)について
申立人は、2017年9月から大阪市内において、「クラブハウス」の屋号にてゴルフショップを開店している(甲4)。
そして、申立人標章1と同視し得るデザイン画は、申立人が著作者に制作を依頼し、2018年3月3日に申立人へ納品されたものであり、また、該デザイン画の著作権が、著作者から申立人の代表取締役に譲渡されたものである(甲6、甲7)。
本件商標の登録出願前のインスタグラムにおいて、「clubhaus.jp」により、申立人標章1が付されたゴルフボール、ポロシャツや帽子が紹介されている(甲12)。
また、ゴルフ雑誌「ALBA」(平成30年(2018年)10月25日発行:甲13)、及び「EVEN」(2021年1月号:甲14)には、「CLUBHOUSE」(「CLUB HAUS」)又は「クラブハウス」の取扱いに係る、申立人標章1が付されたポロシャツやスウェットシャツが紹介されている。
以上からすると、申立人標章1と同視し得るデザイン画の著作権が申立人に譲渡されたこと、及び、申立人標章1は、本件商標の登録出願前から、申立人の業務に係る商品に付して使用されていることがうかがえる。
なお、申立人が、申立人標章2を使用した事実は見いだせない。
イ 申立人と商標権者との関係
商標権者は、2021年7月1日にメールを介して申立人にアクセスしてきた(甲16)が、申立人は、商標権者に対して相談内容が不明である旨の返信をした(甲17)。
その返信後、商標権者は、2021年7月10日に、商品を販売させてほしい旨の申し入れをしてきた(甲18)。申立人は、その申し入れに対し「当店のオリジナルアパレルに関しては、卸売りを行っていない」と断った(甲19)。その後、申立人は商標権者から「卸売りをされていないのは残念です」との返信を受け取った(甲20)。
なお、申立人は、商標権者が、当該メールのやりとりの前後に、申立人標章1が付された商品を複数回購入した旨を陳述している(甲4)。
そして、その後、商標権者は、令和3年(2021年)8月19日に、本件商標を登録出願している。
そうすると、商標権者は、本件商標の登録出願前から、申立人が申立人標章1を商品に付していたことを知っていた可能性があるといえる。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、別掲1のとおり、ハリネズミをモチーフにした図形からなり、一方、申立人標章1も、別掲2のとおり、本件商標と同一の構成からなるものであるから、両者は同一又は類似のものというべきである。
そして、商標権者は、上記(1)イのとおり、本件商標の登録出願前から、申立人が申立人標章1を商品に付していたことを知っていた可能性があり、また、本件商標は、申立人標章1と同一又は類似のものであるから、本件商標の登録出願の経緯としては、やや不自然な点があるといい得る。
しかしながら、これらのことをもって直ちに、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあると断定することはできないし、申立人の提出した証拠から、商標権者が申立人に対し、嫌がらせや妨害を行っている等の事情は見いだせず、具体的に商標権者が申立人の事業を妨害し不正の目的があることを裏付ける証拠は見いだすことができない。
また、申立人の主張によれば、申立人は、2018年(平成30年)8月26日から申立人標章を帽子やゴルフボール等の商品に付して販売を開始したのであって、商標権者による本件商標の登録出願までのおよそ3年もの間、申立人は、申立人標章を登録出願しない特段の事情は何ら認められないものであるから、申立人は、申立人標章の使用開始に当たって、その標章を自ら登録出願する機会は十分にあったというべきであって、自ら登録出願しなかった責めを商標権者に求めるべき事情を見いだすこともできない。
以上のことからすると、本件商標について、商標法の先願登録主義を上回るような、その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあるとはいえないし、また、申立人と商標権者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は、当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから、公の秩序又は善良の風俗を害するような事情があるということはできない。
そして、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないこと明らかであり、又は社会の一般的道徳観念に反するなど、公序良俗に反するものというべき証左も見あたらない。
さらに、本件商標は、他の法律によって、その商標の使用等が禁止されているものではないし、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。
してみると、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標に該当するとまではいえないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1 本件商標(色彩については原本を参照。)


別掲2 申立人標章1(甲2)


別掲3 申立人標章2(甲3)


(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2023-03-01 
出願番号 2021108912 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W2528)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 小林 裕子
鈴木 雅也
登録日 2022-04-11 
登録番号 6543181 
権利者 高田 佳治
代理人 三浦 光康 
代理人 皆川 由佳 
代理人 特許業務法人アローレインターナショナル 

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