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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W18
管理番号 1397336 
総通号数 17 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-05-25 
確定日 2023-03-31 
異議申立件数
事件の表示 登録第6532434号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6532434号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6532434号商標(以下「本件商標」という。)は、「The Ants: Underground Kingdom」の文字を横書きしたものであり、令和3年7月22日に登録出願、同4年3月16日に登録査定され、第18類「汎用スポーツバッグ,動物用被服,バックパック,愛玩動物運搬用かばん,デイパック(日帰りハイキング用などの小型ナップサック),犬用被服,ダッフルバッグ,人工毛皮,旅行かばん,ペット用被服,財布,通学用かばん,肩掛けかばん,化粧品用バッグ(空のもの),傘」を指定商品として、同月23日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標(以下をまとめて「引用商標」という場合がある。)は、「The Ants: Underground Kingdom」の文字からなる標章(以下「引用商標1」という。)及び「ザ・アンツ:アンダーグラウンドキングダム」(以下「引用商標2」という。)の文字からなる標章であって、申立人が「ダウンロード可能なスマートフォン用コンピュータゲームプログラム」について使用すると主張するものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第3号証を提出した。
(1)ア 申立人及び申立人の使用する引用商標について
申立人のうち、中華人民共和国所在の申立人(以下「申立人1」という。)は、2019年5月に設立されたものである(甲2)。2021年6月に「The Ants: Underground Kingdom」を世界リリースしている。
イ 本件商標と引用商標の同一性及び類似性について
本件商標は、引用商標1と外観、称呼及び観念において一致するから、両者は同一の商標である。
また、本件商標は、引用商標1の片仮名表音表記である引用商標2と称呼、親念において一致し、アルファベットと片仮名の違いのみであって、外観上において顕著に比較する要素は存在しないため、両者は類似の商標である。
引用商標は、スマートフォン用のゲームアプリのゲーム名に使用されており、「ダウンロード可能なスマートフォン用コンピュータゲームプログラム」について使用されており、本件商標とは非類似の商品について使用されている。
以上を総合して考察すると、本件商標と使用商標とは、同一又は類似の商標であり、かつ、非類似の商品に使用されている。
不正の目的について
(ア)本件商標権者について
本件商標権者は、日本で著名なインターネット検索サイトによる検索では、具体的な情報が得られず、日本国内において具体的な営業活動を行っている可能性が極めて低い。また、本件商標権者は中国香港に住所のある企業であるが、中国で著名なインターネット検索サイトによる検索においても、ホームページが存在せず、具体的な情報が得られない。このことから、日本、中国本土及び香港において営業実績のない会社である可能性が極めて高い。
また、後述する悪意の可能性を考慮すると、日本で著名な商標を先取り的に日本で登録し他人への譲渡、あるいはライセンスにより利益を得ようとする、いわゆる悪意による登録である可能性が極めて高い。
(イ)本件商標権者の悪意性について
a ここで、悪意であることを証明するために、本件商標権者とA有限公司の関係性について説明する。本件商標権者は、中国香港の公的機関により発行される「年次報告書」によれば、会社代表者Bの氏名と住所が表示されている(甲2)。
A有限公司は、中国香港の公的機関により発行される「法人設立届出書」によれば、会社の設立メンバーBの氏名と住所が表示されている(甲2)。
以上のとおり、本件商標権者とA有限公司は、代表者Bが共通し、その住所は実質的に同一の住所であるから、同一人物Bにより運営されている会社であるといえる。
b 他方、申立人1とA有限公司は、2021年7月26日時点で、以下を記載した「知識産権許可契約20210726」とする契約を結んでいる(甲2)。
(a)甲は乙に対し、甲が登録したまたは、現在出願している「The Ants: Underground Kingdom(アリ:地下王国)」を含む商標および美術著作物の著作権の使用を許可する。
(b)甲は、乙が「The Ants: Underground Kingdom(アリ:地下王国)」ゲームの関連コンテンツに対する二次製品の開発および販売を承認する。
甲は、申立人1で、乙はA有限公司である。
c また、上記契約者間において、関連する契約として、2021年8月1日時点でタイトル「ライセンス料支払い契約」とする以下を記載する契約を結んでいる(甲2)。
(a)甲と丙の双方が2021年7月26日に「知的財産ライセンス契約20210726」(以下は「元契約」という。)に署名したことを考慮し、三者は、甲が乙に委託し、直接丙に元契約に規定されたライセンス料の支払いなどの関連事項について合意に達した。内容は以下である:
i 甲は乙に委託し、元契約の規定により、直接丙に元契約に規定されたライセンス料の15万人民元を支払う(中略)。
ii 乙は、甲の委託を受け入れ、元契約で合意された支払時間に従って、乙の口座を通じて、丙に該料金を支払うことに同意する。丙の受取口座は以下である。
(b)甲はA有限公司であり、乙はB、丙は申立人1である。
d 「知識産権許可契約20210726」において、A有限公司の代表者としてBと記名され、本人の署名がされている。さらに、「ライセンス料支払い契約」においては、A有限公司がBに依頼し、申立人1への支払いが行われることが記載されている(甲2)。
そうすると、BはA有限公司の代表者として署名したものであるが、Bは本件商標権者の代表者でもあるため、本件商標権者が当該契約を知っていたといえる。
また、Bが自ら申立人1への支払いを行っていることからすれば、A有限公司の代表者としてのみならず、個人として直接的に当該契約に関わっていたものである。いうなれば、本件商標権者の代表者によって支払いが行われたものである。
以上から、A有限公司の代表者Bは、商標「The Ants: Underground Kingdom」が申立人1によって使用されていたことを知っていたことは明らかである。そして、Bが代表者である本件商標権者も、商標「The Ants: Underground Kingdom」が申立人1によって使用されていたことを知っていたことは明らかである。
そして、それら契約は、本件商標が登録出願された2021年7月22日の直前である同月19日と、直後の同月26日になされている(甲2)。
e したがって、本件商標権者は、本件商標の登録出願日2021年7月22日の時点において、本件商標「The Ants: Underground Kingdom」が申立人1の使用する商標であることを知っていたものである。
また、本件商標は、造語である。
そうすると、本件商標権者は、本件商標が日本において出願、登録されていないことを奇貨として、不正の利益を得る目的、あるいは、損害を加える目的などの不正の目的をもって出願したものというべきである。
エ 引用商標とその周知性、著名性について
引用商標は、日本において、本件商標の登録出願時及び登録時において周知著名であった(甲3)。
(2)商標法第4条1項第7号について
本件商標は、申立人1が引用商標の使用を開始して既に日本や外国で相当の著名性が存在していた後に、我が国に登録出願したものである。そして、本件商標と引用商標は辞書等に掲載されていない造語であり、その独創性は高いから、本件商標権者が偶然に引用商標と同じつづりからなる商標を採択したとは想定できず、むしろ、本件商標の登録出願は、申立人の引用商標の存在を認識し、引用商標が日本において登録していないことを知った上で、申立人の事業の阻害等を目的に剰窃して採択したものと推認できる。
本件商標の登録出願は、申立人1の引用商標の存在を認識した上で本件商標権者によって出願されたことは、「知識産権許可契約20210726」及び「ライセンス料支払い契約」の存在の事実、並びに本件商標権者とA有限公司の代表者Bが同一であるという事実から容易に断定できる。
してみれば、本件商標の登録出願の経緯には、申立人の引用商標を剰窃するという不正な目的をもって登録出願されたものとして、社会的妥当性を欠くものがあり、その登録を認めることは、健全な商取引の遂行を阻害し、公正な競業秩序を害するから、公序良俗に反する。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、本件商標の登録出願時及び査定時において、使用商品について高い著名性を獲得しているのであって、使用商品の分野の取引者、需要者において広く知られるに至っている。
引用商標は、スマートフォンアプリのゲームタイトルとして利用されるものであり、本件商標の指定商品(バッグ、動物用被服、財布等)は、ゲームのグッズとして販売されることが想定される。とりわけ、スマートフォンゲームは、小学生から大学生までの学生や、社会人を需要者とするものであり、これら需要者の身の回り品として本件商標の指定商品(バッグ、動物用被服、財布等)は存在する。
そうすると、本件商標権者によって本件商標が使用された場合には、その商品に接する需要者が、その商品が申立人の商品であるとか、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずる可能性は十分に予想され、需要者がその出所について混同を生じる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号について
引用商標は、スマートフォンアプリのオンラインゲームとして日本及び中国において周知、著名であることは、本件商標の登録出願前の記事やインフルエンサーの紹介及びダウンロード数などから明らかである。
そして、本件商標権者に不正な目的が推認されることは上記のとおりである。
以上によれば、本件商標権者は、日本及び外国における需要者(ゲームユーザー)や、事業者(ゲーム業界の関係者)の間において、広く認識されていた引用商標を知った上で、引用商標が日本において登録出願、登録されていないことを奇貨として、これを我が国で独占使用することで不当な利益を得るため、あるいは、申立人の我が国への参入を阻止するために登録出願し、権利を得たというのが相当であり、本件商標は不正の目的をもって使用をするものというべきである。
そして、本件商標権者によって本件商標が使用された場合には、引用商標が有する信用や名声、顧客吸引力を毀損するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第15号該当性
ア 引用商標の周知性について
(ア)申立人の提出証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。
a 申立人1は、2021年7月5日に、「ザ・アンツ:アンダーグラウンド キングダム」というタイトルの「スマートフォン用ゲームアプリ」(以下「申立人商品」という。)を我が国において配信開始した(甲3、5葉目、15葉目)。
b 申立人商品は、インターネット上のメディアにおいて、遅くとも2021年6月21日以降の記事情報を通じて、その配信やゲーム内容を紹介する情報が報道され、YouTubeやTwitterなどにもゲーム内容を紹介する投稿がされている(甲3、11葉目〜21葉目)。
c 申立人商品は、「ファミ通App」の記事情報(2021年7月9日付け)において、Google Playストア無料ゲームランキング第1位を獲得したキャンペーンが紹介されているが、一方で、「売上ランキング推移」(2022年6月10日時点)の「IOS総合」では68位とされる(甲3、22葉目、23葉目)。
(イ)上記認定事実によれば、申立人1が2021年7月5日に我が国において配信開始した申立人商品は、その配信開始後、ある程度の配信実績をあげたとしても、本件商標の登録出願時(令和3年(2021年)7月22日)までは1月に満たない期間にすぎず、また、その配信前後の時期における、インターネット上のメディアを通じた報道のほかに、一般消費者に向けたメディアなどを用いた大規模な広告宣伝実績は確認できないから、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標の指定商品に係る需要者を含む、幅広い範囲の一般消費者の間において、広く認識されるに至っているとは認められない。
イ 本件商標と引用商標の比較
本件商標は、「The Ants: Underground Kingdom」の文字を横書きしたものである一方で、引用商標1は、「The Ants: Underground Kingdom」の文字を、引用商標2は、「ザ・アンツ:アンダーグラウンドキングダム」の文字を表してなるから、いずれも構成文字又は表音を共通にする文字を表したもので、同一又は類似するものである。
ウ 検討
以上のとおり、本件商標は、引用商標と同一又は類似する商標であるとしても、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、一般消費者の間において広く認識される商標ではなく、また、本件商標の指定商品(バッグ、かばんなど)と申立人商品(スマートフォン用ゲームアプリ)との製造業者、販売業者及び需要者の共通性も乏しいから、その指定商品に係る需要者をして、引用商標又は申立人らの業務に係る商品との具体的関連性を連想、想起させることは考えにくく、他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性
ア 申立人は、本件商標の登録出願の目的及び経緯に不正の目的がある旨を主張するところ、申立人の提出証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。
(ア)a 申立人1は、2019年5月に設立された中華人民共和国の法人である(甲2、1葉目)。
b 本件商標権者は、中華人民共和国香港の法人であって、代表者をBとする(甲2、4葉目、7葉目)。
c A有限公司は、中華人民共和国香港の法人であって、創立メンバーをBとする(甲2、12葉目、14葉目)。
(イ)申立人1とA有限公司は、2021年7月26日付けで、契約(以下「契約1」という。)を締結しているところ、当該契約は以下のような条項を有している(乙2、19葉目)。
a 甲(申立人1)は乙(A有限公司)に対し、甲が登録した、または、現在出願している「The Ants: Underground Kingdom(アリ:地下王国)」を含む商標および美術著作物の著作権の使用を許可する。
b 甲(申立人1)は、乙(A有限公司)が「The Ants: Underground Kingdom(アリ:地下王国)」ゲームの関連コンテンツに対する二次製品の開発および販売を承認する。
(ウ)申立人1、A有限公司及びBは、2021年8月1日付けで、契約1と関連した契約(以下「契約2」という。)を締結しているところ、当該契約は以下のような条項を有している(乙2、24葉目)。
a 甲(A有限公司)は乙(B)に委託し、契約1の規定により、直接丙(申立人1)に契約1に規定されたライセンス料・・・を支払う。
b 乙(B)は、甲(A有限公司)の委託を受け入れ、契約1で合意された支払時間に従って、乙の口座を通じて、丙(申立人1)に該料金を支払うことに同意する。
イ 以上によれば、本件商標権者と申立人1は直接の契約関係はないものの、本件商標権者の代表者Bが設立したA有限公司及び申立人1は、2021年7月26日付けで契約1を締結しているから、本件商標権者は、本件商標の登録出願時(令和3年(2021年)7月22日)において、当該契約も関連する申立人商品(引用商標)の存在を認識していたと考えるのが自然である。
しかしながら、申立人提出の証拠からは、本件商標権者(又はその代表者B若しくはA有限公司)が、本件商標の存在を理由として、申立人らの業務を阻害したり、何らかの交渉を優位に進めるために本件商標を利用した事実関係は確認できない。
また、本件商標権者(又はその代表者B若しくはA有限公司)と申立人1との間において、我が国において本件商標の登録出願をしないという契約上又は信義則上の不作為義務を生じさせるような明示の合意は、提出証拠からは見いだすことはできない。
そうすると、本件商標権者らが、申立人商品(引用商標)の存在を認識していたとしても、契約1などに基づく事業展開にあたり、本件商標を我が国において登録出願することが、直ちに商道徳に反し、著しく社会的妥当性を欠く行為であるとまではいい難く、その登録出願の目的も必ずしも明らかではないから、本件商標が不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的など)をもって使用をするものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とはいえず、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性
本件商標は、上記(1)イのとおり、引用商標とは同一又は類似の商標ではあるが、上記(2)イのとおり、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的など)をもって使用をするものとは認められない。
したがって、本願商標は、引用商標の著名性を検討するまでもなく、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(4)以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号のいずれの規定にも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2023-03-23 
出願番号 2021091975 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W18)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 矢澤 一幸
特許庁審判官 小田 昌子
阿曾 裕樹
登録日 2022-03-23 
登録番号 6532434 
権利者 百徳郡有限公司
商標の称呼 ジアンツアンダーグラウンドキングダム、アンツアンダーグラウンドキングダム、ジアンツ、アンツ、アンダーグラウンドキングダム、アンダーグラウンド、キングダム 
代理人 大上 寛 
代理人 大上 寛 

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