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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W12
管理番号 1397331 
総通号数 17 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-04-06 
確定日 2023-04-20 
異議申立件数
事件の表示 登録第6505889号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6505889号商標の商標登録を維持する。
理由
1 本件商標
本件登録第6505889号商標(以下「本件商標」という。)は、「Diablo Custom Works」の文字を標準文字で表してなり、令和3年4月30日に登録出願、第12類「牽引車,荷役用索道,陸上の乗物用の動力機械器具(その部品を除く。),軸(陸上の乗物用の機械要素),軸受(陸上の乗物用の機械要素),軸継ぎ手(陸上の乗物用の機械要素),動力伝導装置(陸上の乗物用の機械要素),緩衝器(陸上の乗物用の機械要素),ばね(陸上の乗物用の機械要素),制動装置(陸上の乗物用の機械要素),落下傘,乗物用盗難警報器,車椅子,陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。),船舶並びにその部品及び附属品(「エアクッション艇」を除く。),エアクッション艇,航空機並びにその部品及び附属品,鉄道車両並びにその部品及び附属品,自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,人力車,そり,手押し車,荷車,馬車,リヤカー,タイヤ又はチューブの修繕用ゴム貼り付け片,乳母車」を指定商品として、同4年1月20日に登録査定、同月28日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は次のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第6056410号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様:別掲のとおり
登録出願日:平成29年6月7日
設定登録日:平成30年6月29日
指定商品:第12類「二輪自動車・自転車用タイヤ・空気タイヤ・ソリッドタイヤ・車輪・チューブ・リム・リムバンド及びタイヤ用空気弁,その他の二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」
(2)国際登録第889096号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:DIABLO ROSSO
登録出願日(事後指定):2018年(平成30年)9月20日
設定登録日:令和2年1月10日
指定商品:第12類「Tyres for two-wheel vehicles.」
(3)国際登録第1333000号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様:DIABLO NERO
登録出願日:2016年(平成28年)11月28日
優先権主張日:2016年(平成28年)11月8日(Italy)
設定登録日:平成29年9月8日
指定商品:第12類「Tires, solid, for vehicle wheels; pneumatic, semi-pneumatic and/or solid tyres; vehicle wheels; wheel rims; inner tubes and mousse for vehicle tyres.」
以下、これらをまとめて「引用商標」という場合がある。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第75号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は、欧文字「Diablo Custom Works」を標準文字で表してなるものである。
そして、本件商標構成中の「Custom Works」は、「あつらえの、特別注文の」の意味を有する「Custom」(甲5)と「作品、著作物、付属品」(甲6)等の意味を有する「Works」が結合した語である。
また、「Custom Works」の語は、自動車・二輪自動車の製造・販売・カスタム業者、二輪自動車用レザーアイテムの製造販売業者、洋服のリフォーム業者、釣り具販売業者、ギター修理業者、トイガン製造販売業者、アコースティックギターのチューンアップ業者等(甲7〜甲13)、様々な分野の事業者が、自己の業務に係る商品又は役務が「カスタム」なものであることを示すために一般的に使用されている。インターネット検索で、日本語ページに限定して検索すると94件がヒットし(甲14)、そのうちの大部分が自動車、二輪自動車又は自転車といった車両やその付属品に関連する。
以上に鑑みれば、第12類に係る指定商品の分野においては、「Custom Works」は、顧客の個別の注文に応じて製造され、販売され、提供される商品若しくは役務又はそれらの商品等を製造販売する事業者(の業務)を表す語として広く一般的に使用される語と考えて差し支えない。
本件商標権者は、種々のバイク用カスタムパーツの輸入販売に従事している。カスタムパーツは、「メーカー・販売店が製造・販売する製品の基本仕様に対して、ユーザーが好みに応じて追加購入して取り付ける改造用の部品」(甲15)を表す。このような意味合い、及び、第12類の商品分野においてカスタムパーツが多く取引され、「Custom Works」の語がカスタムパーツを取り扱う不特定多数の業者により広く使用されている事実に鑑みれば、当該語は、本件商標が使用される商品が、メーカーや販売店が製造販売する基本仕様の商品ではなく、顧客の個別の注文に応じて製造販売される特別仕様の商品を直接的、かつ、端的に表示する、記述的な語である。そして、「Custom」及び「Works」の語は、本件指定商品の分野における需要者等にとって、極めて平易な英語である。
他方、「Diablo」の語は、必ずしも需要者の間に浸透しているとはいえないスペイン語であり、該語は、最も需要者の注意を惹く本件商標の語頭に配置されている。
してみれば、本件商標からは、「ディアブロカスタムワークス」の全体の称呼のほか、単に「ディアブロ」と略称されることも少なくないといえる。
本件商標権者が、実際の取引において、本件商標ではなく、「DIABLO」単体のブランドを冠した商品も複数取り扱っていること(甲17〜甲19)に鑑みると、需要者等は、本件商標を冠した商品を、DIABLOシリーズの一ブランドと理解、認識し、本件商標を「ディアブロ」と略称することも少なくない。
イ 引用商標
引用商標1からは、「ディアブロ」の称呼が生じ、引用商標2及び引用商標3からは、それぞれ、「ディアブロロッソ」、「ディアブロネロ」との称呼が生じる。また、「ロッソ」、「ネロ」は、それぞれ「赤い(赤色)」、「黒い(黒色)」の意味を有するイタリア語である。
日本でもイタリア製二輪自動車が人気を博していること(甲20〜甲23)、二輪自動車等を購入する際、デザインや性能の他、車体のカラーも数ある同種の商品から選択する要因の一つであることは周知の事実であり、色彩を示す語が「出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる語」に該当することに疑いの余地はない。
なお、「ROSSO NERO(ロッソネロ)」がイタリア語で「赤と黒」の意味であることはデジタル大辞泉プラスでも紹介されており(甲24)、当該意味合いは、我が国においても一般的に浸透していることがうかがえる。
以上を勘案すると、簡易迅速を尊ぶ実際の取引においては、引用商標2及び引用商標3は、いずれも「ディアブロ」と略称され、取引に資される場面も少なくない。
ウ 本件商標と引用商標の比較
してみれば、本件商標と引用商標とは、その構成中「DIABLO(diablo)」の語を有する点、「ディアブロ」の称呼、「悪魔」の観念が生ずる点で共通している。
エ 取引の実情
本件商標権者は、様々なバイク用カスタムパーツの輸入・販売を行う日本法人であり、自社で企画・製造したパーツの販売も行っている(甲25)。 また、楽天市場において、バイク用パーツ・カスタムパーツを販売する「スマートスモーカーズ」というオンラインストアを運営している(甲26)。同オンラインストアではバイク用各種パーツが販売されているが(甲26)、販売商品に係る本件商標の使用態様は、「DIABLO」を筆記体調に大きく表示し、その下方にやや右側にブロック体で、一見して何を書いているか判別できない程小さく「CUSTOM WORKS」を表示したものである(甲27〜甲38)。
以上に鑑みれば、本件商標権者は、「DIABLO」を本件商標の要部、すなわち、出所識別標識として機能させるべき主観的意図をもって本件商標を採択、使用しているといえる。
オ 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、商品の生産、販売部門や用途、需要者の範囲が一致、また、完成品と部品との関係にある。
カ 小括
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第19号について
本件商標と引用商標とが互いに類似することは、上記(1)のとおりである。
申立人は、「DIABLO」のブランドの二輪自動車用タイヤを2002年に販売開始以降、プロのレースからスーパースポーツロードアリーナまで様々な市場セグメントで使用される「DIABLO」シリーズのタイヤとして、シリーズ展開し(甲39)、申立人のタイヤ及びそのシリーズ製品についての紹介が各ウェブサイトでなされている(甲40〜甲46)。
また、「価格.com」の「2022年7月、バイク用タイヤの人気商品ランキング」(集計期間3ヶ月)によると、申立人が製造販売するタイヤ「DIABLO ROSSO」が2位に挙げられている(甲47)。
上記を勘案すると、我が国において、申立人のブランド「DIABLO」、同シリーズの語は、申立人の業務に係る二輪自動車用タイヤのブランドとして、世界各国の需要者の間で広く認識されるに至っているものである。
なお、申立人は、ブランド保護のために、商標登録するのみならず、一般財団法人対日貿易投資交流促進協会発行の外国ブランド権利者名簿への掲載をしている。また、引用商標について、カンボジア、フィリピン、メキシコなどの国で商標権を保有している(甲48〜甲75)。
以上より、引用商標が日本国内又は外国で需要者の間に広く認識されている商標に該当することは明らかである。
また、本件商標権者は、上記のとおり、本件商標と異なる態様で使用している(甲27〜甲38)ことから、申立人が保有する引用商標に化体した信用にフリーライドする不正の目的で、需要者の注意を惹くためといわざるを得ない。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標及び「DIABLO」の文字の周知性
ア 申立人の提出に係る証拠及び申立人の主張によれば、以下のとおりである。
(ア)「ピレリジャパン株式会社」の「ニュースリリース」(2022年2月22日)には、「ピレリがスポーティでエモーショナルな新製品DIABLO ROSSO IV CORSA(ディアブロ ロッソ クワトロ コルサ)を発売」の見出しの下、「DIABLOROSSOシリーズの中でスポーツライディングの水準をさらに高める高機能ハイパースポーツタイヤです。」の記載とともに引用商標1及び引用商標2が表示されている(甲39)。
また、上記ニュースリリースには、「DIABLO,DIABLO ROSSOブランドとCorsaという名前の起源」の項において、「DIABLO製品のシリーズは2002年に販売後、急速に進化し、プロのレースからスーパースポーツロードアリーナまで様々な市場セグメントのタイヤをその幅広いポートフォリオに含めるようになりました。」の記載がある(甲39)。
(イ)ウェブサイト「バイクタイヤ専門店 モトフリーク東京」(2014年12月11日)には、「名作バイクタイヤのご紹介 その2「ピレリ ディアブロロッソコルサ」」の見出しの下、「今回は名作タイヤ紹介シリーズの第二弾、ピレリのハイグリップタイヤ ディアブロロッソコルサをご紹介したいと思います。」の記載とともに引用商標1及び引用商標2の表示がある(甲40)。
(ウ)ウェブサイト「webオートバイ」(2018年4月11日)には、「人気の“ロッコル”が大きく進化!「PIRELLI DIABLO ROSSO CORSA2」(2はローマ数字で表されたもの)」の見出しの下、「ピレリのディアブロ・ロッソ・コルサと言えば、レースだけでなく、サーキット走行会などのハードユースのライダーに絶対的な支持を受けているタイヤだ。」の記載とともに引用商標1の表示がある(甲41)。
(エ)ウェブサイト「YOUNG MACHINE」(2021年7月1日)には、「ピレリディアブロロッソ クワトロ:スポーツタイヤの最高峰がさらに進化。誰でも楽しめる究極のハイスペック」の見出しの下、「ピレリのディアプロロッソシリーズが、第4世代に進化した。」の記載とともに引用商標1及び引用商標2の表示がある(甲42)。
(オ)ウェブサイト「モーサイ」(2021年7月10日)には、「ピレリ・ディアブロロッソ4詳細解説「スーパースポーツ、ネイキッド、アドベンチャーまで車種を選ばずマッチする理由とは」」の見出しの下、「世界累計500万本以上の販売実績を誇る「DIABLO ROSSO」(ディアブロロッソ)シリーズの第4世代となる「DIABLO ROSSO IV」(ディアブロロッソ4)ですが、要求性能の異なる様々なモデルに適応できる理由とはどこにあるのでしょうか。」の記載がある(甲43)。
(カ)ウェブサイト「バイクのニュース」(2021年8月4日)には、「史上最高にピレリらしいタイヤ!「ディアブロ・ロッソ・クワトロ」登場」の見出しの下、「ピレリは2021年7月1日、史上最高にピレリらしいタイヤ「DIABLO ROSSO IV(ディアブロ・ロッソ・クワトロ)」を発売しました。」の記載がある(甲44)。
(キ)ウェブサイト「WEB!KE MAGAZINE」(2021年8月10日)には、「スポーツタイヤの最高峰がさらに進化!ピレリディアブロロッソ クワトロ!」の見出しの下、「ピレリのディアブロ・ロッソシリーズが、第4世代に進化した。」及び「ディアブロシリーズ直系のフラッシュパターンを採用。」の記載とともに、二輪自動車のタイヤに引用商標1又は引用商標2が表示されている(甲45)。
(ク)ウェブサイト「Automotive media Response」(2022年2月24日)には、「ピレリ、二輪ロードタイヤ最高峰の「ディアブロ・ロッソ・クワトロ・コルサ」発表」の見出しの下、「ピレリジャパンは2月22日、”スポーティでエモーショナルな”新製品と自ら謳う、ロードタイヤ最高峰「DIABLO ROSSO IV CORSA(ディアブロ・ロッソ・クワトロ・コルサ)」の各サイズを夏以降、順次発表すると発表した(イタリア発表:2月10日)。」及び「「DIABLO」(ディアブロ、スペイン語で悪魔)はバイク用に設計されたピレリの高性能タイヤのブランドだ。ディアブロの製品ラインナップ内で「DIABLO ROSSO」(ディアブロ・ロッソ)製品はロードスポーツマシン専用となっている。」の記載がある(甲46)。
(ケ)「価格.com」のウェブサイトには、「2022年7月バイク用タイヤの人気商品ランキング」の見出しの下、「DIBLO ROSSO ディアブロロッソ2」が2位に記載されている(甲47)。
イ 上記アによれば、本件商標の登録査定後のニュースリリースにおいて、申立人の業務に係る二輪自動車のタイヤは、「DIABLO製品のシリーズ」として2002年に販売開始されたことがうかがわれ、また、近年は、主に「ディアブロロッソシリーズ」などと称して紹介され、引用商標1又は引用商標2が二輪自動車のタイヤに表示されていることが認められる。
しかしながら、引用商標及び「DIABLO」の文字を使用した申立人の業務に係る二輪自動車等のタイヤの我が国及び外国における販売実績、売上高、市場シェア及び宣伝広告の実績等についての主張はなく、それを確認できる証左は見いだせない。
そうすると、申立人提出の証拠からは、引用商標及び「DIABLO」の文字が我が国の需要者にどの程度認識されているのか、客観的に把握、評価することができない。
その他、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標及び「DIABLO」の文字が申立人の業務に係る二輪自動車等のタイヤを表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり、「Diablo Custom Works」の欧文字を表してなるところ、これらの構成文字全体としては、辞書等に載録されている語ではなく、また、特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情も見いだせないものであるから、一種の造語として認識されるものである。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「ディアブロカスタムワークス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
なお、申立人は、第12類に係る指定商品の分野においては、「Custom Works」は、顧客の個別の注文に応じて製造され、販売され、提供される商品若しくは役務又はそれらの商品等を製造販売する事業者(の業務)を表す語として広く一般的に使用される語である(甲5〜甲14)旨述べ、本件商標からは、「ディアブロカスタムワークス」の全体の称呼のほか、単に「ディアブロ」と略称されることも少なくないといえると主張する。
しかしながら、申立人の提出した証拠によれば、「CUSTOM WORKS」や「カスタムワークス」の文字が注文に応じて製造、販売する事業者等を表す語として使用されている場合があるとしても、その事例は店名の一部に使用されているものが散見され、その証拠をもって事業者等を表す語として広く一般的に認識されるとはいい難いものであり、上記(1)のとおり、「DIABLO」の文字は申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであること、本件商標の構成文字は、同書、同大でまとまりよく一体的に表されていること、及びこれから生じる「ディアブロカスタムワークス」の称呼は、やや冗長ではあるものの無理なく一連に称呼し得るものであることを合わせ考慮すれば、本件商標は、これに接する取引者、需要者をして、その構成文字全体をもって一体不可分のものとして認識、把握されるものとみるのが相当である。
また他に、本件商標の構成中「Diablo」の文字部分を分離抽出し他の商標と比較検討すべきとする事情は見いだせない。
したがって、申立人のかかる主張は採用できない。
イ 引用商標
引用商標1は、別掲のとおりの構成からなり、ややデザイン化されているものの「DIABLO」の欧文字を表したものと容易に看取されるから、その構成文字に相応して「ディアブロ」の称呼を生じ、当該語は「悪魔」の意味を有するスペイン語(「現代スペイン語辞典(改訂版)」株式会社白水社)であるとしても、我が国で広く一般に親しまれた語ではないから、特定の観念は生じない。
また、引用商標2及び引用商標3は、上記2のとおり、「DIABLO ROSSO」及び「DIABLO NERO」の欧文字を書してなるものである。
そして、その構成中の「ROSSO」及び「NERO」の文字がイタリア語の「赤い」及び「黒い」の意味(「伊和中辞典〈第2版〉」株式会社小学館)を有するとしても、我が国で広く一般に親しまれているともいい難く、当該文字を捨象して取引にあたるとはいえない。
さらに、引用商標2及び引用商標3とは、それの構成中に1文字程のスペースを有するとしても、それぞれ、まとまりよく表され一体のものと看取されるというべきであるから、その構成文字に相応して、引用商標2から「ディアブロロッソ」の称呼、引用商標3から「ディアブロネロ」の称呼を生じ、それぞれ、全体としては、辞書等に掲載が認められないから、特定の観念は生じない。
ウ 本件商標と引用商標の類否
(ア)外観
本件商標は、上記アのとおり、「Diablo Custom Works」の文字からなるのに対し、引用商標1は、別掲のとおり、「DIABLO」の文字をややデザイン化したものであって、引用商標2及び引用商標3は、上記2のとおり、「DIABLO ROSSO」及び「DIABLO NERO」の文字を書してなるものであるから、本件商標中の前半に引用商標と同一の「DIABLO」の文字つづりを有するとしても、本件商標と引用商標1とは、「Custom Works」の文字の有無に差異を有し、本件商標と引用商標2及び引用商標3とは、「Custom Works」の文字と「ROSSO」及び「NERO」の文字に差異を有し、構成文字等が明らかに相違しているから、外観において相紛れるおそれはない。
(イ)称呼
本件商標は、その構成文字に相応して「ディアブロカスタムワークス」の称呼を生じ、引用商標1ないし3は、その構成文字に相応して、各々「ディアブロ」、「ディアブロロッソ」、「ディアブロネロ」の称呼を生じる。
そこで、本件商標と引用商標の称呼を比較すると、本件商標と引用商標1とは「カスタムワークス」の音の有無に差異を有し、本件商標と引用商標2及び引用商標3とは、「カスタムワークス」と「ロッソ」及び「ネロ」の音に差異を有するから、それぞれを一連に称呼しても、語調、語感が相違し、互いに聴き誤るおそれのないものであり、称呼において相紛れるおそれはない。
(ウ)観念
本件商標と引用商標とは、いずれも特定の観念を生じないから、観念において比較することができない。
エ 小括
以上からすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないものであるとしても、その外観及び称呼において相紛れるおそれのないことが明らかであるものであるから、両商標が需要者に与える印象、記憶等を総合してみれば、両商標は非類似の商標というべきである。
したがって、本件商標と引用商標は、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が類似するものであるとしても、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものとはいえない。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標及び「DIABLO」の文字は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、本件商標は、上記(2)のとおり、引用商標とは非類似の商標であるから、引用商標1と構成文字を同じくする「DIABLO」の文字とも非類似の商標といえる。
そうすると、本件商標は、商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くとものといわざるを得ない。
そして、申立人は、本件商標権者が、本件商標とは異なる態様(「DIABLO」の語を筆記体調に大きく表示し、その下方のやや右側にブロック体で、判別できない程小さく「CUSTOM WORKS」を表示した態様)で商品に使用していることを根拠として、申立人が保有する引用商標に化体した信用にフリーライドする不正の目的で、需要者の注意を惹くためといわざるを得ないなどと主張しているのであって、具体的に、本件商標権者が申立人の事業の遂行を妨害や阻止しようとしているとか、本件商標の登録出願が剽窃に当たることなどを裏付ける証拠をあげているとまではいうことができないから、申立人のかかる主張は採用できない。
そうすると、本件商標権者が引用商標の名声を毀損させることを認識し、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものと認めることはできない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものといえない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第19号に違反して登録されたものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。



別掲

別掲(引用商標1)





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異議決定日 2023-04-10 
出願番号 2021053613 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W12)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 小林 裕子
青野 紀子
登録日 2022-01-28 
登録番号 6505889 
権利者 合同会社ネクシル
商標の称呼 ディアブロカスタムワークス、ディアブロカスタム、ディアブロ、ダイアブロ 
代理人 岩瀬 吉和 
代理人 大島 良太 
代理人 北口 貴大 
代理人 城山 康文 
代理人 横川 聡子 

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