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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1397329 
総通号数 17 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-03-28 
確定日 2023-04-15 
異議申立件数
事件の表示 登録第6501195号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6501195号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6501195号商標(以下「本件商標」という。)は、「FURNA」の文字を標準文字で表してなり、令和3年11月1日に登録出願、第25類「被服,履物,バンド,ズボンつり,ドレス,ガーター,運動用特殊靴,運動用特殊衣服,靴下留め,仮装用衣服,ベルト」を指定商品として、同4年1月13日に登録査定、同月18日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次の(1)ないし(8)のとおりである。
(1)登録第2287569号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様:furla
登録出願日:昭和63年7月6日
設定登録日:平成2年12月26日
指定商品:第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」のほか、第3類、第8類、第10類、第14類、第18類、第21類及び「腕止め」を含む第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(2)登録第4549977号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:FURLA(標準文字)
登録出願日:平成12年9月29日
設定登録日:平成14年3月8日
指定商品:「ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター」を含む第9類、「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),げた,草履類,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」を含む第25類、「運動用具」を含む第28類、第3類及び第14類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(3)登録第4566930号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様:FURLA(標準文字)
登録出願日:平成13年1月12日
設定登録日:平成14年5月10日
指定商品:「乗馬用具」を含む第18類、第20類、第22類、第24類及び第27類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(4)国際登録第1232595号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様:別掲1のとおり
登録出願日:2014年(平成26年)5月30日
優先権主張:2014年(平成26年)4月18日 Italy
設定登録日:平成27年12月4日
指定商品:第25類「Clothing, knitwear, jerseys and sweaters, pullovers, shirts, jackets, bomber jackets, raincoats, anoraks, cloaks, blazers, coats, trousers, salopettes, skirts, bathing costumes and trunks, beach robes, wraparounds, beachwear; underwear, socks and stockings, tights, scarves, shawls, silk handkerchiefs for wear(clothing), gloves, neckties, waistcoats, belts; casual wear; sportswear, tracksuits; shoes, boots, sandals, clogs, sports and gym shoes, bedroom slippers, flip-flops; hats, caps, berets and visors.」及び「saddlery.」を含む第18類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
(5)国際登録第1459270号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様:別掲2のとおり
登録出願日:2019年(平成31年)1月3日
優先権主張:2018年(平成30年)7月4日 Italy
設定登録日:令和3年3月26日
指定商品:「girths of leather;」を含む第18類、第25類「Neckerchiefs; bandanas [neckerchiefs]; pocket squares; kerchiefs [clothing]; sashes for wear; neck scarfs [mufflers]; shoes; boots; sandals; bath sandals; wooden shoes; footwear; boots for sports; slippers; hats; berets; sports jerseys; jackets [clothing]; blazers; wind-resistant jackets; underwear; stockings; neckties; gloves [clothing]; pareus; bathing suits; belts; trousers; sweaters; shirts; overcoats; skirts; socks; tee-shirts; tracksuits.」のほか、第9類及び第14類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品
(6)国際登録第1461625号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の態様:別掲3のとおり
登録出願日:2018年(平成30年)12月28日
設定登録日:令和3年1月8日
指定商品:「girths of leather;」を含む第18類、第25類「Clothing; neckerchiefs; bandanas [neckerchiefs]; pocket squares; kerchiefs [clothing]; sashes for wear; neck scarfs [mufflers]; shoes; boots; sandals; bath sandals; wooden shoes; footwear; boots for sports; slippers; hats; berets; sports jerseys; jackets [clothing]; blazers; wind-resistant jackets; underwear; stockings; neckties; gloves [clothing]; pareus; bathing suits; belts; trousers; sweaters; shirts; overcoats; skirts; socks; tee-shirts; tracksuits; all the aforesaid goods are designed in Italy.」のほか、第9類及び第14類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品
(7)国際登録第1509783号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の態様:別掲4のとおり
登録出願日:2019年(令和元年)11月8日
優先権主張:2019年(令和元年)7月15日 Italy
設定登録日:令和3年8月13日
指定商品:「girths of leather;」を含む第18類、第25類「Clothing, footwear, headgear; neckerchiefs; bandanas [neckerchiefs]; pocket squares; kerchiefs [clothing]; sashes for wear; neck scarfs [mufflers]; boots; sandals; bath sandals; wooden shoes; footwear; boots for sports; slippers; berets; sports jerseys; jackets [clothing]; dresses; blazers; wind-resistant jackets; underwear; stockings; neckties; gloves [clothing]; pareus; bathing suits; waistbands [parts of clothing]; trousers; sweaters; shirts; overcoats; skirts; socks; tee-shirts; tracksuits; bath robes; overalls.」のほか、第3類、第9類及び第14類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品
(8)国際登録第1642449号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の態様:FURLA
登録出願日:2021年(令和3年)9月3日
優先権主張日:2021年(令和3年)8月17日 Italy
指定商品及び指定役務:第4類、第8類、第11類、第20類、第21類、「baby buntings;」を含む第24類、「Mats; yoga mats; gymnastic mats;」を含む第27類及び「wholesale and retail services of perfumed candles, perfumery, cosmetics, toiletries, make up, eyewear, watches and jewelry, stationery and writing instruments, writing desk, printed matters, leatherware, namely bags, card holders, wallets, key cases, purses, luggage, backpacks and rucksacks, satchels, boxes, straps, leashes, umbrellas, tableware, household and kitchen utensils, lamps, chandeliers, lanterns for lighting, furniture, desks, mirrors [furniture], sofas, chairs [seats], tables, armchairs, picture frames, fireplaces, mattresses, cushions, vases, glassware, porcelain and earthenware, crystal [glassware], table plates, bag hangers of metal, candle holders, trays, rugs, bath linen, except clothing, household linen, bed linen, table linen, not of paper, fabric, curtains, clothing and accessories thereof, footwear, headwear, scarves, belts [clothing], gloves, neckties; retailing and wholesaling via the internet relating to perfumed candles, perfumery, cosmetics, toiletries, make up, eyewear, watches and jewelry, stationery and writing instruments, writing desk, printed matters, leatherware, namely bags, card holders, wallets, key cases, purses, luggage, backpacks and rucksacks, satchels, boxes, straps, leashes, umbrellas, tableware, household and kitchen utensils, lamps, chandeliers, lanterns for lighting, furniture, desks, mirrors [furniture], sofas, chairs [seats], tables, armchairs, picture frames, fireplaces, mattresses, cushions, vases, glassware, porcelain and earthenware, crystal [glassware], table plates, bag hangers of metal, candle holders, trays, rugs, bath linen, except clothing, household linen, bed linen, table linen, not of paper, fabric, curtains, clothing and accessories thereof, footwear, headwear, scarves, belts [clothing], gloves, neckties.」を含む第35類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品及び役務
以下、引用商標1ないし引用商標8を、まとめていう場合は「引用商標」という。また、引用商標1ないし引用商標7に係る商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第34号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、以下、甲各号証の表記にあたっては、甲第1号証を「甲1」のように省略して表示する場合がある。
(1)申立人について
申立人は、今から100年近く前にイタリアで開業した革製品のメーカーであって、1927年にバッグ、靴、アクセサリーの製造・販売を開始し、イタリアのボローニャに第1号店をオープンさせ、1980年代にはフランスやアメリカでの販売網開拓を皮切りにブランド拡大を開始し、1990年代にはスペイン、イギリス、ドイツ、中国及び香港に子会社を設立した。2013年にはミラノのドゥオーモに旗艦店をオープンさせ、2015年にはミラノの中心地に新たな本社屋「パラッツォ・フルラ」(Palazzo Furla)を設立した。申立人の名称でもあり、ブランド名でもある“フルラ”は現在、ニューヨーク、パリ、モスクワ、メルボルン、上海、香港、東京の7か所にオフィスを構え、革製品の製造以外にも芸術関連の事業に力を入れており、2000年に設立されたフルラ芸術賞、2008年に設立されたフルラ財団を通してアーティストの活動支援を行っており、2007年にはイタリアヘの文化貢献を行った企業に贈られるインプレッサ・エ・クルトゥーラ賞(Impresa e Cultura)を受賞している。
我が国では、1992年にフルラジャパン株式会社(以下「フルラジャパン社」という。)が設立され、国内に約102店舗が展開されている。我が国での売上げはフルラ全体のおよそ2割を占めているほか、国単体では売上げシェア1位を保持している(甲10)。その多くは「高島屋」、「大丸」、「そごう」、「三越」、「伊勢丹」、「阪急百貨店」といった有名百貨店の他、路面店や、「新丸の内ビル」、「たまプラーザ」、「パルコ」、「ルミネ」、「ららぽーと」等、多くの来客数を誇る商業施設内に設けられている(甲11)。また、直営店以外の一般的な小売店や、近年ではインターネットによる通信販売等でも展開している。
(2)引用商標の周知・著名性
申立人は、同人が製造・販売するバッグ等に引用商標を含むロゴを付すほか、直営店や街頭においても引用商標を看板として目立つ態様にて表示している。また、各種雑誌では、有名芸能人が着用した引用商標に係る商品が掲載されている。ファッション雑誌とのコラボ企画では、引用商標が付された付録が提供されている(甲12、甲13)。
このように、申立人は、その取り扱いに係るファッション雑貨や包装、広告物等に引用商標を一貫して使用することで、自己の商品の訴求を図るとともに、引用商標の下に信用を蓄積してきた。
我が国における2016年から2021年までの引用商標に係る商品の売上高は、2016年に126億円、2017年に141億円、2018年に149億円、2019年に155億円、2020年に120億円、2021年に112億円であり、引用商標を付した申立人の製品に係る2016年から2021年の間の、我が国における広告宣伝費は、2016年に5億500万円、2017年に5億2,100万円、2018年に3億7,200万円、2019年に3億7,900万円、2020年に1億8,900万円、2021年に5億400万円である。
インターネットで「フルラ」のキーワードを入力して検索すると、約575万件が検出される。その上位100件をみると、すべて申立人又は申立てに係る商品に関する記事である(甲14〜甲18)。
また、ハンドバッグの人気ブランドランキングでは、名だたるブランドの中で、セリーヌ、プラダを押さえて引用商標に係るバッグは第3位である(甲19)。さらには、引用商標を付した申立人の製品が、我が国で取引されていた(甲20〜甲34)。これらのことから、我が国で申立人のブランドが広く周知されていることがうかがえる。
(3)本件商標と引用商標の比較
ア 称呼について
本件商標は、「FURNA」の文字からなるが、当該文字は辞書に記載のない造語であるところ、我が国でのローマ字の読み方に倣えば、「フルナ」の称呼が生じ、一方で、引用商標は、「FURLA」の欧文字又は当該欧文字を含んだ構成からなるが、当該文字は辞書に記載のない造語であるところ、我が国でのローマ字の読み方に倣えば、「フルラ」の称呼が生じ得る。
すると、引用商標と本件商標とでは、語尾の「ナ」と「ラ」の差異にすぎないところ、「ナ」と「ラ」では、母音[a]を共通にするだけでなく、子音部分の[n]と[r]も調音点を同じくすることから互いに近似した音質となり、しかも両音とも弱音である。さらに、異なる「ナ」と「ラ」は比較的印象の薄い語尾に位置し、全体を通して称呼したときには、語感、語調が近似し、彼此聞き誤るおそれがある。
イ 外観について
本件商標は、「FURNA」の文字からなるところ、引用商標「FURLA」の文字とは、4文字目の「N」と「L」が相違するのみであって、両商標ともに全5文字の構成からなるところ、中間における1文字の違いは、外観上極めて見落としやすく、まして、引用商標の周知性を考慮すれば、両者を付した商品について出所の混同が生ずるおそれは免れない。
ウ 観念について
本件商標は、辞書に記載のない造語であって、何らの観念も生じない。一方、引用商標からは、上記(2)のとおり、「著名な申立人又はその商品」の観念が生じる。
エ まとめ
上記アないしウのとおり、本件商標と引用商標は、称呼・外観上、互いに相紛れるおそれのある類似する商標であって、また、観念については、外観・称呼上類似する本件商標から、引用商標の周知・著名性に引っ張られ、「申立人又はその商品」と観念を誤認する。
(4)商標法第4条第1項第11号該当性について
上記(3)のとおり、本件商標と引用商標は類似し、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と抵触又は関連するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(2)のとおり、引用商標は、申立人により我が国において約30年もの間継続的に使用された結果、ファッション雑貨の分野において申立人の業務を表すものとして需要者に広く知られたものといえる。また、申立人は、現在も我が国において営業活動を継続中であるため、本件商標の登録出願日及び設定登録日においても、その周知性は維持されている。
また、本件商標と引用商標は、互いに類似する商標であって、指定商品も互いに関連するものである。さらに、引用商標が、その指定商品の分野において、既に広く周知性を獲得している点を考慮すれば、需要者は、本件商標から、申立人の周知な出所表示標識を認識し、申立人と関連付けて認識するおそれがある。
このような商標の登録を認めることは、申立人が、永年多大な努力を払って築き上げてきた引用商標に化体した業務上の信用へのただ乗り行為を許すことになり、商標法の精神に反するといわざるを得ないから、本件商標はその指定商品に使用された場合、出所について混同を生じるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(6)商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標は、上記(2)のとおり、申立人の業務に係る商品を表すものとして、一定の周知性を獲得している。
本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)は、同じファッション業界に身を置くものとして、申立人のブランドを知らないわけがなく、あえて、引用商標と一文字違いの「FURNA」を出願したのであるが、本件商標は、申立人の「FURLA」とは同じ5文字からなり、中間の「L」以外の4文字が共通するという点で、申立人の商標を想起させるような構成からなっており、申立人の商標を意識した悪質な行為といえる。
すなわち、一般需要者が本件商標に接したときには、引用商標が周知・著名であることから、日常頻繁に広告を見聞きし、その周知性により記憶に強く定着している申立人のブランドを本件商標と誤認することになる。
また、被服等のファッションアイテムでは、その商標を大きく表示するというよりは、ワンポイントとして傍らに小さく表示するのが一般的である。そうとすれば、本件商標と引用商標は、その外観が酷似しているため、その使用態様によっては相紛らわしく、本件商標と引用商標を見分けるのは非常に困難である。
以上より、外観上も紛らわしい商標を採択、出願した本件商標権者には、引用商標の有する周知、著名性へのフリーライドの意図、出所表示機能の稀釈化の意図という不正の意図があったと考えざるを得ない。そして、本件商標権者も、同様の商品を扱う業界人として引用商標の周知性は十分認識しうる立場にあったことは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性
ア 申立人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、1927年にイタリアで開業した革製品メーカーであって、バッグ、靴等の製造・販売を行っており、2013年にイタリア・ミラノに旗艦店を開店、2015年には同所に本社を移転した。2017年における申立人の全世界における売上高は、4億9,900万ユーロとされている。我が国では、1992年にフルラジャパン社が設立され、国内に約102店舗が展開されており、我が国での売上げは、全世界におけるフルラ全体のおよそ2割を占めている他、国単体では売上げシェア1位を保持している(甲10)。
(イ)申立人の業務に係る商品は、我が国では、有名百貨店、路面店、大型商業施設内の店舗で販売されている(甲11)。
(ウ)「JAPAN Oggi(2021年10月号)」、「JAPAN MORE(2021年8月号)」等のファッション雑誌とのコラボ企画において、「FURLA」の欧文字がバッグに付されている(甲12)。
(エ)「PR TIMES」のウェブサイトには、フルラジャパン社のプレスリリース(2019年3月18日)として、「フルラ 2018年度売上5億ユーロを突破/引き続き日本が売上シェア1位をキープ」の見出しの下、「フルラは2018年度も最高売上を更新し、5億1千300万ユーロ(中略)の売上高を記録しました。2017年度からは5.2%増で引き続き業績成長し、過去4年で売上高は約2倍に増加しました。引き続き日本は国別トップの売上をキープし、全体売上シェアの22%となりました。APAC(日本を除くアジア諸国)は2018年度売上18.2%増となり、全体売上の26%に到達し、急成長し続けています。」等が記載されている(甲16)。
(オ)「monobank」のウェブサイトには、「次世代“It BAG” FURLA(フルラ)は世界中で愛されているラグジュア・・・」(2021/4/15)の見出しの下、「人気の理由」として「リーズナブルな価格設定」、「豊富な種類・カラーバリエーション」、「アイドル・モデルに愛用者続出」と記載されている(甲17)。
(カ)「abox」のウェブサイトには、「学生からOLまで絶大な支持!FURLA(フルラ)の人気の秘密」(2016.06.09)の見出しの下、「毎シーズン、魅力的な新作をリリースして注目を集めているFURLA(フルラ)。」、「フルラの魅力は何といっても上質な革・比較的手が届きやすい価格・豊富なカラーバリエーションにあります。」等が記載されている(甲18)。
(キ)「価格.com」のウェブサイトには、「【2022年6月】ハンドバッグ 人気ブランドランキング」(更新日:2022年06月23日)として、「ハンドバッグは、「エルメス(Hermes)」「コーチ(COACH)」「フルラ(FURLA)」のブランドが人気です。」と記載され、「フルラ(FURLA)」ブランドのハンドバッグは、3位に位置付けられている(甲19)。
イ 認定
上記アによれば、申立人は、革製品を扱うイタリア国に所在するメーカーで、その売上げは、全体で4億9,900万ユーロ(2017年)であり、その約2割が我が国での売上げとされている(申立人の主張では、2016年に126億円、2017年に141億円、2018年に149億円、2019年に155億円、2020年に120億円、2021年に112億円とされているが、申立人の提出した証拠によっては、その数字を確認できない。)。そして、我が国では、1992年にフルラジャパン社が設立され、直営店、有名百貨店、大型商業施設等で申立人の業務に係るバッグが販売されており、当該バッグには「FURLA」の欧文字が付されている。また、「フルラ(FURLA)」は、我が国におけるハンドバッグ人気ブランドランキングで3位に位置付けられており、「monobank」や「abox」のウェブサイトにおいて、「FURLA(フルラ)」が人気であることが記載されている。
そうすると、「FURLA」の欧文字は、「フルラ」と称され、申立人の業務に係るバッグを表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国における需要者の間に広く認識されていたものと認められる。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
申立人は、引用商標を挙げ、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する旨を主張しているが、引用商標8は本件商標の登録査定日において設定登録されていないものであるから、当審は、本件商標と引用商標8との関係における申立人の主張は、同法第8条第1項の規定に違反して登録された旨の主張と判断し、以下検討する。
ア 本件商標について
本件商標は、上記1のとおり、「FURNA」の欧文字を表してなるところ、当該文字は、辞書等に掲載のない造語であるところ、特定の意味合いを有しない欧文字にあっては、英語読み風に称呼されることが少なくなく、例えば、毛皮の意味を有する「Fur」が「ファー」と読まれていることに倣えば、本件商標の構成文字に相応して、「ファーナ」の称呼を生じ得るというべきであり、当該文字は、辞書等に掲載が認められないから、特定の観念は生じない。
イ 引用商標について
引用商標は、上記2のとおり、引用商標1は「furla」の欧文字から、引用商標2、引用商標3及び引用商標8は「FURLA」の欧文字からなり、引用商標4、引用商標5及び引用商標7は図形と「FURLA」の欧文字を有する構成からなり、引用商標6は「FURLA」の欧文字の下に「ITALY 1927」の文字を2段に書してなるものである。
そして、「FURLA」の欧文字は、上記(1)のとおり、「フルラ」と称され、申立人の業務に係るバッグを表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国における需要者の間に広く認識されていたものといえるから、引用商標からは、その構成文字に相応して、「フルラ」の称呼を生じ、「フルラのブランド」の観念を生じるというべきである。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
(ア)本件商標と引用商標1の類否について
本件商標と引用商標1を比較すると、外観においては、本件商標を構成する「FURNA」の文字と引用商標1を構成する「furla」の欧文字とは、大文字と小文字の相違に加え、4文字目において「N」と「l」の文字の差異を有し、外観において区別できる。
また、本件商標の構成文字に相応して生じる「ファーナ」の称呼と、引用商標1の構成文字に相応して生じる「フルラ」の称呼とは、それぞれを一連に称呼しても、語調、語感が相違し、互いに聴き誤るおそれのないものである。
さらに、本件商標は、特定の観念を生じないのに対し、引用商標1からは、「フルラのブランド」の観念を生じるから、観念において区別できる。
そうすると、本件商標と引用商標1は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(イ)本件商標と引用商標2、引用商標3及び引用商標8の類否について
本件商標と引用商標2、引用商標3及び引用商標8を比較すると、外観においては、本件商標を構成する「FURNA」の文字と引用商標2、引用商標3及び引用商標8を構成する「FURLA」の欧文字とは、4文字目において「N」と「L」の文字の差異を有するところ、5文字という短い文字構成における当該文字の差異が、その構成全体に与える影響は大きく、外観においては区別可能である。
また、本件商標の構成文字に相応して生じる「ファーナ」の称呼と、引用商標2、引用商標3及び引用商標8の構成文字に相応して生じる「フルラ」の称呼とは、それぞれを一連に称呼しても、語調、語感が相違し、互いに聴き誤るおそれのないものである。
さらに、本件商標は、特定の観念を生じないのに対し、引用商標2、引用商標3及び引用商標8からは、「フルラのブランド」の観念を生じるから、観念において区別できる。
そうすると、本件商標と引用商標2、引用商標3及び引用商標8は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(ウ)本件商標と引用商標4ないし引用商標7の類否について
本件商標と引用商標4ないし引用商標7を比較すると、外観においては、本件商標が「FURNA」の文字のみから構成されるものであるのに対し、引用商標4ないし引用商標7は「FURLA」の欧文字と図形との組み合わせ又は2段に書されている構成からなるものであるから、外観上明らかに相違している。
また、本件商標の構成文字に相応して生じる「ファーナ」の称呼と、引用商標4ないし引用商標7の構成文字に相応して生じる「フルラ」の称呼とは、それぞれを一連に称呼しても、語調、語感が相違し、互いに聴き誤るおそれのないものである。
さらに、本件商標は、特定の観念を生じないのに対し、引用商標4ないし引用商標7からは、「フルラのブランド」の観念を生じるから、観念において区別できる。
そうすると、本件商標と引用商標4ないし引用商標7は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
エ 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品又は指定役務の類否について
本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品又は指定役務と同一又は類似するものである。
オ 小括
以上からすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似するとはいえないことから、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
したがって、本件商標と引用商標1ないし引用商標7は、非類似の商標であるから、本件商標と引用商標1ないし引用商標7の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
また、本件商標と引用商標8は、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標8の指定商品及び指定役務が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第8条第1項に違反して登録されたものとはいえない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 「FURLA」の欧文字は、上記(1)のとおり、「フルラ」と称呼され、申立人の業務に係るバッグについて使用する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国における需要者の間に広く認識されていたものである。
イ 本件商標と引用商標の類似性について
本件商標と引用商標とは、上記(2)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであるから、本件商標と引用商標の類似性の程度は低いものといえる。
ウ 出所の混同のおそれについて
上記ア及びイのとおり、「FURLA」の欧文字は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているとしても、本件商標と引用商標の類似性の程度が低いことからすれば、本件商標に接する需要者が、申立人の業務に係る引用商標を連想又は想起するということはできない。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
エ 小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
「FURLA」の欧文字は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国における需要者の間で、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、広く認識されていたと認められるとしても、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標権者が引用商標にフリーライドするなど不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的。)をもって本件商標を使用するものであると認めるに足りる証拠は見いだせない。
そうすると、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が引用商標の名声を毀損させることを認識し、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標についての登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号並びに同法第8条第1項のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1(引用商標4)


別掲2(引用商標5)


別掲3(引用商標6)


別掲4(引用商標7)


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特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2023-04-06 
出願番号 2021135982 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W25)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 矢澤 一幸
特許庁審判官 小田 昌子
杉本 克治
登録日 2022-01-18 
登録番号 6501195 
権利者 合同会社URBAN TEX
商標の称呼 フルナ、ファーナ 
代理人 山尾 憲人 
代理人 佐々木 美紀 
代理人 田中 陽介 

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