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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1397327 
総通号数 17 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-01-28 
確定日 2023-01-18 
異議申立件数
事件の表示 登録第6468806号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6468806号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6468806号商標(以下「本件商標」という。)は、「macrevive」の欧文字を標準文字で表してなり、令和3年1月16日に登録出願、第9類「液晶ディスプレイモニター,デジタルビデオプレイヤー,半導体素子を記録媒体として使用するビデオレコーダー,身体装着式携帯情報端末,ウェブカメラ,スマートフォン用キーボード,デジタルビデオレコーダー,ギター用及びベース用電子式ピックアップ,ヘッドホン,未記録のコンピュータ用ハードディスク」を指定商品として、同年10月19日に登録査定され、同年11月10日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、「Mac」の欧文字(以下「引用商標」という。)からなり、同人の「コンピュータ、オペレーティングシステム」を示す商標として広く知られているとするものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)申立人について
申立人は、GAFAと称されるデジタル市場の巨大企業の4つのうちの一社であり、「MacBook」「iMac」等のパーソナルコンピュータ「Mac」シリーズ、スマートフォン「iPhone」等を製造販売し、音楽・映像配信サービス「Apple Music」等を提供する米国の法人である。申立人は、「世界の最も価値あるブランドランキング」においては、2011年から9年連続で首位の座を維持し、ブランド価値が2000億ドルを超えた唯一の企業と評価されている(甲2)。
(2)引用商標「Mac」の著名性について
ア Mac製品について
申立人は、コンピュータ機器の他、スマートフォン、スマートウォッチ、ソフトウェア等の分野において世界のリーディングカンパニーとなっており、著名であることは特許庁においても十分承知のことと思料する(甲3)。
申立人の製品の中でも特に「Mac」シリーズ(甲4)は、申立人の代表製品の一つであって、ラップトップ型コンピュータ「MacBook Air」「MacBook Pro」、デスクトップ型コンピュータ「iMac」「Mac Studio」、コンピュータハードウェア「Mac Pro」「Mac mini」といった製品名で販売されている。これらは「Mac(マック)」と呼ばれ(甲5)、我が国においても広く知られていることは顕著な事実である。
上記のとおり、「Mac」の文字は、申立人のコンピュータシリーズとして用いられており(甲4〜甲7)、また、マイクロソフト社のオペレーティングシステム「Windows」に対する申立人のオペレーティングシステムの名称としても使用されている(甲8)。また、申立人の「Mac」を題材とした書籍も多数販売されている(甲9)。
イ 「Mac」を含む商標登録について
申立人は「MAC」又は「Mac」の語からなる商標及びこれを含む商標について、42件の商標登録を有している。
ウ 特許庁の過去の判断について
申立人の商標「Mac」が周知・著名であることは、異議決定においても認められている(甲10)。
エ 新聞記事情報
新聞記事情報については、2005年3月8日付け毎日新聞東京夕刊(2葉)、2020年7月31日付け日本経済新聞夕刊(1葉)等に掲載されている。
オ 辞典、書籍、インターネット情報等
「Mac(マック)」に関する記事については、「日経パソコン用語事典 2009年版」(日経BP社 2008年10月20日発行)の248葉、ASCIIのウェブサイトの「2015年の全世界のPC出荷台数が明らかに/PC市場でMacのシェアが拡大!Windows10でもPC総出荷台数は伸びず」(2016年1月13日)(http://ascii.jp/elem/000/001/104/1104481/)等に掲載されている。
カ 裁判所の判断について
上記オで紹介した記事からMacはMacintoshシリーズの略称、または愛称として把握することができる。
知財高裁は、商標権侵害差止請求控訴事件(平成20年(ネ)第10014号)の判決で、「米国アップル社が使用する「Macintosh」との商標は,コンピュータ関係の商品において著名ではある。」と判断している。
Macintoshの商標よりもMacの使用が顕著に多い現在においては、Macは当然に著名であるといえる。
キ 小括
以上のとおり、引用商標は、本件商標の出願時及び査定時において、申立人のコンピュータないしオペレーティングシステムを示す商標として我が国において広く知られている。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性
ア 本号に係る最高裁判決(平成10年(行ヒ)第85号)の判旨に沿った検討
(ア)引用商標の周知性について
申立人の引用商標が著名であることは前記のとおりである。
(イ)本件商標と引用商標との類似性の程度
本件商標は、「macrevive」の文字からなり、「Mac」と「(死者を)生き返らせる、蘇生させる、(死んだような状態の物事を)復活させる」を意味する英単語「Revive」の語からなる。そして、本件商標に接する需要者等は、最も注意をひく語頭に位置する「Mac」に着目すると解することができる。
また、上述のとおり「Mac」は、申立人の商標として広く理解されている著名商標であることから、本件商標中の「mac」の文字は即座に申立人の著名商標「Mac」を想起させ、本件商標は、申立人のMacコンピュータに関連するブランドであるかのように誤認される可能性が高いと考える。
したがって、本件商標は、引用商標と相紛らわしい類似商標と解される。
(ウ)引用商標の独創性について
引用商標は、申立人による独創的な商標である。
なお、「辞書に掲載がある言葉=独創性がない」(甲10の2)と解すべきでないことは明らかである。辞書に「MAC」という単語が掲載されているとしても、その表示をコンピュータに使用したのは申立人が初めてであり、十分に独創性が認められるべきである。
我が国において申立人の「Mac」コンピュータの存在を知らない需要者が「MAC」の文字を目にした時は、単にそれをアルファベット3文字の羅列、若しくは特定の意味を有しない造語と解釈するのが自然である。また、代表的な日本語国語辞典である広辞苑にも「マック」の掲載はないことから、同語が我が国において日常的に用いられる言葉でないことは明らかである。すなわち、我が国において「MAC」は、「辞書に掲載されている特定の意味を持った既存語」と認識されないことから、同語は独創性を有すると解される。
そして、上述のとおり、我が国においては「Mac」は申立人の製品名を表す名称として著名である。申立人は、既存の言葉として存在する「MAC」とは別の意味、すなわち申立人のコンピュータの商標としての「Mac」の意味を確立しているといえる(甲11)。
以上より、引用商標は高い独創性を有すると解すべきである。
(エ)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品の関連性、需要者の共通性
本件商標の指定商品は、申立人の「Mac」商標が特に知られているコンピュータとは非常に関連深い第9類の商品であって、商品間の関連性があることは、十分に認められる。したがって、その需要者の範囲や販売部門等も一致し、混同が生ずる可能性が極めて高いといえる。
事実、申立人は、本件商標の指定商品に係る「液晶ディスプレイモニター」「身体装着式携帯情報端末」「ヘッドホン」「未記録のコンピュータ用ハードディスク」等を製造・販売している(甲12〜甲15)。
(オ)その他取引の実情
本件商標は、現に申立人の「Mac」専用SSDに使用されている(甲16)。
すなわち、本件商標中の「mac」が申立人の「Mac」コンピュータを意図していることは明らかである。
(カ)小括
以上を総合勘案すると、本件商標をその指定商品に使用すると、申立人の「Mac」コンピュータに関する商品・役務を想起させ、申立人と何らかの関係があるかのように誤認・混同させるおそれが高い。
上記判例で「当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として」とあるとおり、本件商標の指定商品に本件商標が使用された場合、その取引者・需要者は本件商標の構成における「Mac」から申立人の「Mac」コンピュータを想起するとみるのが自然であり、申立人の業務に係る商品であると誤信されるおそれ、ないし、申立人とビジネス関係にある者の業務に係る商品であると誤信されるおそれがある。
イ 特許庁審査基準に沿った検討
特許庁審査基準(「商標審査基準〔改訂第15版〕第3 十三、第4条第1項第15号 2.」)に規定されていることから考えても、申立人の著名な「Mac」商標の語をそのまま構成要素に含む本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当することが明らかである。
さらに、特許庁審査基準には、考慮事項として「その他人の標章がハウスマークであるかどうか」「企業における多角経営の可能性」も挙げられているので、これらについても検討する。
(ア)引用商標がハウスマークであるかどうか
引用商標は、申立人のハウスマークではないが、申立人の主力商品に係る商標であることは上記のとおりである。
(イ)企業における多角経営の可能性
申立人は、コンピュータの分野以外にも様々な事業分野で商品・役務展開している(甲17、甲18)。したがって、多角経営の可能性は十分に認められる。
上記、特許庁審査基準記載の判断基準からも、本件商標が使用されると、出所の混同が生じるおそれや、申立人から公認を受けているとの誤認あるいは、申立人の周知な引用商標の希釈化汚染化が生じるおそれがあることは明らかである。
ウ まとめ
以上のとおり、本件商標がその指定商品に使用されると、かかる指定商品分野における需要者は、それらの商品が申立人の業務に係る商品ないし申立人と何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標「Mac」の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、申立人は1976年に設立された米国の企業であって、フォーブスの「世界で最も価値あるブランドランキング」で2011年から9年連続第1位、2019年のブランド価値は2,055億ドルであったこと(甲2、甲3)、申立人が1984年に発売したパーソナルコンピュータ「Macintosh」は「Mac」と通称され、2010年以降は「Mac」が正式な名称となったこと(甲5〜甲7)、申立人の「パーソナルコンピュータ」には、本件商標の登録査定後である2022年4月現在「MacBook Air」「iMac」「MacBook Pro」などのように「Mac」の文字が使用され、これらは「Mac」と総称されていること(甲4〜甲7)、2001年に発売された申立人の「オペレーティングシステム」は、本件商標の登録査定後である2022年4月現在までその名称に「Mac OS」「macOS」のように「Mac」「mac」の文字が用いられていること(甲8)、及び、我が国において、申立人のパーソナルコンピュータは遅くとも2009年11月には販売されていたこと(職権調査:2010年2月11日付け日刊工業新聞)、申立人のパーソナルコンピュータ「Mac」用のマニュアル、ガイドブックなどが、2021年1月から本件商標の登録査定後である2022年5月においても、相当数の種類販売されていること(甲9)などが認められる。
イ 上記アからすれば、引用商標を使用した商品「パーソナルコンピュータ、オペレーティングシステム」(以下「申立人使用商品」という。)は、我が国において遅くとも2009年頃から現在まで継続して販売されているといえるから、申立人の業務に係る商品として当該商品(パーソナルコンピュータ、オペレーティングシステム)の需要者の間である程度知られているということができる。
しかしながら、申立人使用商品の我が国における販売数量、売上高など販売実績を示す主張はなく、また、それを客観的に確認できる証左も見いだせない。
そうすると、申立人使用商品に使用されている引用商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品「パーソナルコンピュータ、オペレーティングシステム」を表示するものとして、いずれも需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり「macrevive」の欧文字からなり、該文字に相応し「マックリバイブ」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
イ 引用商標
引用商標は、上記2のとおり「Mac」の欧文字からなり、該文字に相応し「マック」の称呼を生じ、上記(1)のとおり、需要者の間に広く認識されていたものではなく、また、何らかの意味合いを理解させるものでもないから特定の観念は生じない。
ウ 本件商標と引用商標の類似性の程度
本件商標と引用商標の類否を検討すると、外観においては、本件商標の構成文字「macrevive」と引用商標の構成文字「Mac」の比較において、両者は、構成文字数、構成態様が明らかに異なるから、判然と区別することができる。
次に、本件商標から生じる「マックリバイブ」の称呼と引用商標から生じる「マック」の称呼を比較すると、両者は、構成音数、語調語感が明らかに異なるから、明瞭に聴別することができる。
さらに、観念においては、両者は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標は、観念において比較することはできないとしても、外観、称呼において相紛れるおそれがないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない類似しない商標であって、別異のものというべきである。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
(3)混同を生ずるおそれ
ア 上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(2)のとおり、本件商標は、引用商標と類似しない商標であって別異のものというべきである。
そうすると、本件商標は、引用商標の独創性の程度や本件商標の指定商品と申立人使用商品との関連性の程度などを考慮しても、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
イ なお、申立人は、本件商標は「Mac(mac)」と「生き返らせる、蘇生させる」などを意味する英単語「Revive(revive)」の語からなる、本件商標に接する需要者等は最も注意をひく語頭に位置する「Mac(mac)」に着目すること、「Mac」(引用商標)は申立人の著名商標であることなどとして、本件商標は、その構成中「mac」の文字が著名商標「Mac」を想起させ、申立人のMacコンピュータに関連するブランドであるかのように誤認される可能性が高い旨主張している。
しかしながら、本件商標を構成する「macrevive」の文字は、同書同大同間隔で外観上まとまりよく表され、いずれかの文字が看者の注意をひくような態様ではないこと、それから生じる「マックリバイブ」の称呼は無理なく一連に称呼し得るものであること、上記(1)のとおり、引用商標は需要者の間に広く認識されているものと認められないこと、その他に本件商標の構成中「mac」の文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるというべき事情は見いだせないことなどを踏まえると、上記アのとおり、本件商標は引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、申立人の主張は採用できない。
ウ その他、本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2023-01-10 
出願番号 2021004491 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W09)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大森 友子
特許庁審判官 馬場 秀敏
岩崎 安子
登録日 2021-11-10 
登録番号 6468806 
権利者 深▲せん▼市海貝利科技有限公司
商標の称呼 マックリバイブ 
代理人 弁理士法人大島・西村・宮永商標特許事務所 

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