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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1396509 
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2023-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-06-02 
確定日 2023-04-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第6535359号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6535359号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6535359号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「Powersheer」の欧文字を横書きした構成からなり、令和3年4月16日に登録出願、第9類「蓄電池用充電器,ガルヴァーニ電池,バッテリーチャージャー,光電池,蓄電池,充電式蓄電池,ユニバーサルシリアルバス(USB)ケーブル,制御器」を指定商品として、同4年3月14日に登録査定され、同月28日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立ての理由において引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する商標は、以下の2件の登録商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第5931457号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成28年7月13日に登録出願、第9類「バッテリー,電動工具用バッテリー,照明用バッテリー,バッテリーチャージャー,バッテリーパック」を指定商品として、同29年3月10日に設定登録されたものである。
2 登録第6589296号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成31年4月22日に登録出願、第9類「電気の供給又は使用における伝導用・開閉用・変圧用・蓄電用・調整用又は制御用の機械器具,インバーター(電気式のもの),バッテリーチャージャー,電池用充電器,バッテリージャンプスターター,蓄電池,バッテリーパック,電源アダプター,電気コンバーター,太陽光発電機」を含む第7類、第9類、第11類、第12類、第20類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、令和4年7月20日に設定登録されたものである。
なお、上記引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、以下「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号の規定により、その登録は取り消されるべきものである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第22号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)外観について
本件商標は、「Power」と「sheer」の欧文字を横書きにしてなり、その外観は、冒頭「P」部分を大文字で表した他は小文字のゴシック体の欧文字で表されている。
他方、引用商標の外観は、黒色の太ゴシック体の欧文字「POWER」と「SHARE」を右上がりに二段書きに配置する構成からなる。大文字、小文字の相違はあるものの、アルファベット10文字中、語頭から第7文字までのつづりが共通する。また、第8文字が異なるものの、語尾部において「R」「E」の文字が共通するため、外観上近似した文字構成からなるものである。
(2)観念について
「Power」と「sheer」の文字からなる本件商標は、我が国において一般的に使用されている辞書等に掲載されていないものであり、既成の観念を有しない造語として認識されるものであるから、特定の観念は生じない。
他方、「POWER SHARE」の文字からなる引用商標は、我が国において一般的に使用されている辞書等に掲載されていないものであり、既成の観念を有しない造語として認識されるものであるから、特定の観念を生じない。
よって、観念においては比較することができない。
(3)称呼について
本件商標公報の「称呼(参考情報)」によれば、その構成文字に相応して「パワーシアー」の称呼が生じるとされるが、「sheer」の実際の称呼は、「シアー」というよりもむしろ、長く伸ばさない「パワーシア」の方が適切である(甲4)。
一方、引用商標については、「POWER SHARE」の構成文字に相応して「パワーシェア」の称呼が生じる。
本件商標より生ずる「パワーシア」の称呼と、引用商標より生ずる「パワーシェア」の称呼とを比較すると、それぞれ5音にて構成されている点で共通する。この5音のうち、称呼の識別上重要な要素を占める語頭音「パワー」部分の3音と、後半部分の「ア」1音が共通し、異なるのは、中間部第4音の「シ」と「シェ」の音の差異だけである。
そこで、差異音である「シ」と「シェ」の音についてみると、両音は、無声摩擦子音(sh)を共通にする音で、前者は該子音(sh)と母音(i)と、後者は、無声摩擦子音(sh)と母音(e)とが結合した音からなるところ、無声摩擦子音である「シ」と「シェ」の音は、弱く発音、聴取されるものであり、続く「ア」の音は、解放母音で強く発音されることから、「シ」と「シェ」の音はその強音である「ア」の音に吸収され、明確には聴取され難い微弱音となり、加えて、「シ」と「シェ」の母音(i)と(e)はいずれも口を横に広げて発する近似音であることから、両商標の称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、語調、語感が極めて近似し、互いに聴き誤るおそれがあるものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼上、互いに紛れるおそれのある類似の商標である。
(4)小括
本件商標と引用商標とは、観念において比較できず、外観における差異を考慮しても、なお称呼において互いに紛らわしく、両者はその出所について混同を生ずるおそれのある類似の商標であるといわざるを得ない。
(5)取引の実情
インターネット(Google)の文字列検索において「バッテリー パワーシアー」と入力すると、申立人の引用商標1に係る商品「バッテリー」及び引用商標2に係る商品「電気式生け垣刈込み機」に係る画像がヒットし、本件商標に係る称呼を正しく入力したにもかかわらず、申立人の引用商標に係る商標及び商品が表示される事実が認められる(甲7)。このため、実際の取引において、本件商標と引用商標は、既に誤認混同を生じているか、その蓋然性が高いことが示唆される。
(6)まとめ
以上説明したとおり、本件商標と引用商標とは類似する商標であると認められ、また、本件商標に係る指定商品中「蓄電池用充電器,ガルヴァーニ電池,バッテリーチャージャー,光電池,蓄電池,充電式蓄電池,制御器」と、引用商標に係る指定商品の一部は、商品が同一又は類似する。さらに、上記指定商品の需要者である一般の消費者が通常有する注意力を踏まえると、これらの一般の消費者が必ずしも商標の構成を細部にわたって記憶して取引するとはいえないことから、本件商標と引用商標を時と所を異にして隔離的に観察した場合、商品の出所の誤認混同を生じるおそれがあるといえる。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当し、商標登録をすることができないものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
申立人は、カタログ(甲8)及びウェブサイト(甲9)にあるように、DIYやガーデニングに関する様々な商品に引用商標に係る商標を使用しており、日本においては2019年4月から各商品を販売している。これらの商品は通販サイトamazon等においても広く流通しているものである(甲10)。
カタログ(甲8)にあるように、商品は、新潟県3条市所在の株式会社高儀が扱うが、同社に2019年に宛てたINVOICEにあるとおり、取引額も高額なものとなっている(甲11〜甲17)。
引用商標1に係る商品「バッテリー」を含む「充電式洗浄ガン(引用商標2に係る「洗浄用具」)の商品紹介に係る動画をYouTubeに2019年7月11日から公開してもいる(甲18)。
また、通販サイトだけでなく、実店舗でも多くの商品を販売しており、例えば、カインズ 千葉ニュータウン店(千葉県印西市;甲19)、DCM(本部所在地:東京都品川区;甲20)、ジョイフル本田 千葉店(千葉県千葉市稲毛区;甲21)においては、本件商標の出願日よりずっと以前の2019年8月に引用商標を使用している。
さらには、2018年8月23日ないし25日に幕張メッセにて開催された「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2018」において、引用商標に係る各指定商品が展示・紹介がされていることからも(甲22)、日本及び世界中で引用商標が申立人の業務に係る商品であることが十分理解できる。
このように、申立人は、申立人の業務(DIYやガーデニングに関する商品)に引用商標を使用し、これが本件商標の出願時及び登録時において全国的に周知になっている。
また、甲第7号証に挙げたとおり、インターネット(Google)の文字列検索において「バッテリー パワーシアー」と入力すると、申立人の引用商標1に係る商品「バッテリー」及び引用商標2に係る(本件商標とは非類似の)商品「電気式生け垣刈込み機」に係る画像がヒットすることから、本件商標と非類似の商品についても実際の取引において既に誤認混同を生じているか、その蓋然性が高いことを示唆するものである。
3 むすび
(1)第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標とは、外観において若干の差異があるとしても、称呼において互いに非常に紛らわしい商標であり、その指定商品も同一又は類似のものである。
したがって、本件商標登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものである。
(2)第4条第1項第15号について
本件商標が本件指定商品に使用された場合、その商品の取引者及び需要者が申立人の業務に係る商品と出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人は電動工具用のバッテリーに引用商標(色彩の異なるものを含む。以下同じ。)を使用していること(甲8、甲9、甲18、甲19、甲21:以下、引用商標が使用された電動工具用のバッテリーを「使用商品」という。)、使用商品については、我が国において新潟県所在の株式会社高儀が輸入・販売元であること(甲8)、2019年3月ないし2020年10月の日付で同社に宛ててインボイスが発行されていること(甲11〜甲17)、我が国の実店舗に陳列されている写真があること(甲19〜甲21)、YouTubeで紹介されていること(甲18)がうかがえる。
しかしながら、株式会社高儀に宛てたインボイス(甲11〜甲17)に記載された商品が使用商品であることは確認することはできず、また、当該インボイスに記載された商品が我が国で販売された事実を具体的、客観的に確認することもできない。
さらに、実店舗における使用商品の陳列写真(甲19〜甲21)や、YouTubeの画像(甲18)については、これらの撮影日、撮影場所、撮影者、あるいは画像の内容、掲載期間等が不明であって、これらの証拠によって、使用商標の使用時期、使用期間、使用商品の売上数等の使用事実を客観的に確認することはできない。
そして、その他に、使用商品の売上高、シェアなど販売実績を示す主張はなく、それを示す証左は見いだせない。
(2)上記(1)からすれば、使用商品が2019年頃から我が国で販売されていることはうかがえるものの、我が国における使用商品の販売数量、売上高等の量的規模を示す証拠、宣伝広告の回数や宣伝広告の額などの広告実績を示す証拠等、客観的な使用事実に基づいて引用商標の使用状況を把握できる証左が見いだせないから、引用商標の周知性の程度を推し量ることができない。
したがって、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、「Powersheer」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成は、語頭の「P」のみを大文字とし、その余は全て小文字としており、全体としてまとまりよく一体的に表されているものであり、これから生じると認められる「パワーシアー」の称呼も、無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、「Powersheer」の文字は、辞書類に掲載されている成語とは認められないことから、特定の意味合いを想起させるものではなく、一種の造語として理解、認識されるものというのが相当である。
してみると、本件商標は、その構成文字全体に相応して「パワーシアー」の称呼が生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
引用商標は、別掲2のとおり、「POWER」の欧文字と「SHARE」の欧文字をやや右上がりに上下二段に表した構成(「E」の文字はいずれもデザイン化されている。)からなるところ、それらの構成各文字は、統一的にデザイン化され、同一の書体をもって、一体的に表されているものである。
そして、引用商標の構成文字に相応して生ずる「パワーシェア」の称呼も、格別冗長というものではなく、無理なく称呼し得るものである。
また、その全体の構成文字は、辞書類に載録されているものではなく、特定の語義を有する成語とは認められないものである。
そうすると、引用商標は、上記のとおりの構成態様を踏まえれば、その構成文字全体をもって、特定の意味合いを生じない一種の造語を表したものとして認識、把握されるとみるのが相当である。
したがって、引用商標は、「パワーシェア」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標の類否を検討すると、両者の外観は、上記(1)及び(2)のとおりであるから、構成態様が明らかに異なり、両者を離隔的に観察しても、外観上、相紛れるおそれのないものである。
次に、本件商標から生じる「パワーシアー」の称呼と引用商標から生じる「パワーシェア」の称呼を比較すると、両者は後半部における「シアー」と「シェア」の音の差異を有し、この差異音が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、かれこれ聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、両商標は、共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標は、観念において比較できないとしても、外観、称呼において相紛れるおそれがないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
その他、両商標が類似するというべき事情は見いだせない。
なお、申立人は、本件商標の称呼について、「シアー」よりも、長く伸ばさない「パワーシア」の方が適切であるから、本件商標と引用商標とは、称呼上、互いに紛れるおそれのある類似の商標である旨主張しているが、上記(2)のとおり、本件商標は「パワーシアー」の称呼が生じるものというべきであって、上記(3)のとおり、本件商標と引用商標は、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれはないものというのが相当である。
また、仮に本件商標から「パワーシア」の称呼が生じるとしても、当該称呼は引用商標の称呼とは後半部における「シア」と「シェア」の音の差異を有し、この差異が5音という比較的短い音構成からなる両称呼全体に与える影響は大きいものというべきであって、両者は明瞭に聴別し得るものというのが相当であるから、両商標が類似するものということはできない。
よって、申立人の上記主張は採用することができない。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、上記1のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものとは認められないものであり、かつ、本件商標と引用商標は、上記2のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1 本件商標


別掲2 引用商標1及び引用商標2


(この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2023-03-30 
出願番号 2021046906 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W09)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 小林 裕子
鈴木 雅也
登録日 2022-03-28 
登録番号 6535359 
権利者 カデナ インダストリーズ リミテッド
商標の称呼 パワーシアー、シアー 
代理人 柴田 雅仁 
代理人 原田 貴史 
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